頑固さと柔軟さのバランス - nukumuku - ブランスリー電子版

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お店拝見/2017年4月号

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頑固さと柔軟さのバランス - nukumuku
オーナーシェフの与儀高志さんとカフェを切り盛りする妻の文美さん
建物1階が売り場で、2階がカフェとなっている。店名と店名の左横にあるクリームパンを模ったマークは、移転前と同じデザイン
2階のカフェは、移転前と同様にアメリカの飲食店で使用していた雑貨類が飾られ、賑やかな雰囲気
1階の売り場。パンは、壁沿いのL字型の棚と、平台に並ぶ。レジ横の冷蔵ショーケースには、サンドイッチやケーキなどが並ぶ
店舗拡大はおもてなしのため

 東京・練馬区で約10年間の営業を終えて昨年9月、世田谷区に移転オープンしたベーカリー「nukumuku(ヌクムク)」。新天地は、東急田園都市線・三軒茶屋駅北口を出て、日曜日は歩行者天国となる通りを進んだ先にある。
 移転前はなかったカフェを併設し、有名ベーカリーが数多く店を構えるこの界隈に移転した理由を、オーナーシェフの与儀高志さんはこう話す。
 「ありがたいことに、小麦の農家さんや製粉会社の方など、当店のパン作りでお世話になっている方々との繋がりが増えてきました。お客様だけでなく、このような生産者の方々も、遠くは北海道からわざわざ来てくださります。それなのに座る場所も用意できず、心苦しい思いでいっぱいでした。カフェスペースがあれば、もっとゆっくりしていただけるのにと、ずっと思っていたんです。そして、パン作りに対する自信が増してきたことや、生産者の方々との絆が強くなってきたことによって、当店のパンをもっと多くの人に食べてもらいたいという思いが強くなってきました。激戦区、すなわちパンを求める人の多い場所で作りたい、という気持ちが生まれたんです。そのためには、知名度の高い立地であることが最低条件でした」(与儀さん)
 そもそもベーカリーを始めたのは、「人をもてなすことが好きで、喜んでもらえると、単純に嬉しいから」と言う与儀さん。売り上げ増のためではなく、もっと喜ばせることができたらと思い続けてきたことが、今回の移転に繋がったのだ。
 1階の売り場から2階のカフェへ続く階段の壁には、小麦などの生産地を訪れたときの写真が貼られている。写っているのは、畑の風景や、生産者の人々だ。
 「パン作りは一日パンと向き合って、こもる作業です。そういう孤独とも言える作業をしている中で、生産者の方との繋がりは励みであり、楽しく作ることができる原動力になります。ですので、写真を目に入るところに貼っています。パン職人として、気持ちを込めておいしいパンを作ることが、生産者の方々の頑張りを応援することに繋がり、生産者とお客様の架け橋になれることだと思っています」(与儀さん)



一番人気の「奥久慈卵のクリームパン」(税抜210円)。ふわふわのパンの中に自家製カスタードがたっぷり入っている
ユニークな成形の「無添加チョコレート」(税抜210円)。チョコレートは乳化剤不使用のものを選んでいる
「魚介の自家製カレーパン」(税抜280円)。ホタテとエビ、8種類のスパイスなどの自家製カレーを包んで焼き上げる
「フランスパンドーナッツ」(税抜230円)。長時間熟成のフランス生地を使い、むっちり、もっちりとした噛み応え
「B.L.Tサンド」(税抜1000円)。ベーコンは、イベリコ豚をスモークした自家製。ソースも、自家製マヨネーズがベース
1階から2階に続く階段の壁に、小麦粉などパンに使用する材料の生産地に行った際の写真が貼られている
身体を壊してから持ったこだわり

