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| 特集/2016年9月号 |
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| オーナーは、パンではなく人を作れ | |
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「企業は人なり」とよく言われるが、ベーカリーも例外ではない。企業の役割が、価値ある製品を作って、価値あるサービスとともに販売することだとしたら、価値ある製品も価値あるサービスも、作るのは人であるから、企業の価値は、価値ある製品と価値あるサービスを作れる人を何人作れるかで決まる。
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| 全員がすべての工程を習得できる体制を構築 - ブーランジュリーKヨコヤマ | |
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チームの中でお互いを育てていく
JR南浦和駅から徒歩15分ほどの場所にある埼玉県川口市のベーカリー「ブーランジュリーKヨコヤマ」は、1日の来客数が1000人を超える事も珍しくない地元密着の繁盛店だ。 同店は今から12年前の2004年、オーナーの横山暁之介氏が50歳の時にオープン。屋根など随所に明るい青色を取り入れた外観が印象的な店舗で、一歩店内に入ると焼きたてのパンの香ばしい香りと店内の賑やかな雰囲気に包まれる。昼のピーク前に訪れた多くの客が並ぶレジでは、接客を行うスタッフたちの明るい表情が印象的だ。 店内中央部の目立つ位置には、最も販売量の多い食パンの「ル・マタン」(1斤税込260円)のほか、「バゲット マエストロ」(税込220円)など自家製酵母を使い独自の製法で仕上げたハード系のフランスパンや、ベーカリーコンテストで3度優勝した経験のある「クロワッサン」(税込140円)など技術力の高さを感じさせる商品が並ぶ。パンを日常食に取り入れてほしいという横山オーナーの思いもあり、普段の食事や料理との合わせやすさを意識した品揃えを特徴としている。また、もともとフランス料理店のシェフだった横山オーナーの経験を生かした具材の惣菜パンやヴィエノワズリーなども充実。ただし日常性と手軽さを重視した商品展開を方針としているため、値頃感のある価格で提供していく事も店の信念としているという。 一方、厨房の中に入ると、各自が手際よくそれぞれの持ち場を守って動いており、声かけなどでしっかりコミュニケーションをとる姿が印象的だ。 「当店では、調理、麵台、仕込み、窯、パイ室、販売の6つのポジションに分かれて作業していますが、全員がこれら全ての工程を習得することを目標に動いています。全工程を理解することで、スタッフ同士がコミュニケーションをとって協力しやすくなり、チームで動きやすいですね」と横山オーナーの下で現場の指導や管理を担当する店長の佐々木雅仁さんは話す。 実は同店は横山オーナーの強い意向で、人材育成を最も重要視した店づくりを行っている。そのため、常にチームの中でお互いを育てていけるような協力体制を作り上げているという。 職場環境に惹かれ入店する社員が多い 昨年、別の有名店から同店に移ってきたという販売チーフの渡邉健太さんは「ここは一人の人が長く働けるようにするための仕組みづくりができていると思います。色々な仕事を率先して皆に回すようにする事で技術の習得ができるようにすることで、経験1年目の若い子から既に様々なチャンスが与えられていると感じました」と話す。 また同様に昨年大手リテールベーカリーから移り現在は製造チーフの大原崇さんは「前の店は製造と販売が分かれていましたが、ここはお互いがつながって助け合えるので働きやすいです。店全体の雰囲気として一人一人の将来を考えながら成長を見守ってくれる感じがします」と言う。 また、人を育てるという事がベースにあるためか、渡邉さんは「風通しが良く相談しやすい環境が魅力的です。セミナーなどの社外活動を通じて外の世界での一般的な社会性も身につけさせてくれる点は新鮮でした」といい、大原さんは「新人のスタッフは、パンに対する思いが本当に強く将来をしっかり考え目的意識を持った上で入ってくる人が多い気がします」と話す。 入店して7年経つという佐々木店長は、もともと母校の国際製菓専門学校で講師をしていたが、安定した講師の職を離れるのはもったいないと説得されながらも、横山オーナーの人柄や同店の商品や職場環境に惹かれ、1年かけて同店に通った後、採用された。佐々木店長は「以降は毎日が充実していたので、7年間が過ぎるのが早く感じました」と振り返る。 |


| ずはスタッフ同士の横並び意識の打破から - プチ・アンジュ国立 | ||||||||||||||||
