ベーカリーの夏 - ブランスリー電子版

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特集/2015年6月号

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。


ベーカリーの夏




売り上げ減を最小限にした上で空いた時間を有効活用する - Cafe Boulangerie Couronne CHIBA-NEW
JR印西牧の原駅から徒歩15分ほどの商業施設「ジョイフル本田千葉ニュータウン店」内に昨年オープンした「カフェ ブーランジェリー クーロンヌ チバニュー」
木を多用したぬくもりのある店内。天井が高く開放感もある
レジカウンターでスープのポップを掲示している
「新世紀メロンパン」(税抜140円)にジェラートをサンドした「アイスメロンパン」(税抜280円)
「ゲランドの塩パン」(税抜60円)にジェラートをサンドした「塩パンミルクジェラート」(税抜120円)
春から夏の間販売する「ヴィシソワーズ」(税抜250円)
冷たいスープとパンの組み合わせ

 千葉県印西市の商業施設「ジョイフル本田千葉ニュータウン店」内にある「Cafe Boulangerie Couronne CHIBA‐NEW(カフェ ブーランジェリー クーロンヌ チバニュー)」。同店は、茨城県を中心に同店を含め10店舗のベーカリーなどを経営するクーロンヌジャポン(田島浩太社長)が、昨年4月にオープンしたベーカリーカフェだ。
 同店で今年4月から夏向けメニューとして販売を始めたのは、じゃがいもの冷製スープ「ヴィシソワーズ」(税抜250円)だ。
 同店の今野裕輝店長は、同社のパンを食べてパンが好きになったことが入社のきっかけで、パンは、自家製スープに浸したり付けたりして食べるのが好きだという。
 「パンをスープと一緒に食べるのは、自分も特に好きな食べ方なので、お客様にもぜひ、スープとパンの相性の良さを実感し、スープとパンをゆっくり味わうという贅沢な時間の過ごし方を体感していただきたいと思っています。このような思いから、スープは昨年のオープン時から販売し続けています」(今野さん)
 当初は、「ミネストローネ」(税抜250円)の1種類だけだったが、現在は、「コーンポタージュ」(税抜250円)と季節品の「ヴィシソワーズ」(税抜250円)を加えた3種類を販売している。また、季節によって、ビーフシチューやクラムチャウダーなどもあり、常時3〜4種類を用意している。
 「スープは最初、なかなか認知されず1日10杯程度でしが、1年経った今は、1日100杯ほど出るようになり、スープとパンの組み合わせが定着してきたことを実感しています。季節のスープを販売することで、どんな季節でも一年中、パンをおいしく食べられることを実感していただけるのではないかと思っています。『ヴィシソワーズ』は冷製なので、暑いときにもパンと一緒においしくお召し上がりいただけると思っています」(今野さん)
 レジカウンターには、現在販売中の3種類のスープの写真がのった、A4サイズのPOPを掲示している。
 「パンの会計時に、スープを頼むことが習慣になってくだされば嬉しいです。季節メニューが出たことも、しっかりお伝えして、どんな季節でもパンをおいしく楽しめるスープがあるということを感じていただければと思っています」(今野さん)
 食欲が落ちてしまいがちな夏でも、パンをおいしく食べられる提案の一つとして、冷製スープとの組み合わせを顧客に定着させようと努めている。

