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特集/2015年9月号

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。


Yes it’s a bakery cafe!




酵母料理の店のパイオニアになろうと決意 - トゥルナージュ笹塚店
オーナーシェフの小山利千さん
京王線・笹塚駅から徒歩6分の場所にある「トゥルナージュ笹塚店」
パンは、ベーグルや、ハード系、食パンなど30〜40種類
レジの周囲には、「本日のスープ」やドリンク、セットメニューなどのカフェメニューについて書かれたポスターや黒板などを掲示
入店すぐの場所にカフェスペースがある。奥に商品が並び、レジがある。カフェスペースは2階にもある。厨房は地下1階
2年前にカフェメニューを一新

 東京・世田谷区の京王線・笹塚駅を出て商店街を進んでいくと、麦の穂をモチーフにした黒色の鉄製の門を設えた個性的な建物が姿を現す。ベーカリーカフェ「トゥルナージュ笹塚店」だ。
 門には、かき氷の写真や「オリジナル酵母グラノーラ」を紹介するポスターなどが貼られている。そして「パン焼き上がりました」という看板や、パンの盛り合わせがセットに付くカフェメニューなどの写真もある。これらを見てようやく、ベーカリーカフェだということに気付く。
 建物の地下1階は厨房で、地上1階に、パンの売り場とカフェスペースがある。カフェスペースは2階にもあり、3階は同店が主催するパン教室「インザクラス」の教室となっている。
 1階入り口から入店し、6〜7人は座れそうなカフェスペースを奥へと進んでいくと、パン売り場、レジ、2階のカフェスペースへと続く階段がある。店内にも、個性的なオブジェやイラストなどが飾られていて、アートが溢れる空間となっている。
 同店のオープンは2003年。現在主にパン教室「インザクラス」の講師として活躍しているオーナーシェフの小山利千さんが、20年前に開業したベーカリーカフェ「トゥルナージュ神宮前店」の2号店としてオープンした。
 「最初に開業した神宮前店は当初、陶器とパンを販売するカフェでした。しかし、パンの売り上げが期待以上だったので、2年後には、陶器の販売を止め、パンを専門に扱うカフェとすべく店舗を改装しました。パン教室も、その少し前から始めました。次第にベーカリーカフェもパン教室も手狭になっていき、笹塚店を2号店としてオープンすることになったんです」(小山さん)
 笹塚店は、12年目を迎えた2年前、カフェメニューを一新し、パンに使用している、高キビやナツメなどで起こした自家製酵母を、料理やドリンクにも使うようになった。店の入り口には、自家製酵母を使ったメニューを提供することを強調するため、「CO‐BO(酵母)カフェ」と書いた看板を掲げた。
 「昔と違って今は、自家製酵母パンを扱う店はたくさんあります。ないのは、その酵母を使った料理を提供するベーカリーカフェです。ずっと自家製酵母パンを作ってきたので、その自家製酵母の使い方を広げてみようと思ったんです。ただ、前例があまりないので、うまくいくかわかりませんでした。挑戦してみて駄目だったら、元に戻そうと思っていました。ですが、実際やってみると、今までの常連のお客様にもかなり受け入れてもらえて、今年で3年目ですが、軌道に乗ってきたことを実感しています」(小山さん)



パン、惣菜、サラダ、デザートがセットになった「パン・プレート」(税込970円)
高キビ酵母と甜菜糖、いちごを煮詰めたシロップをかけたかき氷「COBOICEいちご」(税込600円)
菓子の並ぶショーケースに自家製酵母の入った瓶が並び、客も見ることができる
自家製酵母を使用した「シフォンケーキ」(税込350円)などの菓子
入り口横にはカフェメニューが掲示されている
店舗入り口には、自家製酵母を使用したスープのメニューを掲示
すべてのメニューに自家製酵母を使用

