緩やかな発展を目指す - パン工房ポッシュの吉川知良社長 - ブランスリー電子版

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インタビュー/2016年7月号

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緩やかな発展を目指す - パン工房ポッシュの吉川知良社長
 埼玉県さいたま市の北浦和駅近くにあるパン工房ポッシュ(電話048−831−2823)は、太平洋戦争後間もない、1947年(昭和22年)創業の老舗ベーカリーだ。現在は3年前に三代目社長に就任した吉川知良さん(36歳)が現場を仕切る。創業者の祖父が手掛けた食パンの味を守りながら、地域の嗜好を反映した商品作りに取り組む。「長いスパンでパン作りを行ない、緩やかな発展を目指したい」と語る吉川社長に話を聞いた。



今年5月で創業69年を迎えた「パン工房ポッシュ」の外観
落ち着いた雰囲気の店内
駅から1分余りの駅前店の外観
創業以来現在地で69年営業

―――戦争が終わって、まだ社会が安定していない頃の創業だとか。
吉川 1947年5月の創業です。今年で丁度69年になります。当時の北浦和は田んぼだらけで、その中に駅がポツンとあった場所だったそうです。
―――なぜパン屋さんだったんですか。
吉川 戦争中、祖父は東京でパン職人をしていました。パンの製造技術を持っていたおかげで、徴兵は免れたと聞いています。パン職人を戦争中も続けられたことで、製粉業者をはじめ、材料メーカーともずっとつながりがありました。それが、戦後間もない頃の独立となったのだとおもいます。
―――創業以来ずっとこの場所ですか。
吉川 はい、ずっとです。北浦和の東口には他に5店舗のベーカリーがありますが、入れ替わりも多く、昔から営業しているのは私どもだけです。
―――駅の近くにも店舗をお持ちですね。
吉川 駅前店は3年前のオープンです。
―――3年前から2店舗体制に。
吉川 いや、創業から5年後の1952年(昭和27年)に既に支店は開店していました。支店の場所は、これまで数か所移転しています。
―――駅前店にも工場があるんですか。
吉川 ありません。この本社工場で作って運んでいます。十分に2店舗分の製造が可能です。約30坪ありますから。創業当初は工場も狭かったのですが、その後土地を得ることが出来て、今の広さになりました。
―――広い工場では、何人の製造担当者が働いているのですか。
吉川 私を入れて6人です。ベテランの方は15年になります。短い人でも3〜4年です。全員が仕込みと窯を担当します。早出の人は3時30分から、あとの人は4時から仕込みに入ります。

長いスパンの経営で黒字を維持

―――製造作業はどのようなスケジュールで行いますか。
吉川 食パンや調理パンなどは2回焼き上げますが、他の商品は1回のみの焼成です。昼前には全商品が売り場に並びます。午後2時には製造作業は終了します。
―――終了時間は早いのですね。
吉川 はい。父の時代からこのスタイルを続けています。これからも変えません。従業員への負担を少なくしたいので。長いスパンでベーカリーの経営を見ていきたいからです。パン職人は働き過ぎだと思いませんか。働き過ぎは、かえってやる気をなくすように見えます。
 私は大学を卒業した後に東京製菓学校で1年間学びました。最初に就職したのが、池袋にあったルノートルです。5年半ほど経験を積みました。そこでの就業時間は午前6時から午後4時まででした。私自身、働く時間はこの位が限界だと感じていましたので、私どもは、基本的に製造は午前4時始業午後2時終業としているのです。
―――午後2時までに作った商品は売り切るわけですね。
吉川 頑張れば、がんばっただけ結果が付いてくると思いますが、作れば売れるわけではありません。例えば、デパート内のベーカリーは常に豊富な商品展示が必要でしょうが、私たちはロスを出せません。本店に商品が残りそうな場合は、午後8時30分までオープンしている駅前店で午後5時か6時過ぎから、10〜20%の商品値引きサービスをします。ロスを出すよりもお客様に喜んでもらうことが大切なんです。
―――売り上げに影響はありませんか。
吉川 お陰さまで、売り上げ的には黒字は続いています。3年前に社長に就任して以来、商品動向を改めて見てきました。今は売れる商品の傾向が見えてきたように思います。現状維持の状態が続いていますが、今後は、緩やかな右肩上がりを目指そうと思います。



