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| 海外情報/2002年11月号 |
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| アメリカのリテールベーカリーと商品開発高橋秀尚=(株)パンワールド代表取締役、海外情報研究会主宰 価格が比較できる商品は売らない アメリカのリテールの悩み事は?
今まで折りにふれてアメリカのリテールベーカリー業界に関してのさまざまな話題をお伝えしてきたが、今回は彼らの商品開発についてお話しよう。 リテールベーカリーの組織であるRBAについては既にご紹介をしてあるが、いろいろな活動を行うための分科会がある。その一つに「Eメール グループ」というのがあって、インターネット経由でさまざまな意見、情報、悩み事の解決方法などを交換している。 筆者も仲間に入れてもらったので20通ほどのメールが毎日届いている。時差の関係で現地の夕方が日本の朝方になるから、私が出社する朝方はメールを開いてみるのが楽しみである。 ベーカリーの朝が忙しいのはどこの国も同じであろうが、現地時刻の深夜にメールを打っている人もいて、いったいどのような生活をしているのだろうかと思うこともある。 さて、彼らの目下の悩み事は何かを最近調べてみたのでご紹介しよう。最も多く話題になったことを順番に並べてみると…。 (1)商品開発 (2)よい人材の確保 (3)従業員の教育と待遇 (4)孤独感を抱くことへの対処 …などである。 売上が落ちたとか、利益が出にくくなったというような暗い話が少ないのは不思議である。製造、販売を担当する従業員の確保はどうしたら良いかという質問や、時給額・有給休暇の決め方についての話題が多い。 アメリカには日本でハローワークと呼んでいる職業斡旋をする「ジョブ バンク」というのがある。人手が必要になった場合には、募集登録をすれば人材斡旋をしてくれるシステムになっているのだが、実際に良い人材を見つけるのは難しいようだ。特に製造要員は労働条件が厳しいので今日のような不景気の時代でも人手不足だという。 アメリカのリテールベーカリーの多くは家族経営のファミリービジネスなのでオーナーが製造責任者となり、店に出て販売を担当するのは奥さんという例が多いのは日本と同じである。 アメリカのリテールの商品開発は? さて彼らの最大関心事である商品開発は、どのように行われているのだろうか? 今まで筆者がお会いしたリテールベーカリーオーナーの多くは仕事熱心で研究心も旺盛であり、あらゆる機会を活かして新商品開発を手掛け、商品化に努めている。そのアイデアは次のような方法で得ているようだ (1)自分が加入している団体の「レシピー サービス」 例えば最大規模の団体であるRBAは約2000種類のベーカリー商品の配合表を持っている。そして「レシピー サービス」と呼ぶシステムを持っている。会員が希望すれば、本部から該当する配合がEメールで送られてくるという仕組みである。 (2)いわゆる関連業界が準備している配合表の提供サービス 製粉会社などは競って新しいレシピーを準備し、無料で提供している。当然であるがレシピー提供会社の製品を使うことを前提としていて、少々気になるが、メーカーによっては、フィールドサービスと呼ばれる技術者の派遣も行っているので、何かと心強いサービスを受けることが出来る利点がある。製粉、ミックス粉会社に多い。 (3)アメリカに多いレシピーを有料で提供するベーカリー サービス会社の利用 筆者もこのシステムに興味があり、今までいろいろ調べてみた。その多くは年間200ドル(約2万5000円ほど)前後の会費を払い、パスワードを登録して希望するレシピーを入手するシステムである。筆者の知る限りでは約10社ほどある。アメリカのリテールベーカリーの多くは、ブレッド、ロールに加えてケーキやクッキーなども商品化し販売しているので、このような会社が提供するレシピーは多種多様である。 アメリカのリテールのイベントセールは? さて、これから年末商戦の時期になるのであるが、アメリカにおける重要なイベント・セールの商品をご紹介する。 中にはいったいどのような商品であるのか、イメージがつかめないものもあるが、百花繚乱の感がする。 ▼クリスマス ◎レブ クーヘン(クッキー) ◎Buche de Noel ◎ペパミント クッキー ◎クリスマス フルーツケーキ ◎パルメザン チーズ コーン ◎クリスマス エッグ ◎クランベリー ブレッド ◎ジングルベル フッジ ◎ジンジャー クッキー ◎ジンジャー ブレッド ◎バナナ ブレッド ◎Spumoni(スプモニ)イタリアン クリスマス クッキー ◎パンプキン ブレッド ▼ハロウィーン このお祭りは万聖節と呼ばれ10月31日の夜に行われるが、仮装をする習慣があるようだ。