パンとジェラートを組み合わせた食べ方

 暑い時期でも食欲がそそられるメニューは、スープのほか、アイスクリームよりさっぱりとした味わいが特徴のジェラートがある。
 ジェラートも自家製で、「ミルクジェラート」(税抜250円)と、ゲランドの塩を効かせた「塩ミルクジェラート」(税抜250円)の2種類があり、夏だけではなく通年で販売している。
 「当店にはカフェとドッグランがあるので、長居されるお客様がいらっしゃいます。最初にパンを食べて、ゆっくりしてから、ジェラートを食べて帰るという方も多いですね」(今野さん)
 ジェラートがよく売れるのは初夏や残暑の時期だという。
 「ジェラートはコクや甘さがあるので、猛暑のときより、暑くなってきたなと感じる頃の方がよく出ますね。猛暑のときは、アイスコーヒーの方が好まれるのかなと思います。アイスコーヒーはかなり好評で、いつも200〜300杯ほど出ます。また、冬は、店内の薪ストーブの前で暖まりながら、ジェラートを召し上がる方もいらっしゃいます」(今野さん)
 ジェラートは、パンにサンドしたメニューも展開している。
 「新世紀メロンパン」(税抜140円)に切り込みを入れて、ジェラートをサンドした「アイスメロンパン」(税抜280円)と、人気ナンバー1商品の「ゲランドの塩パン」(税抜60円)に同様にジェラートをサンドした「塩パンミルクジェラート」(税抜120円)の2種類だ。「塩パンミルクジェラート」は、スタッフが、休憩時に試しに食べておいしかったことから、メニューに加えたという。 
 「ジェラートが溶けてくると、パンにじゅわっとしみ込んで、それもまたおいしいと思います。パンのサクッとした食感やカリッとした食感と合いますね。『アイスメロンパン』は、パンとジェラートの甘いもの同士の組み合わせで、『塩パンミルクジェラート』は、甘じょっぱい味わいです。2つともかなり味わいが違うので、そのときの気分によってお選びいただける楽しみがあると思います」(今野さん)
 出来たてが一番おいしいというジェラートは、毎朝同店で手作りしている。日持ちはするが、翌日には滑らかさや風味が損なわれてしまうという。
 「当店でしか味わえないおいしさを提供するために、手作りにこだわっています。また、手間暇かけて作ったものが売れ残ってしまうのはとても残念なことですから、自然と販売にも力が入ると思います」(今野さん)
 取材時、塩パンで作ったラスクにジェラートをのせたものも試食として配っていた。 



自家製ジェラートは、「ミルクジェラート」(税抜250円)と「塩ミルクジェラート」(税抜250円)の2種類
店長の今野裕輝さん
毎年9月頃開催する社内プレゼンテーションで優勝した同店の発表用資料
テラス席の横にはペットと来店する客用のためのドッグランが併設されている
社内研修で時間を有効活用

 同店の売上げが最も落ち込むのは、梅雨時や夏休み明けの残暑が厳しい時期。それでも、約10パーセント減にとどまっているという。
 「イベントをやると集客には繋がりますが、たくさんのお客様に対して、対応しきれない事態になり兼ねません。それで一人でもお客様をがっかりさせてしまうのはかえってマイナスです。当店では、毎日、パンもスタッフも良い状態でお客様をお迎えすることが一番大事なことだと思っています。ですので、基本的にはイベントはやらないようにしています」(今野さん)
 顧客の満足度を保つ努力を毎日続けることで、売上げ減を最小限に抑えているのだ。
 「今日はお客様が少ないなと思ったときは、草むしりやサンルームの掃除など、普段手の届かない店舗部分の手入れや、プライスカード作りなどをします。また、普段忙しい分、スタッフには早く帰って身体を休めてもらうように言うこともあります」(今野さん)
 同店を含め同社では、売上げの少ない時期を利用して、富士登山や社内プレゼンテーションなどを8年前から恒例で行っている。
 「富士登山では、各店舗ごとにチームを組んで登るので、店長の指導力が問われますし、スタッフ同士の結束力を強めることにも繋がります。また、現場を離れた経営陣にとっては、現場の状況を見極める機会にもなっているようです。社内プレゼンでは、各店ごとに店長を中心に店としての志や日々実践していることを発表します。その後はスタッフの両親を交えたパーティーもします。新入社員にとっては、学生から社会人へと、気持ちの切り替えをするいい機会になるのではないでしょうか」(今野さん)
 少し客足が落ち着く時期だからこそ、1年に1度の社内研修を行うことができるし、日々の仕事の集大成の場として社内プレゼンもできる。こうした機会は、スタッフ1人ひとりが自己を見直す機会にもなっているようだ。

