クリームパンが、1日の売上の半分を占める - 神楽坂亀井堂の倉木寛社長 - ブランスリー電子版

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インタビュー/2015年7月号

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クリームパンが、1日の売上の半分を占める - 神楽坂亀井堂の倉木寛社長
 神楽坂亀井堂は1890年(明治23年)創業の老舗和菓子店。瓦せんべいと人形焼で1世紀を超えて歩んできた。太平洋戦争後の物資不足の折には、喫茶店を運営し、店を守った。また、洋風化の進展に対応して洋菓子部門を立ち上げる中で、偶然にもパン製造への道が開かれた。同店一番の人気商品であるクリームパンは、客の一言から誕生し、今は神楽坂亀井堂の経営を支える。今年で就任4年目を迎えた倉木寛社長(40歳)に話を聞いた。



神楽坂亀井堂は、老舗の歴史を感じさせる店構えだ
取材時に来店した3人連れの婦人たちは、家族の分まで購入していた
60〜70種類の商品が並ぶ店内。多くの客はまず「クリームパン」の場所に向かう
和栗あんとモンブランペーストと共に栗の甘露煮を包んで焼いた「栗あんぱん」
焼き栗をイメージした他店にはないあんパン

―――創業時は和菓子屋さんですよね。今、その技術が生かされている商品というと。
倉木 明治23年の創業です。現在神戸・元町にある亀井堂総本店(明治6年創業)の東京支店として出発しました。今の上野店です。創業以来、瓦せんべいと人形焼を作っています。和菓子の技術が活かされている商品はやはり、あんぱんですね。中でも「栗あんぱん」はナンバー2の人気商品です。最初は期間限定だったのですが、お客様の要望もあって、通年販売としました。
―――売れ行きは順調といったところですね。
倉木 はい、評判はいいですよ。でも、今の時期は思うように動いてくれません。やはり、秋の声を聞かないと。秋が来ると1日200個は売れます。
―――栗が入っているんですか。
倉木 甘露煮にした栗が入っています。全体的には焼き栗をイメージして、表皮の側面にはケシの実をまぶしました。栗の甘露煮と共に、洋菓子のモンブランに使う栗をペースト状にしたものと、和栗あんが2層になって入っています。具が多いので包むのに技術が要ります。でも、他店にはない商品ですので、元々の和菓子店のイメージとともに独自色を出せていると思います。

偶然がパン作りへの道を開く

―――「栗あんぱん」は和菓子店のイメージを活かしているわけですが、そもそもなぜパン作りを。
倉木 かつて上野駅が東北からの東京の玄関口と言われたころは、現在の上野店で瓦せんべいは良く売れました。しかし、世の中の好みは洋風に変化していきました。太平洋戦争後の一時期、物資不足から喫茶店の経営でしのいでいたこともあります。時代の状況に対応するしかなかったのです。
 こうした経験から、その後洋菓子部門を立ち上げました。職人を数人採用して洋菓子作りを始めたのです。当初はクッキーやマドレーヌといった焼き菓子が中心でした。採用した職人さんの中に、偶然にもホテル出身で、パン製造に携わったことのある方がいたのです。そこで、パンも焼いてみようということになったのです。
―――いつ頃ですか。
倉木 およそ40年前です。パンの製造を始めたころは、デニッシュペストリーが世間で注目されていましたので、それを中心に菓子パンを販売していました。パンの製造を始めた頃は、銀座の数寄屋橋に店舗がありました。商品は神楽坂工場から卸していたのです。その後、工場を活かそうと敷設の駐車場に、テントを張っただけの仮店舗を設置しました。。理由は、神楽坂で私どもの商品が売れるか調査するためでした。当時、神楽坂には大手製パン企業のチェーン店と今は撤退したリテールの2店舗がありました。地元で私どもの商品が売れるのかどうか不安でした。しかし、有り難いことに手応えがあったんです。それで、その場所に店舗を構えたのです。もう、18年になります。



