パン職人の食生活 - ブランスリー電子版

2026年10月21日に公表されたPHPの脆弱性(CVE-2026-109618、CVE-2026-109619)については、いずれも対策を完了しています。

ブランスリーアーカイブ(創刊号からの全記事)
記事の閲覧
<<戻る写真をクリックすると拡大写真が見られます。
特集/2015年5月号

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。


パン職人の食生活




自分の店のパンをしっかり食べる - デイジイ
デイジイの倉田博和社長
デイジイ西川口店の外観
自店のパンをなるべく食べるようにしているという倉田博和社長
デイジイ西川口店の店内の様子
取材当日の倉田社長のランチ。目玉焼きをのせたサラダとトースト、コーンポタージュなど
自然な形で育った食への興味

 埼玉県川口市を中心に7店舗を展開する「デイジイ」の倉田博和社長は「やっぱり『食』に対する興味が強くないとこの仕事はできないですね」と話す。
 実家がベーカリーという環境で育った倉田社長は、子供の頃は朝食と昼食はパン、夕食は普通のご飯という食生活を送っている。そんな環境でパンをはじめとした「食」への興味は自然な形で育つようになり、修行経験を経て自分が店を経営するようになって数年間は、店舗運営や商品開発を行う中で模索をし、色々と他店のパンを食べ歩いたこともある。しかし、それから20年以上の月日が経った今は、基本的に、なるべく自分の店のパンを意識して食べるようにしている。
 「職人を志した時から思っていたことですが、やっぱり何でも自分が食べておいしいと思うものを食べてもらいたいですね。だからパン職人であるのなら、まずは自分の店のパンをしっかり食べるべきです」と倉田社長は話す。

自分がおいしいと感じるパンを提供

 多忙で家に帰る事が少なく、仕事場以外で食事をとるのは夕食で外食する時のみという倉田社長の食生活の流れは、まず早朝、出勤して仕事が一息ついた後にコーヒーを1杯。まとまったものを食べるのは昼頃で、店のランチセットを倉田社長向けに作り替えたものを食べる。取材当日のランチは、目玉焼きをのせたサラダとトースト、コーンポタージュなどだった。朝食と昼食を兼ねた俗に言う「ブランチ」に近い。
 倉田社長は、自店のパンを意識して食べる理由について「今は逆に自分の店の芯を持つ事が大切だと思っているからです」と話す。若いうちの一時期、色々な店のものを食べて世界を知る事も大切だが、店の主張をぶれずに出していくために、時代や流行に流され過ぎてもいけなくて、それより、自分が生活の中で、毎日食べておいしいと感じるパンを提供する事が大切と考えているのだ。そのためにもしっかり自分の店のパンを食べ続ける必要があるという。

パンから離れた場でも食の嗜好を拡大

 仕事場ではずっとパンを食べている倉田社長も、夕食はパンから離れあちこち外食して回っているという。行きつけの和食の料理屋や居酒屋もある。またイタリアンや中華なども含めて実に様々な店を回っている。ただし基本はチェーン展開の店は行かず、個人店へ行くそうだ。
 「その店でないと食べられない味と言うものを楽しみたいですから」(倉田社長)。板長など職人がいる店では、和食とベーカリーといった違いはあっても、同じ職人同士で話が合い情報交換することもあるという。
 「だしや味付け、油の使い方など、パン作りに直接関係ないことでも食の嗜好が広がり、世界が広がりますね。洋食の店のグラタンやパスタのソースなんかは総菜パンの参考にすることもあります」。しかし無理に仕事に結びつけようとあまり堅苦しく意識してはいない。食べる事を自然な形で楽しんでいるという。
 ただ、この頃は、さすがに食べたいものばかりという訳にはいかず、健康にもかなり気を遣わなくてはならなくなってきているという。

SHOP DATA
店名:デイジイ西川口店
住所:〒332−0021埼玉県川口市西川口2―4−22
電話:048−256−9966
営業時間:午前8時〜午後8時
定休日:火曜(火曜が祝日の場合は営業)
品揃え:100品目
スタッフ:製造5人、販売5人
店舗面積:売場14坪、厨房14坪、カフェ14坪(24席)
日商:平日30〜40万円、土日50〜60万円



