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| 特集/2017年2月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 景気はいかがですか?
今回は、より本音に近い部分でお話し頂けるよう、匿名での掲載という条件で、取材しました。
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| 同じ通り沿いのすぐ近くに、郊外型の大型ベーカリーが開店した事が影響した - ベーカリーA(郊外住宅地バス通り沿い立地)
売れ筋の食パンをグレードアップ
東京都内某地域の、駅前の賑やかな喧騒からは離れた郊外の住宅地。駅方面からのバスが通る道沿いに、Aさんが経営するベーカリーAがある。厨房と売場を合わせた全体でわずか9坪ほどの小さな店で、Aさんと販売担当のスタッフとのほぼ二人体制で運営する同店は、開店から9年目を迎えるが、実はここ3、4年の間に微妙な客単価の減り具合を感じているという。 「客数は変わらなくても、一人のお客様が一回の来店で買う商品点数を絞るようになってきた印象があります。景気の影響かもしれません」(Aさん) 地域柄、同店は古くからこの地域に住む高齢者を中心とした常連に支えられているが、その常連客が生活を切り詰めるようになってきている。 「もともと高齢者はあまりパンを食べないから厳しいのではと言われていた場所に出店して、好奇心が強いお年寄りの方に口コミで広げてもらう形で需要を掘り起こしてきました。それなりに資産がある方達で不況と関係なくお金を落としてくれていたのですが、さすがに生活における様々なもので値上げが続くとやはりパンの方も多少切り詰めるようになってしまったようです」(Aさん) 加えて一年前に同じ通り沿いのすぐ近くに郊外型の大型ベーカリーが開店した事が影響した。夕方まで種類豊富なパンが焼かれ、テラス席や広い駐車場がある同大型ベーカリーが開店して以来、若年層の客の多くがそちらへ流れていってしまった。 「若年層が離れてしまった事で、サンドイッチや子供向けの商品が売れなくなってしまいました」(Aさん) そのため、売れる商品と売れない商品、売れる時間と売れない時間がよりはっきりと別れるようになったという。 「大変な状況ですが、ただこうした事を通じてウチの店が本来持っている良さを見直す事も出来るようになりました。役割をよりはっきりさせた形で棲み分けしていきたいと思っています」とAさんは話す。対策として、一番の売れ筋商品である食パンの品質をグレードアップし、大きさも大きくした。また付加価値のつけやすい洋菓子類は、発酵バター入りのものにするなどして差別化した。 「その結果、お客様の評価も上がり、一度離れたお客様もまた戻ってきてくれたりしました。なんとかこのまま順調に当店の個性を出す事で生き抜いていきたい」(Aさん) ただ商品の良さを知ってもらう事ができなければ集客は難しい。これまでは口コミが頼りで自ら発信する形の宣伝はしてこなかった。Aさんは「フェイスブックや店のHPといったものは出していません。パソコンやIT機器はどうも苦手ですね」となかなか重い腰を上げる決意がつかない様子だが「ただそろそろ店の情報を広く外部へ発信していくために始めてみようかとも考えています」とも話してくれた。 |

| 同じ商圏内のベーカリーが店をたたみ、その顧客の食パンの需要を取り込んだ - ベーカリーB(住宅街立地)
今の品揃えで品質を維持する
「景気の影響はそれほど大きく感じていません。オープンから6年以上経ち、お客様も定着して安定している感じです」と話すのは、埼玉県内で売場4坪ほどの小規模ベーカリーBを経営するBさん。製造と販売を合わせて、常時1〜2人体制で回す小さな店で、オープンから3年は、売り上げは右肩上がりだった。4年目以降は伸びが止まり、横ばいで推移しているが、安定しているので大きな危機感はないという。 「地域的に富裕層の方が多いからかもしれません。当店は平均的な値段より若干高い商品ばかりを売っていますが、安定して売れ続けている印象があります」(Bさん) 2014年の原料高の際も値上げはしたが、前後で客数や商品の平均購入点数に大きな変化はなかった。