外国人が経営するベーカリー - ブランスリー電子版

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特集/2018年8月号

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外国人が経営するベーカリー




フランスパンを日本に根付かせる - ブーランジェリー ロラソ
「バゲット ローラン」(税込357円)。皮は薄くパリッとし、内層は白くもちもちとした食感の本場フランスのバゲット
シェフのムノ・ローランさん(左)と、パティシエのムノ・明子さん(右)。震災時には日持ちする菓子のラスクを被災地に直接送るなど、支援活動にも真摯に取り組んでいる
「ブーランジェリー ロラソ」の外観。手前の席で購入したパンを食べることもできる
「ドゥミ ローラン」(左、税込195円)と、「ドゥミ ペイザン」(右、税込195円)。いずれも1人用のハーフサイズ
「ショコラ」(税込238円)。ローランさんが子供の頃から夢見た「チョコチップのたくさん入ったショコラ」を実現。年齢、性別を問わず好評
「クロワッサン ローラン」(税込260円)。一口かじるとリッチな味わいが広がる。材料の贅沢さが想像される食後の満足感の高い製品
フランスの食文化を東京に

 「フランス人が作るフランス仕込みのパンの店」として人気の東京・目黒区のベーカリー「ブーランジェリー ロラソ」は、パリのベーカリーで修業しスーシェフの経験も持つフランス人のムノ・ローランさんがブーランジェを、妻の日本人のムノ明子さんがパティシエを勤めるベーカリーだ。パティシエの明子さんもローランさんと共にパリのパティスリーでの修業経験を持ち、同店では本場フランス仕込みのパンとお菓子を提供している。
 店の前にはフランスの大きな国旗が掲げられ、白を基調とした店内はエメラルドグリーンのテーマカラーに彩られ爽やかな明るい雰囲気だ。「私の好きな色が緑で、妻は青が好きなので、合わせた色になりました」とローランさんは話す。フランスのパンとお菓子の調和を連想させる店構えとなっている。
 同店のメニューはベーシックなフランスのパンを中心とし、サンドイッチやパニーニといった調理パン、ヴィエノワズリー、そしてガトーが展開されている。  「フランスのパン屋さんはバゲットやパン・ド・カンパーニュ、パン・ド・ミなどの決まったパンを置いています。フランス人は朝、昼、晩と1日3食3回パン屋さんに、出来たてのパンを買いに行くのです。お昼はサンドイッチですが、朝と晩はクロワッサンやハード系のパンを食べています。日本は主食が米のごはんだから、フランスと同じ食生活を体験するのは難しいでしょうけど、私は毎日食べられるフランスのパンを提供したいのです」とローランさん。

日本の食環境でフランスのパンを

 同店の一番人気製品「バゲット ローラン」(税込357円)は、「開業してから約8年間ずっと食べていて飽きません」と言うローランさんの大好きなパンでもある。日本でフランスのパンが普及しているといっても、「日常的なメニュー」にはなっていない事をローランさんも考え、同店ではフランスパンの食べ方を積極的に顧客に教えている。
 「チーズとワインを用意して食べるのがバゲット、と受け止められても、皆さんの日常的なメニューにはならないでしょう。何も付けなくてもそのまま食べても美味しいという事を知ってもらいたいですし、気軽な食べ方を覚えてバゲットやフランスのパンの美味しさを楽しんでもらいたいです」とローランさん。
 同店では接客中の会話以外にも、「シュークリーム食べ放題のシュー会」といったイベントを店内で開くなど、顧客とのコミュニケーションを活発に行っている。ブログやフェイスブック、インスタグラムといったSNSでの情報発信も行い顧客との繋がりに気を配っている。
 「一人暮らしで大きいバゲットの食べ方がわからない人も多いと考え、ハーフサイズも用意していますが、食べ方や家庭で味を保つ保存方法を伝えたら、一週間分一度にお買い上げになるお客様も増えて来ました」とローランさん。
 同店のハード系のパンは保存料を使っていない。味を落とさず保存料も使わない同店のパンの食べ方として、その日に食べきれない分には食品用ラップでぴったりとバゲットを包んだ上で、冷凍庫での保存を勧めているという。
 「日本のベーカリーで驚いたのは、テイクアウトのお客様にバゲットをスライスしてビニル袋に入れて渡している事。皆さんブレッドナイフを持っていないのだろうけど、お店でカットしてビニール袋に入れると水分で断面からカビが生えやすくなりますし、バゲットの特長である皮のパリッとした食感がなくなってしまいます。日本は多くの人が前日夜に買ったパンを翌朝食べざるを得ない食環境ですし、それならお店が出来るだけいい状態のバゲットの保存方法を伝えて、パンの美味しさを目一杯味わってもらいたいのです」とローランさんは話した。



