手間の掛かる商品が売れる - 赤丸ベーカリーの赤丸尋智社長 - ブランスリー電子版

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インタビュー/2016年9月号

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手間の掛かる商品が売れる - 赤丸ベーカリーの赤丸尋智社長
店主の赤丸尋智さん(左)と妹の末千江さん
 現在3代目になる赤丸尋智(ひろのり)さん(55歳)が経営する赤丸ベーカリー(電話03−3971−6624)は、93年前の大正12年(1923年)、赤丸文化堂という和菓子店として現在地(東京・豊島区雑司が谷)に創業された。昭和25年(1950年)、創業者の祖父が、「これからはパン」と判断し、パンの製造販売へと転業を果たした。今、経営の一部を支えるラスクは、10年前から本格的な製造に取り組み始めた商品だ。わざわざ関西地方からも直接購入に客が訪れるほどの人気商品に育て上げた。もちろん、通信販売も実施中だ。販売を担当する妹の末千江さんら家族とともに日々パン作りに向き合う赤丸社長に話を聞いた。



食パン作りから商品になるまで数日かかる看板商品の赤丸ラスク
幅広い客層が集まる赤丸ベーカリーの外観
子供連れのお母さんたちも多く訪れる 
8席あるイートインコーナー
評判上げた赤丸ラスク

―――ラスクが人気だそうですね。
赤丸 はい、お陰さまで評判は上々です。嬉しい限りです。
―――何年前から製造をしているのですか。
赤丸 本格的に作り始めたのは、10年程前です。
―――と言うと。
赤丸 ラスクを作り始めた当初は、パン屋の駄菓子的な感覚で作っていました。残った食パンを再利用していただけなんです。マーガリンを塗って、砂糖をまぶしたものでした。
―――それが10年前まで、ですか。
赤丸 そうです。本格的に作ろうと思ったのは、丁度その頃、ラスクを専門に扱う企業が登場したんです。それで、駄菓子のような中途半端なラスクでは駄目だと思い、本格的に取り組むことにしました。
―――本格的に製造を始めた頃から売り上げは良好?
赤丸 売り上げが伸びる切っ掛けになったのは、8年前に近くに鉄道の駅が出来たことです。ここから5分ほどの東京メトロ副都心線の雑司が谷駅です。それからです。
―――1日どの位製造するんですか。
赤丸 普段は20袋です。最大でも倍の40袋が限度です。日持ちするので、製造に余裕のある日には多めにラスクを作り置きします。
―――作るのに手間がかかるのですね。
赤丸 時間はかかりますよ。まずは、ラスク用の食パン作りから始めます。焼き上げた後は、冷蔵庫で3〜4日冷やします。水分を取る必要があります。パンがしっとりしていると振りかけた砂糖が焦げてしまいます。乾き過ぎても良い商品に仕上がりません。頃合いが難しいんです。
―――ラスクに適した状態になった食パンを使うわけですね。
赤丸 もちろんです。その食パンを必要な大きさにカットしてから、一枚ずつバターを塗り、砂糖を振りかけて、手焼きします。
―――大量には作れませんね。
赤丸 先ほども言いましたように、多くて40袋です。手間暇かけたおかげで評判も上々です。
―――いつも売り切れですか。
赤丸 はい。通信販売で日本中からお土産品としても購入依頼が届きます。関西地方や高知県からもわざわざ買いに来てくれるお客様もいらっしゃいます。有り難いです。商品名の「赤丸ラスク」というのは、店の看板商品に育って欲しいとの願いを込めて名付けました。丁寧に作り続けた結果、本当に看板商品に成長しました。
―――きちんと作っていることが、お客さんにもわかるんですね。
赤丸 そうだと思います。でも、このラスク作りは時間がかかります。大変なのも事実。
―――ある意味時代の波を引き寄せたとも言えませんか。
赤丸 確かに時流に乗れた部分もあったかもしれません。



