改装で誕生した新たな個性<ぱんやのパングワンの太田雅巳店長> - ブランスリー電子版

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インタビュー/2017年8月号

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改装で誕生した新たな個性<ぱんやのパングワンの太田雅巳店長>
右から反時計回りに、黒い色でカスタードクリーム入りの「ペンギンパン」、玉露と求肥入りの「抹茶パングワン」、カレー入りの「カレーパングワン」
 東急・田園都市線三軒茶屋駅から程近い場所に、「ぱんやのパングワン」(東京・世田谷区、電話03−3421−0615)がある。明治40年前後に、現在の港区青山に牛乳店として創業した。1925年(大正14年)に現在地でパン屋としてスタート。3年半前、現店長の太田雅巳さん(35歳)が4代目を継ぐにあたり、それまでの卸し中心の業態からリテールへと移行した。店舗を大幅に改装し、店名も精養堂からぱんやのパングワンに変更。より親しみやすさを意識した。大学卒業後、パンの専門学校で学び、その後、大手ベーカリーやリテールベーカリーで計8年余り修業し、今、同店の舵を取って3年半になる太田さんに話を聞いた。



広がりを感じさせる「ぱんやのパングワン」の外観
店内は落ち着いた雰囲気で、ゆっくりと楽しみながら商品が選べる
若い女性がゆったりした店内で商品を選ぶ姿もあった
イーストとライ麦由来の自家製酵母を併用した全粒粉食パン
超強力粉、内麦薄力粉、米粉をブレンドし、湯種製法で作る「パングワン食パン」
根強い人気のシベリア
店名を変えたら意外な需要

―――店名のパングワンの意味は何ですか。
太田 フランス語でペンギンの意味です。
―――どうしてペンギンなんですか。
太田 私がペンギン好きで、3年半前にリニューアルした時に名付けました。今は忙しくて行けませんが、以前はよく動物園にペンギンを見に行きました。
―――それでペンギンパンを創作したのですね。
太田 そうなんですけど、それより名前を変えたら意外なことが起こったんです。世の中にはペンギン好きの方が結構いるんですね。ペンギン好きのコミュニティーもあるんです。その方たちが遠方からもパンを買いに来てくれます。
―――そんなことがあるんですか。
太田 それだけじゃないんです。ペンギンの名前を付けたバーやカフェもあって、その方たちも私どもに興味を持っていただいて、来店する方もいらっしゃるんです。意外な需要を掘り起こしちゃいました。
―――ペンギン好きが功を奏したわけですね。
太田 ツイッター上でもつながりましてね。思いもよらない効果に驚いています。
―――以前は精養堂という店名でしたね。
太田 100年以上続く店です。諸説あるのですが、私は1910年(明治43年)が創業年だと思っています。最初は今の港区青山(東京)に牛乳屋として商売を始めたようです。三軒茶屋に移ってきたのは1925年(大正14年)と聞いています。ここでパン屋を開業しました。パン屋になって92年です。祖父の代には売り上げが日本一になったこともあったそうです。
―――90年以上繁盛されてきた店をリニューアルと同時に慣れ親しんだ店名も変えるとは思い切りましたね。
太田 以前は卸しが中心でした。今は長いお付き合いのある数店に卸すのみです。リニューアルに当たって、現在の嗜好を考慮することを前提に、当初は私一人で作れる範囲の店にしようと思ったのですが、母が、ポツリとカフェもいいなってつぶやいたんです。カフェでパンなどの軽食を提供するメリットはあると考えました。
 現在、客席は室内とテラス席で合計40席を用意しています。焼きたてのサンドイッチを提供するなどお客様に食事を楽しんでもらっています。今まで応援していただいたお客様ばかりでなく、新たに来店して下さる方々にもパングワンの商品を一つでも多く手に取ってもらいたいのです。それには、親しみやすさと安心感が必要だと思いました。ですから、店の外観も入りやすくし、名前も皆さんに興味を持ってもらえるものをと考えました。