ただ変化をあえてあげると、オープン当初は売れるパンは菓子パンが中心だったが、ここ2、3年で食パンの売上が30%以上伸び、徐々に店全体の売上の中で食パンが占める比率が高まっている事がある。特に高齢者で食パンをまとめ買いする人の姿が目立つようになった。ある程度、客層が定着して同店が作るパンの味・品質の良さを理解してもらえるようになった事が、理由の一つかもしれない。 ただ、他の理由として、「周辺環境の変化もあるのではないか」とBさんは話す。 同店が店を構える地域は駅前の繁華街で店の入れ替わりも激しい地域だ。ベーカリーも周辺に10店舗くらいあるが、特にこの6年間で目立ったのは世代交代による変化だ。同店がオープンした時、周辺のベーカリーのうち3、4店は昔ながらの老舗だったが、後継者のいない店長が高齢となったためか、そのうち2店がその後、店をたたんだ。それまで老舗の店で食パンを買っていた客が同店で食パンを買うようになった可能性もある。 また出費を抑えるためサンドイッチを家で作るようになった人が、パンだけは品質の良いものを買いたいと、同店のような個人店の食パンを買う方向にシフトしたといった事も推測できる。 いずれにしても同店のパンは徐々に、嗜好品としてたまに食するものではなく、より日常的に食事として食べられるものへシフトしてきているようだ。 「逆に、近隣に新しい店ができると5%位売上が落ちたり、やっぱりきつくなりますね。実は半年ほど前に、近隣地域に100円位で買えるパンをたくさん集めたベーカリーがオープンし、その時は、一カ月位、当店の売り上げに影響が出ました」(Bさん) 幸いその後、しばらくして売上は戻って来た。地域的に低価格路線の店がそれほど馴染んでいないエリアという背景もあるようだ。 「現在の品揃えで喜んでくれるお客様がいるので、現状維持で品質を落とさず続けていくことが大切かなと思います」とBさんは話す。「ただ正直、当店と若干個性がかぶるような店が将来近くにできたらと思うと少し不安になりますね」ともいう。 |

| 駅ナカにベーカリーが3つほど新たにオープンし、客1人当たりの来店頻度が減った - ベーカリーC(郊外住宅街立地)
「さらにおいしく」がキャッチフレーズ
東京都内某地域郊外の古くからの住宅地の一角にあるベーカリーCは常時10〜12人体制で運営する地域密着型の繁盛店だ。店長のCさんは、近くにある老舗ベーカリーの2号店として7年前に同店を開店し、チームワークを重視した店舗運営を行いながら同店を大きく育ててきた。現在の日商は土日で70〜80万円位、平日でも50万円を超す事もある。商品は、食事パン、菓子パン、総菜パンなど100品目以上豊富に揃い、売り上げは開店以来ずっと伸びてきていた。 しかし、実は2016年の中盤以降、初めて前年を割った。微減ではあったが、理由としては、昨年春に同店からバスで15分ほどのところにある最寄り駅の中にベーカリーを併設した駅ナカスーパーができた事が考えられるという。実はここ2年で駅ナカにベーカリーが3つほど新たにオープンしていた。 「その結果、微妙にお客様一人当たりの来店頻度が減ったような気がします。一回の来店での客単価は大きくは変わっていないのですが」 特に夕方の会社帰りに立ち寄るような若年層や単身者などの客の来店頻度が減っている。「以前は午後一時の売り上げで、その日全体の売り上げの見通しが大体見えていたのですが、今は見えなくなりました。夕方の来店客数が安定しなくなっています」(Cさん) Cさんは同業者同士の忘年会でも景気が良いという話は聞かなかったという。「世帯収入が伸び悩んでいる中で、競合店がいくつもできるとどうしてもパイの取り合いになります。この地域は、若い世代の人口が増えているイメージがありますが、もともと人口がそれほど多くないですから、伸ばすのも限界があります」(Cさん) 競合となっているのはベーカリーだけではないという。駅ナカに便利な食品専門店ができたため、おにぎりや総菜など単身者が簡単に食べられるような商品が競合している。 同店は2014年の原料高の際に平均で1割位の値上げを実施したが、その際に対策として行ったのが、人気の定番商品を中心とした商品のブラッシュアップだった。 