地元の食材の魅力を伝えるパン - ソイルバイホウトーベーカリー - ブランスリー電子版

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お店拝見/2018年6月号

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地元の食材の魅力を伝えるパン - ソイルバイホウトーベーカリー
菓子パンやデニッシュなどの小物は、女性を意識し、周辺のベーカリーよりは小さめのサイズを意識している
経営者の森柾人さん(左から2番目)、シェフブーランジェの小森俊幸さん(左から3番目)とスタッフ陣
2段の陳列台に総菜系、菓子系、ハード系が並ぶ。駅横なので電車の到着時に一気に客が増えても対応できるよう、シンプルな造りになっている
京急線・県立大学駅横にある「ソイルバイホウトーベーカリー」
春キャベツが豪快にのった「季節のフォカッチャ」(中央、税抜300円)と10種類以上の野菜がのった「季節野菜のピゼッタ」(右、税抜390円)。
ハード系は、全粒粉入りの生地に具を練りこんだ製品が10種類ほどある
パンの付加価値を上げることに行き着いた

 「三浦半島が育んだ、農産物や海産物などの自然の恵みを使うという思いを込めて、『ソイル』と店名の頭に付けました」
 こう話すのは、2年前に開業した神奈川県横須賀市のベーカリー「ソイルバイホウトーベーカリー」の経営者である森柾人さん。
 「経営者として、従業員の労働環境の改善や、永続的に地域に存在していく店づくりを考えて行き着いたのが、付加価値の高い商品づくりをすることでした」(森さん)
 森さんは、大正13年創業のベーカリー「法塔ベーカリー」と、第一回全国ご当地パン祭りで一位となった「よこすか海軍カレーパン」で名を馳せたパンの卸専門店「カフェドクルー」の経営もしている。「法塔ベーカリー」は、市内の京急線・浦賀駅構内に店舗を構えるほか、地域の高校内の売店への卸もしている。「カフェドクルー」の主な卸先は、全国各地のイベントや地域のJA直売所などだ。
 「これまで散々パンを売ってきて分かったことは、パンを売るという行為だけでは、先が見えないということです。材料費などのコスト高や人手不足などが深刻化し、益々状況が悪化していく中で、効率化や技術の向上だけでは、問題を解決していくことは難しいと思います。『三浦半島まで来たかいがあったね』と思ってもらえるだけの満足感を、お客様に与えていけるようにならなければいけません。そのためには、付加価値の高いパンがあるだけでなく、散歩ができる公園や観光スポットの存在など、店の周りの環境が魅力的であることも考えていかないといけないと思っています。当店だけで完結して考えられる話ではないですね」(森さん)
 現在同店があるのは、京急線・県立大学駅の改札に隣接する建物で、駅利用客にはベストと思える立地だ。しかしこの立地を、森さんは決して良いとは思っていない。
 「当店は商圏範囲を広めに設定していますが、例えば遠方から電車で来てもらった場合、当店以外に目的がなければ、購入後、すぐにまた電車に乗って帰ることになってしまいます。理想は、パンだけでなく、散歩や観光もついでに楽しんでもらうことなので、駅からの近さよりも、大事な条件がほかにあると思っています」(森さん)



「やっちゃんトマトのカレーパン」(税抜330円)
「やっちゃんトマトのカレーパン」の断面(下の写真)
「soilカンパーニュ」(税抜500円、ハーフは税抜250円)
「soilカンパーニュ」の断面(下の写真)
ホワイトチョコとカシスチーズクリームが入った「ホワイトチョコとカシスの抹茶メロンパン」(税抜190円)
「ホワイトチョコとカシスの抹茶メロンパン」の断面(下の写真)
三浦半島の小麦や野菜、きのこを使った商品作り