 同店が培養している酵母は、レーズン、高キビ、ナツメ、リュウガン、麹のほか、梅、オレンジ、レモン、ミントなど季節ごとに入れ替わるものを入れて常時7〜8種類の穀物や果物から起こしたものだ。
 カフェメニューの料理やドリンクには、高キビ酵母をベースに使っている。パンに使うときのように発酵させるためではなく、味に深みやうま味を与える調味料として使っている。
 「リュウガン酵母は、タマネギのスープに入れると、チキンブイヨンにも負けない深い味が出ます。酵母にはそれぞれ特徴がありますが、ほとんどのメニューが高キビ酵母をベースに、日替わりで、いくつかほかの酵母を足すなどして、調味料代わりに使っています。また、発酵が進んで酢酸菌が強めになってきたら、その酸味を活かしてドレッシングやディップソースに使っています。パンに使うより長い期間使用できるのは良い点ですね」(小山さん)
 カフェメニューは、「サンドイッチ&スープセット」(税込800〜850円)や「パンプレートスープ付き」(税込970円)、酵母を練り込んだ自家製パスタ使用の「パスタプレートスープ付き」(税込980円)などで、パンやパスタなどと「日替り酵母スープ」(税込500円)がセットになっている。
 「日替わり酵母スープ」は、「酵母チャウダー」や「小松菜の酵母スープ」など常時6種類ある。
 「パンを食べるための料理と言うと、やはりスープとサラダは欠かせませんね。スープは、牛乳やポトフの自家製ソーセージ以外に動物性のものは使っていません。ベジタリアンを意識している訳ではなく、酵母を出汁として使うと、動物性のものを使わなくても満足できる味に仕上がるからなんです」(小山さん)
 ドリンクは、「CO‐BOイチゴミルク」(税込500円、牛乳の代わりに豆乳も選択可)や「CO‐BOレモネード」(税込500円)など6種類。スイーツは、「シフォンケーキ」(税込350円)や「マロンショコラ」(税込350円)などのケーキのほか、「ベリー」(税込220円)などのスコーン3種と、「オートミールクッキー」(税込150円)などがあり、ベーキングパウダーを使用しないというこだわりがある。スイーツにも自家製酵母を使用している。

スイーツには、特に力を入れたい

 7月下旬からカキ氷「CO‐BO ICEいちご」(税込600円)を始めた。昨年の好評を受けての再開だ。
 「カキ氷はスタッフにも人気で、暑い中働くのに、水分補給に良いと食べています」(小山さん)
 シロップは、甜菜糖とイチゴ、高キビ酵母などを煮詰めて作る。市販のシロップで作ると、食後、むしろ喉が渇くことがあるが、同店のシロップは、そういった感覚がないという。リピーターも増えており、1人で食べに来る客も多い。
 「スイーツは特に力を入れていきたいと思っています。コンビニでもシュークリームやロールケーキが買えますし、スイーツは近年、日常的な食べものになってきました。だからこそ、ベーカリーカフェとして、自家製酵母を使ったおいしくて身体にいいスイーツを作り、広めていくことに使命感のようなものを感じています」(小山さん)
 メニュー変更から3年、軌道に乗ってきたとはいえ、自家製酵母を使ったメニュー展開と運営方法は、まだ模索中だという。成功例として確立できたら、パン教室でも、紹介していきたいと、小山さんは意気込んでいる。

トゥルナージュ笹塚店
住所:〒151‐0073 東京都渋谷区笹塚3‐19‐6
電話:03‐5388‐5167
営業時間:午前10時〜午後8時30分(日曜は午後7時30分まで)
定休日:月曜(祝日の場合火曜日)
品揃え:パン・菓子40〜50品目
スタッフ:製造3人、販売2人
店舗面積:厨房14坪、売り場7坪、カフェ8坪



