500m圏内の人を喜ばせる - BAKERY ABE - ブランスリー電子版

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お店拝見/2017年3月号

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500m圏内の人を喜ばせる - BAKERY ABE
「BAKERY ABE」は、東急田園都市線・藤が丘駅の正面口から通りをまっすぐ500メートルほど行った場所にある
オーナーシェフの阿部将史さん
木目と白が基調の明るい雰囲気の店内。すっきりとした造りの棚に、フランスの伝統的なパンや菓子だけでなく、オリジナリティーに富む菓子パンなどが並ぶ
窓側の棚には、「ショーソン・オ・ポム」(税抜280円)や「ブリオッシュあんぱん」(税抜180円)などの菓子系や、「ソシスアンクルート」(税抜250円)などの惣菜系が並ぶ
入って正面中央の目立つ場所にショーケースがあり、「カスクルート ハム&チーズ」(税抜360円)などサンドイッチ4種類と菓子が並ぶ
どんどん変えることで生まれる独自性の高さ

 神奈川県横浜市の東急田園都市線・藤が丘駅正面口からまっすぐ、500メートルほど歩いた先に「BAKERY ABE(ベーカリー アベ)」はある。昨年4月にオープンした。
 同店の製造を一人でこなすのは、同じ沿線沿いにある「ビゴの店 鷺沼」に10年勤務し、製造責任者を務めた阿部将史さん。
 「まだ開業一年目なので、お客様の好みを伺いながら、商品づくりをしている最中です」(阿部さん)
 店内には、15時間低温長時間発酵させたことから名付けた「バゲット15」(税抜280円)や、「ショーソン・オ・ポム」(税抜280円)など、フランスの伝統的なパンや菓子のほか、「太陽のクリームパン」(税抜200円)や「ブリオッシュあんぱん」(税抜180円)などのオリジナリティーの高い菓子パンが、互いに分け隔てなく並んでいる。
 「ヨーロッパの伝統的な食文化を感じていただけるパンや菓子作りをしていくという基本姿勢は守りながらも、変えられるものはどんどん変えて、お客様の反応を伺っています」(阿部さん)
 「ブリオッシュあんぱん」と「太陽のクリームパン」は、すでに生地を3回ほど、改良を重ねている。
 「どちらの商品も、改良するたびにバターや卵の多いリッチな配合になって、現在ブリオッシュ生地に落ち着いています。周辺には、すでにベーカリーが多くあり、定番のアイテムを他店と似た配合で作ってしまうと、わざわざ当店まで足が向かなくなってしまうようです。定番のものこそ、うちでなければだめだという商品に、育てていかなければいけません。いろいろやってみて、だめならだめで、また変えればいいし、少しずつ進化していければいいと思っています」(阿部さん)
 「太陽のクリームパン」は、リッチな配合の生地を使用しているだけでなく、アーモンド生地をトッピングし、さらに粉糖でハート模様を飾るという、見た目にも凝った作りだ。また、カップケーキの型に入っており、パンというより、ケーキのような華やかさがある。
 一方、「ショーソン・オ・ポム」や、ブリオッシュ生地にアーモンドスライスなどをトッピングした「ニダベイユ」(税抜180円)などの菓子系の商品は、ケーキ店の菓子としのぎを削る。長年地元に根付いている人気ケーキ店が、同じ通り沿いにあるなど、周囲にはベーカリーだけでなくケーキ店も多い。
 「当店のお客様は、高齢で、舌の肥えた方が多く、ごちゃごちゃしたものよりも、伝統菓子などのシンプルで分かりやすい商品が人気があります。菓子系では、『ショーソン・オ・ポム』などのパイや、『ニダベイユ』などがよく出ます。また、クッキーなど小物の焼き菓子は、ベーカリーとしての位置付けを意識するためにも、一種類に絞るようにして、ケーキ店のようにたくさんの種類を揃えることはしないようにしています。例えば、今月は『チョコラスク』(税抜300円)、といった具合に、月ごとにメニューを替えて、ベーカリーのおすすめとして、提案していきたいと思っています」(阿部さん)



