家に帰る感覚で来店してほしいと願う - 明治堂製造チーフの鈴木智之さん - ブランスリー電子版

2026年10月21日に公表されたPHPの脆弱性(CVE-2026-109618、CVE-2026-109619)については、いずれも対策を完了しています。

ブランスリーアーカイブ(創刊号からの全記事)
記事の閲覧
<<戻る写真をクリックすると拡大写真が見られます。
インタビュー/2016年1月号

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。


家に帰る感覚で来店してほしいと願う - 明治堂製造チーフの鈴木智之さん
製造チーフの鈴木智之さん
 1889年(明治22年)に現在の東京・文京区内に創業し、今は北区王子で地域一番店として地元に根差した店舗運営を行なうる明治堂(電話03‐3919‐1917)は、4代目の中山和弘社長が巧みな手綱さばきをみせる。150種類の品揃えは、新商品づくりへの挑戦の結果だ。その先頭に立って製品づくりを担うのは、製パン技術者として14年の経験を持つ、製造チーフの鈴木智之さん(33歳)だ。今回は鈴木チーフに話を聞いた。



創業は明治22年。150種のパンで客をもてなす明治堂の外観
学校帰りに母子で訪れる客も多い
クルミとチーズを包み込んだ全粒粉とライ麦粉入りの「モンブールスペシャル」
毎日10回は揚げる1番人気の「カレーパン」
2番人気の「クロワッサン」。4個入りの販売もある
集客力支える積極的な商品開発

―――来店客数が増えているそうですね。
鈴木 はい、今は平均すると毎日300〜400人のお客様が来店します。この地域は、例えば、クロワッサンを1個300円で売れるような場所ではありません。店内の商品価格を見ていただければお分かりになると思いますが、1つ100円台が中心です。高い商品でも200円台後半の値付けがせいぜいです。ですから、多くのお客様に来店していただけることが重要なんです。
―――客数を増やす工夫をされているわけですね。
鈴木 特に意識してはいません。社長は常々「お客様に楽しみにしてもらえる物づくり」を私たち従業員に話しています。150種類の商品がありますが、これは積極的に新商品づくりに取り組んできた結果です。1年間に開発する新商品は30種類になりますが、残念ながら定番商品に至るのはその内の10%未満ですね。他に季節商品があります。
―――製造技術者は、鈴木さんをはじめ正社員3人、アルバイト2人ですね。この5人のみが商品提案や開発に取り組むのですか。
鈴木 新商品への提案は誰でも出来るんです。仮に新人であっても商品づくりに関わってもらいます。良い商品だと判断された時は採用します。新人は特にチャレンジすることが大切ですから。
―――新人にも積極的に提案を求めるんですね。
鈴木 皆が、人や商品を客観的に見られるようになると思います。自分のセンスを信じることも大事ですが、他の人のセンスや味覚を十分に生かすことの方がずっと重要です。
―――提案は製造担当者だけですか。
鈴木 いや、売り場を担当する販売スタッフからも提案があります。お客様の声を直に聞けるのが販売スタッフたちです。お客様の要望を製造担当に伝えてきますので、その声を参考にして、商品へと具体化していきます。
 販売スタッフは本当に接客のプロだと思います。常連客の名前と顔、それに好みを覚えているんです。購入する商品も分かっているんですよ。
―――製造と販売それぞれの努力が集客につながっているわけですね。
鈴木 私どもの商品が、お客様の食卓にいつも必要なものでありたいと願っています。生活を支えるパンです。親から孫まで3世代で来店する方も多いのです。お客様に飽きられない商品作りをすることが、来店客の増加につながっているのならパン作りに携わる者として励みになります。

