厳しい要求が企業を育てる <かもめパンの藤江嘉昭プロダクトマネージャー> - ブランスリー電子版

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インタビュー/2017年5月号

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厳しい要求が企業を育てる <かもめパンの藤江嘉昭プロダクトマネージャー>
次代を担う藤江嘉昭さんと広報担当の妙子夫人
 神奈川県横浜市のかもめパン(045−731−3199)は、京浜急行線井土ヶ谷駅から徒歩8分ほど。大正13年(1924年)創業で、今年で93年になる老舗製パン企業だ。事業の7割を学校給食のパンが占めるが、併設する直売所はオープンして63年ほどになる。卸し先のスーパー等の要望に応える中で、良質の商品を地域に提供してきた。「これからも『安全』『美味しさ』『健康』を意識した商品の販売をし続けたい」と語る次期4代目社長で現プロダクトマネージャーの藤江嘉昭さん(45歳)に話を聞いた。



直売所らしい広々とした店内  
かもめパンの外観 
8種類の味が楽しめる「ぶどうの夢」
天然酵母使用をうたった食パン類
8種の味が地域の嗜好にマッチ

―――「ぶどうの夢」(税抜340円)という商品は、見ても食べても楽しいですね。
藤江 ありがとうございます。ブリオッシュ生地で作ったもので、8種類の味が楽しめます。粒あん、白あんと、ジャムはイチゴにリンゴ、ららにチョコレート、カスタードクリーム、それに、かぼちゃとマロンクリームです。
―――ぶどうの房のような連なりで、一つずつ千切って味わう。でも1人で1度に食べるのは無理ですね。あんパンだと何個分ですか。
藤江 4〜5個分ですかね。確かに1度に食べるのはね。
―――最初から今の形ですか。
藤江 これまで幾度か中身を変えているようです。今の形になったのは20年ほど前からだと聞いています。
―――すると何年前の発売ですか。
藤江 30年前と聞いています。
―――ロングセラーですね。日本では創業30年以上の企業を老舗と呼ぶようです。「ぶどうの夢」は老舗企業の老舗商品というわけですね。
藤江 子供から高齢の方まで、家族みんなで楽しんでもらいたいと開発しました。その意図は、食べごたえがあって、しかも見栄えの良い物です。こだわった結果、大量生産は難しくなりました。本当に手間がかかるんです。作れるのは1日30個です。
―――1日30個でも、長い間地域の人々の味覚に応えてきたわけですね。
藤江 そうですね。地域の嗜好にマッチしたのかもしれません。

5万食の学給を担う

―――御社は大正時代の創業でしたね。
藤江 はい。大正13年です。今年で93年になります。
―――長く続くには、理由があると思います。
藤江 米菓製造三河屋として創業しました。戦前に政府の要請で、4工場合併で米菓企業を設立しました。終戦直後の昭和20年(1945年)8月31日には、神奈川県からの指令で神奈川県食産工業を設立し、労働者のための配給用パンを作りました。その時の材料は米麦ではなく「未利用資源」の活用と称して、いろいろな食べられる材料でパンらしきものを作ったのです。
 本格的にパン作りを始めたのは学校給食用のパンを扱うようになってからです。昭和40年に社名を「かもめパン」に変更しました。神奈川県庁の食糧課から持ち掛けられたものです。行政との関りが発展の一つの要素にもなったのでしょう。
―――今も学給パンとの関りが強いのですか。
藤江 現在の事業の7割が学給パンです。残りの3割が卸しと直売です。昨年度まで90校3万食を横浜市内の学校に提供していました。今年度から100校5万4千食を提供しています。
―――売り上げの割合はいかがですか。
藤江 売り上げはほぼ半々ですよ。
―――パン給食は週1・5回から1回に減ったそうですね。
藤江 週1回になって担当する校数が増えました。以前と異なり給食のパンは美味しくなっています。小社の製造直売事業は昭和28〜29年頃に始まりました。パンの品質には自信があります。今回の校数増加はこれまでの実績が評価されたものだと思います。



天然酵母使用のクリームパン
焼き栗パン。デニッシュ生地に栗が練り込まれている
週末になると1日400個売れるあげパン2種。右はきなこ味 
ブランデーケーキも30年前からのロングセラー。結婚式の引き出物としても重宝されている
安心、美味しさなどをアピール

―――横浜の児童数、生徒数は余り減っていないそうですが、学給の将来を考えると、他の事業の拡大も必要なのでは。
藤江 もちろんです。今一番に実施すべきことは宣伝です。商品には自信を持っています。商品そのものが販路開拓の柱と考えてきました。今後はホームページを充実するなど宣伝力をつけていくつもりです。
―――新商品の開発にも積極的に取り組むのですか。
藤江 中心の事業は卸しです。卸し先は大手スーパーを始め、ホテルやレストラン、それと高校や保育園などです。これまで、商品開発の切っ掛けは卸し先の要望に応えるというものでした。結果として、北海道産小麦の使用や天然酵母への取り組みが増えています。
―――天然酵母を使った商品は何種類ありますか。
藤江 現在は8種類です。食パン2種類の他、あんぱん、クリームパン、ジャムパン、テーブルロールなどです。今後増やす可能性もあります。
―――お客さんの反応は。
藤江 反応はいいですね。子供連れのお母さんもよく買ってくれます。例えば、クリームパンは天然酵母とイーストの2種類があります。食べたときのカスタードクリームの味わいは、天然酵母に軍配を上げたいですね。
―――元種は。
藤江 酒種ですよ。前日から仕込みます。最近、お客様からイーストについての問い合わせがあります。商品に対する厳しい目を感じます。
―――その点の発信も。
藤江 そうですね。お客様には「安心」「美味しさ」「健康」を意識して商品を提供していきたいと考えています。今までは問い合わせがあった時だけ、使用する材料などの安全性をお伝えしてきましたが、アピール不足は否めません。また、無添加商品へのニーズもありますので、時代に合った材料を使っています。ただ、添加物の内容も変化しています。お客様にきちんと説明することで、安心・安全などを提供できると思います。

技術の継承で次の100年へ

―――ところで、ホテルに納める商品はベテランの技術者が担当しているそうですね。
藤江 はい。大切な事業の一つですから。
―――いずれは、若手技術者への移行も考えていますか。
藤江 技術は継承しなければなりません。今の若手に受け継ぐことが、わが社が100年を超えて発展する要だと思います。
―――人を育てるのは大変ですよね。
藤江 そうですね。人材育成とは技術の継承ではないでしょうか。今、新人教育はベテランの技術者たちが直接指導する方法を取っています。しかし、今後は、人材育成の仕組みが重要になるでしょう。
―――技術が受け継がれてこそ、これからも良質な商品が提供できるということですね。
藤江 卸しがメインの私達は、時に「業者泣かせだな」と思う卸し先のスーパーなどの高い要望に応えてきました。1本500円や1000円もするパンを毎日は食べられません。お客様はわが社のパンを「安い」と言います。毎日の食卓に上るパンは、「安心」して「美味しく」食べて「健康」が得られる商品です。そういう商品をこれからも作り続けたいですね。





原価計算女王
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