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| 2013年3月に大阪で行われた第1回ベーカリー・ジャパンカップの表彰式の様子 |
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| 第1回ベーカリー・ジャパンカップの国内産小麦パン部門で優勝した久遠(静岡県熱海市)の武山陽司さんが出した「レーズンと熱海橙の田舎パン」 |
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| 第1回ベーカリー・ジャパンカップの調理パン部門で優勝したクラブハリエ ジュブリルタン(滋賀県彦根市)の今井悠輔さんが出した「カプレーゼン」 |
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全国4地区から100人が製パンの技術を競う――ベーカリー・ジャパンカップが2回目を迎えます。前回と異なる点は。西川 東京では初の開催です。目的はパン業界の発展ですが、これまでいわゆる日本のパンで競うコンテストが有りませんでした。そこで、ベーカリーの売上の主力となる調理パン、菓子パン、食パンだけのコンテスト実施を考えました。一番食べられているパンで勝負してほしいのです。今回は100人を超える技術者から応募がありました。小さなパン屋さんも自分の技術を評価してもらいたいのです。公に評価されることも、仕事の一部として取り組もうとしているのです。
前回は2地区での募集でしたが、今回は、東日本、中部、関西、中国四国九州の4地区に分けて募集しました。たくさんの優秀な技術者を世の中に出すためにも、できるだけ多くの人々に応募してもらいたかったのです。今回は、大手企業の素晴らしい技術者にも多く参加していただきました。
部門別の応募規定は、調理パンと菓子パンの両部門に変わりはありません。調理パン部門はバンズパン、コッペパン、食パンのいずれかを用いた3種類の調理パンを、菓子パン部門は菓子パン生地によるあんぱん、クリームパン、メロンパンを1種類ずつ合計3種類作ります。食パンは、国産小麦を50%以上使用した角型食パンのみと変更しました。前回仮題のひとつだったレーズン等の副原料を練り込みんだ製品は外しました。理由は、国産小麦の本当の味を表現してもらいたいからです。
コンテストは、何よりも課題がしっかり反映されているかどうかです。それに消費者の嗜好をどのように捉えて、味を工夫したうえで、消費者に喜んでもらえる製品づくりを実践できるかです。
パン食は日本の食文化に定着している――コンテストでの評価が製パン技術者の励みになりますよね。西川 2010年から実施している全日本パンフェスティバルの日本全国ご当地パン祭りでは、人気投票の1位の商品ばかりでなく、3位や5位に入った商品も地元で人気になっています。このことが、技術者の励みになるとともに、店の売り上げアップにもつながるものと思います。このご当地パン祭りは今まで東京で開催していましたが、2014年は初めて兵庫県の神戸市で実施しました。経費はかかりますが、今後は、全国を巡りたいと考えています。
和食が、ユネスコ無形文化遺産になるなど注目されていますが、日本の食文化にパンが含まれないということはあり得ないでしょう。我が国にパンが誕生して100年です。パンは食文化として定着しているのです。パン食文化を守り、職人の誇りをも守りたい。その意味で、本当の製パン技術者を育てなければならないのです。ベーカリー・ジャパンカップでは、より多くの技術者たちと彼らの創造した製品にしっかりとスポットを当てようと思います。
中小ベーカリーにこそバターが必要──バターなどの副原料の品不足による価格高騰が続いています。西川 品不足によるバターの価格高騰には困ったものです。問屋が供給先を順位づけするのは仕方ありませんが、前年使用実績の70%程度しか注文できないのは厳しいですね。バターを注文しようと思っても、前の年にあまり使っていなければ、いざ新製品にバターをと考えても、買えないのです。中小のベーカリーこそ、製品にバターを積極的に使用すべきなのです。
共同購入も視野に入れなければなりません。使うのは国産です。輸入品よりも品質的に優れており、価格も安いですから。国内主要メーカーの製品を使いたいのですが、今は生産量が増える要素がありません。価格もこれまでになく高騰しており、ベーカリーの利益を圧迫しています。
リテールベーカリーは、値上げが出来ていない──やはりパンの価格は上げるべきなのでしょうか。西川 ドライフルーツやナッツ類の値上がりもあり、製品価格に転嫁すべきだと思いますが、出来ていません。例えば、百貨店内に出店している大手のベーカリーは、百貨店の高級感も手伝って、ある程度の値上げが可能です。実際に値上げに踏み切っています。しかし、街なかにあるリテールベーカリーは、製品価格の値上げが出来ていません。
パン市場は、大手21社で全体の80%を占めています。残りの20%に中小1万店がひしめいているといわれます。これに、大手のリテール部門を含めたら、中小の占有率は10%とさえ言われるのです。小さなマスの中で日夜勝負をしなければなりません。しかも、大手が占めるスーパーやコンビニエンスストアでは、パンは供給過多の状態です。
大手の土俵の上で商売をしていては、生き残るのは難しい。特に地方はこのままでは衰退するばかりです。東京と同じ値段で地方では売れません。ナッツの価格高騰は、ベーカリーにその仕入れを手控えさせるほどです。製造過程で生地に練り込む量を加減したりすれば、製品価値そのものを落としてしまい、ますます、利益を圧迫してしまいます。これでは、いつまでたっても自分らしいパン作りへのチャレンジができません。
菓子パン1個200円食パン1斤400円──売り上げを維持するのは大変だと思いますが、その方法はありますか。西川 パンの価格を製造販売者自身が決められた時代がありました。値段は自由につけられたのです。でも今は、値付けの自由はないのと同じ。九州の例ですが、特にドラッグストアとディスカウントストアのパンの価格が安すぎて、これに引きずられて、リテールも食パンを100円台で売るしかありませんでした。さすがに、大手各社も値上げに踏み切ったのですが、また、値下がりし始めています。私たち中小業者は、大手には出来ない高価格帯での生き残りを模索すべき時期にきているのです。それには、高い付加価値が必要です。
かつて、学校給食中心だった中部地方の企業は、今では、1日に200人の客が訪れる人気リテールベーカリーに成長しました。知識に裏付けされた技術があるからこそ発展の基礎が築けたのです。それこそが付加価値なのです。目に見える付加価値があれば、1個200円の菓子パンにも、消費者は納得して、代金を支払うのです。適正な価格の設定こそが売り上げを維持し、また、労働環境の整備にも役立つのです。
今、リテールベーカリーは、労働力不足の状態です。女性の製パン技術者も増えてきましたが、思うように定着しません。人材を呼び込むには、ベーカリーは自分の腕を生かせば十分に稼ぎがあり、休みも充実していると実感してもらわなくてはなりません。繰り返しますが、パンの適正価格の設定は、リテールベーカリーの経営環境を改善し、人材確保への一里塚となりうるものです。「調理パンは300〜500円、菓子パンは1個200円、そして、食パンは1斤400円」が、当たり前になってもらわないと、優秀な人材を確保し、経営の安定を図るのが難しくなるベーカリーが増えるばかりです。ですから、ベーカリー・ジャパンカップやご当地パン祭りを通じて、優れた技術者とベーカリーに光を当てていきたいと考えているところです。