地域との融合を目指す経営 - ミクスチャー店主の中井慈さん - ブランスリー電子版

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インタビュー/2018年1月号

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地域との融合を目指す経営 - ミクスチャー店主の中井慈さん
店主の中井慈さん
 東京・世田谷区内の下北沢にある一番街商店街にベーカリーカフェのミクスチャーがある。2005年(平成17年)12月の開業以来、地域の憩いの場所を目指して運営を続けている。店舗のある現在地は1959年(昭和34年)創業のベーカリー、大英堂(たいえいどう)が46年間営業していた地でもある。大英堂で修業経験のある中井慈さん(40歳)が学生時代からの夢の実現のために、「混ぜ合わせる」の意味を持つ「ミクスチャー」の店名のベーカリーカフェをオープン。地域との融合を目指して「ミクスチャー」を営む店主の中井さんに話を聞いた。



街に溶け込む「ミクスチャー」の外観。 
15席あるカフェコーナー。赤ちゃん連れの母親から若者までがゆったりと過ごす
エジプト料理店とのコラボ商品の「ヒヨコ豆のサンド」
サンドイッチの「ソラ豆とピーマン」
麺屋とタッグを組んだ「焼きそばパン」
客の要望に応えて発展

―――ミクスチャーというと「混合」の意味ですよね。何か意図があって名付けた店名ですか。
中井 この場所は1959年から2005年まで大英堂が営業していました。2005年の暮れに店を借りる形で開業しました。そこで、大英堂と私たちの商品をミックスすることを考えたのが一つ。そして、地元との関りですね。近隣の店舗とコラボした商品の製造・販売や高校とパブリックシアターへの卸しもミックスと考えています。もちろん、地元行事への参加も「交わる」ということの大事な要素ですね。
―――ベーカリーカフェのスタイルですが、営業形態もミックスするという発想ですか。
中井 大学生の頃の夢はカフェを開くことでした。でも、実際は卒業と同時に企業への就職でした。5年間勤めました。カフェへの思いが残っていましたね。少しでも夢の場所に近づけないかと、会社に勤めながら大英堂でアルバイトを始めました。会社を辞めて料理学校に通っているときに、大英堂の先代が亡くなりました。そこで、先程お話ししましたようにこの場所を借りて店をオープンする決心をしたのです。
―――カフェ中心の店ですか。
中井 カフェ中心の店にしたかったのですが、近所の方々は、大英堂を引き継いだと思ったようです。仕方ありませんよ。4年間店を手伝っていた人間が同じ場所に店を構えたのですから。
―――初めから今の形ではなかったのですね。
中井 お客様の要望に応えることで現在の形になりました。
―――パン中心の店に変わってきたと。
中井 ピザは今もメニューにあります。近所のバーなどからの注文も多いのでカフェでの提供は続いています。でも、パスタは需要があってもパンへの要望が増えるにつれて手が回らなくなりました。
―――気が付いたら「ベーカリー&カフェ」になっていたわけですか。
中井 お客様に良い気持ちで過ごしてもらって、喜んで帰ってもらおうと思ったらパンの品揃えが増えていきました。
―――お客さんの声を受け止めてきたのですね。
中井 近隣の方は大英堂のパンをよくご存じなんですよ。「あのパンは無いの」とか「このパンを作ってよ」とか、希望を寄せてきます。それらの声に応えてきました。今、70種類のパンを揃えて、販売しています。
―――お客さんの声を丁寧に拾うことで発展してきたのですね。
中井 近所の高校では昼食用のパンを販売しています。切っ掛けは店のお客様でもある同じ学校の先生の依頼なんです。もう10年続いています。他には、三軒茶屋にあるパブリックシアターへの卸しですね。4年前からパンと飲み物を販売しています。これも、シアターの職員の方が卸しの話を勧めてくれました。公演時の販売ですが、260日間の公演があります。パンの種類は5種類ですが、その時々の公演内容によって提供するパンの種類を考えています。
―――その時々で変えるのも大変ですね。
中井 大変ですけれど、必要とされていると思うと、従業員と一緒に販売の方法をあれこれ思案するのも楽しいですよ。

