パンの第一印象 - ラ・ブランジェリー・ピュール - ブランスリー電子版

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お店拝見/2002年12月号

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パンの第一印象 - ラ・ブランジェリー・ピュール

外壁の煉瓦が印象的なラ・ブランジェリー・ピュール
 東京・目黒区に、「パンがとり持つ縁」を大切に考えているベーカリーがある。ラ・ブランジェリー・ピュール。さり気ない熱心さは、顧客に心地よく受け入れられ、同ベーカリーに対する親しみと安心感を育んできた。作り手と買い手のこうした関係は、互いの自然なやり取りを促し、同ベーカリーの個性的な雰囲気と品揃えを生み出した。

住所 東京都目黒区五本木3-25-16
電話 03−3715−7150
営業時間 午前8時30〜午後8時
定休日 水曜日



色、形、香り、音でパンの第一印象が決まる

中央の平台に陳列されたデニッシュなどは、華やかな印象だ。


球体に近い形のカレーパン


外壁に設置された排気口。ここからパンの香りが出てくる。


梶原利之さん
「第一印象は大事です。つまり、色、形、香り、音はとても大切なんです」
ラ・ブランジェリー・ピュール代表の梶原利之さんはこう話す。
例えば、店内中央の平台に陳列された「ブルーベリーデニッシュ」(200円)。一般的なデニッシュに比べて、高さが3〜4倍はある。
トッピングされた濃い紫色のブルーベリーが、鮮明に視覚に飛び込んでくる。
その隣の「クリーム焼きりんご」(160円)も、りんごが放射状にトッピングされていて、かなり印象的だ。
同じく平台に並べられた「自家製カレーパン」(180円)。ほぼ球体に近い形が、多くの来店客の心を捉える。
「特にデニッシュ類は、見た目の華やかさを出すように心掛けています。ケーキ感覚のパンという感じですね」と梶原さんは説明する。
香りも打ち出している。同ベーカリーの正面の壁には、「排気口」が2つついているが、実は「オーブンからのパンの焼けた香り」がここから排出されるようになっているのだ。
「音」を演出するのが最もむずかしい。
梶原さんは「なるべくお客様が多く来店する時間帯にフランスパンなどを焼き上げるようにしています。それと、販売スタッフがパンを売り場まで運ぶより、製造スタッフが運んだ方が効果的だと思います」と話す。



子供の頃からパンが好きだった。主食としてのパンに惹かれた

壁には、メキシコ製のタイルを1枚1枚貼った。
梶原さんは、子供の頃からパンが好きだった。母親が作るバターロールを食べるのが、楽しみだった。
一家はカーテンの製造業を営んでいて、母親が忙しいときなどは、梶原さんが料理を作ることもあった。
「ものを作ることがとにかく好きでしたね」と梶原さんは振りかえる。
高校生のとき、ベーカリーでアルバイトをした。パン職人の作業の速さと正確さに驚き、感動した。「パン職人になって、ベーカリーを開きたい」と思った。
パンの専門学校を卒業したあと、4軒のベーカリーで修業を重ねた。
紀伊国屋インターナショナルのベーカリー部門にパン職人として3年間勤務。世界各国のパンを作り、飛ぶように売れていくのを目の当たりにした。「おやつとしてのパン」ではなく、「主食としてのパン」に強く惹かれた。



グリーンとクリーム色。インテリアはほとんどが特注品

クリームパンやメロンパンもある
1999年2月、ラ・ブランジェリー・ピュールをオープン。
東急東横線・学芸大学駅から徒歩およそ5分の駒沢通り沿いにある。通りに面した、温か味と重厚感のある煉瓦の外壁が印象的だ。
その外壁には、それぞれ太陽と、パン職人が描かれた2つのオーナメントがとり付けられている。梶原さんが自らデザインした苦心作だ。
インテリアは、グリーンとクリーム色の組み合わせでまとめている。鉄製の陳列棚は、梶原さんが、スケッチを描いて、特注で作らせたものだ。渋いグリーンに塗られていて、パンの温か味のある茶色との対比が鮮やかだ。
壁には、メキシコ製のタイルを1枚1枚貼った。淡いクリーム色。「微妙に不揃いなのが、また味わい深いんですよ」と梶原さんは笑う。
鉄製の陳列棚以外は、藤籠、床など基本的に渋い茶系の色。緑と茶の鮮烈な対比を、内壁の淡いクリーム色がやさしく包み込んでいる、といった感じだ。