Cafe Boulangerie Couronne CHIBA-NEW
住所:〒270‐1311千葉県印西市牧の原2‐1
電話:0476‐33‐3556
営業時間:午前8時〜午後8時(月〜金)、午前7時〜午後7時(土・日・祝日)
定休日:なし
品揃え:60〜80品目
スタッフ:製造常時4〜5人、販売常時4〜5人
店舗面積:厨房12坪、売り場8坪、カフェスペース12坪
日商:平日35〜40万円、土・日・祝日80万円



年間を通して、常に顧客に満足してもらうことを大切にする - ピーターパン石窯パン工房店
ピーターパン石窯パン工房店の外観
横手和彦社長(右)とフェアやイベントなどの企画を担当する横手敦子さん
ピーターパン石窯パン工房店の店内の様子
昨年行われた「秦の杜店」の夏祭りの様子
「親子のパン教室」は親子で様々なパンの作り方を楽しみながら学べる
夏祭りで好評のヨーヨー釣り
夏場にできるファンづくり

 千葉県船橋市内にある郊外型ベーカリー「ピーターパン石窯パン工房店」は、多い日で1日2000人以上の来店客がある地域密着の繁盛店だが、夏期にあたる7〜9月の売上は、最も売上の良い3〜5月と比べると15%ほど落ちるという。
 「夏は確かに売上が落ちます。ただ客単価や来客数が減って売上が落ちても、お店を好きでいてくれる『ファン』の数自体は減らないということを理解しなければいけません」と、船橋市周辺を中心にベーカリーを6店舗運営するピーターパンの横手和彦社長は話す。
 同店にとって夏は繁忙期である秋に向け布石を作る時で、需要は鈍るが、その分、従業員の手があくのでイベントの開催に力を入れているという。「パン屋はやはりお客様にとって『メルヘン』であるべきですから、生活の中で美味しいものを提供する便利な空間であるだけではなく、食を通じて楽しめる空間でもなくてはなりません」と横手社長は話す。
 「ピーターパン」は「石窯パン工房店」をはじめ全店で夏は親子を対象としたイベントを、夏休みに合わせて盛り上げている。特に店内の商品が当たるくじやかき氷、ヨーヨー釣りなどの模擬店を出して賑わう「夏祭り」が好評だ。昨年は、新興住宅地に位置し2013年秋にオープンした「奏の杜店」の初の夏祭りが特に盛り上がり、親子725組が来場した。同ベーカリー本部でフェアやイベントなどの企画を担当する横手敦子さんは「やっぱり夏は子供を中心としたイベントで盛り上がりますから、家族で来店したくさん購入されていく需要を取り込むためにも力を入れていきたいですね」と話す。
 夏祭りのほか、毎年恒例のものとしては小学生とその親向けの「親子のパン教室」や「子供店長」の企画なども好評だ。
 「親子のパン教室」は親子で様々なパンの作り方を楽しみながら学べ、子供の夏休みの自由研究の題材としても使えるといったことが人気の理由だ。自由研究として提出した子供の中には、市から表彰された例もあるという。
 「子供店長」の企画は、子供達が同店の「店長」となり、「いらっしゃいませ」と呼びかけながらトレーやトングを来店客に渡し、試食を配るというもの。業務終了後には、「お給料」として500円分の商品券が子供達一人一人へ渡される。 
 「地域の皆が子供達と関わり合い関心を持っていた古き良き日本の姿を思い出します。まだ子供と触れ合う機会のない若い方も、自分が将来子供を持ったときのことなどを考えて和むことができます」(横手社長)

