ナチュラル クプゥー/いい意味で客が店の都合に合わせる

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お店拝見/2015年11月号

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いい意味で客が店の都合に合わせる - ナチュラル クプゥー
「ナチュラル クプゥー」は、東急世田谷線・上町駅からすぐの立地
入り口のドアには、店名の入ったステンドグラスがはめ込まれている
製造は3人で行う。右は工房長の落合正昌さん
白い壁と木目調の内装が印象的な店内。通路は広くベビーカーなども入りやすいようになっている。中央の丸太風の柱も印象的
開店時刻の10時が最も豊富な品揃え

 「いつもの食パンお願いね。これから出かけて、帰りにまた寄ります」
 こう話すのは、今年12月に10周年を迎える東京・世田谷区のベーカリー「ナチュラル クプゥー」の常連客だ。最寄駅の東急世田谷線・上町駅からすぐという好立地の同店では、朝出かける前に予約で立ち寄っていく客もいる。
 また、同店は開店時刻の午前10時の品揃えが最も多い。そのため、そのことを知っている常連客の多くは、開店直後の早い時間に来店する。
 「当店の生地は、すべて前日に仕込んでいるので、当日出せる量が決まっているんです。開店時に最も商品が並ぶように焼成します。店頭の商品がなくなっても追加焼きができません。昼の12時頃でも残り少ないときがあるので、そのときに初来店の方が当たってしまうと驚かれます。事情をお話しすると、『次からはもっと早い時間に来ます』と言ってくださいますね。また、いつも夕方いらっしゃる方が、朝早く来られたときは、『こんなにあるんですね』と驚かれます」(工房長の落合正昌さん)
 製造スタッフは、朝3時に厨房に入り、その日に焼くすべてのパンの生地状態をチェックする。生地状態に合わせ、分割、成形、焼成と進めていく。
 そして午前6時、今度は翌日焼くパンの製造量について話し合う。翌日の天気予報や、これまでの10年間の経験値などをもとに、売れ行きを予想して決める。
 製造量が決まったら、午前7時には翌日のパンの仕込みを始める。仕込みは昼の12時頃には終える。
 このように同店のパンは、前日の午前中までに仕込み、発酵に長い時間をかけて作っていくので、例え当日早い時間に売り切れてしまっても、その場で追加焼きすることはできないのだ。



「角型食パン」(税込250円)や「山型食パン」(税込270円)などの食パンは、予約も多い同店の一番人気商品
食パンに次ぐ人気の「クロワッサン」(右、税込140円)とクロワッサン生地で粒あんを包んだ「小倉ワッサン」(左、税込160円)
惣菜パンで一番人気の「焼きサンド」(税込200円)。具材は、無添加のベーコン、しめじ、タマネギなど
菓子パン生地をデニッシュ生地で包んで食パン型で焼いた「ピール」(税込600円、ハーフは300円)
「チーズデニッシュ」(税込140円)。さくさくとした食感とチーズの香ばしさが楽しめる。おつまみにも最適
「クリームパン」(税込140円)や「小倉あんパン」(税込140円)などの定番の菓子パンが揃う。小ぶりなのとリーズナブルな価格なのとで気軽に買える
材料をプライスカードに明記

 パンは、食パン、菓子パン、惣菜パン、ハード系と幅広く70〜80種類ほど揃う。食パンは同店の一番人気の商品で、「角型食パン」(税込250円)と「山型食パン」(税込270円)がある。油脂に太白ごま油を使用している「角型食パン」はしっとりとした食感が、油脂を使用していない「山型食パン」はさっくりとした食感が特長で、常連客の好みははっきりと分かれているという。どちらも、乳、卵を使用していないので、乳幼児を持つ親に喜ばれているという。
 「保育園のお弁当に使われるお客様も多いですね。なかには、『こんなにふわふわでやわらかいのに、バターとか乳製品は使っていないんですか』と、保育園の先生から訊かれたと話すお客様もいました。当店のパンは、シンプルな材料で作っているところも、お客様は気に入ってくださっているようです。使用材料はすべて、開業時から、プライスカードに記載しています」(落合さん)
 食パンは、一回り小さい型で焼いた「ごまの食パン」(税込160円)や「胚芽の食パン」(税込160円)などもあり、少しずつ食べたいという客に人気だという。
 菓子パンや惣菜パンも、一つひとつが小ぶりで、価格もリーズナブルだ。「クリームパン」や「小倉あんパン」など定番の菓子パンは税込140円。「ソーセージのお舟」(税込190円)は、長さ10センチほどの舟形のパンに、ソーセージがのった調理パン。ソーセージは無添加のものを使用しているので、気軽に、かつ安心して買える。
 パン以外の商品は、「バナナシフォン」(税込200円)や「抹茶シフォン」(税込200円)などのシフォンケーキのみ。クッキーなどの焼き菓子は、バターの供給量が安定しないことなどから作っていないという。
 「シフォンケーキは、卵白の有効活用です。『クリームパン』(税込140円)などに使うカスタードクリームやチョコレートクリームは、卵黄だけを使用しているからです。この自家製クリームを使用した商品は人気で、サクサク食感のデニッシュコロネの中にクリームを詰めた商品も人気です。このコロネは、涼しい時期限定の商品なので、『今年はいつから始まるんですか』と、楽しみに聞いてくださるお客様もいらっしゃいます」(落合さん)

炊いた白米のように飽きのこないパン

 同店のパンは、すべて、「天然酵母」を使用し、長時間発酵させて作る。
 「毎日食べても飽きないパンを提供したいと思っています。炊いた白米のように、おかずの邪魔をしないような、主張しない味のパンです。生地作りでは、小麦や酵母、塩など基本の材料以外はできるだけ使わず、前日に仕込んで発酵を長くとることで、アミノ酸のうま味と小麦の味を引き出します」(落合さん)
 同店の工房長を務める落合正昌さんは以前、長野県小諸市に7月に東京から移転した「スピカ・麦の穂」や、東京・渋谷区の「ルヴァン」など、自家製酵母を使用して作ることでも名が知られている有名ベーカリーに勤務していた。
 現在同店で使用している酵母が、自家製酵母ではなく、製品化された天然酵母を使用していることについて、こう語った。
 「全粒粉やレーズンなど様々な材料で起こした酵母を使うと、それぞれの特徴が出て、味の主張の強いパンになります。反対に、主張のない、炊いた白米のような味のパンを目指すには、当店が使用している『天然酵母』が適していると思います。酸味の有無について、お客様から聞かれることがよくありますが、『酸味は全くありません』と言い切っています。酸味の苦手なお客様は、安心して購入されます」(落合さん)
 ハード系のパンも、酸味はなくソフトに仕上げているという。このように、炊いた白米のように食べられるパンは、客にとっての食べやすさを追求することで生まれていくのだ。

SHOP DATA
店名:ナチュラル クプゥー
住所:〒154‐0017 東京都世田谷区世田谷2‐4‐2
電話:03‐3428‐0141
営業時間:午前10時〜午後5時
定休日:月曜、火曜
品揃え:70〜80品目
スタッフ:製造常時3人、販売常時1〜2人
店舗面積:厨房約11・5坪、売り場約5・3坪
月商:160〜180万円





原価計算女王
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