仕事も私生活もパンと一緒に楽しむ - リトル・ブレッズ・トゥ・ゴー
「リトル・ブレッズ・トゥ・ゴー」の店長、古宮義和さん
「リトル・ブレッズ・トゥ・ゴー」の外観
「リトル・ブレッズ・トゥ・ゴー」の店内の様子
店のスタッフが昼の弁当に作って持ってきたサンドイッチがもとになっている「キャロットサンド」(税別280円)
気になるパンは買ってきてもらう

 千葉県船橋市で地域密着の小さなベーカリー「リトル・ブレッズ・トゥー・ゴー」を営む店長の古宮義和さんの食生活は公私ともにパンとともにある。小規模店で製造はほぼ1人で回し、朝早くから夜遅くまで多忙な古宮さんは、3食を基本的に仕事場である店内で食べる。
 朝はパンが焼ける前のため、昨日の余りのパンを冷凍したものなどを作業しながら食べる。昼も店のパンで適当な総菜パンなどを食べる事もあるが、最近は他の店のパンで気になるものをパートのスタッフに研究費として出す形で買いに行ってもらい、それをスタッフ皆でお昼に食べることも多い。
 「自分では忙しくて行けない色々な店のパンを買ってきてもらうと、楽しいし勉強になります。もともとパン好きな仲間が集まっているので、喜んで行ってくれる感じですね」と話す古宮さん。 夕食も店内で食べるが、夕食に限っては、妻が手作りのおかずなどを持って店に来てくれるので、2人で一緒に食べるという。実は式を最近あげたばかりという新婚の古宮さん。「同じものでも2人で食べる方がおいしい」と話す。
 休みの日は自宅で妻の手料理を食べるが、主食は、米食であることもパンであることもある。あえてどちらかを意識しているわけではないが、「1年間365日パン食でも平気」という古宮さんにとって、パン食は私生活にも自然な形で浸透している。妻は、同業者ではないものの、食への関心は共通し色々なものを作ってくれるそうで、パンも大好きだ。例えばネットで密かなブームになっている「沼サン」(千切りキャベツをたくさん挟みベーコンを合わせたサンドイッチで陶芸家の大沼道行氏の妻が発案)を作ってくれたこともあるという。
 また、休みの日に妻と2人でベーカリー巡りをすることもある。地元である船橋から離れ、話題の店を訪れると、地域による住民の嗜好や需要の違いも感じるが、色々と学ぶ事が多く楽しいそうだ。

食生活から生まれた好奇心

 何でも好奇心旺盛な古宮さんにとっては、自身の食生活も含め日常生活で目にする様々なものが商品のアイデアにつながるという。地域でのつながりを大切にする古宮さんだが、周囲の友人や家族も、何か面白い食べ物やパンがあると古宮さんのところへ届けてくれる。周囲のつながりから生まれる情報が古宮さんにとって大切な宝物だ。スーパーやコンビニで売られる大手メーカーのパンも普段は食べないが、何かアイデアとして興味深いものがあれば買う事もある。何でも色々と試してみたくなる性分で「これを自分の店のパンを使って作ったらどうなるだろう」などと考えるそうだ。
 また、最近売り出し始めた新商品の「キャロットサンド」(税別280円)は、もとはスタッフが昼の弁当に作って持ってきたサンドイッチの中味を食べ、自分自身も作ってみたいと思ったのがきっかけだった。人参を細く切ったサラダにクリームチーズとバルサミコ酢を合わせ自家製のバンズを使い、サンドイッチにした。皆で食べたところ好評だったのでしばらくして商品化した。
 自分で食べたいと思うものへの気持ちや、様々な好奇心が、仕事と私生活の両方に、楽しみをを与えているようだ。

SHOP DATA
店名:リトル・ブレッズ・トゥ・ゴー
住所:〒273-0005千葉県船橋市本町1-21-16
電話:047−437−8733
営業時間:午前9時〜午後7時
定休日:火曜
品揃え:約55品目
スタッフ:製造1人、販売1〜2人
店舗面積:売り場2坪、厨房8坪
月商:100万円



朝食は試食も兼ねて自店のパンを食べる - パン・ド・ナノッシュ茅ケ崎店
オーナーシェフの関谷勝美さん
「パン・ド・ナノッシュ茅ケ崎店」の外観
JR茅ヶ崎駅から徒歩4分の場所にある「パン・ド・ナノッシュ茅ケ崎店」
もちもちした食感のドーナツ「もちもちきなこリング」(税込み169円)は子どもに人気
食べる量に気を付けて食事をとる