50年以上前から販売されているアカマルプリン。茨城県産奥久慈のこだわりの卵と天然のバニラ香料を使用
自家製カスタードクリームがたっぷり入ったクリームパン
調理パン1番人気のエビカツパン。タルタルソースとの相性もよい
バターが100%入りのバターロール。2個入り、3個入り、4個入りと、客には嬉しい小分け
ショートケーキにも使える口どけの良いカステラで羊かんを挟んだシベリア
時機見てパンに転業

―――そういえば、創業は大正時代でしたね。
赤丸 ええ、大正12年(1923年)です。あの関東大震災の後だと聞いています。10月か11月かハッキリしません。
―――最初からパン屋さんだったのですか。
赤丸 いえ、創業当時は赤丸文化堂の店名で大福など和菓子を作っていました。
―――では、いつ頃からパンを。
赤丸 昭和25年(1950年)と聞いています。創業者である祖父が「これからはパンの時代だ」と判断し、パン屋に転業を図ったそうです。
―――時代を見る目は以前からあったわけですね。
赤丸 いや、実際にパン専業になったのは昭和40年(1965年)を過ぎてからのことです。私が子供の頃は、年の暮れになると、パン屋を休んで餅つきをしていましたから。和菓子屋の名残が昭和40年頃までは続いていたのです。
―――うまく転業できましたよね。ラスク以外でも人気商品はありますしね。
赤丸 他の商品作りを疎かには出来ません。人気のあるクリームパンやアカマルプリンを含めて30種ほどの品揃えですが、店頭に並んでいる商品すべてが、地元のお客様が育ててくれた商品ですから。
―――卸しにも販路を。
赤丸 いえ、近所のカフェが購入してくれるんです。食パンが2店舗、イギリスパンが2店舗それにバゲットが2店舗です。
―――それぞれのカフェが来店して。
赤丸 そうです。卸しは今年の5月から、池袋の西武百貨店にある三省堂書店内のカフェから依頼がありました。家族経営なので人手がありませんと断ったんですが、「取りに行きます」と言って、毎回受け取りに来てくれます。

口コミが広げるお客の輪

―――ラスクのヒットが繁盛を呼び寄せたのでは。
赤丸 そればかりではないです。8年前に駅らしい駅が出来たこともあるでしょうし、近くにあるシェアハウスに滞在中の外国人も来店してくれます。中には、パンを気に入って滞在中通ってくれた人もいました。
 この場所は弦巻通り商友会という商店街なんですが、池袋と目白の中間にありまして、付近の人の中にはこの商店街にパン屋があると思ってない人もいるのです。でも、メディアに取り上げられたことで、興味を持っていただいたり、また、街歩きの途中に新たに気づいた方々もいて、その存在も大きいです。
―――それと常連客の皆さん。
赤丸 常連客の皆さんの存在が大きいことは間違いありません。三世代や四世代に及ぶ馴染みの方もいらっしゃいます。
―――その方たちの口コミもあるんでしょうね。
赤丸 例えば、ママ友同士が赤丸のバターロールが美味しいとか、アカマルプリンが好きなど伝えて下さるのです。これが、新しいお客様につながります。

黒字は手間をかけてこそ

―――働き甲斐がありますね。
赤丸 1日20時間働きますよ。正直いってキツイです。商品価格を改めたくても材料の値段が少しずつ上がったのでは、思い切った値上げはチョッと。だからと言って、手は抜けません。これまで築いてきた「評判」から逃げるわけにはいきません。お客様のお蔭で黒字が続いていますから。
―――これからもお客様本位で。
赤丸 もちろんです。ラスク以外では、1日40個作るクリームパン。クリームは自家製です。クリーム作りから毎日の仕事が始まります。シベリアの羊かんには黒糖を加えます。羊かんを包むカステラは口どけも良くショートケーキにも使えます。50年以上前から作っているプリンの卵にもこだわります。
 お客様は見ていますよ。手間のかかる商品こそよく売れますので。一生懸命に作っていることが伝わっているからだと思います。お客様の期待は裏切れません。





原価計算女王
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