 同店が使用している野菜やきのこ、卵といった食材は、天候不順や端境期でない限り、基本的には三浦半島産のもので、決まった農家から仕入れている。
 「今お世話になっている農家さんは、地元の飲食店オーナーの方々から紹介していただきました。野菜は季節ごとに、おいしいものや採れるものが変わっていきますから、商品開発は、まず野菜ありきというところから始まります」(森さん)
 「季節のフォカッチャ」(税抜300円)は、その時々の旬の野菜をのせて焼き上げる。取材した4月は、春キャベツとベーコンで、春キャベツはそのまま、8等分くらいに切った大きさのものが豪快にのっていた。
 「季節野菜のピゼッタ」(税抜390円)は、旬の野菜を10種類以上のせた色鮮やかなフォカッチャだ。
 「やっちゃんトマトのカレーパン」(税抜330円)は、「やっちゃんトマト」の名で知られる、地元で評判のトマトを丸ごと使った季節商品。
 「『やっちゃんトマト』は、酸味と甘みのバランスが良く、地元の飲食店でも評判がいいんです。当店のパンが、三浦半島でこうした素晴らしい食材が採れるということを、知ってもらえるきっかけになれたらいいと思っています」(森さん)
 シェフを務めるのは、森さんと長い付き合いだという小森俊幸さん。同店開業前は大阪の有名ベーカリーで修行していたが、それより前の、専門学校を卒業した直後に就職したのが「法塔ベーカリー」だった。
 「小森シェフが戻ってきてくれたおかげで、当店の開業が実現できたと思っています。小森シェフは研究熱心で、パン生地の開発だけでなく、食材の調理方法に関しても、常に色々と試しています」(森さん)
 農家や知人から直接届く野菜は、それぞれ個性が強く、パンに使う野菜としては珍しいものもある。
 小森さんは、野菜が届くとまず、生で食べてみるという。そして、ゆでる、焼く、蒸すなどし、どんな調理をしたら良いか、味を見るという。
 「どんな味がするか、見た目は同じトマトでも、食べたら味が違いますし、まずはどういう調理方法が合っているかを考えます。色々な野菜が届くので、その都度、それぞれに合った調理方法を見つけて、パンの具として使えるように準備します。フォカッチャにのせて焼く場合は、オーブンでまた火が入りますから、調理での加熱は8割くらいに抑えるようにしています」(小森さん)
 「季節野菜のピゼッタ」にのっている10種類以上の野菜も、それぞれ調理方法が異なっている。その分手間がかかる。
 「何の加工もしていない、採れたての野菜が届けられるので、その下処理に追われてしまっているなと思うときもあります。摘果した青いみかんや、商品にならない小粒のイチゴなどが大量に届くときもあります。ジャムにしたり、加工する手間は結構大変です。ですので、仕事量は、パン作り半分、野菜や果物の下処理半分、といったイメージでやっています」(小森さん)
 食材の調理に手間がかかるからといって、パン作りに妥協はしない。元々ハード系の店が少ないこの地域で、同店のハード系のパンを評価する客が増えている。
 「ハード系が思っていた以上に、お客様に受け入れられているのが嬉しいです。48時間低温で熟成させる『soilカンパーニュ』(税抜500円)など、低温長時間発酵で、じっくりうま味を引き出して作っているのと、酸味を抑えた食べやすさが人気の理由だと思っています」(森さん)

SHOP DATA
店名:ソイルバイホウトーベーカリー
住所:〒238−0012 神奈川県横須賀市安浦町2-29-1
電話:049‐874‐6622
営業時間:午前9時〜午後7時
定休日:日曜、祝日
品揃え:60〜70品目
スタッフ:製造常時3〜4人、販売常時1〜2人
店舗面積:厨房14坪、売り場6坪
日商:平日20万円、土曜30万円

本文と写真説明の商品価格は4月の取材時のもので、5月からは10〜40円の値上げが実施されています。



この記事の読みどころ

●地場の野菜をふんだんに使って高付加価値のパンを作る。
●来店客に地域の観光も楽しんでもらえるような物語性を持たせる。
●地場の野菜の素晴らしさを、それらを使ったパンを通して伝えたい。
●野菜はすべて生で味を確認してから、最も適した調理法を考える。
●野菜の調理が仕事の半分を占める。

※あくまで編集部からの提案です。このほかにも様々な読みどころがあると思いますので、読者の皆様の視点で、エッセンスを抽出してください。



原価計算女王
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