普段の作業に伝統が生きる - グリムハウスの木島一哉専務 - ブランスリー電子版

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インタビュー/2017年2月号

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普段の作業に伝統が生きる - グリムハウスの木島一哉専務
リテール拡大を目指す木島一哉専務
 昭和元年(1926年)創業のグリムハウス(電話03−3683−0344)は、総武線亀戸駅から徒歩約8分。亀戸五丁目中央通り商店街の東の端にある。卸しが中心のベーカリーだが、今は本格的に製造・直売に力を入れる。人気の味噌パンは江東区で初めて異業種交流会から誕生した商品。毎年開催される地元のイベントでは、いつも持ち込んだ500個が完売する。地元に根付いた商品でもある。卸し部門もリテール部門も売り上げが右肩上がりで伸びている今こそ、大手リテールベーカリーでの修業経験を活かして、リテール部門の拡大を目指したいという、同社3代目の木島一哉専務(54歳)に話を聞いた。



店の目印のみそパンの旗
明るいグリムハウスの店内
2種類の味噌をブレンドして入れたデニッシュタイプの味噌パン
味噌パンの旗を掲げるグリムハウスの外観
異業種交流から味噌パン

―――味噌パンが人気だそうですね。。
木島 平成10年(1998年)に江東区が行なった異業種交流会から誕生したものです。10数人が集まった中で、何か形にしたいと考えました。その中で老舗の味噌屋さんが、パンに味噌を入れたらどうなるのかという話になりました。塩分を入れすぎると発酵がうまく行きませんからね。不安でした。
―――それでも提案に興味を持ったんですよね。
木島 折角ですからね。新たなものを生まないと。でも、案の定大変でした。
―――味噌に問題があったんですか。
木島 問題ではなく、まず私が驚いたのは、味噌の種類です。数十種類もあるんですよ。こんなに多いのかって、頭の片隅にもありませんでした。そこから、試行錯誤の繰り返しです。そして、ようやく江戸味噌ともう1種類を選び出したんです。
―――専務の考えに当てはまったんですね。
木島 何よりも発酵に影響を与えないことです。そのため、塩分の少ない2種類の味噌を選び、ブレンドして使っています。味噌パンは塩分を入れすぎると発酵がうまくいきません。選択した味噌に影響を受けてはだめなんです。

味噌で味を引き締める

―――生地をデニッシュタイプにした理由は。
木島 味噌パンを考案した当時、デニッシュ食パンが流行っていました。このパンは食べ始めはいいのですが、どうも飽きやすい気がしたんです。これに味噌を入れたら味が引き締まるのではと、検討過程でそんな話になりました。それと、味噌は乳製品に合うという話も切っ掛けの一つです。
―――それでデニッシュタイプに。
木島 はい。もちろん、味りんを入れたり、コクを出すために三温糖を使うなど他の工夫もしています。
―――工程上の工夫もありますか。
木島 例えば、デニッシュ生地は4つ折り1回、3つ折り2回です。こうすると、食べやすくなります。
―――味噌パンが誕生して随分と経ちますが、人気定番商品ということは、売れ行きも充分というわけですね。
木島 お陰さまで。江東区で異業種交流から生まれた食品は初めてでした。以来、毎年11月に開催される区民祭りでは、各種の自社商品を提供します。中でも、味噌パンは500個用意します。いつも完売です。
―――江東区に根付いているんですね。
木島 そう思います。発売当初から、お客様からの感想を聞かせていただいています。その言葉を大切にこれからも作り続けようと思っています。今、味噌入りのパンは他に味噌あんぱんだけです。日本人は味噌が好きですからね。今後は、和に特化した味噌シリーズも考えています。

イーストを活性化して使用

―――ところで、味噌パンの製造に当たって、塩分量以外に注意していることはありますか。
木島 イーストは、わが社というか、私自身がこだわりを持っています。
―――と、言いますと。
木島 パンには当然イーストが必要です。残念ながら亡くなったのですが、以前、私の師匠ともいえるベテラン職人からイーストの大切さを教わりました。師匠の作る学校給食のパンは柔らかなんです。学給パンの配合は東京都内すべて同じです。なのに、パンの出来が違うのです。
―――なぜなのですか。
木島 イーストは問屋から運んでもらいますが、他の材料と一緒に持ってきます。その際の温度は2〜3度Cと、低い温度帯です。そこでわが社では、イースト専用の冷蔵庫で24時間保管して、8〜10度の温度帯になるように調整します。活性が良くなるんですよ。パン作りにはイースト菌が全てです。これからもイースト菌を大切にしますよ。商品の日持ちにも良い影響を与えます。師匠の教えは、普段の作業の中に伝統は生きているのだと感じさせてくれます。