コラボで地元活性化を

―――そういえば、近隣の商店とのコラボで誕生したパンが幾つかあるそうですね。
中井 コラボで誕生した商品ですと、「とよんちの卵パン」「コロッケパン」「焼きそばパン」があります。サンドイッチですと「ヒヨコ豆」と「ソラ豆」があります。
 「とよんちの卵パン」は当初、大英堂の製法を受け継いでいましたが、7〜8年前に「とよんちの卵」という商店がオープンしたのをきっかけに同店の卵を活かした製品に変えて作っています。「コロッケパン」は商店街の肉屋さん、「焼きそばパン」は麺屋さんとのコラボです。サンドイッチの「ヒヨコ豆」と「ソラ豆」はともに東北沢にあるエジプト料理店の商品を使用しています。この店は、すごく美味しい総菜を作っていると評判でした。扱い始めて、もう10年になります。
 「コロッケパン」のコラボを始める機会になったのはお客様との会話でした。その方は「家で、ここの食パンと肉屋のコロッケを挟んで食べているんだ」と教えてくれました。では、協力してコロッケパンを作ろうと提案して始まりました。
―――コラボすることが、売り上げに影響を与えていますか。
中井 多少は販売数に影響はあるかなと思いますが、売り方を考えた結果コラボしたわけではなく、お客様からの直接間接の話から商品が誕生したのです。決して、商売になるかどうかが基準ではありません。以前、カレーパンのコラボの話があった時には、必要性などを考慮して商品化しませんでした。
―――バターロールの材料には卵を使っていないそうですね。
中井 それは、大英堂時代からです。配合は変えていません。
―――バターロールだけですか。
中井 卵不使用の生地は他にもあります。総菜系のパン生地に多いですよ。卵アレルギーの子供たちにも沢山食べて欲しいですから。
―――そういえば、毎月、月間ベスト3を公表していますね。
中井 お客様の好みを知ることにもなりますし、私たちの働く励みにもなります。
―――季節によってランクに変化はあるんですか。
中井 ベスト3に大きな変化はありません。ベスト10を見ても10位以内で動くだけです。各商品にはそれぞれ固定客もついています。敢えて言えば、夏ならばサラダ系が好評で揚げ物は振るいません。そんな動きですね。
―――ランク付けも売り上げアップ狙いではない訳ですね。
中井 そうです。コラボのパンと同様に単に販売効率を考えているわけではありません。
―――結果として、「ベーカリー&カフェ」になっていますよね。ランチタイムもあり、経営的にはパンだけよりは楽な点もあるのでは。
中井 カフェの部分はお客様の憩いの場として活かされていると思います。これからも求められる場所でありたいと思っています。



サンドイッチのコーナー。サンドイッチのラインナップは15種類
朝は30〜40種のパンが揃うパンコーナー
将来に向け集客力アップ

―――元々経営したかったカフェは、今どの様に位置付けているのですか。
中井 カフェを運営するということは、直接的に人的なサービスを伴います。スペースも必要です。これはデメリットかも知れません。これを解消するには、集客力が課題になります。平日の午前中や夕方の回転率を考えることも大切なんです。
―――価格は適正だと思いますか。
中井 材料が値上がりしたからといって、すぐ値上げとはいきません。値上げで問題なのは、主原料の小麦粉よりも、ソーセージや野菜といった副材料の方ではないでしょうか。段ボール単位で仕入れるのも、仕入れ価格を抑える工夫の一つかも知れません。
―――材料の仕入れの工夫は、例えば、コラボした店舗とともに発展したいとの考えもあってのことですか。
中井 仕入れ先とともに、互いに経営が成り立つような関係を築けたらと思います。
―――お互いに立ちゆく関係を築きつつ、最終商品のパンの価格をできるだけ抑えるということですね。
中井 経営のことはよく考えます。お客様からあまりお金は取れません。でも、従業員の労働時間は減らしたいし、また、給料は増やしたい。そのために、今やれることは集客力アップだと思います。お客様が私どもをどれ程必要とするかが重要なのではないかと思います。
―――ベーカリーカフェはこれからも続くのですね。
中井 仕事が楽しいんですよ。多くのことを犠牲にしているなとも思います。本当にこれでいいのかとも悩みます。それでも、立ち止まるわけにはいきません。今、月ごとに実行してきたことを整理しながら働いています。10年後、従業員とともに満足するために、一つひとつ問題を解決していこうと思っています。





原価計算女王
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