オーストリアの食文化を日本に伝える - 一粒の麦から39(文・本行恵子) - ブランスリー電子版

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連載/2017年9月号

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オーストリアの食文化を日本に伝える - 一粒の麦から39(文・本行恵子)
講師を務めた野澤孝彦シェフ
ウイーンパン組合会長の店
デメルのケーキ
 2001年10月に発足した日本オーストリア食文化協会(飯田章会長)は、年間を通じオーストリアの食文化を日本に広める活動を行っています。7月に開催した製パン講習会では、ハプスブルグ家御用達ベーカリーのパンが再現されました。オーストリアの旅で体験した食文化とあわせ、ご紹介したいと思います。

協会が主催の製パン講習会

 オーストリア食文化協会は、7月26日、東京の日清製粉加工技術センターで製パン講習会を開催しました。講師はハプスブルグ家御用達の称号を持つベーカリー「ホーフベッカライ エーデッガー・タックス」の日本進出を手掛けた菓子職人、野澤孝彦シェフです。野澤シェフはオーストリアの老舗カフェ「オーバーラー」「L・ハイナー」で修業した技術を生かし、現在はフリーの立場でオーストリアのパンと菓子の技術指導や、メーカーのコンサルタントとして活躍されています。
 当日はオーストリアを代表するクロワッサン、キプフェル、ザルツシュタンゲルの伝統的な製法が紹介されました。低速でしっかりミキシングをかけ、ひきのある生地を作ることが製法の特徴です。また3つの講習品目の生地から作る6品(シュトゥリーツェル、オレンジシュネッケ、ショコプレッツェル、ヴァイスブロート、モーンプルンダー、ヌスキプフェル)は、ローマジパンやケシの実などの自家製フィリングを使ったバラエティー豊かなパンです。カイザーゼンメルの手成形や編みパンの技法など、野澤シェフのキャリアを感じさせる職人技も注目を集めました。
 現地の最近の傾向は労働時間の規制から、ミックス粉や既成品のフィリングを使用し、多品種のパンを作るようになっているそうです。伝統的な製法の継承が危ぶまれているのは、世界共通の悩みのようです。 
 かつてのオーストリア帝国にはその支配領域であったハンガリーやチェコの人たちはもちろん、イタリア、ドイツ、バルカン半島などの多様な民族も住んでいて、それぞれの国の食文化の影響を受けながら、歴史を重ねてきました。オーストリアの歴史と食文化の関係をもっと探求したくなる講習会でした。

オーストリアの食文化の旅

 歴史あるオーストリアを訪れたのは、2009年10月。ドイツのミュンヘンから列車で約2時間のザルツブルグに到着した後、ハライン市にあるバート・デュルンベルグ岩塩抗に行きました。実際に使われていたトロッコや滑り台で地下まで行き、岩塩ができるまでの歴史や工程を学びました。岩塩は日本のパン屋さんでもプレッツエルや塩パンに使われ、身近な食材になっています。 翌日はウイーンに移動し、ザッハトルテで有名な「デメル}を訪れました。ほかにも代表的なウイーン菓子のシュネーバーレンや、アップルシュトゥルーデルも楽しみました。フランス菓子に比べ華やかさはありませんが、味わい深い伝統的なお菓子はとても印象的でした。
 また1885年創業の、ウイーンのパン組合会長、ヨーゼフ・シュロット氏の店を訪問。創業当時から作られている代表的なパンのクロワッサン、キプフェル、カイザーゼンメル、モーンプルンダーなどが次々と焼き上がり、店は活気にあふれていました。続いて訪れたのは、街中にある市場「ナッシュ・マルクト」。ここは18世紀から存在するウイーン市内最大規模の市場で、世界中のあらゆる食材が売られていて、立ち飲みスタンドやバーもあります。丁度旬の葡萄発泡酒「シュトゥルム」が出ていて、フルーティーで爽やかな新酒を楽しむことができました。
 その後ヴァッハウ渓谷のデュルンシュタインでは歴史ある美しい建物が並ぶ町のパン屋さんで、一番人気のオリジナルの丸いパンを購入。食べた印象は軽く、カイザーゼンメルに似ていました。 オーストリアの名物料理のウインナーシュニッテル(仔牛のカツレツ)やグーラッシュ(牛肉のパプリカソース煮)、クヌーデル(ジャガイモの団子スープ)は、その発祥が、それぞれ、北イタリア、ハンガリー、ドイツとされ、歴史の中で育まれてきたオーストリアの食文化の奥の深い未知の世界が感じられます。

本行 恵子(ほんぎょう けいこ) パンと食のライター。家庭製パン教室を10年間主宰した後、パン業界専門誌『B&C』の編集記者、編集長として勤務。16年間の在職中、日本各地のリテールベーカリーや欧米、アジア諸国を訪問し、パンと食文化を取材。現在はフリーの立場で、業界専門誌や企業ホームページでの執筆活動、業界関連団体への企画提案などを行っている。ライフワークは、パンのある食卓の提案。









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