甘みが旨みのコロッケパン - 長野ベーカリーの伊藤和貴さん - ブランスリー電子版

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インタビュー/2017年3月号

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甘みが旨みのコロッケパン - 長野ベーカリーの伊藤和貴さん
 東京メトロの溜池山王駅から1分程の場所にある長野ベーカリーは1948年(昭和23年)創業。コロッケパンが人気のベーカリーだ。先代が苦労の末開発した生地は野菜コロッケとの相性が良い。およそ15年前に先代亡き後、主に販売を担当する夫人の長野悦子さんが2代目として引き継いだ。現在の製造の要は、製造経験15年で入社10年になる伊藤和貴さん(42歳)。製造主任として同店の味を支える伊藤さんに話を聞いた。



港区のオフィス街にある長野ベーカリーの外観
午後2時を過ぎるころから、翌日の仕込みが始まる
残り少ない商品を求めて1人、2人とお客が来店する
対面販売の店内。午後5時を過ぎて、棚の商品は売り切れ状態に
味は毎日の積み重ねから

―――オフィス街のど真ん中ですね。
伊藤 そうなんですよ。先代がこの場所に1948年にオープンしたと聞いています。
―――来年は創業70年ですか。長く続けるのは大変です。
伊藤 これまでもこれからも日々の仕事を丁寧にこなしていくだけです。毎日を積み重ねて、お客様に美味しいものを提供していく、それだけです。悦子オーナーも長く続く理由を特に深くは考えていないと思います。
―――当たり前のことをやり抜くだけだと。
伊藤 そうですね。商品作りに当たっては、お客様の反応を常によく見るようにしています。
―――伊藤さんが入社した10年前と現在を比較して、嗜好などの違いを感じますか。
伊藤 その頃と、それほど変わっていないと思います。ただ、注意していることはあります。お客様を飽きさせないということです。季節によって、例えば、夏は辛口のカレーパンを提供するといった工夫とか。新製品づくりも心掛けています。スタッフと一緒にアイデアを出し合っています。失敗もありますが、創作するのは楽しいですね。今の季節商品は「みかんアンパン」と「アップルパイ」です。
―――作り方に工夫も。
伊藤 パン作りは難しいですね。毎日同じパンを作ろうとしても言うことを聞いてくれません。日々製造の環境が変化していますから。発酵時間を微調整したり、生地の分割量を変えたりすることもあります。当たり前のことですが、気象や寒暖の差に気を配りながらのパン作りです。
―――他にも製造で注意していることは。
伊藤 私どもは、昼時の販売がメインなんです。いちばんの注意点は、にんにくのような香りの強い材料は使わないということです。折角パンを美味しく食べていただいても、口臭が気になるようではね。まだ、午後の仕事があるわけですから。

売り上げの半分は昼時に

―――そういえば、調理パンが多いですね。
伊藤 全体の品揃えは100種類ほどあります。そのうち、およそ80種類が調理パンです。
―――オフィス街という立地と切り離せませんか。
伊藤 はい。会社員の方が多数です。朝7時から店を開けます。朝食用に購入して下さるお客様もいらっしゃいますので。しかし、販売の中心は昼食時です。1日の売り上げの半分くらいはこの時間帯で稼いでいるはずです。
―――午後の商品作りが大変なのでは。
伊藤 午後の2時か3時頃からは翌日の商品作りの準備ですよ。
―――昼時を過ぎたら1日の仕事は終わりですか。
伊藤 そうです。各商品とも焼き上げるのは基本的に1度です。
―――幾つくらい焼き上げますか。
伊藤 調理パンはそれぞれ30個〜40個です。



甘みのあるパンと野菜コロッケのバランスが良い人気の「コロッケパン」
2度焼きすることで、旨さを増す「明太子フランス」
チーズとレーズンがタップリの「クリームチーズロール」
今週の一押し商品を記した看板。手書きで親しみが持てる
先代が考案のコロッケパン生地

―――人気の「コロッケパン」(税込200円)もですか。
伊藤 いえ、「コロッケパン」は100個から120個です。
―――一回にですか。
伊藤 パン生地そのものは1度の焼き上げです。
―――というと。
伊藤 コロッケそのものを、複数回揚げます。お客様には出来るだけ揚げたてを提供したいので。挟んでいるのは野菜コロッケです。
―――一種類のみですか。
伊藤 はい。野菜コロッケだけです。
―――何故ですか。
伊藤 生地が活かせます。「コロッケパン」の生地には甘みがあるんです。コロッケとの相性を考えて、甘口のパンに仕上げています。
―――シンプルにパンにコロッケだけを挟んだのはそのためですか。
伊藤 ええ、食べたときのパンと具材の一体感を大切にしました。「コロッケパン」の生地は、先代が失敗を重ねつつ、生地と具材が口の中で一つになったときに、旨さを感じるようにと開発したものです。バランスの良さが人気の秘密だと思います。
―――「コロッケパン」の生地は他の商品には使っていますか。
伊藤 サラダパンとハムカツに使っています。サラダはポテトサラダです。食感を考えた、オーナーの手作りです。ハムカツは、これに合ったソースを作りました。生地との相性もよいと思います。
―――他の調理パンの生地にも工夫がありますか。
伊藤 調理パンの生地は基本的にロールパンの生地ですが、商品によって砂糖の配合を変えています。

客に届いてこその商品価値

―――価格は全体的に安いようですね。主力のお客さんの会社員が、より手に取りやすくと考えてのことですか。
伊藤 特に、そうした配慮をしているわけではありません。値付けについては、妥当だと思っています。
―――材料費の値上がりがありました。
伊藤 そうですね。確かに一部の商品を若干値上げしました。しかし、値上げは難しいですね。
―――何かありましたか。
伊藤 レーズン入りの「クリームチーズロール」の値段を上げたときです。値上げ後の販売量が思うように増えません。そこで、価格据え置きで内容量を変えました。それでも、希望の数量には届きませんでした。今は落ち着いていますが、価格を改定することの難しさを改めて感じました。お客様に食べてもらわなければ、作る意味がありません。販売の大切さも知らされました。
―――「コロッケパン」も値上げしましたか。
伊藤 メインの「コロッケパン」は値上げできません。それともう一つの人気商品である「明太子フランス」(税込210円)も値上げする気はありません。
―――「明太子フランス」も人気ですか。
伊藤 お陰さまで好評をいただいております。製法に工夫を凝らしています。2度焼きするんですよ。最初は完全に焼き上げずに、2度目の時に明太子を入れて、完全に焼き上げます。明太子が食べやすくなります。
―――しかし、午後5時を過ぎると商品はほとんどありませんね。
伊藤 午後3時前後になると、商品はあまり残っていません。
―――作ったパンが売り切れるというのは。
伊藤 嬉しいですね。一生懸命作った商品がお客様にちゃんと届くんですから。これからも、美味しいと言ってもらえる商品をひたすら作っていくだけです。





原価計算女王
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