 与儀さんが、使う材料について、安心、安全であることを強く追求するようになったのは、自身が腰を痛めてしまったことがきっかけだ。
 開業して約3年経った頃、腰を痛めて1週間店に立てなかったことがあったという。
 「まだ30代前半でしたので、多少の無理もきくだろうと、夫婦で毎日必死にやっていました。そんなとき、腰を痛めてしまったんです。治療目的で、身体を冷やさないことと、食生活を改善することに努めました。すると効果てきめんでした。やはり食に携わっている者として、お客様にも、自分が実感したことを、パンを通して伝えなければと思うようになっていきました」(与儀さん)
 それから、使う材料を見直すこと、フィリングなどの具は、添加物を避けるためにできるだけ手作りするということを始めていった。
 「ちょっとずつ、ちょっとずつですが、できることから変えてきて、今があると思っています。まず材料で注目したのは小麦粉で、その産地である北海道に行きました。先輩から紹介を受けて生産者を訪ね、それから小麦のみならず、チーズなどの乳製品を作る工場や、牧場なども見せてもらいました。こうして、材料の品質を確かめることができると同時に、材料に対する自分の考えに自信と確信を持つことができたんです」(与儀さん)
 レジ横のショーケース上に陳列している、「収穫の日(カンパーニュ)」(ホール税抜1500円、ハーフ税抜750円)や、「長時間熟成バゲット」(税抜300円)に使われている粉は、「はるきらり」や「ホクシン」などで、すべて北海道産だ。「顔の見える生産者の小麦を使っています」と書かれたPOPが付いている。
 手作りしている具は、カスタードやカレーなどのフィリングのほか、2階のカフェで提供しているハンバーガーやサンドイッチの具に使用する、パティ、ベーコン、サルシッチャ、パテドカンパーニュなどだ。
 「ハンバーガーやサンドイッチなど、無添加でおいしくしようとすると、使う食材は、手作りになります。ドリンクも、ワインは化学的なものを使用せず、自然の力を活かして作られた『ナチュール』と呼ばれるタイプのものを用意しています。お客様にも、おいしくて身体に優しくて、国産のものをお召し上がりいただきたいですから」(与儀さん)

看板商品の形すら変えてしまう

 材料の安全性を重視することにはこだわり通す一方で、商品の見た目や販売方法などは、客の反応次第でどんどん変えていく。
 「常に頭は柔軟でいたいと意識しています。お客様の受けが悪いと思えば、成形やトッピング、陳列場所を変えていきます。それだけでも、かなりの効果です」(与儀さん)
 「奥久慈卵のクリームパン」(税抜210円)は、その姿が、同店のマークともなっている看板商品だが、成形とトッピングを変えた。丸く高さのある形のためか、クリームとパンの間に空洞ができてしまうのだが、その空洞について客からクレームを受けた。そのため、やや平たくて丸い形にした。また、粉糖を振って、アーモンドスライスをトップに飾るというトッピングをなくした。看板商品のため、催事に出すこともある。より多くの客が手にできるよう、製造効率を上げることを優先した。
 「『奥久慈卵のクリームパン』は、一番思い入れのある商品で、当店のマークにもなっていました。ですが、お客様に喜んでもらえて、スタッフの仕事を軽くできるのであれば、形やトッピングは変えようと思ったんです。変えないこだわりは、自己満足にしかならないですから」(与儀さん)
 このほか、「明太フランス」(税抜280円)も見た目を一工夫した。移転してから人気が落ちてしまったことを受け、刻み海苔をトッピングして様子をみた。すると、人気は見事に復活した。
 強いこだわりの部分を持ちながらも、それ以外の部分は、柔軟な姿勢を持って変え続けていく。こうしてパンが日々磨かれていくことで、同店は、新天地にも馴染んでいるようだ。

SHOP DATA
店名:nukumuku(ヌクムク)
住所:〒154‐0004 東京都世田谷区太子堂5‐29‐3
電話:03‐6805‐5411
営業時間:午前8時〜午後7時
定休日:月曜、第1、第3、第5火曜
品揃え:平日70〜80品目、土日100品目
スタッフ:製造2人、販売(カフェ含む)3〜4人
店舗面積:売場8坪、厨房10坪、カフェ15坪
日商:25万円



この記事の読みどころ

●カフェは、客や業者をもてなすためのスペース
●材料には徹底してこだわり、製品は、添加物を排除し、できる限り手作り。
●製品の成形や陳列方法などについては、客の反応を見ながら、柔軟に対応。

※あくまで編集部からの提案です。このほかにも様々な読みどころがあると思いますので、読者の皆様の視点で、エッセンスを抽出してください。



原価計算女王
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