「クリームパン」は、ヘラが添えられた状態で陳列されている
カスタードクリームがたっぷりと入った「クリームパン」
「クリームパン」には、「ヘラでお取りください」と書かれたポップが添えられている
内径約45センチの鍋で、多いときは1日6回カスタードクリームを炊く
客の要望から誕生したクリームパン

―――クリームパンは数寄屋橋の時代から販売してたのですか。
倉木 いいえ。パンを始めるのも偶然なら、クリームパンも偶然と言えるでしょうね。神楽坂店をオープンした時は、カスタードクリームの入ったシュークリームが人気だったんです。ある時、シュークリーム好きのお客様が「このカスタードクリームでクリームパン作って」と言うのです。菓子パンを中心に販売していたのにクリームパンはなかったんです。良いアイデアを頂いたと思い、取り組んだのですが、困りました。パン作りを担うホテル出身の職人さんは食事系のパン作りが中心で、クリームパンを作ったことがなかったのです。
 ですから、多くのベーカリーからクリームパンを購入し、分解しては包むの繰り返しでした。それと、ケーキ用の生のカスタードクリームをパン生地に包んで焼き上げたらどうなるのか心配でしたが、望み通りの商品に仕上がり安心しました。以来、内容に変化はありません。
―――作り方に特徴があるんですね。
倉木 まず、違いがあるとすれば、絞り袋を使わないことでしょうか。通常は絞り袋から生地上にクリームを絞ると思いますが、私どもはスプーンですくって生地の上に置きます。数をこなすには適していると思います。実は、カスタードクリームは堅めに仕上げています。絞り袋では仕事がやりにくいのが実情です。
―――「クリームパン」には、「ヘラでお取りください」と書かれたポップが添えられていますね。
倉木 商品の底が薄いのでトングが刺さってしまう恐れがあります。それで、ヘラですくってもらえればと考えました。成形にはめん棒を使います。生地の一部を薄くして、そこに、カスタードクリームをのせています。
―――カスタードクリームに特徴は。
倉木 自家製ですけど、材料に特別なものはありません。牛乳、生クリーム、小麦粉、バニラなどの他に、一つ秘密の材料がありますね。毎日内径45センチの鍋で4回は炊きます。一度に15リットル以上にはなるでしょうね。多い時は5〜6回炊きます。毎回、前日の午後から作業を始めます。包みやすくするために、炊いた後で冷蔵庫で冷やします。
―――クリームパンの1日の販売量は。
倉木 月曜日は、1週間で最も客数が少ない曜日です。それでも、360個は作ります。多い日には600個はいきますよ。
―――発売と同時にクリームパンは注目されたのですか。
倉木 いいえ。10年以上も前にテレビ局が神楽坂特集を組んだことが切っ掛けでした。その後、口コミで広がりました。

厳しい競争の中で菓子パン作りの原点が生きる

―――今年で創業115年。クリームパンが次の100年を支える商品の中心になりますね。
倉木 確かに人気商品です。1日の売り上げの半分を占めますから。クリームパンだけにしようかと考えたこともなくはありません。
 ハード系のパンを作りたくても、クリームパン作りが忙しすぎて、手が回りません。
 お客様の数は地元の方と観光客で丁度半々。観光で神楽坂を訪れた方は、クリームパンを贈答用にも購入してくれます。一方で地元の人は材料の一部に牛乳を使用した「亀食パン」が好みです。ワインとラム酒に漬けた干しぶどうを、タップリと生地で巻き込んだ「トルネード」という名の商品も評判です。地元商店街には私どもを含めて6店のベーカリーがしのぎを削っています。この20年間で、2店から6店に増えました。そのほとんどがハード系に重きを置いています。私どもは、菓子パンを中心にパンの製造を始めました。小麦粉や乳製品、干しブドウなどの材料の価格の高騰もあって、厳しい点もありますが、まずは、原点に帰って、企業の在り方を考える時かもしれません。





原価計算女王
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