「太陽のクリームパン」(税抜200円)。ブリオッシュ生地でカスタードを包み、アーモンド生地をかぶせて焼き上げる
「太陽のクリームパン」の断面
フランスの伝統菓子「ニダベイユ」(税抜180円)。クッキーの上にブリオッシュ生地などをトッピングして焼成
「ニダベイユ」の断面
右は、蒸し鶏などをバゲットにサンドした「カスクルートプロヴァンス」(税抜380円)、左は「カスクルート ハム&チーズ」
バレンタインの季節商品として販売された「パン・オ・カカオ」(税抜240円)。粒状のチョコレートがたっぷり入っている
ベーカリーは生活に密着した場所

 阿部さんのパン作りの1日は、早朝3時から夜8時まで。土日は、平日の1・5倍に製造量が増えるため、サンドイッチ担当のスタッフが一人入るが、それ以外は基本的に阿部さん一人が行う。朝と夜は、販売にも立つ。
 「朝、基本的には7時半を開店時刻としていますが、パンが出来上がれば、開店時刻は関係なしに、店は開けています。実際7時を少し回った頃に開ける日が多いですね。朝と夜に来店される方は、曜日と時間がほぼ決まっていて、毎回、他愛のない話をします。そういった常連のお客様が増えてきました」(阿部さん)
 最寄駅から比較的アクセスの良い好立地だが、阿部さんは、あくまでもここは住宅地で、近隣の人に来店してもらうことが第一だと言い切る。
 「自分の仕事は、500メートル圏内に住む方を喜ばせることだと思っています。パンは、遠くまで買いに行ったり、土産物に使うものではありません。そういった需要があったとしても、一時的なものに過ぎず、何十年も続くことはありません。パンは、毎日食べるもの、そして、焼きたてを食べるものですから」(阿部さん)
 阿部さんはこう話しながら、ヨーロッパの田舎で、毎朝パンが車で配達されるという光景を思い浮かべる。
 「ヨーロッパの田舎の光景が示すように、ベーカリーは、生活に密接した、飾る必要のないところだと思っています。例えば、朝食用に買って、『隣近所にあるから買ったんだけど、でもおいしいね』という会話が生まれるような、そんな存在でありたいですね。そんな風に、近所の人を喜ばせていけたらいいと思っています。また、遅い時間に買いにきて、そのとき品切れだったとしても、近所の方なら、『明日の朝、焼きたてを買いに来てください』と、お願いすることができます。そして翌朝、焼きたてを購入しに来ていただければ、またそこで会話が生まれます。そういうやり取りの輪が広がっていくところが、ベーカリーのあるべき姿だと、思っています」(阿部さん)
 阿部さんは、ヨーロッパの伝統的な食文化を、商品からだけでなく、毎日のやり取りからも、近所に浸透させていきたいという考えを持っているのだ。
 「十数年毎日こうして作り続けてきましたが、最近になって、パンが自分にとって、より自然な、当たり前のものだと思えるようになってきました。パンを作ることは自分の生活そのもので、お客様と商品としてのパンは、そこに付随しているものなんですね。ですので、近所の方にとっても、毎日の当たり前の食生活の一部として当店が根付いていけたらいいなと思っています」(阿部さん)

SHOP DATA
店名:BAKERY ABE(ベーカリー アベ)
住所:〒227‐0048 神奈川県青葉区柿の木台3‐20
電話:045‐532‐8326
営業時間:午前7時半〜午後7時(売り切れ次第閉店)
定休日:月曜日
品揃え:約30品目
スタッフ:製造1人、販売1人
店舗面積:売場約7・5坪、厨房約15坪
日商:約10万円



この記事の読みどころ

●伝統のエッセンスは守りながら、変えるところは変えていく。
●どこにでもある定番商品こそ、独自性のあるものにする。
●500メートル圏内に住む人を喜ばせることが仕事。
●顧客との関わり方も含めたヨーロッパのパン食文化を伝えたい。

※あくまで編集部からの提案です。このほかにも様々な読みどころがあると思いますので、読者の皆様の視点で、エッセンスを抽出してください。





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