 神奈川県茅ケ崎市のベーカリー「パン・ド・ナノッシュ茅ケ崎店」は、市内の海水浴場からほど近い場所にある。
 茅ヶ崎店のほかに、藤沢弥勒寺店も展開するオーナーシェフの関谷勝美さんは、趣味のサーフィンも続けていきたいと、この立地を選んだ。ここ2、3年、体重が増えやすくなってきたという関谷さん。日頃の食生活は食べる量に気を付けているという。
 起床後、自宅では朝食をとらず、午前5時に藤沢弥勒寺店に出勤して作業を済ませ、6時半頃茅ヶ崎店に入る。平日の開店時間は8時なので、それに合わせてパンを焼成していく。パンが焼き上がると、出来をみるために一切れ食べる。これが朝食となる。1種類のときもあれば、多いときは5〜6種類食べるときもある。飲み物は、ブラックのコーヒーだという。
「生地の状態や、焼成後の仕上がりをみて、今日はいつもと違うなと思ったパンは、味見をする意味で食べるようにしています。自分だけでなく、その場にいるスタッフみんなでです。製造担当だけでなく、販売担当のスタッフもみんなで食べて、感想を言い合います。そうすることで、商品に対する知識や理解を、みんなで共有できるようになります。また、量は、一切れと決めていて、食べ過ぎないようにしています」(関谷さん)
 昼食は、昼のピークが終わって作業がひと段落した2〜5時に1時間とる休憩のときに食べる。
 「当店のパンの中から好きなものを選んで食べるのですが、必ず1個と決めています」(関谷さん)
 パンを食べるときもあれば、コンビニなどで弁当を購入することもある。
 夕飯は自宅で食べる。夕方早ければ6時半頃、家族と一緒に食べることもあれば、9時頃になってしまうときもある。
 「店の状況によって、時間はまちまちになりますが、必ず自宅で妻が作ってくれたものを食べます。大体炊いたご飯が多いですが、カレーのときはナンですね。事前に連絡をもらって、ナンを持って帰るようにしています」(関谷さん)

周りの人の食事を商品開発に活かす

 関谷さんは、休みの日の朝食はしっかり食べる。前日にパンが残れば、それを持ち帰り、サラダや目玉焼き、コーヒーなどとともに家族と楽しむ。関谷さんには育ちざかりの子どもが4人おり、同店のパンを食べる子どもたちの反応も役立つという。
 「休みの日などは、一緒にパンを食べられるので、子どもの正直な反応を見ることができます。ちょうど当店のお客様が、同じような世代の子どもを持つお母さんが多いので、うちの子どもの反応が良ければ、店での売れ行きも良いということがよくあります。最近では、『もちもちきなこリング』(税込169円)などがそうですね」(関谷さん)
 また、同店周辺は飲食店が多く、スタッフらが昼食を食べに行くことが多いという。こうしたなかで、近所の店同士、情報交換をしたり、コラボするきっかけを生まれることがある。
 「当店のナンを買ってカレー店に行ったらカレーを割引で食べられるとか、当店のパンを買ってカフェに行ったらドリンクサービスとか、近隣の飲食店と協力してサービスを行うことがあります。元々は客として食べに行ったことがきっかけですね」(関谷さん)

SHOP DATA
店名:パン・ド・ナノッシュ茅ケ崎店
住所:〒253‐0056 神奈川県茅ヶ崎市共恵1‐3‐14
電話:0467‐86‐8757
営業時間:午前8時〜午後8時(月曜〜金曜)、午前7時〜午後7時(土曜、日曜、祝日)
定休日:なし
品揃え:200品目
スタッフ:製造常時6人、販売常時3〜4人
店舗面積:厨房15坪、売り場7坪
日商:平日30万円、土曜、日曜、祝日40万円

自分の食生活がそのまま店での提案に - マールツァイト
オーナーシェフの白井幸子さん(右)とスタッフの田澤弥生さん
「マールツァイト」の外観
白井さんが朝食によく食べるというサンドイッチ
陳列棚には、オリーブオイルやハチミツが並び、冷蔵庫には、チーズや、ミルク酵母に使用している牛乳などが並ぶ
食事の大切さをパンを通して伝える