客への気遣いから様々な新商品が生まれる

―――壁に、卵や乳製品の不使用を知らせる案内が掲示されていますが。
鈴木 アレルギーの問題があると聞いていましたので、3年ほど前から卵と乳製品の不使用表示を始めています。表示品目は150種類中の半分以上です。各商品のプライスカードに、卵不使用の場合は黄色、乳製品不使用の場合は白色のシールをそれぞれ貼っています。
―――お客さんへの気遣いですね。他にもあるんですか。
鈴木 フランスパンは少し柔らかいかもしれません。常連のお客様には高齢者の方も多いものですから。それに、お客様の多くはご家庭でトーストして食べるようです。ですので、焼き上がりを80〜90%に抑えました。こうすると、トーストした時にパンがパサパサになりません。それと、食パンの半斤売りは良く出ますね。大型パンのハーフサイズも。単身者が増えていますから。
―――健康志向にも応えているようですね。
鈴木 随分以前から、胚芽のパンは販売していますが、全粒粉を使い始めたのは3年前からです。全粒粉は主に食パンに配合しています。ライ麦粉は40%入ったライ麦パンやカンパーニュなどに使っています。徐々にですが、人気が出てきていると感じています。
―――ハード系のパン全体の売り上げは。
鈴木 全体に占めるハード系のパンの割合は30%程度です。中心はバゲットやバタールといったフランスパンです。天然酵母を使った生地でクルミとブルーチーズを包んだモンブールスペシャルには全粒粉とライ麦粉が配合されています。定番のオリジナル商品です。
―――他にお勧め商品はありますか。
鈴木 7〜8年前に商品化した、イタリアでパスタ用に使うセモリナ粉を100%使用したフォカッチャ生地で作った「プロヴァンスの野菜畑」という商品も定番のお勧め商品です。カボチャ、ズッキーニ、パプリカなど数種の野菜を炒めて、チーズを入れた商品です。入っている野菜が焼成中に焦げないように、丸めた後もう一枚生地をかぶせています。



セモリナ粉100%で作った「プロヴァンスの野菜畑」
2階のカフェは地元の人の憩いの場
150種のパンを揃える店内
毎日10回揚げるカレーパンクロワッサンも頻繁に焼成

―――人気の商品は。
鈴木 1番人気はカレーパンなんですけどね。材料には良いものを使っています。1日に10回揚げます。30分〜1時間おきに揚げていますよ。5年前から今のスタイルにしました。お客様にいつでも揚げたてを提供したいですから。それまでは、日に数回まとめて揚げていました。2番人気のクロワッサンも毎日6回以上は焼き上げます。カレーパン同様常に焼きたてを提供したいですので。良質のバターを使っています。
―――先程、地域性を考慮すると高価格帯の設定は難しいとのお話でした。近年の材料の値上げを吸収できていますか。
鈴木 材料の値上げの影響は大きいですよ。数年前に価格を改定しましたが、最低限の改定に留めました。売り上げアップには、付加価値を提示し続けることも必要です。
―――午後8時30分まで開店していますよね。
鈴木 帰宅の遅い方のためにオープンしています。JR京浜東北線の王子駅が5分ほど先にありますし、付近にマンションも増えました。利益の増加を見込んで夜遅くまで開店しているわけではありません。実際、利益率でみると、遅い時間帯はあまり良いとは言えません。
―――それでも開店しているわけは。
鈴木 店の付近には高校が3校あります。朝の通学時間帯や午後の帰宅時間帯にはよく生徒たちが寄ってくれます。他にも小学校に保育園、それに病院まであります。子連れの主婦や病院帰りの人も来店します。なんと言うか「人」に恵まれた環境なんですね。「人」は大切です。お客様には、パン屋に行くのではなくて家に帰る感覚を持ってもらえるように、焼きたてパンを通して丁寧に接していきたいと思います。



原価計算女王
原価計算女王

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。

今月の公開記事

  1. POLINの高性能オーブンを日本市場へ 。450℃の焼成力と緻密なヒーター制御 - スズキ産業の下河拓磨社長
  2. 見やすい売り場と旬の味で、地域が誇れるベーカリーへ - アリマベーカリー
  3. 「ちいかわ」の世界観を表現したパンと店づくり - ちいかわベーカリー
  4. 掲載から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文を公開しています。
    ブランスリーアーカイブ
ブラ立ち読み
(記事の無料メール配信)
詳細はこちら