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| 連載/2016年3月号 |
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| 笑いの絶えない恵みに満ちたパン屋さん - 一粒の麦から30(文・本行恵子) | |
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人々が集まる多世代型シェアハウス
小田急線の祖師谷大蔵駅から徒歩5分の住宅街にある「せたがやブレッドマーケット」は、「笑恵館」(しょうけいかん)という会員制(年会費500円)のコミュニティースペースの一角にある小さなパン屋さん。製パン技術者の追崎雅賀さんと「笑恵館」オーナーの田名夢子さんとの出会いから、「せたがやブレッドマーケット」は始まりました。 「笑恵館」はオーナーの田名夢子さんが、両親から相続した家屋を改築し、多世代の人々に利用してもらえる「みんなの家」を作りたいという構想から生まれたコミュニティースペースです。 かつてこの場所には田名さんの両親が1941年から住んでいた家があり、1955年には敷地内に10部屋のアパートを建て、衣食住を共にする下宿屋を営んでいました。その後2010年までは賃貸アパートの「シェルハウス」として経営を続けて来ましたが、徐々に空き室が目立つようになりました。そこで田名さんは近隣の民生委員の方々の協力を得て、空き室の有効利用策として「高齢者のためのサロン」や「子育てサロン」を始めました。利用者は2年間で延べ1250人にもなり、現在もその交流は続いています。その後老朽化したアパートの改築と母屋の有効利用を考えていた田名さんは、世田谷区産業振興公社が主催する「せたがやソーシャルビジネスセミナー」で起業支援家の松村拓也さんと出会います。そして「住み慣れた家で人生を全うする」という構想と、多世代の人たちが利用できる場所を作りたいという願いから、「多世代型シェアハウス研究会」がスタートします。「遠くの親戚より身近な他人と穏やかな家族を作り暮らしたい」と、ミーティングが重ねられてきました。そして100坪以上ある土地を切り売りするより「みんなの家」にして、多くの人が集い共有できる食堂、ガーデン、シェアオフィス、住居専用アパートを作ることを考えました。 2013年7月には「笑恵館クラブ」が発足し、パン屋さんを起業したいと考えていた追崎さんが加わり、「笑恵館」の事業者第一号となりました。はじめ田名さんは事業所として食堂を作りたいと考えていましたが、追崎さんのパン店経営に対する熱意に心動かされたのです。現在活動中の事業者は、アクセサリー、子供服、プリザーブドフラワーなど自作の品を置いてミニショップを運営しています。また学びの場として公文書写教室や英語教室などに使われている部屋もあります。そして演劇の会、ウクレレを練習する会、ハワイアンフラ・ミュージックセラピーの会のほか、ボランティアでおもちゃを修理する「砧おもちゃ病院」などのユニークな活動もあり、連日誰かが「笑恵館」を訪れています。 食べる人の笑顔を励みにパン作り 追崎さんはチェーンベーカリーの現場で、製パン技術を身に付けて来ました。その後、江戸川区の西葛西にあるパン技術研究所の100日コースで学び、同研究所の助手として働いてきました。いつか自分の店を開きたいと考えていた頃、「笑恵館」で事業者を求めているという話を聞き応募しました。開業までの準備期間が短く慌ただしかったのですが、今までの業界の繋がりもあり、機械や材料メーカーの協力者に恵まれました。「笑恵館」で行われているイベントや教室には親子で訪れる人が多く、天気の良い日は庭が保育園のように賑わいます。 「せたがやブレッドマーケット」のパンを手にした子供たちの笑顔は、周りにいる人たちも幸せな気持ちにさせてくれます。現在は追崎さんひとりで製造と販売を担当し、商品の30アイテムは食パンやバゲットの他ドイツパンを含めた食事パンが80%、菓子パン、調理パンがそれぞれ10%です。パンは生鮮食品なので毎日買いに来て欲しいと、「カニパン」(60円)などは子供でも食べ切れる小ぶりのサイズになっています。人気の「ごまとさつま芋」(300円)や多加水のパン「くるみとレーズンのロデヴ」(300円)は、味わい深いパンで、開店当初からのロングセラーです。最近は口コミで知名度が高まり、イベントの出店依頼が増え、保存がきく商品にも力を入れはじめました。笠間市の磯蔵酒造の酒粕を使った「酒粕グリッシーニ」(300円)や、世田谷土産に認定された11種類ある「気まぐれラスク」(各300円)も好評です。 笑恵館のホームページは、http://shokeikan.com 、せたがやブレッドマーケットのホームページは、http://setagayabreadmarket.jp 。 本行 恵子(ほんぎょう けいこ) パンと食のライター。家庭製パン教室を10年間主宰した後、パン業界専門誌『B&C』の編集記者、編集長として勤務。16年間の在職中、日本各地のリテールベーカリーや欧米、アジア諸国を訪問し、パンと食文化を取材。現在はフリーの立場で、業界専門誌や企業ホームページでの執筆活動、業界関連団体への企画提案などを行っている。ライフワークは、パンのある食卓の提案。 |




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