したがってベーカリー商品も一風変わったものが多い。 ◎ドラキュラ ケーキ ◎クロネコ カップケーキ ◎幽霊クッキー ◎蝙蝠(こうもり)クッキー ◎ゴブリン(鬼)クッキー ◎スパイダー(クモ)ケーキ ▼バレンタインデー 愛の証としてチョコレートを贈る習慣は今や世界的に広がったが、もとはと言えば5世紀にイタリアで起こった物語が原点であるという。2月14日に行われる聖バレンタインのお祭りである。 ◎チョコレート ハート ケーキ ◎フロッグ(蛙)ケーキ(蛙は幸運をもたらすとされる) ◎ハート マジパン アメリカのリテールは自信を取り戻した さて、今月はいささか重要な商品開発の現状をお話する。 今やアメリカのベーカリー業界は、リテールベーカリーとスーパーマーケットのインストアベーカリーに加えて「パネラ ブレッド」や「スターバックス」のようなフードサービス・ベーカリー、さらに巨大小売業「ウォルマート」のようなスーパーセンター・ベーカリーが加わった熾烈な顧客獲得レースにしのぎを削っているのが現状である。筆者の記憶では、このような市場シェアの取り合いにリテールベーカリーが巻き込まれて慌てた時期は2〜3年前であったと思う。その後リテールは自分たちの方向性を再確認して、本来の落ち着きを取り戻したように見受けられる。今年の9月に行われたリテールベーカリーを対象とした意識調査結果がある。 設問(1)=売上の増減はどうか? ▽以前より増えた……18% ▽以前と同じ…………58% ▽以前より減少………24% 設問(2)=今後の経営に不安を感じるか? ▽特に感じない…………62% ▽不安である…………16% ▽分からない…………22% 手作りのパンで勝負、味の差は必ずわかる いささか自信を取り戻したと思われるアメリカのリテールベーカリー業界であるが、その理由は何であるかを筆者が親しくしているベーカリーのオーナーに電話インタビューしてみた結果をまとめてみよう。 (1)おおよそ3年ほど前になるが、スーパーマーケットのインストアベーカリーが、「手作りのヨーロッパ風アーティザン ブレッド」の売り出しキャンペーンを大々的に始めたときが一番あせった。手作りはもともとわれわれの本業であるが、あたかもスーパーマーケットの独壇場であるかのような宣伝には我々も驚き、あせりを感じた。 (2)スーパーマーケットの利点は彼らが惣菜類とパンを組み合わせて売ることが出来る点にある。パンと惣菜を同時に買いたいお客がスーパーマーケットに流れてしまうのは致し方ないだろう。我々は本当に手作りしたパンで勝負をする。お客は必ずその味の差が分かってくれると確信している。 (3)我々の店に来てくれるお客で値段が高いという事を言う人はいない。逆にいえば、価格比較が出来る商品は売らないようにしている。例えばホワイトブレッドなどまさに低価格競争のための商品といえる。リテールベーカリーがしてはいけないのは低価格競争に巻き込まれることだ。そのためには自分の店の商品に自信を持つことだ。今の時代にお客が求めているのは、マーチャンダイズ(商品)、サービス(商品説明)、コンビニエンス(買いやすい店)の3要素だと思う。 ◇ さらにリテールベーカリーのような小さな企業ではオーナーの強力なリーダーシップ(指導力)が重要であるという。そしてオーナーとしての理想像はという問いに、次のように答えてくれた。 (1)フレッシュ スタート 毎日新しい気持ちで仕事を始めよう。 (2)グッド リスナー 聞き上手になろう(例えば社員のよき相談相手になろう) (3)コンフィデント 自分に自信を持とう (4)ディサイシブ 決断力を持とう (5)インスジアスティック 物事に熱心になろう (6)ナレッジアブル 知識力を持とう (7)オープン マインド 広い心を持とう (8)パッショネート 情熱を持とう (9)テーク リスク 時として大胆になろう (10)ユア セルフ 他力本願ではいけない (11)ポジティブ 肯定的な考え方をしよう (12)エンパワー エンプロイー 部下にも権限を持たせよう (13)リスペクト 部下の言動を尊重しよう (14)スマイル 微笑みも時として必要 (15)エンジョイ ライフ 自分の生活を楽しもう ◇ そして、最後のまとめの言葉として「ベーカーはハッピー ビジネス」であるという彼らのメッセージをお伝えしておこう。 |



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