自然な流れで、業態をさらに進化させていく
「トロコーヒーアンドベーカリー」と「トロパントウキョウ」の両店のトップシェフである田中真司さん(右)と、スーシェフの長峯晴夏さん
閑静な住宅街の一角に佇むベーカリーカフェ「トロコーヒーアンドベーカリー」。一見住居のような作りの少しレトロな洋風の建物の中にある
「トロコーヒーアンドベーカリー」で料理メニューを担当しているシェフの宇野紘城さん
「トロコーヒーアンドベーカリー」の店内の様子
「トロコーヒーアンドベーカリー」のテイクアウトの売場の様子
専門性を高めたベーカリーカフェ

 東京・世田谷区の、小田急電鉄小田原線・世田谷代田駅の近くに広がる閑静な住宅街の一角に佇むベーカリーカフェ「トロコーヒーアンドベーカリー(TOLO COFFEE & BEKERY)」は2013年10月に店舗のコンセプトや取扱メニューを大きく変えてリニューアルオープンした。
 「店舗面積自体はテイクアウトコーナーを縮小する形で小規模化し、提案内容もパンとパスタのコラボという形で絞り込むこととなりましたが、専門性を逆に高める事で、その中でより提案の幅を広げる事ができるようになったと感じています」。同店のトップシェフである田中真司さんはこう話す。リニューアルを機にスタッフ各自の業務分担や接客の流れも見直し、効率も良くなった。
 同店は一見住居のような作りの少しレトロな洋風の建物の中にある。リニューアル前は1階をテイクアウトの売場とそのパンを作る厨房があるベーカリー、2階をカフェレストランとして使っていたが、リニューアル後は1階に別会社が運営するシュークリーム専門の洋菓子店が入ったため、1階の共同入口から階段を上がったところにある2階のみで新しい店舗を設計。カフェレストランの座席が広がる場所に料理用の厨房とレジ横の小さなテイクアウトの売場をつけたレイアウトでまとめた。
 実は同店は、同所から自転車で15分位離れた場所にある東急田園都市線・池尻大橋駅近くのテイクアウト専門のベーカリー「トロパントウキョウ(TOLO PAN TOKYO)」の2号店だ。そのためテイクアウトの商品は1号店の「トロパントウキョウ」から運んで来るようにしてベーカリーの厨房をなくしたという。
 また、メニューも以前は、サンドイッチやクロックムッシュなどパンを使ってコーヒーと合わせたものが主流だったが、リニューアルを機に、パスタメニューを中心に切り替えた。
 平日のランチのパスタメニューは全てパン、ドリンク付きで、テイクアウトのベーカリーでも出しているパン2種類を、パスタのソースや麺に合わせ「おすすめのパン」として出している。

リングイネのパスタ「生ハムと新たまねぎのトマトソース」には、豆乳と豆腐が入った食パン「ヒガシヤマ」とサルタナレーズンを包み込んだパン「レーズン100」のスライスを1枚ずつ添えて提供している
豆乳と豆腐が入った食パン「ヒガシヤマ」(税込520円)
左から、肉と相性の良い「スーパーバンズ」(税込140円)、「ヴィエノワ」(税込160円)
パスタやリエットと好相性の「イケジリーナ」(税込210円)
サルタナレーズンを包み込んだ「レーズン100」(小、税込240円)
パンとパスタのコラボレーション