味も形も楽しめるペンギンパン

―――それで「ぱんやのパングワン」ですか。そこからペンギンパンが誕生したのですね。
太田 はい。パンのキャラクター商品は色々ありますが、品質と味を一致させるのは難しいことだと感じていました。以前から美味しくて、見た目も楽しめる物をと考えていました。それと、買いやすくて子どもたちにも喜ばれるものをと考えました。
―――ペンギンパンは何種類あるのですか。
太田 3種類です。色は黒と緑に黄色です。生地には国産小麦(内麦)を使用しています。お腹と羽、それに目の部分は内麦100%のビスケット生地です。
―――中身は何が入っていますか。
太田 黒の商品の名前は「ペンギンパン」です。カスタードクリーム入りです。生地にはチョコが練り込まれています。唯一年間を通じて販売しています。緑と黄色の商品は季節商品です。緑は「抹茶パングワン」の名で販売中です。生地にも玉露を練り込んで、中に求肥(ぎゅうひ)が入ります。黄色は「カレーパングワン」の商品名で、その名の通り、生地と具材にカレーが入っています。



ゆったり座れるイートインコーナー
客に直接商品を手渡しすることも
太田さんが約1年前に作ったペンギンの飾りパン。入口のすぐ横にある 
湯種製法で作るモッチリ食パン

―――名実ともに店の看板商品というわけですね。ペンギンパンに続く商品はありますか。
太田 それなら「パングワン食パン」(税込300円)です。今一押しの商品です。当店では高めの価格設定です。お客様にはぜひ一度試していただきたい食パンです。湯種製法で作っています。水分量が多くて軟らかく、その上モッチリ感のある食パンです。カフェのメニューとして、厚切りをトーストして提供しています。私の一番のお薦めの食べ方は生食です。焼かずに食べてみてください。
―――ペンギンパンには内麦を使っていますが、こちらの商品には。
太田 使っています。でも内麦だけではありません。通常の小麦粉の他に内麦の薄力粉それに米粉をブレンドして使っています。通常の小麦粉は「超強力粉」と呼ばれるものです。配合の割合は秘密です。現在の配合に至るまでは試行錯誤が続きました。丁度いいと思われるモチモチ感を出したかったので、悩みました。本当にこの商品は形を安定させるのが難しいのです。形を整えようとしてグルテンをつなぎすぎると、別のパンに仕上がってしまいます。湯種部分以外の吸水は牛乳で仕込んでいます。お陰さまでお客様の評判も上がってきています。

待遇を改善して人材を育成する

か。
太田 1時30分には地下にある工場に入ります。大変な仕事です。
―――最近は人手不足もあるようですが。
太田 私どもも新しい職人さんが中々集まらなかったのですが、最近、ようやく製パン経験者が入社してくれました。少しホッとしています。
―――職人さんを雇うのは大変ですか。
太田 販売員の募集には応募も多くて困りませんが、職人さんは思うように集まりません。
―――来てくれても、育てるのに一苦労では。
太田 目的をキチンと持って応募してくる真面目な人もいますが、パンが好きだからといった興味本位の人も多いですね。
―――パン屋さんへのあこがれですか。
太田 店づくりは企業努力の一つの表現です。お客様に気持ちよく商品を購入して頂くために、売り場の内装を考えたりするのです。
―――見た目に引きずられてイメージだけが膨らんでしまう。
太田 だから、華やかなイメージとのギャップを感じるのでしょう。朝は早いし、仕事はきついですから。
―――良い人材を集め、定着させるのは大仕事ですね。
太田 若い人を採用してもすぐやめてしまいます。先輩の指導が厳しいと思うともう出てきません。丁寧に教えているはずなのに、上手く伝わりません。研修期間中はその人の理解力を見ながら対応しているんですが。残念ながら、多くの個人店には人材育成のためのマニュアルが揃っていないのが現状と言えないでしょうか。
―――失礼ですが待遇面はどの様になっていますか。
太田 待遇面は、パン屋さんの中ではいいほうだと思います。住宅手当や福利厚生も当然つけています。能力給も提示して、新人でもやる気次第で望みに早く近づけるように考えているのですが。
―――労働時間が関係するのでは。
太田 そうですね。販売員は8時間の基準時間で収めていますが、製造の担当者は難しいですね。なるべく時間内に終えるようにしていますが、思い通りにはいかないのが現状です。
―――人を育てることは店を育てることに通じるのではないですか。
太田 そうです。当店は土地そのものが自社のものですから、余分な負担がありません。その分、社員の待遇に振り向けられます。そして、お客様には安定した価格で商品を提供できます。つまり、安心感ですね。社員には安心して働いてもらい、お客様には安心して購入してもらうのが、店の個性にもつながるのではないでしょうか。





原価計算女王
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