創業当時からある食パン
1番人気の「くるみパン」
450円と高価格の「ブフテル」。リッチなチーズクリームがタップリと入る
「洋風甘食」は、価格が95円と昔のまま。子供達のために作られた
スチームをかけてから焼き上げる「黒糖蒸し焼きパン」
焼き菓子では1番人気の「アーモンドクレデイン」。ラスクの表面を隠すようにアーモンドがのっている
地域性を念頭に置いて工夫をこらす

―――どんな商品が売れているのでしょう。
吉川 そうですね。まずは、「くるみパン」ですね。くるみがたっぷりと入ります。「黒糖蒸し焼きパン」はスチームをかけて焼き上げたものです。「洋風甘食」は父の時代から95円のままです。小麦粉と卵を混ぜて焼くだけですけど、しっとりとした洋菓子風に仕上げています。子供向けに考案した商品です。
 「ブフテル」は450円と高価格ですが、リッチなチーズクリームが中にタップリと入っています。一度販売を中止したのですが、3〜4年前に復活させました。一人暮らしの人は高価格帯の商品でも購入するようになったとの判断がありました。あと、今年になって「レーズンブレッド」がよく売れます。
―――レーズンの価格はいかがですか。
吉川 困っています。イースト、レーズン、クルミの高騰はすごいですね。特にレーズンの値上がりは、たまりません。今は一種類のレーズンではなく、複数をブレンドするなど試行錯誤を続けています。
―――原材料高騰は店での販売価格に反映できていますか。
吉川 お客様も材料費の高騰をご存じなので、値上げを理解されていますが、東京都内のような値上げとはいきません。
―――値上げが十分に出来ないことへの対策は。
吉川 今ですと季節商品として枝豆パンを発売しています。生地にはソフトフランスを使います。夏向けに夏みかんをのせた商品もあります。菓子パン生地にクリームチーズを絞ったものです。夏は商品の動きが鈍いので色々工夫しなければなりません。これら季節商品の売れ行きが良ければ、定番商品への移行も考えます。新書品開発は、対策の一つと言えます。ちなみに、この地域ではソフトフランスも好まれるようです。同じ生地で作った商品は調理パンを中心に8種類あります。

伝統を引き継ぎ、客に選ばれる商品作り

―――商圏の把握が大切なわけですね。
吉川 本店と駅前店とはそれほど離れていませんが、本店は高齢者や子供連れのお客様が多く、菓子パンや食パンがよく売れます。駅前店は、朝と昼の調理パンが主になります。バゲットの動きもいいですが、総合的に見ると、この地域は硬い物はあまり好まれないようです。菓子パンは練乳を入れて軟らかくしています。
―――国産小麦を使っていますね。
吉川 全体の半分の商品に使用しています。配合量は全て10%です。風味がいいですね。特に材料にこだわるつもりはありませんが、自分が食べて美味しいと言える商品をお客様に提供したいですね。
―――昔からの定番商品は。
吉川 やはり、食パンです。創業者の祖父は職人時代に食パンを作っていました。開業後メインの商品は食パンでした。食パンのレシピは創業時と変わりません。自分の代で味を変えたくないので、大切に守っていきます。
―――伝統を引き継いで行くのですね。
吉川 そうですね。「洋風甘食」は父が店に来てくれる子供たちを思って作りました。昭和の時代は菓子パンが主流でした。今でも食パンや菓子パンの売れ行きは上々です。昔からのお客様が好んで手に取っていきます。これからも、ポッシュのパンが好きだと言われるように、お客様に選ばれる商品を作りたいと思います。 





原価計算女王
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