国産小麦の美味しさを伝える <満寿屋商店 東京本店> - ブランスリー電子版

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お店拝見/2017年5月号

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国産小麦の美味しさを伝える <満寿屋商店 東京本店>
満寿屋商店東京本店の杉山雅則店長
あたたかな色調の店内では、次々と焼きたてのパンが並ぶ
売り場から、奥の厨房が見渡せる。ガラス張りで透明感のある広がりが十勝を連想させる
小麦の味が強く感じられ、色が黄色っぽいのが特徴の「キタノカオリ」(税込160円)
満を持して東京本店をオープン

 1950年に北海道帯広で創業した満寿屋商店は、十勝生まれ十勝育ちで、地域の農業と共存共生する老舗のベーカリー。その満寿屋商店の東京本店が、5年という長い準備期間を経て、2016年11月に東急東横線の都立大学駅から徒歩5分という好立地にオーブンした。取材の日は、ちょうど東京の桜が見ごろを迎えた日。穏やかな日差しながら戸外は花冷え。だが、一度、店に入ると焼きたてのパンの匂いとぬくもりが立ち込めていた。
 4人目の社長であり東京本店の店長でもある杉山雅則さんは、東京出店にあたり、5年という準備期間の中で、都内の催事に参加し、「東京で売れるパン」を探ったという。同時に、いくつもの候補地を探り、都内での物件探しにも十分な時間をかけた。東京本店オープンの半年前には、十勝の音更に東京の店のための工場を作り、出店に備えた。今の東京本店は目黒区の住宅街ではあるが、二子玉川や渋谷にも近く、有名なパティシエのスイーツも身近にある地域でもある。
 「穏やかに話されて、ゆったりと食を楽しむお客様が多く、支えていただいています」と、杉山さんは笑顔で語る。国産小麦100%でパンを作るということで、塩以外の原材料の全ては十勝産のものを使用している。パンを作るスタッフも十勝からやってきた。
 「この場所に決めたのは、スタッフの通勤の負担を軽くする意味もありました。十勝は車社会ですし、満員電車で通勤するストレスを彼らに与えたくなかったのです」(杉山さん)。
 また、店に入ると、ガラス張りの厨房が見えるのだが、ずっと先まで見渡せる広大な十勝を表現しているのだという。売り場で商品が置かれている台は、十勝浦幌町のタモという木で作られているし、壁には麦わらが埋め込まれている。人も原材料も店舗のデザインも、十勝がまるごと東京にやってきたようだ。
 その東京本店で人気のある商品は、北海道と酪農のイメージからか、十勝産の乳製品を使った「とろーりチーズパン」(税込380円)、「玉ねぎ塩バターパン」(税込300円)や、春まきと秋まきの小麦の食べ比べができる「チャバタ春よ恋」(税込160円)、「チャバタキタノアカリ」(税込160円)などのほか、十勝の店のものより小さめのサイズにしたあんぱん類などだという。
 「とろーりチーズパン」は5種類のチーズを使った濃厚な味にファンが多いようで、取材中も多くの客が選んでいた。
 東京の人は、有名なスイーツに手が届く環境にいるためか、甘いパンより、小麦本来の味を楽しめるパンや惣菜パンの方を好むとのことだが、他にも十勝と東京の違いを聞いてみた。
 「十勝は車社会です。道もいいしインフラが整備されていますし、お客さんは車で買いに来ますが、東京のお客さんは徒歩か自転車でみえる方がほとんどですから、天候によって売り上げが左右される傾向にあります。また、まだ東京の夏を経験していないのですが、たぶん、夏場の売り上げは落ちるのではないかと予想しています」(杉山さん)
 そのパン作りを支える機材は、コンベクションオーブンやドウコン、デッキオーブンなど。使用している機材のほとんどは創業当初からのチョイスで、性能には満足しているということだが、今後は分割丸め機の導入も考えているという。



北海道産小麦の「春よ恋」を使った「チャバタ春よ恋」
東京のお店で人気なのは乳製品を使ったパンだという
売り場中央の台は十勝の浦幌町のタモで作られている
東京本店のあんぱんは、十勝の店のあんぱんより小さめにできている
厨房にはコンベクションオーブンなど様々な製パン機械を完備
パンを作るスタッフも十勝から東京に呼び寄せている
満寿屋商店の歴史は、十勝の農業とともに

