バターがない! - ブランスリー電子版

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特集/2015年8月号

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バターがない!
バター不足への対処法は?

 バター不足が続いている。需要に対して供給量が明らかに少なく、その傾向は年々顕著になってきている。リテールベーカリーにとって、バターの使用は、商品差別化の決め手のひとつとなっていて、昨今のバター不足は深刻な問題だ。バターの使用は、売れ筋商品に絞って、残りは代替品のコンパウンドマーガリンを使用する動きも出てきた。今回は、人気リテールベーカリー8軒に、バター不足にどのように対処しているかについて聞いた。



ラードやプルーンピューレも使うようになった - パラオア
オーナーシェフの池口康雄さん
「パラオア」の外観
 千葉県鎌ヶ谷市の「パラオア」は、2012年に隣接する白井市から店舗拡大のために移転し、益々売上げを伸ばしているベーカリーだ。
 オーナーシェフの池口康雄さんは開業時から、油脂はバターを主力に使用しており、マーガリンは使用していないという。
 もともと、バターの使用量が多く、仕入れ先の融通が割と利くが、それでも月の半ばは希望通りの仕入れができないことが増えてきたという。
 「ブリオッシュ、クロワッサンなどの定番アイテムに使うバターは、特定の銘柄に限っていますが、その他のパンや焼き菓子などは、その時々で入荷できたバターを使うようにしました。また、バターは1カ月半分を冷凍ストックしています」(池口さん)
 池口さんは、こうした状況の中、バター以外の油脂にも目を向ける必要性を感じ、ラードを使うようになった。
 「イギリスパンにラードを使ってみたのですが、独特の香ばしさや、コクが出ることが分かりました。これに関しては、この状況が返って幸いしました」(池口さん)
 ラードの他には、プルーンピューレも使うようになった。
 「プルーンピューレを入れることで、砂糖も使わなくて済みます。油脂や砂糖を使わず、栄養価の高いプルーンが入っているという点をPOPに書けるところもいいと思います」(池口さん)
 最近は、カマンベールやパルミジャーノなど、ヨーロッパ産のチーズの値上がりも感じているという。
 「サンドイッチの具材として、カマンベールなどのチーズは使っています。値段は円安の影響だと思うのですが、約1・5倍位になっています」(池口さん)
 同店では、今年の始めに価格を改定した。クロワッサンは10円、サンドイッチは20円値上げした。
 「サンドイッチの値上げに関しては、消費税を入れても400円以上にはならないようにしました。ドライフルーツやナッツをたくさん入れるハード系のパンに関しては、実質値上げですが、商品1つの重量を1割減らし、価格はそのままにしました。1割程度だと、見た目もそこまで変わらないと思います」(池口さん)



複数の問屋から仕入れ、必要量を確保 - バゲットマジシェンヌ
オーナーシェフの加藤浩城さん
「バゲットマジシェンヌ」の外観
 神奈川県横浜市の「バゲットマジシェンヌ」は、3種類の液種を使い分けて作るパンが好評のベーカリーだ。
 バターの仕入れ状況について、オーナーシェフの加藤浩城さんは「値段も上がっていますし、入荷できる量も不安定ですね。仕入れができても、メーカーや銘柄はあまり指定できません」と話す。
 さらに、「複数の問屋さんから仕入れるようにして、必要量を確保しています。問屋さんから、キャンセルなどでバターが余ってしまったというようなことを聞いたら、迷わずそのバターを入荷させてもらうようにしています。問屋さんとは、日頃からよく話すようにしています。取り引きの多い問屋さんからは、本当に困ったとき、例えばバターの入荷が予定通りできそうにないときは、1ケース分けてもらえたりすることもあります。問屋さんとは、日頃からいい関係を築いておくことが大事ですね」(加藤さん)
 同店では、バターを使用した製品は、クロワッサンなどのほか、スコーンもあったが、現在は販売を中止している。
 「バターが不足している状況は長く続いています。パンを優先するために、スコーンは1年前から中止しています。また、クロワッサンなどバターを多く使うものは、1日の製造数を決めるようにしました。売り切れてしまっても、追加で製造するようなことはしないようにしています」
 バターのほか、ナッツ類の値上げによっても、製造を制限したアイテムがある。
 「日替わりでナッツとドライフルーツを入れたハード系のパンを販売していましたが、その販売頻度を少なくしました。ナッツが倍近く上がっていますから、ナッツを使用したパンは値上げしましたが、それでも割に合いません。ただ、全く販売しなくなってしまったらお客様をがっかりさせてしまいますので」
 こうしたなか、加藤さんは新しい素材の開拓も行っている。
 「ナッツ類の中で比較的安価なピーナッツを取り入れるようにしています。ただ、お客様に馴染んでもらうための工夫が必要です。ハード系のパンに、ピーナッツ単品ではなく、クルミやマカダミアナッツなどと混ぜて使用したり、相性の良いキャラメルと混ぜてピーナッツバターを作ったりしています」(加藤さん)