具がタップリ入ったサンドイッチも人気
果糖やバター100%が入る「上食パン」。トーストしてもソフト感が残る
「コッペパン」も人気。左はジャムとマーガリン入り。右にあんとマーガリン入り
食パンの耳で作ったかりんとうの「みみりんとう」(1袋税込250円)
コッペにフィシュフライが入った製品も人気
小ぶりの味噌パンの「みそあんぱん」
卸しは小回りの利く配送が強み

―――今、学給パンの話が出ましたが、卸し事業も経営の根幹としてあるわけですね。
木島 もちろんです。わが社は卸しが中心です。学校給食用だけでなく保育園、病院、老人ホームに届けています。学校給食は50校に納入しています。
―――50校の学校にですか。
木島 そうです。とはいえ、東京都のパン給食は週1回なんです。しかも他県と異なり米飯給食をしていません。でも、イーストの保管をしっかりやって、美味しいパンを提供したいんです。今の生徒さんたちはパンが硬いと食べませんから。
―――学校給食のパンに未来はあるんですか。
木島 戦後、学校給食のパンが始まってすぐに学給パンの指定工場になりました。かつて300社あった指定工場が今は20社のみです。しかし、学給パンをやっている強みは、デリバリーです。リテールだけだとデリバリーが難しい。また、大手の製パン企業はロットがまとまらないと配送を出せないわけです。その点私どもは小回りが利きます。千葉県の佐倉市内にある病院にも配達しています。100食といった少量でも運べるのが有利な点です。
―――毎日配達するのは大変ですね。
木島 大変ですが、お陰さまで卸しもリテールも売り上げは右肩上がりです。保育園や老人ホームに配達すると、要望も入るし、好みも分かるんです。店では2種類の食パンを販売していますが、保育園では価格の高い上食パンが好まれています。果糖などを使い、また、バター100%と三温糖、それにスキムミルクの代わりに粉ミルクに近い上質なミルクを使います。
―――老人ホームもですか。
木島 はい。老人ホームにはロールパン生地の食パンタイプの商品を持っていきます。生地の中にバターやチョコレートなどを練り込んだ商品です。普通の食パンだとバターを塗る手間がかかります。手間が省けて、老人ホームの職員にも人気です。お台場のテレビ局や都立高校の購買部にも卸しますし、ディズニーランドのホテルにも毎日配送します。ホテルのお客さんはディズニーランドに一刻も早く行きたくて、ホテルの朝食を食べずにわが社のサンドイッチを手に並ぶんだそうです。

好価格好品質で腹一杯に

―――サンドイッチはボリュームがありますね。
木島 リーズナブルでボリュームのあるパンを腹一杯食べて欲しいので、具はタップリです。好価格好品質を目指していますから。土地は自社のものですからコストを抑えられますので価格を安くできます。最低限の利益が得られればよいのです。正直に言って、利益率はリテールのほうがいいんです。今主力の卸し部門が安定していますので、この時期にこそ地域密着でリテールを増やしていきたいと考えています。
―――リテール事業の拡大ですね。
木島 大学卒業後に葛西のパン学校で学び、その後、大手リテールベーカリーに12年間余り勤めました。仕事はリテールで覚えたので、お客様との対話こそが商売の原点と捉えています。お客様の声は店にとっての財産です。より良い商品作りには欠かせません。
―――リテールベーカリー同士の競争は熾烈ですよね。
木島 私はパン屋との競争だけではないと思っています。例えば牛丼。350円で腹一杯になります。サンドイッチ2つでは腹は満足しません。これからは、よりお客様の声を商品作りに反映しなければなりません。当面はリテールとしての土台作りです。生き残るためには学び続けるだけでなく、工夫もしなければ。
―――具体的には。
木島 近くの小学校で出前のパン教室を開いています。生地を提供して、生徒たちに好きな形を作ってもらい、それを焼き上げます。自分の作ったパンという実感が湧くようで喜んで食べてくれます。これも、将来のパン好きを増やすための私どもの工夫の一つです。また、近く、七福神めぐり用に7種のあんぱんを考えています。それに、2020年の東京オリンピックに向けてのパンも試作しているところです。





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