「製法や配合の見直しを行い、値上げした分おいしく食べられるような工夫を行いました」(Cさん) その結果、値上げにより客数が落ちる事はなく売上も伸び続けた。今回の状況もこうした事をさらに強化する事で、なんとか打開していきたいと考えている。 「とにかく最近はポップで『さらにおいしくなりました』というキーワードを使うようになりました」というCさん。ただ最近は製法や配合などもっと具体的に何が変わってどうおいしくなったのかという部分も伝えていかなければならないと考えている。 「ポップでの説明もありますが、販売スタッフの方でも色々答えられるようにも指導していきます。とにかく自家製の丁寧なおいしさを知ってもらう事で差別化していくしかないですね」(Cさん) |

| ここ1〜2年の売れ筋は、メロンパン、カレーパン、塩バターロール - ベーカリーD(郊外型ベーカリーなどを複数展開)
郊外型店舗の伸びが少し弱い
オーナーのDさんの話 2016年は、弊社としては初めてとなる特殊な立地に、7店舗目を出店したのですが、その新店が予想の倍近い売り上げを出しました。この立地条件で、ここまでの売り上げを出すベーカリーの前例を見たことがなかったので、正直驚いています。 出店した分、全体の売り上げは前年と比べて増えました。しかし、各店舗ごとに見ると、すべて上がってはいますが、横ばいに近い状態になっているところがあるなど、それぞれバラつきがあります。 過去5年間でみると、郊外店の伸びが少し弱いですね。分析してみると、客単価は伸びていますが、客数がやや落ちているという現象がみられます。来店回数が減っている分、買う量が増えているお客様が増えているのでしょうか。ですので、車でご来店なさるお客様が、ガソリン高などの影響を受けて、足が遠のいている可能性があります。 この5年間で、2013年、2014年、2016年と、3店舗店を増やしてきました。会社全体の規模の拡大が目立つと同時に、危機感も抱きながら、体制を整えています。社員数も100人以上になりましたので、コンプライアンスの強化の必要性をとても強く感じています。 ここ1〜2年の間では、ハード系の生地を使用した商品が徐々に上がってきていると思います。季節のイベントごとに合わせて、ハード系生地の商品を作って売り出すということを続けてきていますので、お客様にとって、受け入れやすい商品となっているのだと思います。これから、春にはイースターがありますが、そうした西洋の食文化とパンを結び付けることで、お客様におしゃれな食文化として楽しんでいただけることを願っています。 ここ1〜2年で売れているパンは、メロンパン、カレーパン、塩バターロールです。メロンパンとカレーパンは、長年変わらぬ人気で、そこに塩バターロールが加わった形です。この3つのアイテムは強いですね。 反対に、あんぱんとクリームパンは、売れ筋ではありますが、弱くなってきたと思っています。これまで、フィリングを自家製にしたり、材料を変えたり、改良の度に、どっと売り上げが伸びてきましたので、また、これらのアイテムに、さらに注力していく必要があると思っています。 やはり、メロンパン、カレーパン、塩バターロールのように、売れているパンは回転が良いので、焼きたてで店頭に並ぶ確率が高く、それが相乗効果となって、どんどん売れていくという流れですので、どの商品でも焼きたてを大事にしていきたいと思っています。 |
| 従業員の長時間労働の問題をどうにかしようと本気で取り組んできた - ベーカリーE(郊外大型繁盛店を複数展開)
食事パンとハード系の売上が増えている
オーナーのEさんの話 労働環境の改善が、2016年で最も重点を置いてきたことです。そのために実施したことは主に、従業員の賃金を上げたことや、店舗の定休日などを増やしたことなどです。 従業員の長時間労働については、ずっと、どうにかしたいという気持ちでおりました。その長年の悩みであった、労働環境改善についてこの度、1店舗新たに出店するくらいのパワーを使って、取り組みました。そういう意味で2016年は、チャレンジの年であったと言えると思います。 売り上げに関しては、前年と比べてほぼ横ばいです。ただ、従業員の休みを増やす一環で、年間の休業日を約20日増やしておりますので、1日当たりの売り上げとしては、伸ばすことができています。 