バターの代替品を探す必要があるかも知れない - オリーブクラウン
店長の長岡亜希子さん(中央)
「オリーブクラウン」の外観
 神奈川県川崎市の「オリーブクラウン」は、店長の長岡亜希子さんが1人でパンを焼く、売り場面積わずか2坪のベーカリー。農家から直送の新鮮野菜をふんだんに使用したパンやサンドイッチなどを揃える。
 店長の長岡さんは、「バターが不足しているこの状況がずっと続き、悪化していくのであれば、バターの代替品を探す必要があると思っています」と話す。
 現在は、1週間〜10日分くらいのバターをストックしながら、バターを使用した製品はそのまま提供できているという。しかし今後の状況によってはバターに代わる油脂が必要になってくるかも知れない。
 「最近は、食品添加物がないコンパウンドマーガリンも増えてきていて、その点では、安心、安全のパンを提供するという当店のコンセプトはクリアできます。これからも今までと変わらず、お客様においしくパンをお召し上がりいただけるようにするためには、バターだけにこだわらず、材料を厳選していきたいと思っています」(長岡さん)
 同店は開店して2年半が経っているが、長岡さんは、開店以後、バター以外にも、使用しているあらゆる材料が値上げされていると感じている。
 「あらゆる材料の値上げが続いていますので、心苦しいのですが、今年の4月に、ドライフルーツやナッツなどを使用したパンを値上げしました」(長岡さん)
 材料の値上げに対する対応としてとった、商品価格の値上げは、商品一つひとつのおいしさを守るためにやむを得なかったという。
 「ドライフルーツとナッツがたくさん入っていることは、お客様がその商品をリピート購入される理由の一つですので、中途半端に量を減らして調整することはせず、値上げという形でご理解していただきました」(長岡さん)
 また、長岡さんは、ドライフルーツやナッツの値上げが進んでいる一方で、スーパーやコンビニなどで、ドライフルーツやナッツが小袋に入った形態で販売されているのを目にするという。
 「需要が増えてきていると思うので、ゆくゆくは、当店で量り売りのご提供ができたらいいなと思っています」



