最北の地で愛されるベーカリー - 吉田ベーカリー大湊直売所 - ブランスリー電子版

2026年10月21日に公表されたPHPの脆弱性(CVE-2026-109618、CVE-2026-109619)については、いずれも対策を完了しています。

ブランスリーアーカイブ(創刊号からの全記事)
記事の閲覧
<<戻る写真をクリックすると拡大写真が見られます。
お店拝見/2017年7月号

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。


最北の地で愛されるベーカリー - 吉田ベーカリー大湊直売所
社長の蛯名和子さん。働くのが大好きという、明るい社長だ
「吉田ベーカリー大湊直売所」の外観。店の横と向かいに駐車場がある
創業当初からの自家製ピーナッツクリーム
自家製のピーナッツクリームやマーガリンも販売している
自家製ピーナッツクリームをはさんだ「ピーナッツサンド」

 陸奥湾を西に見ながら北上するJR大湊
線。終点の大湊駅からは海に山裾を浸した釜臥山が見える。昨年、下北ジオパークとして認定されたばかりの下北半島は、豊かな自然と食に恵まれ、観光客の数も少なくない。その大湊駅前の商店街に、昭和31年(1956年)の創業以来、60年以上にわたり地域の人々に愛され、親しまれているのが、吉田ベーカリー大湊直売所(通称大湊ベーカリー)だ。
 同ベーカリーは、現在、創業者の吉田権助氏の直系にあたる蛯名和子さんが社長を務めている。その蛯名さんに、本州最北の地での吉田ベーカリーの歴史や現在までの流れ、これからの展望などを聞いた。
 むつ市の人々にとって、吉田ベーカリーといえば、「あんバターサンド」(税込150円)、「ピーナッツサンド」(税込130円)、「ハムサラダサンド」(税込み160円)などの、食パンに自家製のピーナッツクリームやあんこなどを塗ってはさんだ「塗りパン」と呼ばれる商品が根強い人気をもっている。特に「あんバターサンド」と「ピーナッツサンド」は、むつ市のソウルフードとも呼ばれているのだという。また、コッペパンに似た加工ロールを使った「玉子サンド」(税込み140円)も創業当初からの商品だという。
 特に、「ピーナッツサンド」に使われるピーナッツクリームは、吉田ベーカリーの自家製で、その日の天気や温度、湿度などの諸条件に合わせて調整されており、毎日、一斗缶五缶分を作る。地域の人々に愛され続けるピーナッツクリームを絶やしてはならないと思った蛯名さんは、社長となった今も、毎日、このピーナッツクリームを作り続けている。なめらかで、ほどよい甘さのピーナッツクリームは、クリームのみでも販売され、「この味を作ってくれるなら、どなた様にでも作り方を教えますよ」と、熱く語る。
 このピーナッツクリームが、吉田ベーカリーの代名詞でもあったことから、昔は、「ベーカリーください」と言って、ピーナッツサンドを買いにくるお客さんも多かったという。
 「ベーカリーは売れないけど、ピーナッツサンドは売るよ、と、毎日、お客さんと大笑いしていたんですよ。私は、お客さんと話すのが大好きで、もちろん、パンを焼くのも料理をするのも大好きなんです」(蛯名さん)

顧客とのやり取りの中で多くのことを教わった

 また、吉田ベーカリーは、現在、学校給食のパンや米飯も担当しており、市内の高校や大湊海上自衛隊でもパンやお惣菜、弁当、おむすびなどを販売している。「塗りパン」に使う食パンも、基本的に保存料や添加物などの使用を細かく制限された学校給食向けのパンとなっており、時間がたてば硬くなる。
 蛯名さんは、「少し硬いと思ったら、トースターで焼いて食べてね」と、今でも、お客さんに言っているのだという。「塗りパン」のメニューには、「あんバターサンド」「ピーナッツサンド」などの定番商品のほか、チョコレートクリームや、マロンクリーム、きなこクリームなどを組み合わせた商品がある。
 「学生さんが、あれとこれを混ぜたら美味しいと、教えてくれるんです。パンのメニューを考えるのも、商品に名前をつけるのも、お客さんの方が上手ですよ」
 蛯名さんは、満面の笑みを浮かべながら、顧客と交わした会話や顧客とのエピソードなどについて話してくれた。
 「高校で、お昼ご飯のパンやおむすびを販売したとき、学生さんが海苔でまいたおむすびを『くろべえ』と、名付けましてね。うまいこと、考えるものだと思いましたね。ホント、お客さんから教えてもらうことばかりです」(蛯名さん)