 東京・文京区の「マールツァイト」は、オーナーシェフの白井幸子さんが2000年に開業した、自家製ミルク酵母でパンを作るベーカリーだ。
 自家製ミルク酵母に使用する牛乳は、農薬のかかっていない野草などを食べている牛の乳を、63度Cで30分間殺菌したもので、「高温殺菌した牛乳にはない、様々な有用菌が残っている」(白井さん)という。
 「ミルク酵母のパンを作り始めたのは18年ほど前ですが、当初は何がいいのかわからないけれど、とにかくおいしいと思い毎日のように食べていました。また、疲れたなと思うとき、食べると元気が出ましたね。食べ続けて3年経った頃、『これはもっと、たくさんの人に知ってもらいたい』と思うようになりました」(白井さん)
白井さんは当時、自家製ミルク酵母に使用する牛乳や、有機の野菜や果物を販売する店に、パンを卸していた。
 「ミルク酵母のパンに、有機の野菜や果物を合わせた食事は、おいしくて元気が出るということを、自分が食べてきて身を持って実感しました。こうした食事の大切さを伝えたいというお思いで、今日までパンを焼いてきました」(白井さん)

朝食と昼食は自店のパンを食べる

 白井さんの朝食時間は、パン生地の成形や焼き菓子作りなどの作業を終えた午前9時〜9時半の間。前日に売れ残ったサンドイッチや焼き込み調理パンを食べる。ツナやチーズなどのタンパク質もしっかり摂れるからだ。
 昼食は、客足のピークが過ぎた12時半から午後1時の間に、ほかのスタッフと一緒にとる。パンは、前日に焼いたパンをスライスして食べる。
 「ミルク酵母のパンは、焼いてから1日経つと味が馴染みます。焼きたてよりも味の違いが分かりやすいので、商品チェックも兼ねています」(白井さん)
 パンのほか、販売している野菜スープ、チーズ、コーヒーを楽しむ。
 「チーズは、当店の開業前から、パンを卸しているチーズ専門店から仕入れているもので、当店でも販売しています。ミルク酵母のパンは、同じ乳製品を使用していることもあり、チーズとの相性がいいですね。また、当店では『パン作りとチーズを楽しむ会』というイベントを行っています。いろいろなチーズをパンに合わせて、スタッフと会話しながら、昼食をとることは、イベントやチーズの販売にも役立ちます」(白井さん)
 その後は、翌日の仕込みを終えた午後4時頃、休憩をとる。
 「休憩のときは、当店の焼き菓子とお茶を楽しんだり、ほかのお店のパンを食べたりします。商品開発に興味のあるスタッフが持ってきてくれます」(白井さん)
 夕飯は夜8時頃、家族全員揃ってから食べる。
 「夕飯は、店から帰ってきて作ると遅くなってしまうので、夫が用意してくれていて、だいたい日替わりのおかずと、炊いたご飯です。我が家は、留学生が同居しているときもあります。食事の時間は、みんなが揃って会話する貴重な時間ですね」(白井さん)
 こうした食事のとり方は、開業から15年間続いていて、休むことなく営業を続けるための、生活の基本となっている。

SHOP DATA
店名:マールツァイト
住所:〒112‐0012 東京都文京区大塚3‐15‐7
電話:03‐5976‐9886
営業時間:午前11時〜午後7時
定休日:日曜、祝日
品揃え:パン30品目、菓子5品目
スタッフ:製造常時2〜3人、販売常時1〜2人
店舗面積:厨房約3坪、売り場約3坪
月商:約1800万円

原価計算女王
原価計算女王

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。

今月の公開記事

  1. POLINの高性能オーブンを日本市場へ 。450℃の焼成力と緻密なヒーター制御 - スズキ産業の下河拓磨社長
  2. 見やすい売り場と旬の味で、地域が誇れるベーカリーへ - アリマベーカリー
  3. 「ちいかわ」の世界観を表現したパンと店づくり - ちいかわベーカリー
  4. 掲載から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文を公開しています。
    ブランスリーアーカイブ
ブラ立ち読み
(記事の無料メール配信)
詳細はこちら