ガラス窓から見えるパンの陳列棚。眺めているだけで楽しくなるフランスのパンが一杯
フランス雑貨も販売している。身近なパリを感じられる店内
冷蔵庫ではサンドイッチ各種や洋菓子、飲み物も販売されている
フランス菓子の「メレンゲ」(税込302円)。焼き菓子やケーキなど洋菓子もバリエーション豊か
商品紹介やパンの情報が「今月のお知らせ」として壁に貼り出されている。毎月発表される明子さんのコラムは、顧客に評判になっているという
「あなたのパリ」をコンセプトに営業

 フランスのパンを製造する事についてフランスと日本の大きな違いのひとつは、気候ではないかとローランさんは考える。「フランスの環境で美味しく出来るフランスのパンを、夏は湿気が強く冬は乾燥する東京の気候で再現するのは難しいですね。東京では季節に合わせてパン作りを調節しています。バゲットローランの表面に振っている粉も、東京の気候に合わせてパンの品質を保つためなんです」とローランさん。
 ベーカリーを開業して間もない頃、「あんぱんは作らないの?」と顧客からリクエストを受けた事もあるという。しかし、「メニューは自分が出したいと思ったものを」というのがローランさんの考えであり、8年間それを通し、その結果ファンを増やしている。
 「日本は総菜パンの需要が高いので、サンドイッチも出し、食事になるようなフィリングの入ったパンも提供しています。でも原則は自分のいいと思ったパンを提供しています。頑固なのかも知れませんね」とローランさんは笑顔を見せる。
 同店では「俺のパン」と題したシリーズのパンが毎月期間限定で販売されている。それはローランさんのオリジナルメニューで、バゲットローランの生地にパプリカ、プロバンスハーブとオリーブオイルを練り込み、黒オリーブと合わせた「Souvenir du Sud 南のパン」(税込357円)や、食べるラー油を好きになったローランさんがバゲットローランにラー油を練り込んだ「Ramandes ラーモンド」(税込324円)などだ。これは顧客からのリクエストではなくシェフのお気に入りとして生み出し、人気を獲得した品々だ。日頃様々な食材に触れ、良いと思ったものを新メニューとして商品化して行く。フランスではほとんどの場合、家の近所には4〜5軒のベーカリーがある。毎日の食事としてパンを食べて育ち、パンを愛し、技術を磨きパン職人となったローランさん。その創意工夫を凝らしたメニュー全てが同店の提供する「あなたのパリ」なのかも知れない。
 ローランさんの作るフランスのパンは、シンプルで優しい味だ。噛み締めるとほっとする手作りの温かみを感じる味なのだ。フィリングを挟んだサンドイッチも同様だった。チーズとハムと葉物野菜のシンプルなバゲットサンドも、大事な家族を思って作ってくれたようなやさしい味だ。フランスのパンと日常を共にするとはどういう事なのか、ロラソのパンは消費者に味で伝えている。

SHOP DATA
店名:ブーランジェリー ロラソ
住所:〒152−0002東京都目黒区目黒本町3‐3‐2
電話:03‐3713‐6620
営業期間:午前10時〜午後7時(土曜、日曜、祝日は午後6時まで)
定休日:月曜、火曜
品揃え:パン約30品目
店舗面積:厨房約6坪、売り場約6坪



