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| 何でも掲示板/2002年10月号 |
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| 愛する母校の隣町の愛するパン屋さん
生活者は想う
愛するパン屋さんと呼ぶお店があります。愛する母校と呼ぶ高校の隣町にあります。 東京・世田谷区経堂にある高校に通う帰り道、毎日のように途中下車の旅を楽しんでいました。もっとも立ち寄るお店は本屋さんとパン屋さんのみ。(笑) 下北沢にあふれる数々の個性的なお店の魅力にもまだ気づいていなかった子どもでした。 経堂の隣の隣の駅に、初めて降りた日のことでした。経堂の駅にあった梅が丘にあるケーキ屋さんの看板が気になり、あのお店を見つけてみようと初めての街を歩き回りました。 細い道があちこちで交差している梅が丘は初心者には難しく、そのケーキ屋さんは見つかりませんでした。でも、他にお店があまりない通りに、灯りをひとつ見つけました。 普通の家の玄関を改造したような、小さなお店でした。そのお店の前に、いくつかの花輪が立てられていました。 「素晴らしいパン屋さんになるようにお祈りしています」 出来たてのパン屋さんです。扉の前に立ったとたん、息が止まるような麦の香ばしい香りで空気が染め上げられました。 パンは2種類くらいしか、そのときはありませんでした。「フランスパンはひたすら固くて食べにくいだけ」と思っていた、そのフランスパンの形をしていました。でもこのパンは、今まで食べたフランスパンとは絶対に違うと、お店の香りでわかりました。 一つ買って帰りました。香ばしい香りに我慢できず、電車の中で少しちぎっては手に持った本で口元を隠して食べました。バゲットを半本、そうして食べてしまいました。 そのお店に行くために、週に2回は梅が丘に途中下車するようになりました。定休日に行ってしまって地団駄を踏んだり、臨時休業で涙が出たり、入り組んだ路地のどこを行けばいいのかわからなくなり、30分さまよったこともありました。 姉が大学に受かったとき、デニッシュを2つ買いました。バナナマフィンも買いました。デニッシュの層の細かさと音のする噛み具合に陶然とし、姉はマイ・ブームだったバナナマフィンにご満悦でした。 私はリュスティックが一番好きです。売り切れのときも多くて駅から走っていきました。祖父もリュスティックが気に入りました。家に泊まったとき「このパンうめえなあ」と喜びました。その祖父はもういません。 姉が今年結婚しました。自宅から2時間かかるので高校を卒業した今はめったに行かなくなりましたが、あのお店のデニッシュにどうしても会いたくて出かけました。 姉が大学に受かったころ、私は高校生でした。そのとき買ったポワールデニッシュと、そのときはなかったマロンデニッシュを買いました。 私は今大学院生です。私が何歳になって何になっても、この愛するパン屋さんは永遠に、ちょっと遠くて行くのが大変だけど、梅が丘のあの場所で香ばしい麦の香りを漂わせていて欲しいです。 このパン屋さんの名前は「パン・ド・ラサ」です。所沢市 桂木紗枝 |




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