小規模問屋の方がバターを仕入れやすい - ブーランジェリー ザクロ
オーナーシェフの森田克己さん(左)
「ブーランジェリー ザクロ」の外観
 神奈川県横須賀市の閑静な住宅街に佇む「ブーランジェリー ザクロ」は、ルヴァンリキッドを使い、低温長時間発酵で作るフランスパンがおいしいと評判の人気店だ。
 オーナーシェフの森田克己さんは、「バターが不足しているからと言っても、今バターで作っている製品をバターの代用品で作ることは考えていませんね」と話す。
 バター以外で使っている油脂は、オリーブオイルなど。オリーブオイルは、チャパタやサンドイッチの具の調理油として使っている。
 「油脂に関しては、できるだけ健康面にも配慮して選んでいます。ショートニングも、使わない方向で考えています。サラダ油を試してみたことがありましたが、味の面で駄目でした。また、白色透明タイプのごま油は結構良かったので、製品化を考えています。メーカーの方からは、クリームチーズの使用を勧められたこともあるので、試してみようかなと思っています」(森田さん)
 現在バターは、1カ月半から2カ月分を冷凍保存している。
 「問屋さんは5カ所とやり取りしていますが、大手より小規模の問屋さんからの方が、バターは仕入れやすいです」
 原材料の値上げや消費税アップなどで昨年3月、全商品を5%値上げした。
 「お客様の数は順調に増えていますので、値上げの影響はあまりないと思っています。昨年は、大手の製パンメーカーも値上げしましたしね。当店のパンは、大きさや重量感の割には抑えめな価格なので、お客様には値ごろ感を感じて頂けているのかと思っています。さらにおいしさに磨きをかけて、例え高くても、おいしいから納得の値段だと思ってもらえるようにしていきたいですね」
 また、値上げは材料費だけでなく、電気代や人件費に関しても、実感しているという。
 「電気代の節約は、電気屋さんやほかのパン屋さんから情報収集しています。人件費に関しては、現在当店ではスタッフ募集をしていますが、なかなか人が集まりませんし、時給も上がってきています」
 フリーペーパーに募集広告を出したが、あまり効果がなかったという。最近、モルダーと天板などを洗浄するための洗浄機を導入し、体制を整えている。

取引先との安定した関係の中でバターを調達 - ザシティベーカリー
「プレッツェルクロワッサン」全店舗合計で1日2000個が売れる
ザシティベーカリーの「プレッツェルクロワッサン」
「ザシティベーカリー品川店」の外観
 東京、大阪、福岡などでニューヨーク発のパンやスイーツなどを販売するカフェベーカリー「ザシティベーカリー」は、看板商品にハイブリッドスイーツの「プレッツェルクロワッサン」(税込334円)を持つ。「プレッツェル風味のクロワッサン」としてハイブリッドスイーツブームを牽引するヒット商品となった同商品は、全店舗合計で1日2000個を売り上げ、バターの使用量は約100キログラムにも及ぶ。
 バターの調達は「プレッツェルクロワッサン」の販売にとっては死活問題だ。そのため同店ではあらかじめバターのみ、専属で契約する乳業メーカーから直で仕入れているという。大量に安定した量を仕入れる事で、優先的に調達してもらい、不足が起きない仕組みを作っている。
 こうしたバターを含めた原材料の調達に関しては、「ザシティベーカリー」の日本法人を運営する?フォンスでベーカリー責任者を務める森田良太さんが担当。森田さんは同社がベーカリーレストラン「沢村」を立ち上げた6年前に、事業の新規立ち上げに携わるため入社したという。
 「もともと私の方で親しくしていたメーカーや問屋の取引先に挨拶に回り、材料調達をお願いすることとなりました。以降はずっと信頼してお願いしています」(森田さん)
 なるべくニューヨーク現地の味を再現できるよう、バターのみならず、小麦粉、砂糖など各種原材料の調達には気を配っており、今後もその姿勢はぶれずに続けていくという。

原価計算女王
原価計算女王
人気商品に優先的にバターを使用する - トーホーベーカリー
オーナーシェフの松井成和さん
「トーホーベーカリー」の外観
 東京・三鷹市の地域密着のベーカリー「トーホーベーカリー」は、バターは、人気商品に優先的に使用する形でバター不足に対応している。中でも店内で売上個数の最も多い「GOLD塩バターロール」を最優先。加塩バター使用の商品だが、焼き菓子で使用している無塩バターの一部にゲランド塩を加えたものもそちらへ回し、一人当たりの買い上げ点数も5点までに制限するといった対策もとっている。一方、焼き菓子は、バターを多く使うクッキーなどは種類を絞り込んだ形で販売している状態だ。
 そのほかバターを多く使用していた上位人気商品では「明太フランス」(税込302円)や「ミルキーフランス」(税込156円)で、昨年夏頃から、バターとハイコンパウンドマーガリンの併用を開始した。ハイコンパウンドはバター50%の配合率でバターに近い味を再現しており、品質には満足しているという。
 また、くるみやナッツなどの高騰に対しては、製品自体のプレミアム感を落とさないようにするため、「クルミパン」(税込151円)はくるみの量はそのままに、生地量のみを減らすという形をとった。蜂蜜使用の食パン「ホテルブレッド」(税込298円)は蜂蜜の量を減らし、代わりに油脂素材を適度な配合で取り入れ、「プレミアムホテルブレッド」(税込302円)というプレミアム感を出した別商品として新発売。
 しかしこうした努力を続けて不足には対応できても、原料高騰によるコスト圧迫はやはり苦しく、やむを得ない値上げをこれまで何度か行ってきた。「GOLD塩バターロール」は今年に入り2回の値上げを実施。しばらくはこうして計画的で絞り込んだ生産を継続することとなりそうだ。