仏流守りながら日本仕様も導入 - レピドー
右は「ミニあんぱん(5個入り)」(税込450円)、中央は「ミニあんぱん」(税込98円)、左は「フランスあんぱん」(税込190円)
右は「ミニあんぱん」の断面、左は「フランスあんぱん」の断面
フランス人のディディエさん。21年前に開業した
洗練されたデザインの「レピドー」の外観。「ぱんのみせ」と書かれたブリオッシュの形をした立体的な看板が目印だ
「バタール」(税込270円)や「バゲットトラディショナル」(税込225円)の横に「フランスの田舎パン」(税込430円)が並ぶ
大きな麦の穂の形をした「パンドエピ」(税込720円)
販売の仕方についてある夫婦がアドバイス

 フランス人のシャユ・ディディエさんがオーナーシェフを務める神奈川県平塚市のベーカリー「レピドー」は、1997年に開業し、この7月に21周年を迎えた。ディディエさんは開業当初を振り返ってこう話す。
 「開業してしばらくは苦しかったですね。自分は職人であって、商売人という意識がなかったんですね。今思えば、アピールする努力ができていなかったんだと思います」
 同店の地元平塚に住む、日本人夫婦の協力を受けたことをきっかけに、売上げは伸びていき、その1年後には同店の経営は安定した。
 「ご主人は画家を本業とされていて、フランスなどのヨーロッパの国々にもよく行かれているようでした。ですので、私の気持ちや感覚を汲みながら、いろいろなアドバイスをしていただきました」(ディディエさん)
 アドバイスによって改善した点は主に3つある。まず1つ目は売り場のレイアウトだ。
 「レジの場所を移動しました。それまでのレイアウトだと、お客様の動線が入り口からレジまで一直線となってしまっていて、目に入らないデッドゾーンとなってしまう陳列場所が多数あったからです。すべてのゾーンを見てもらえるような動線に変更しました」(ディディエさん)
 2つ目は、食パンやハード系などの大型商品の位置の変更だ。
 「大型の商品は、入り口からすぐの場所に置くと、最初にそれだけでトレーがいっぱいになってしまいます。トレーがいっぱいになってしまったら、ほかの商品に手が伸びづらくなってしまうと思うので、大型商品は、色々選んだあとに、最後の方でトレーにのせられるよう、レジの近くに陳列するようにしました」(ディディエさん)
 3つ目は、日替わりで一品、30パーセント引きの「サービスパン」を用意することだった。
 「当店に一度も入ったことのない方に、どうしたら入ってもらえるきかっけが作れるかを考えました。そこで、サービスパンがあれば、それを目当てに気軽に入っていただけるのではないかと思ったんです」(ディディエさん)

あんぱんもアドバイスを元にリニューアル

 以上3つの改善策は、販売に関わることだ。一方、商品自体についても、アドバイスによって改良した点があった。
 「フランスでは、具を練り込んだり巻き込んだりはしますが、包むということはしなかったので、日本のパンで最も驚いたアイテムが、あんぱんでした。そのあんぱんについても、アドバイスをもらいました。地元で評判の製餡所があるから、その餡を使ってみたらと勧めてくれたんです。その餡は、評判通りのおいしさで、餡に合わせて、生地を変えるなど、レシピを作り直しました」(ディディエさん)
 同店のあんぱんは、「ミニあんぱん」(税込98円)と、「フランスあんぱん」(税込190円)の2種類がある。「ミニあんぱん」の餡はこしあんで、「フランスあんぱん」の餡は粒あんだ。
 「餡は、粒とこしで、それぞれの異なる食感に着目して、生地を開発しました。粒あんには、少し甘みを付けたソフトなフランス生地を使用します。こしあんは、舌触りがとても滑らかなので、ブリオッシュのような、口当たりのやさしい生地を使用します」(ディディエさん)
 リニューアル後は売れ行きがよく、現在も定番の人気商品となっている。複数購入する人も多いため、割安設定の「ミニあんぱん(5個入り)」(税込450円)も販売している。
 また、そのほかの菓子パンについても、フランスと日本では全然違うという。
 「フランスで菓子パンと言えば、パンオショコラやブリオッシュなど限られているので、日本の菓子パンの種類の多さにも驚きました」(ディディエさん)
 菓子パンについては、妻の康子さんもよく意見を言うという。康子さんは、サンドイッチなどの調理や販売を担当している。
 「私が商品について意見を言っても、主人は良い意味で頑固なので、あまり反映されたことはないと思います。特にハード系に関しては、意見を言うこともしません。主人のこだわりの部分は、大事ですしね。でも、菓子パンに関しては、結構言っています」(康子さん)



