改革こそが味を守るための原点 - コティベーカリー店主の馬中俊夫さん - ブランスリー電子版

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インタビュー/2015年11月号

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改革こそが味を守るための原点 - コティベーカリー店主の馬中俊夫さん
看板商品の「シベリア」と共に、店主の馬中俊夫さん(左)と夫人のいつ子さん
 神奈川県横浜市のJR京浜東北線桜木町駅近くにあるコティベーカリー(電話045‐231‐2944)は、1916年(大正5年)創業の老舗ベーカリー。創業以来作り続ける「シベリア」は同店の看板商品の一つだ。関東大震災などで被災しながら、99年もの間同じ場所で営業を続ける。「1日でも長くお客様の笑顔を見ていたい」と語る店主の馬中俊夫さん(68歳)に話を聞いた。



陳列棚に所狭しと並ぶ看板商品の「シベリア」
「甘食」も100年の味を守っている
大正5年以来この地で味を守るコティベーカリーの外観
建て替えを機に製造直売を本格化

―――1916年(大正5年)の創業以来、現在地でベーカリーを営んでいらっしゃる。
馬中 ええ、来年100年を迎えます。
―――来年で1世紀ということですね。様々な経験を重ねてきたのでしょうね。
馬中 色々ありますよ。大きな出来事といえば、1923年(大正12年)の関東大震災と太平洋戦争中の1945年(昭和20年)の米軍による横浜大空襲です。2度も被災しました。戦後もしばらくは物資不足もあり、喫茶店を経営していました。これまで、商売を続けてこられたのは、一生懸命に真面目に商品作りに取り組んできたことが、お客様に評価されてきたからだと思います。シベリアと甘食を作り続けられるのもお客様のおかげです。
―――ベーカリーを再開したのは。
馬中 昭和20年代です。40年代に入って、それまでの「日本堂」から「コティベーカリー」と現在の店名に変更してスタートしました。まだ、仕入れ菓子が多数を占めていましたけれど。朝早くから夜遅くまで、まるで、今のコンビニのようでしたよ。
―――現在の形になったのはいつ頃からですか。
馬中 1979年(昭和54年)に店を建て替えたのを機に、今のようにパンのみの製造直売に変えました。この形態は、当時としては画期的なものでした。
―――パンに取り組み始めて何年になりますか。
馬中 私ですか。パンを作り始めて50年目です。大学に入学してすぐに、父親から指導を受けました。大学の1時間目の授業は避けましてね。朝の3時間を製パン修業にあてたんです。
―――早朝から仕事して、その後授業ですか。大変でしたね。
馬中 今は夜中の12時から仕込みを始めます。それを考えたら苦でもないですよ。休みの日曜日以外は、毎日9時までかけて、60種類の商品を焼き上げていますから。全商品とも焼き上げは1回のみです。有り難いことに、毎日ほぼ売り切れます。

6時間かけて丁寧に作る

―――こちらの名物のシベリアは創業以来作っているとか。
馬中 はい。毎日6時間かけて作っています。昔ながらの製法で製造しているとはいえ、使う材料の質は当然大正時代よりも良いものですし、時代の変化に合わせて、配合割合や捏ね方、それに、味も変えてきました。シベリアという一つの商品ですが、今ある物は改革の連続による結果です。
―――カステラにはたっぷりと卵を使うそうですね。
馬中 吟味した卵を使用します。カステラを焼いたら、型の中にそれを敷きます。次に水羊かん作りです。アンを水羊かんにしたのは先代からです。先代が水羊かん好きでね。作り方は、自家製のさらしあん、塩に砂糖に寒天をボウルに入れて溶かします。粗熱を取ってから、型の中に敷いてあるカステラの上に流し込んで、固まらないうちに残りのカステラを上に置いて挟みます。天板で重しをして固まったら、型から外して切り分けます。冷ます時間を入れたら、出来上がるまでに6時間はかかります。
―――大変ですね。厚さもありますし。
馬中 先代が中に挟む羊かんを厚くしたのです。カステラもそれに合わせないと。食感と味のバランスは大切ですから。シベリアの作り方には基本がありますが、10店のパン屋があれば、その数だけシベリアがあります。ですから、ここにあるシベリアはコティベーカリー独自の商品ということです。
―――2年前に公開された宮崎駿監督のアニメ作品「風立ちぬ」の中にシベリアが登場して注目されました。
馬中 アニメの公開で確かにこちらも注目を集めました。外国の方も来店してくれるようになりました。励みになりますね。継続は力と言いますから、毎日作るぞといった気持ちは持ち続けたいですね。



レジでは、いつ子夫人と顧客との会話が弾む
子供や女性に人気のメロンパン。左がパンダ、右がコアラ。コティベーカリーの商品は、クッキー以外乾燥を防ぐため、きちんと包装されている
看板商品の「シベリア」(上)と「甘食」(左)
三が日はシベリア尽くし

―――お正月もオープンするとか。
馬中 三が日のことですか。ある時、お客様から正月もシベリアが食べたいとの要望がありました。それで、1日〜3日までオープンすることにしました。甘食とクッキーも販売しますが、店の棚はほとんどシベリアで埋まります。
―――三が日はシベリアだらけですか。
馬中 はい。1人でも多くの人にシベリアを味わっていただきたいですから。だから、1日でも長く作り続けようと考えています。
―――ところで、甘食も創業以来作られているのですね。
馬中 甘食も来年で100年ですよ。生地にはたっぷりと卵が入ります。蜂蜜とマーガリンもね。パサつきの少ない、しっとりした甘食が出来上がります。絞り袋に入れた生地を天板に絞って、その生地の上にマーガリンで切れ目を入れたら、オーブンで焼きます。シベリアと比べると、甘食は作りやすいですね。
 シベリアは型を使います。1つの型から48個のシベリアを切り分けます。つまり、甘食は不足している数だけを作ることが可能ですが、シベリアは型が基本ですから、簡単に不足分だけを補えないのです。そういう大変さがあります。

自分が美味しいと思う商品を提供

―――ぶどう食パンも人気があるそうですね
馬中 ぶどうが生地の2倍入っています。およそ20年前から製造販売をしています。うちの通常の食パンと比較すると倍以上の重さになります。
―――最初から今の形ですか。
馬中 最初からではありません。美味しさを追求して徐々にぶどうを増やしました。現在あるのはその結果です。
―――この商品も手間暇かかりそうですね。
馬中 かかります。食パンのどこを切っても同じようにぶどうがたっぷり入っている状態にするために、混ぜ方を工夫しました。基本は予約販売です。前日までに連絡していただければ、確実にお渡しできます。
―――店売りはしないのですか。
馬中 10斤だけ、1斤380円で販売しています。
―――近年は乳製品だけではなくレーズンの値段も上がっています。この価格で十分な利益は。
馬中 利益率は小さいです。これでも40円値上げしました。おっしゃるとおり材料の価格が上がっています。お客様のほうが心配してくださるんですよ。「もっと高くていいんじゃないの」って。
―――それは嬉しい言葉ですね。
馬中 私の仕事は生業(なりわい)なんです。「企業の経営」とは違いますかね。シベリアには質の良い卵をたっぷりと使います。ぶどう食パンには私の好きなぶどうを、通常の山型食パンの膨らみを維持できる限界まで入れます。自分が美味しいと思う商品をお客様に提供したいからです。
 私どもの商品を食べたお客様が笑顔になってくれることが一番です。





原価計算女王
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