手際よく「塗りパン」を作る蛯名さん。食パンの四隅まで素早く塗るプロの技は美しい
近くの工場から届けられる無添加の食パン
塗りパンのメニュー表。顧客が発案した組み合わせもある
マヨネーズの美味しさが生きる人気の「玉子サンド」(税込140円)
商品開発のベースにあるのはポテトサラダ

 ピーナッツクリームが創業当初からのオリジナル商品だった吉田ベーカリーだが、こしあんとマーガリンの「あんバターサンド」が生まれたのも創業から間もない頃だという。当時は、マーガリンのことも「バター」と表現していたことから、現在も商品名として「あんバターサンド」と呼んでいる。蛯名さんによると、同ベーカリーの「あんバターサンド」は、サンドイッチを作る際に切り落とされたパンの耳に、こしあんとマーガリンをつけて食べていた裏メニューから発想したものだという。今では、多くのベーカリーで見かける「あんバター」だが、吉田ベーカリーでは、六十年前から裏メニューとして作っていたことになる。
 世間で「あんバターサンド」が話題となったとき、蛯名さんは、「うちでは、ずっと昔からあるのにな」と思ったそうだ。
 現在、蛯名さんの大湊ベーカリーでは、惣菜や弁当、おむすびなども販売している。食べ盛りの高校生の昼食としても貢献している吉田ベーカリーだが、その根っこには、「塗りパン」のひとつの「ハムサラダ」などに使うポテトサラダがあるのだという。
 「すべては、ポテトサラダが始まりでしたね」(蛯名さん)
 実は、蛯名さんは、地元の高校を卒業後、東京の調理の学校に行き、19歳でむつ市に戻ったときには、現在の店舗の向い側にあったレストランの経営を任された。「パンやケーキを出す喫茶店をやりたかったのに、いわゆる食堂をやることになりましてね。八戸市にラーメンを修行しに行ったりしましたよ。夫が出前を担当し、家族ぐるみでベーカリーとレストランをやっていました」(蛯名さん)

「家族みんなが、ここのベーカリーのパンで育った」

 創業当初からの定番商品だった「ハムサラダ」に使っていたポテトサラダと、レストラン経営の経験は、現在の調理パンや、自家製の惣菜、おむすび、弁当の販売にもつながっているという。
 取材当日も、ひっきりなしに老若男女の客が訪れ、大量に「塗りパン」を注文したり、パンの他に、1パック100円台の地産地消の少量の惣菜を選んでいた。40歳代の女性客は、「うちは家族みんなが、ここのベーカリーのパンで育ったようなものです。朝、早くから開いているので、朝ご飯にも昼ご飯にも利用しています」と言っていた。
 惣菜は、年配者の常連客に喜ばれているという。惣菜パンの種類も多く、人気の玉子サンドは、マヨネーズとキャベツと魚肉ソーセージにゆで卵という素朴な食材ながら、飽きのこない味わいがある。マヨネーズの味にもこだわりがあり、「塗りパン」と同じように、食材とパンとのバランスが大切なのだという。
 大湊線の列車内では、たまに吉田ベーカリーで買った「塗りパン」や玉子サンドを手にする人の姿を見ることがあるという。
 本州の北の果てにある下北半島のベーカリーは朝6時に開店する。艶やかで滑らかなピーナッツクリームは、毎日作りたて。ここのベーカリーにしか売っていないオリジナルで、ここに来なければ食べられない。

SHOP DATA
店名:吉田ベーカリー大湊直売所
住所:〒035-0084青森県むつ市大湊新町4‐2
電話:0175‐24‐1128
営業時間:午前6時〜午後8時
定休日:不定休
品揃え:約40品目
スタッフ:製造4人、販売2人
店舗面積:厨房40坪、売場30坪
日商:約13万円



この記事の読みどころ

●創業当初から人気の自家製ピーナッツクリームは地元のソウルフードとまで呼ばれる。
●毎日の地元の人たちとの交流がまずあって、その上でパンを開発し、製造し、販売する。
●パンのほかに、惣菜、弁当、おにぎりなども製造販売し、地域全体の台所になっている

※あくまで編集部からの提案です。このほかにも様々な読みどころがあると思いますので、読者の皆様の視点で、エッセンスを抽出してください。





原価計算女王
原価計算女王

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。

今月の公開記事

  1. POLINの高性能オーブンを日本市場へ 。450℃の焼成力と緻密なヒーター制御 - スズキ産業の下河拓磨社長
  2. 見やすい売り場と旬の味で、地域が誇れるベーカリーへ - アリマベーカリー
  3. 「ちいかわ」の世界観を表現したパンと店づくり - ちいかわベーカリー
  4. 掲載から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文を公開しています。
    ブランスリーアーカイブ
ブラ立ち読み
(記事の無料メール配信)
詳細はこちら