 「パンとパスタは、どちらも小麦が主材料なので、一歩間違うと重くなってしまうのですが、パスタを作る側とパンを作る側の双方で意見を出し合い組合せを考えることで、相乗効果を目指しています」(田中さん)。
 田中さんは現在、「トロパントウキョウ」に常駐し、パン作りに専念しながら、「トロコーヒーアンドベーカリー」で料理メニューを担当しているシェフの宇野紘城さんと、毎日メニュー提案のやりとりを行っている。
 現在は主に宇野さんの方からのパスタソースなどについての提案がまずあって、それに対して、合わせやすいパンを田中さんが提案するという形をとっている。その逆に、既存のパスタソースと合いそうなパンができたら、田中さんの方からも提案していく。
 「料理はパスタソースを追求するだけでもかなり提案の幅が広がります」(田中さん)。
 パスタメニュー専門にしたわけは、限られた一軒家のキッチンスペースで、来店客に一番喜んでもらえるメニューは何かと熟慮した結果、自家製麺のパスタにたどりついたからだ。リニューアル以降売上は好伸しているという。
 製麺機を使った自家製生麺である同店のパスタは全て無添加熟成の麺で、「スパゲッティ」「リングイネ」「フェットゥチーネ」の3種類の麺を用意。パスタソースのほか麺の種類や太さ、茹で具合なども見てパンを合わせていく。
 例えば取材当日のリングイネのパスタ「生ハムと新たまねぎのトマトソース」には、豆乳と豆腐が入った食パン「ヒガシヤマ」(税込520円)とサルタナレーズンを包み込んだ「レーズン100」(大税込440円、小税込240円)を合わせて提供。どちらのパンもリングイネのパスタとは異なるもちもち感があって、トマトソースや生ハムの味を引き立てたものとなっている。

食シーンが思い浮かぶパン作り

 できれば常にパンを作り続けていたいという生粋のパン職人だった田中さんだが、修業時代、尊敬する師匠からは「食べるシーンが思い浮かぶパン作りをする事が大切」と常に言われていたという。
 「2号店(トロコーヒーアンドベーカリー)の役割は、お客様に対する『食育』というのに近いですね。2号店では全ての商品を揃える必要はありません。ただ、パンと料理を合わせた食べ方の提案はしっかり行っていきます」(田中さん)。
 例えば最近、田中さんが夢中になって勉強して得た知識をもとに開発しているものとして、糖尿病予防につながる低糖パンがある。
 「きっかけは、1号店の方のお客様に糖尿病の方がいたことです。話を聞いているうちに、低糖度のものでも、甘さが感じられるようなパンを作れないかと思いました」と田中さん。開発は順調に進み、9月中には発売する予定となったが、こうした新商品をすすめる際に1号店のほうでは、言葉での説明が100%になりがちだ。どのような食シーンで食べると良いかと説明しても、実際にそのパンを買った客が家で試してくれるとは限らない。
 「そこで最高の食シーンを提供し、料理と合わせた提案をすることが2号店の役割になります。低糖パンをいかに食べるか、といった提案の反響を2号店で見る事に意味があります。パスタソース1つでもだいぶ提案の幅を広げられますね」(田中さん)。

気持ちと誠意とやりたいこと

 もともと2号店は、トロパントウキョウの社長が知人から「閉店するお菓子屋があるので引き継いでみないか」との紹介を偶然受け、アンテナ的な意味で5年前に出したものだったが、今では両方の店舗を行き来する客も増え自然な流れで相乗効果を出せるようになった。
 同店では接客の際のマニュアルといったものは特にないという。「大切なのは『気持ち』と『誠意』、それと『やりたいこと』があるかどうかです。採用の基準もこうしたことを重視しています」と田中さんは話す。
 田中さん自身も将来の目標に向け食材などの勉強を常に続けているという。また、今は糖尿病予防の低糖パンを出すことのほか、モーニング向けの新しいメニューとして、見た目が可愛らしい小作りのパンの開発も考えている。
 「味も大切ですが、見た目も可愛くて朝からほっこり良い気分になれるようなパンを出したいですね」(田中さん)

トロコーヒーアンドベーカリー
住所:〒155‐0033東京都世田谷区代田5‐3‐1
電話番号:03‐5787‐6732
営業時間:午前10時30分〜午後8時
定休日:火曜日
品揃え:ランチメニュー約5アイテム、ディナーメニュー約20アイテム、テイクアウト約20品目など
スタッフ:製造1〜2人、販売2〜3人
店舗面積:売場3坪、厨房3坪、カフェ17坪(30席)
日商:平日10万円 土日14万円

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