東京・国立市の「プチ・アンジュ国立」は、今年11月に8年目を迎えるベーカリー。オーナーシェフの津金一城さんが、隣の府中市にある実家のベーカリーから、その2号店として独立して開業した。 オープニングのときの製造スタッフは、府中の店で一緒に働いていたスタッフ1人と、新たに入れた製パン経験者と未経験者1人ずつと、津金さんを合わせて4人。1カ月半は、知人の店から3人手伝いに来てくれたという。 現在の社員数は、製造が7人、販売が3人で、パートは約30人。製造は、社員を目指し、3〜4カ月間の研修中であるスタッフが1人いる。したがって製造担当の社員は、じきに開業時の4人から、倍の8人となる。 「製造に関しては、開業からしばらく、作りたい理想とするものとのギャップがありました。府中の店で20年慣れ親しんだ機械から、新たに別の機械を使わなければならなくなったこともありますが、スタッフらが、各自の力を発揮しきれていなかったことも原因ですね」(津金さん) 1年半ほど経って、製造量は目標値に近くなってきたものの、それがすぐに売り上げ増加に繋がった訳ではなかったという。 「製造と販売は、並行して努力しているつもりでしたが、販売はさらに頑張らないといけないと実感しました。販売スタッフを見ていると、1人1人はそれぞれいいところがあったとしても、遠慮して、他の人と横並びに合わせようとしてしまう傾向があることに気付きました。結果として、全体の販売力の向上につながらないんです。そこで各自がやってみてよかったと思えることは、皆で共有していくようにしました。お客様に喜ばれたことは、報告し合うようにしたんです」(津金さん) 製造と販売の垣根をなくす努力 さらに、製造と販売の垣根をなくす努力をした。 「製造スタッフは、労働時間が長く、商品そのものを作っているという点で、販売より優位に立っていると思いがちです。しかし頑張っているのは販売も同じで、お客様に喜んでもらうという同じ目的を持っていることを皆が認識しなければなりません。そこで、新しく入った製造スタッフには、3〜4カ月間の研修期間を設けて、販売と、パートが主体となって行っている調理作業など、製造以外の仕事を経験させることにしました。そうすることで、持ち場や働き方が違っても、同じ心を持って頑張っていることを分かってもらえるようにしました。さらに、こうした皆の努力があるからこそ、作りたいパンを作っていけるんだということを、感じてもらえたらと思っています」(津金さん) それぞれの仕事を理解して思いを共有することで、どの立場も互いに意見が言いやすくなったという。 「特に、販売スタッフは、『これでは売り場に出せない』などと、製造スタッフに遠慮せずに言えるようになり、商品管理のレベル向上に繋がりました」(津金さん) | ||||||||||||||||
| 他人と比べるのではなく過去の自分と比べる | |||||||||||||
現在いる10人の社員は、20代が中心だ。 「純粋で素直な人が多いですね。その反面、悩みがある場合は、それに対して的確にフォローしていかなければ、もたないというような弱さがあります。ですので、できるだけ話しかけるようにしたり、男性社員とは気軽にスキンシップをとるようにしています。また、しゃべるのが得意でない人は、コミュニケーションが少ないと、どんどん思い詰めていってしまう傾向があります。仕事に対して自信が持てることが少ない間は、自分がまわりからどう思われているか不安に思っている人も多いですね」(津金さん) 津金さんは、社員と月に一度、個人面談をしている。話の主な内容は、今抱えている仕事の課題や人間関係の悩みなどで、15分で終わってしまう人もいれば、1時間以上話し込む人もいるという。 「毎月立てた目標について振り返りながら、話をします。毎月の目標は、どんなに小さなことでも良いんです。できることが増えていくことによって、それが自信に変わっていくからです。他の人を見て、『自分はまだ全然できていないから不安』という相談を受けることが多いですが、この相談に対しては、車の例え話をします。ワゴン車とフェラーリでは、フェラーリの方が高級車で憧れますが、大勢でバーベキューとかに出かけるときはワゴン車の方が便利です。だから、一概にどちらがいい車とは言い切れません。それと同じで、皆それぞれ適性があって、いいところはそれぞれ違うわけですから、他人と比べるのではなく、比べるなら1週間前、1年前の自分と比べてこそ、意味があると思います。そんな風に話をします」(津金さん) 相手に理解してもらうために表現を工夫 ただ話すだけでなく、相手にいかに理解してもうかということを一番に考えて話していくという。 「同じボールを何度も投げるのではなく、相手によって、色や形を変えて投げないと伝わらないと思っていて、どう表現したらわかってもらえるか、常に考えて話すようにしています」(津金さん) 表現方法を工夫して話すようになったきっかけは、本を読むようになったことだという。 「小説などの本は、マンガと違って活字だけで理解していかないといけないので、想像力が高まります。想像力が豊かになると、相手がどんな風に思ったり考えたりしているか、探ろうとする力もついてきます」(津金さん) 津金さんは、パン職人の道を歩む中で、自分自身の成長も感じており、さらに、他店のオーナーと関わることによって、憧れるオーナー像が目標として浮かび上がるという。 「読書の必要性と、諦めずにやり遂げることの大事さは、昔ベーカリーの勉強会で教わったことです。自分自身の成長は、その教えがきっかけとなっています。ですので、当店のスタッフたちにも、自分の本棚を開放したり、取り掛かった仕事は最後までやり遂げるように促したりしています。例えば、商品開発は、時間はかかっても、納得がいくまでやり遂げることを勧めています」(津金さん) 「釜茹でしらすのナポリピザ風」(税込198円)は、入社2年目になるスタッフが、一から製品開発に取り組み、改良を重ねて完成させた。 「経営者の立場としては、スピードを求めるのは当然のことですが、スタッフ自らの『やりたい』という気持ちをできるだけ優先するようにしています。1人でも、楽しく取り組んでいる姿があれば、まわりもその姿を見ることで巻き込まれ、次第に大きな力になっていくと思うからです」(津金さん) プチ・アンジュ国立 〒186‐0003東京都国立市富士見台2‐45‐9‐1F 電話 042‐505‐4104 営業時間 午前7時〜午後7時 | |||||||||||||
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