 昨夏、北海道を襲った台風による甚大な被害は記憶に新しいところだが、まだまだ完全復旧には至らず、分断されたままの道や橋もあるという。十勝の小麦も壊滅状態だったとのことだが、その折に発芽してしまった小麦を柔らかく煮て、丸ごとパンにした「丸麦ブレッド」(ハーフ税込225円)を販売した。プチプチした麦の食感が楽しく味わい深く、マイナスをプラスに変える発想が大成功となった。
 「被災している農家さんは、私たちのお店のお客様でもあります。美味しい小麦を作っていただくためにも、私たちも知恵を絞り、頑張らなければなりません」(杉山さん)
 十勝の農業がもたらす食の宝を生かし、愛されるパンを焼き、その農業に携わる人たちに買ってもらうという流れができていて、お互いに売り手であり、買い手なのだ。十勝の農業とともに生まれ、育ち、ともに生きる関係が成り立っている。とはいえ、農業の自由化や天候災害のようなことがあると、将来のことも切実に見据えていかなければならないのが現実だという。十勝の中だけ、北海道の中だけにとどまらずに、東京に出店したのは、上質な国産小麦を生産する農業の大切さ、豊かさを広く理解してもらい、紹介していくという決意と覚悟の現れでもある。

首都圏に5店舗をオープンする計画

満寿屋商店は、首都圏に5店舗を展開する計画。さらに、パンの学校も作り、十勝産の小麦のブランド力を高めて具現化させる計画だという。東京本店のオープンも、その計画の一環だが、前述のように東京出店は成功をおさめ、十勝産小麦で作られたパンは、東京の人にも受け入れられているようだ。
 「国産小麦で作ったパンの歴史は、まだ浅いのですが、小麦は水との相性が抜群によいので、十勝の豊かな水を使った小麦で作ったパンは、水分を多く含み、もちもちしていて本当においしいのです。小麦本来の味と食感を、より多くの人に知ってもらいたいし、味わってもらいたいですね」(杉山さん)
 杉山さんは、十勝の小麦を、もっともっと全国に発信し、小麦本来の美味しさを伝え、広めていきたいのだという。
 毎年、夏には、北海道以外からもパン職人たちの参加を募り、「北海道小麦キャンプ」を開催している。今年も7月18日から20日に行われるという。このイベントは、パン職人たちに実際に麦畑の中を歩いてもらったり、お菓子やパンの講習会や小麦畑パーティーなどを行ったりする。今年の開催で10回目となり、既にイベントとして定着しているようだ。
 このように、消費者のみならず、実際にパンを作っている人たちにも十勝産小麦の品質の良さ、パンとの相性の良さなどを、広く伝える活動を、満寿屋商店は継続的に行ってきているのだ。杉山さんは目を輝かせ、笑顔で生き生きと、「十勝の大自然と、そこに暮らす人々の知恵と努力により豊かさを共有したい」と語る。十勝の農業とともに生きるというその壮大ながら現実的でもあるテーマに突き動かされているかのようだ。
 昼を過ぎても、東京本店の客足は途絶えることはなかった。次々と厨房から焼きたてのパンが補充され、すぐに売れていく。十勝の満寿屋は、着実に東京の満寿屋として受け入れられているようだ。

SHOP DATA
店名:満寿屋商店 東京本店
住所:〒152-0023 東京都目黒区八雲1-12-8鶴田ビル1階
電話:03‐6421‐2604
営業時間:午前10時〜午後7時(土日祝は午前9時〜午後7時)
定休日:水曜
品揃え:50品目
スタッフ:製造5人、販売常時3人
店舗面積:売り場110坪 厨房20坪
日商:35万円



この記事の読みどころ

●塩以外の原材料の全ては十勝産のものを使用。パンを作るスタッフも十勝からやってきた。
●東京は天候によって売上が左右される傾向にある。
●台風の被害で発芽してしまった小麦を柔らかく煮て、丸ごとパンに入れた商品が大ヒット。

※あくまで編集部からの提案です。このほかにも様々な読みどころがあると思いますので、読者の皆様の視点で、エッセンスを抽出してください。





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