ねぶた祭と雪の街でパンとチーズ - モンドール - ブランスリー電子版

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お店拝見/2017年2月号

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ねぶた祭と雪の街でパンとチーズ - モンドール
オーナーシェフブーランジェの駒谷範仁氏。毎朝4時から、一人でパンを焼いている
一番人気のサンドイッチ。硬いパンに染み込んだオリーブオイルと、チーズなどの具材も美味しい
小ぶりのフランスあんぱんも大人気。硬いパンに、おやきの餡のような香ばしさが個性的だ
カウンターの上には、ラスクなど、お手軽サイズのパンも並ぶ
対面販売は、商品がより多く陳列できる

 青森市のシンボル、ランドマークともいえる観光物産館「アスパム」は、青森を知る人なら誰でも分かる三角形の建物だ。その「アスパム」が真正面に見える八甲通り沿いに、青森市では珍しい対面販売の「パン&フロマージュ モンドール(Montd'Or)」がある。ハード系のパンを得意とするブーランジェの駒谷範仁さんがオーナーの店だ。今や、「本州最北の青森でハード系パンといえば、モンドール」とまで言われるまでになっている。
 記者も「アスパムの近くに、美味しいフランスパンの店がある」という情報に、ネットや人づてで、何度となく遭遇していた。取材は、暴風雪という悪天候で1回延期になり、快晴の日の午後に行われたが、お昼の時間帯を過ぎているにも関わらず、老若男女、客足が途絶えることがなかった。それほど、駒谷さんのハード系のパンは、青森市の人たちに定着し、愛されているのであろう。中には遠方の下北半島からも大量に買い出しに来る常連さんもいるという。
 青森市の人口は約30万人。給与所得や年収も全国平均を下回っているが、地域の食を生かした洋食のお店も少なくなく、洋食にあうハード系のパンを望む人も多いことも、常連客の獲得につながっている要因と思われる。取材中に訪れた年配の女性客が「今日は、フランスあんぱん(税別150円)にしようかな。サンドイッチは何が残っているの?」と、従業員に相談しながら品選びをし、日々の雑談も添えながら、お目当てのパンを手にしていた。
 対面販売は、セルフサービスでトレーを持ったお客さんが店内を動き回るスタイルより、店舗面積が狭くても大丈夫なのだという。ガラスケースに縦に陳列すれば、テーブルに横向きに並べるより、場所をとらずに多くのパンを置くことができるのだという。更に、面と向かって、お客さんとのやりとりができるという点でもメリットがあり、買い手の立場からしても大切に扱われたパンを買うことができるという利点がある。
 これから冬本番。青森市は県内の都市部でも雪が多いことで知られる。真冬の雪対策についても聞いてみた。
 「この物件を見つけたのは偶然だったのですが、ここに店を出す決め手になったのは、まずは誰もが知っている『アスパム』が近いことだったんです。場所の説明が楽ですしね。あとは、大通りなので店の前の歩道はロードヒーティングが成されていて、雪かきが楽なんですよ」(駒谷さん)
 また、全国各地から観光客が集まって8月2日から7日まで開催されるねぶた祭のときは、店の前に出店を出して、サンドイッチやお酒などを売るのだという。高さ5メートル、幅9メートルともいわれる巨大なねぶた20台以上が、ヨーロッパの街角にあるようなおしゃれな同店の前を通る。
 「ねぶたは、アスパムの広場から出発して、運行が終わるとアスパムに帰ります、つまり、ねぶた祭の期間中、店の前をねぶたが行き来するんですよ。特に最終日の花火や海上運行は賑やかですよ」(駒谷さん)
 青森市出身の駒谷さんにとっても、ねぶたは郷土の伝統的な祭。ふるさとの真夏の火祭りの話は尽きない。現在の立地条件は、真冬の雪道対策はもちろん、青森で最も元気な真夏のねぶたの時期の店舗運営にも最高の環境をもたらしている。
 また、店の外観は白のレンガタイルで、入り口を挟んで大きな窓が両側にある。以前は洋服のお店だったとのことで、ショーウインドウとして使われていた窓だそうだ。その窓から、日中は柔らかな自然光が差し込み、店内の様子も外から見え、女性がひとりでも入りやすい明るい雰囲気になっている。黄昏時が過ぎて辺りが暗くなると、窓から店の灯りが美しく見えるという。店内では対面販売のガラスケースの中にハード系パンのサンドイッチ類(税別160円〜500円)、棚の上には「バゲット」(税別300円)、「パン・ド・カンパーニュ」(税別800円、ハーフ税別400円)などが並べられている。チーズやジャム、オリーブの瓶詰なども陳列されている。お店の名前にもなっている「モンドール」(フランス語で「黄金の山」の意味)の商品名のチーズも冷蔵ケースの中にある。