「レピドー」の店内。店内中央の台にはハード系、窓側の棚には菓子パンと総菜パンが並ぶ
「マンゴー(レモンカスタード)」(税込220円)や「アナナス(パイナップル&ココナッツクリーム)」(税込220円)など、季節の果物がのったデニッシュが人気
「クレープ(3枚入)」(税込300円)も根強い人気がある
マカロンは税込220円で、フランボワーズ、抹茶、パッションフルーツなど7種類が揃う
「国産そば粉ガレット」は、専用の鉄製の焼き器で一枚ずつ焼成する。価格は3枚で税込300円
日本人の好みに合わせて調整する

 ディディエさんは、フランスで15歳のときにパン学校に入学して以来、この道約40年だ。フィリップ・ビゴ氏に誘われて来日し、同店開業前は、横浜市のベーカリーや東京・渋谷区の青山アンデルセンで腕を振るった。技術指導や商品開発なども行ってきた。
 「ハード系に関してはフランスで習得した製法で作ってきましたが、菓子パンは、作ったことのないものがほとんどで、日本人の好みを知る機会にもなりました」(ディディエさん)
 こうした経験から、開業後の商品開発にそれほど困ることはなかったという。
 「ゆっくり、時間をかけて発酵をとることや、やさしく生地を扱うことなど、フランスで先生から学んだ製法は、絶対に守り通しています。その中で、ハード系を日本人の口に合うように、食べやすいかたさにするなどの、細かな調整をしています。また、帰国したときに感じることですが、フランスでも年々パンが進化しています。その変化を参考にしながら、日本に帰ってきてレシピを開発することもあります」(ディディエさん)
 「フランスの田舎パン」(税込430円)や、「パンドエピ」(税込720円)など、大きく成形して焼き上げることで、中身がしっとりとして食パンのような感覚で食べられるハード系商品が充実している。
 日本人の好みを意識したパン作りをする一方で、5年ほど前、フランスの家庭料理を商品化した。ディディエさん宅で朝食に食べていたというガレットだ。
 「発売当初、食べ方を写真付きでプライスカードの横に付けたりしたのですが、想像以上に皆さんご存知で、心配いらなかったなと思ったほどです」(康子さん)
 現在3枚の袋入りで税込330円で販売している。
 3年ほど前には、マカロンを発売した。こちらも、予想を上回るヒット商品となった。
 「レシピを広島に住むフランス人のパン職人から教わったので、試しに作って販売してみたらお客様にとても好評だったんです。パティスリーのものと比べると、一回りも二回りも大きいのが人気の理由かと思っています」(ディディエさん)
 マカロンは税込220円で、常時約7種類ほど揃う。季節のフレーバーもあり、夏季はオレンジ色が鮮やかなパッションフルーツだ。
 「発売当初は、この大きさに驚かれていました。今は定番商品です。お土産に購入されていかれる方も多いですよ」(康子さん) 

SHOP DATA
店名:レピドー
住所:〒254−0812 神奈川県平塚市松風町6−8
電話:0463‐21‐5062
営業時間:午前8時〜午後6時30分
定休日:月曜、火曜
品揃え:約70品目
スタッフ:製造常時2人、販売常時1〜3人
店舗面積:厨房19坪、売り場14坪(カフェスペース含む)
日商:平日13〜15万円、土曜、日曜、祝日平均22万円

原価計算女王
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