満足度向上をねらった夏季商品

 また、同店では昨年の夏は特別企画として「ピーターパンの夏休みフェア」を行った。子供向けに「カブト虫パン」「たこ焼きパン」「焼きトウモロコシパン」「麦わら帽子のパン」といった夏休みをイメージするパンのほか、杏仁プリンやチーズケーキなどの冷菓、刺激の強い辛口味のパンなどを販売。今年は北海道フェアの企画を考えており、トウモロコシやじゃがいも、アスパラ、ミルクといった北海道をイメージする素材を使った商品の販売を考えている。こうしたフェア商品を含む夏季限定商品は毎年20〜30品出しているが、通年販売する商品について冷やして食べる食べ方を提案したり、カレーパンを夏向けに辛口にしたりといったことも行っている。今年は2月から販売している「クロワッサンドーナツ」を冷やす食べ方を提案する予定だ。昨年は「奏の杜店」で、ホイップクリームとメープルジャムをからめたフレンチトーストの「カップdeフレンチ」(税込248円)にソフトクリームをのせる食べ方を提案した。
 ただしこうした夏商品の展開は、結果的に売上が落ちる時期に商品数のみ増やすことになりかねず、効率の面では問題も生じるという。加えて冷やして美味しい食べ方を提供する一方で、ベーカリーの基本である焼きたてのおいしさを提供することも当然ながら忘れてはならないという。
 「冷やして食べることでパンの生地やフィリングなどの品質が落ちる場合もあります。『焼きたてのおいしさ』と『冷やしたおいしさ』のどちらをどれ位とって出すか、バランスが大切ですね」(横手社長)
 それでも夏の間にこうした努力を続けていくことには意味があるという。 「大切なのは年間を通して常に『お客様に満足してもらう事』です」(横手社長)

ピーターパン石窯パン工房店のテラス席。取材時は晴天でパンを食べながらのんびり休む来店客らであふれかえっていた
昨年夏の特別企画「ピーターパンの夏休みフェア」の様子
今年は「クロワッサンドーナツ」を冷やす食べ方を提案する予定だ
昨年は「奏の杜店」で、フレンチトーストの「カップdeフレンチ」(税込248円)にソフトクリームをのせる食べ方を提案した
以前スタッフが北海道研修後に提出したというレポート
繁忙期が逆の店と相互交流

 同ベーカリーは、夏は研修旅行も行っている。スタッフに、他のベーカリーなどを見るこで色々と学んで欲しいからだ。
 特に力を入れているのが、北海道内で懇意にしているベーカリーとの交換研修だ。同ベーカリー側から夏季限定で夏場が繁忙期の北海道へ何人かのスタッフを派遣し、10月〜3月には北海道の店の方の手が空くので数人従業員をヘルプとして派遣してもらっている。繁忙期が逆の地域の店同士の交流を行うことで、お互いが必要な時に人を補充し合えて、生産性を向上させることができる。そして重要なことは、お互いが異なる環境で刺激を受け様々なことを吸収できることだ。
 北海道では、店舗での体験のほか北海道の農業システムの体験見学なども実施。小麦農場など、パンを作る上で関係する様々な素材がどのような場所でどのように作られるかを見て肌で感じることはとても勉強になるそうだ。横手社長自らも小麦農場を見学したことがあり、その際にはコンベアトラクターの大きな機械を運転した。
 畑を実際に見たり、農家の倉庫に置かれている様々な器具を見たりすることは、生産者のことを知る手がかりとなる。以前スタッフが北海道研修後に提出したというレポートでは、写真つきで研修で体験した様々なことへの感想が書かれていた。研修を通じ、色々と発見があったようだ。
 こうした研修旅行は、情報交換ができる上、ピーターパンの社内の業務しか経験していない社員が、外部との交流で刺激を受け、より自社の強みを研究し、商品開発や接客に活かすことができるといった利点があるという。
 閑散期を閑散期ととらえるのではなく、新しいものを思案し生み出すために与えられた時期だととらえれば、マイナスもプラスに変える事ができそうだ。

ピーターパン石窯パン工房店
住所:〒273−0021千葉県船橋市海神3−24−14
電話:047−410−1021
営業時間:午前7時〜午後8時
定休日:木曜日
品揃え:約100品目
スタッフ:製造20人、販売30人
店舗面積:厨房34坪、売場23坪、倉庫10坪
日商:平日100万円、土曜150万円、日曜200万円

原価計算女王
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