開業から20年過ぎたところですが、売り上げは、前年を下回った年は基本的にはありません。また、急激な上昇もなく、毎年同じような比率で上がっています。この5年の間でも、そのペースに変化はありません。振り返ってみると、結果的にですが、理想的な動きをしているかと思っています。 最近の傾向としては、客単価が増えていることや、食事パンとハード系の売り上げが増えていることがあります。今後も、地域ブランドとしての確立を目指して、さらにブランド力を高めていくことで、こうした傾向を維持していきたいと思っています。 ハード系の中で特に売れているのは、バゲットを中心としたフランス生地のパンで、カスクルートなどのサンドイッチが人気です。 開業当初は、焼き込み調理パンなどの惣菜パンが主流だったのですが、今はその比重が半分以下に減少しいています。この減少傾向は、この1〜2年の間でも感じられます。ハード系の人気は、それと代わるようにして上昇してきているのだと思います。 こうした傾向は、お客様任せの成り行きではなく、店側から、何を提供していきたいかを考え、行動してきたことによる結果だと思っています。 自店の特徴を的確に捉え、商品に打ち出していかなければ、コンビニなどの他業界に差をつけられません。 低価格を追求されては、従業員に過酷な労働が強いられることにもなってしまいます。高くても売れるし、遠くからも買いに来てくれることを実感できる店であり続けられるように、努力を続けていきたいと思います。 |
| おいしければ、高くても売れるという訳でもなくなってきたことを実感している - ベーカリーF(郊外型繁盛ベーカリー)
料理人の仕事もできるようにしたい
オーナーのFさんの話 これまで15年間、売り上げは上がり続けてきましたが、2016年に初めて前年比で5パーセント落ちました。その変化は、時期的に言うと、春を過ぎた6月くらいからです。 連絡を取り合っている他のベーカリーでも、売り上げが落ちたという話は聞いていて、早いところでは2015年の暮れ頃から落ちていたそうです。不景気を感じますね。 原因としてまず考えられることは、材料費の高騰や消費税の値上げによる、商品価格の大幅な値上げが挙げられます。5年間でみても、その傾向は続いています。特にここ3年の間では、当店は2回値上げをし、トータルで2割ほどの値上げとなりました。 結果として庶民にとってのパンが、高級品としての位置づけになりつつあるのではないかと思います。当店は、客単価には変化はないのですが、客数がやや減っていて、そのことが売り上げ減少に繋がっていると思います。お客様のパンを買う回数が減っているのだと思います。 また、消費者の価値観の変化も感じています。他の業界と同じことだと思うのですが、例えばファミリーレストランで、フォアグラメニューが提供されるなど、ちょっとした高級志向がブームになっていたときがありましたが、その時代が終わって、求められるものが変わってきました。それとともに、おいしければ、高くても売れるという訳でもなくなってきたことを実感しています。それに近年、安くてボリュームのあるコッペパンの専門店が増えてきています。 ここ1〜2年でよく売れているアイテムは、長年変わりない定番の食パンとカレーパンですが、その次の第3位に塩バターロールがつけています。塩バターロールは、カレーパンに並ぶほどの根強い人気を感じています。今までカレーパンの次と言えば、あんぱんなど複数のアイテムがどんぐりの背比べでつけていたので、塩バターロールはほかとちょっと違うなと思います。また反対に、売れなくなってきたアイテムは特にないと思います。 これからの商品作りとして、値ごろ感と手作り感をより大事にしていきたいと思います。手作り感については、人件費も上がっているので、難しいところですが、ひと手間というのを、最大に活かして商品の魅力を上げていきたいですね。生地作りだけでなく、トッピングなどの仕上げまで重視できるように、パン職人の仕事に留まらず、料理人としての仕事もできるように意識していきたいと思います。 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。