クリスマスシーズン限定の「シュトレーン」(税別2400円)。澄ましバターに、きび砂糖を使ったブラウン系のやさしい色合い
カウンターに向かって右側の棚には、オリーブオイルやジャム類がオシャレに並ぶ
カウンターに向かって左側には冷蔵ケース。お店の名前にもなっている「モンドール」などのチーズ類が所狭しと並ぶ
ハード系のパンは料理の味をリセットしてくれる

 駒谷さんは、1997月2月、20代のときに、一度、パン屋をオープンさせている。子供のときからパンが好きで、地元のパン屋の従業員募集にふらりと応募したのがパンの道に入ったきっかけだったという。
 「ハード系のパンに魅せられたのは、『ル・ヴァン』の甲田幹夫さんのパンとの出合いが衝撃的だったんですよね。出店当初、青森では、ハード系のパンの需要が決して多いとはいえなかったのですが、美味しいパンを作りたいと思い、一生懸命やっているうちに、お客さんもついてくださいました」(駒谷さん)
 また、駒谷さんは、パンと同じくらい好きだったチーズの世界の深さにも、ぐいぐいと引き込まれていった。そして、惜しまれながらも2009年に青森の店を一時的に閉店し、5年間、東京のチーズ会社でチーズの修行に徹したのだという。その後、生まれ故郷の青森市に戻った駒谷さんは再び開店準備を進め、2015年3月3日、現在の地に本格的なハード系のパンのお店を満を持してオープンした。
 「ハード系のパンは、噛むほどに味わいがあり、シンプルで、お料理の味をいったんリセットしてくれます。口の中がさっぱりして、どんなお料理にも飲み物にも合うんです」(駒谷さん)
 パンへの想いを語るとき、駒谷さんの目は輝き、愛する人や肉親のことを話題にしているかのように、表情も語り口も滑らかになっていくのが印象的だった。子供のときから、好きなことには、とことんのめりこみ、何でも実際に見に行ったり、作ってみたり、行動してみないと気が済まない性格だったという駒谷さんは、動物も大好きで、ペットショップや水族館に勤めることも考えたことがあるという。
 店内に、ひっきりなしに訪れるお客さん。パンは、あれよあれよという間になくなっていくが、買い物帰りの老夫婦が来たときは、イートインもできるテーブル席を荷物置き場に使ってもらい、ゆったりと商品を選んでもらっていた。対面販売、たったひとりでのパン作り。青森の青い空に映える白い欧風の洒落たお店は、地元の人のパン食文化を、しっかりと支えている。
 「本当は、そろそろパンの種類を増やしたり、県産のリンゴやカシス、南部の黄金の洋ナシといわれるゼネラル・レクラークなども使ってみたいのですが、全てひとりで作っているので、なかなか時間が取れないんですよね」(駒谷さん)
 駒谷さんのハード系のパンへの飽くなき挑戦は、まだまだ続きそうだ。
SHOP DATA
店名:モンドール
住所:〒030‐0803 青森県青森市安方1‐10‐7
電話:017‐757‐8989
営業時間:午前10時〜午後7時
定休日:水曜
品揃え:パン約30品目、ナチュラルチーズ約30品目
スタッフ:製造1人、販売常時2〜3人
店舗面積:売り場約13坪、厨房約14坪
日商:10万円



この記事の読みどころ

●対面販売はセルフ方式の販売よりも、商品がより多く陳列できるメリットがある。
●冬は雪に強く、夏はねぶた祭りにあやかれる立地。
●洒落た店は、地元の人に、ハード系のパンを中心としたパン食文化を定着させつつある。

※あくまで編集部からの提案です。このほかにも様々な読みどころがあると思いますので、読者の皆様の視点で、エッセンスを抽出してください。



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