ハイコンパウンドマーガリンを取り寄せ吟味 - プチ・アンジュ
オーナーシェフの津金一城さん(右端)
「プチ・アンジュ」の外観
「プチ・アンジュ」の店内の様子
 東京・国立市のベーカリー「プチ・アンジュ」は、ハイコンパウンドマーガリンを今年に入ってから積極的に使うようになった。昨年末は、業者から前倒しで先入れしたストックを使う形でなんとかバター不足を凌いだが、最近は商品の販売個数自体が増えてきたため、何点かバター代替品となるハイコンパウンド製品を取り寄せ吟味したという。「よく考え約60%バター配合のハイコンパウンドで風味もだいぶバターに近いものを選びました。コスト面も以前より若干安くなりました」(オーナーシェフの津金一城さん)。導入前は販売する商品全体の9割がバターのみ使用した商品だったが、今はハイコンパウンドなどのマーガリンを使用した商品が5割を占めるようになった。
 また、クルミやアーモンドの高騰に対しては、クルミ以上に高騰しているアーモンドの使用を控え、場合によっては、不足分はクルミで代用する事もあるという。
 チーズも十勝産から輸入チーズとのブレンド品へ切り替えた。
 「ただし主力商品でリピーターが多いものは、あまり安易に中味を変えてリニューアル発売することが出来ず、どうしても価格のみを上げざるをえない場合もあります」(津金さん)
 値上げは一昨年秋から段階的に何度か行ってきているが、今年1月も全体で5〜10%の値上げを行った。
 ただなるべくは、問屋との交流を常に滞りなくし、定期的に見積もりもとることで、安くて不足がないときに材料のストックが手に入るような努力も心掛けているという。

小規模店ならではの工夫や努力をする - リトル・ブレッズ・トゥ・ゴー
「リトル・ブレッズ・トゥ・ゴー」の外観
店長の古宮義和さん
陳列はショーケースのみで、対面販売を採用
 千葉県船橋市のベーカリー「リトル・ブレッズ・トゥ・ゴー」の店長、古宮義和さんは、バター不足や原材料の高騰に関して、小規模店ならではの工夫や努力をしている。
 昨年に関しては、仕入れ先の業者の担当者に「今年は販売できる全体の量自体が前年の7割」と聞いていたため、まだ余裕を持って出してもらえる繁忙期ではない時に余分に買っておいて、あとは自分で工夫して貯めておくようにしたという。
 保管に関しては店側のスペースが少ないため、船橋の漁港の冷凍庫を貸してくれるるサービスを友人の紹介で利用し、保管させてもらうなどしている。以前は飲食店の友人に緊急で冷凍庫を借りたこともあった。友人や人とのつながりを大切にする古宮さんだが、何年か前、バター不足が最もひどかった時は、ケーキ屋をしている昔の先輩に緊急で譲ってもらったこともあるそうだ。
 その他の原材料の高騰や不足に関しては、同店の場合、主力商品をあまり固定していないことが柔軟な対応につながっている。古宮さんは地元農家や商店会の友人などから送られてきた野菜や果物などの素材を流動的に使い新商品を開発することに余念がない。「自然な形で手に入れた食材を使用し開発したものを、その都度適切な値段をつけて販売しているので、無理にコスト圧迫をすることはないですね」(古宮さん)
 ただ、高騰したクルミを使用する「リュスティックノア」(税抜280円)などリピーターの多い一部商品は店の負担で販売を継続している状態だという。


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