顧客に食べてほしいパンと顧客が作ってほしいパン

グリーンに塗られた鉄製の陳列棚は、特注で作らせたものだ。
同ベーカリーのフランスパンは、低温長時間発酵法で作る。ドライイーストを0・1%配合して、12時間フロアタイムをとり、さらに冷蔵庫で一晩発酵させてから分割する。
オートリーズ法などいろいろな製法を試したが、この方法が最もおいしいフランスパンができる、という結論に達したのだそうだ。
「皮が厚くならず、気泡の感じもよくて、美しいクリーム色の内層になります。お年寄りの方でも食べやすいしっとりとした感じにもなります」と梶原さんはいう。
一方で、「パン職人として自分がお客様に食べて欲しいパンと、お客様がパン職人に作ってほしいパンは、一致しないこともしばしばです」ともいう。
同ベーカリーの開店当初の品揃えは、フランスパンやドイツパンなどのハード系と、デニッシュなどのヴィエノワズリー、そして食パンだけだったという。
現在は、あんパンやメロンパンなどの菓子パンも作り、品数もかなり増えた。
自分が提案したいパンと、顧客の「こんなパンもほしい」という声に応えたパンが混在しているといった感じ。
しかし、不思議と違和感はない。
「お客様に満足してもらうことが究極的な目的」(梶原さん)という強い思いがあるからだ。

顧客の立場になって考える。クレームは進歩するチャンス

外壁に取りつけられたオーナメントは、梶原さん自身のデザインだ。


平台の横には、段差をつけて立体感を出した小さな陳列スペースがある。


天井が比較的高く、ゆったりとした感じ。シャンデリアが店内に趣を醸し出す。
「お客様の立場になって考えないと進歩しません」と梶原さんはいう。
例えば、パンの管理方法。あんパンなどの菓子パンは、焼き上がり直後は裸のまま陳列し、粗熱が取れた時点で透明の袋に入れて陳列し直す。
最初は袋をあけたままの状態にしておき、時間がたつと袋の口をテープで止める。
こまめにケアすることで、焼き上がりからあまり時間がたっていない時点で買った場合と、時間が経過した時点で買った場合とのパンの品質の差をできる限り小さくしたい、という思いがあるのだ。
デニッシュ類については、表面のパリッとした食感を長く保つという観点から、最後まで裸のまま陳列する。
接客にも熱心だ。「ウチみたいなベーカリーの最大の強みは、顧客と向き合ってパンが作れ、販売できるということだと思うんです。ちょっとした会話を交わすことで、お客様との距離がすこしでも縮まれば、進歩するためのいろいろな情報をお客様が提供してくれるんですよ」と梶原さん。
顧客との触れ合いがあれば、パン職人として普及させたいパンを提案しやすくもなる。
「『このパンはどうやって食べるのですか』とよく聞かれますが、例えばドイツパンだったら、薄くスライスしてチーズなどをのせて食べるとおいしいですよ、と答えます。お客様がパンについてのいろいろなことを聞きやすい雰囲気を作り出すことが大切だと思うんです」
そんな梶原さんは「顧客のクレームは進歩するチャンス」と考えている。
「客商売なのでクレームはつきものなのですが、クレームがあると、心が引き締まるというか、製造においても接客においても『基本の大切さ』ということを再認識するんです」と話す。
梶原さんのこうした地道な努力が実を結び、開店当初はほとんど売れなかったライ麦パンの「フォルコンブロート」(630円、ハーフカット320円)や、内麦粉を使った「ノアフリュイ」(350円)などの「梶原さんの自信作」にすこしずつ固定客がついてきたという。
◇
ラ・ブランジェリー・ピュールは、売り場が約7坪、製造スペースが約10坪。製造スタッフは、梶原さんを含めて2人。販売スタッフは常時1人。品揃えはおよそ80品目。地元の熱心な固定客に支えられている。

原価計算女王
原価計算女王
全粒粉をたっぷりと配合
全粒粉山食
 全粒粉をたっぷりと配合した食パン。1斤350円。
【前処理材料配合%】
グラハム粉 67
塩 0・5
熱湯 67

【前処理工程】
グラハム粉と塩を熱湯に入れてやわらかくしてから室温でもどす。

【配合%】
強力粉(ゴールデンマンモス) 80
フランスパン用粉(リスドオル) 10
フランスパン用粉(モンブラン) 10
ドライイースト 0・6
塩 2・1
グラニュー糖 1
ラード 2
ビタミンC(0・8%溶液) 0・1
モルト 0・4
水 58
前処理した材料 全量

【工程】
ミキシング L3分M3分(ラード投入)L3分M3分、
捏ね上げ温度 27度C、
発酵 28度C75%3時間(2時間の時点でパンチ)、
分割 240グラム×4、
ベンチタイム 30分、
成形 丸めて型に入れる。
ホイロ 27度C80%1時間30分〜1時間40分、
焼成 上火200度C下火240度C50分(スチーム注入)

※ドライイーストは予備発酵させる=(1)重量比で5倍の量のお湯(39〜40度C)の中に入れ、同じく重量比で5分の1のグラニュー糖を加えて8分置く(2)[1]を攪拌してさらに8分置く。

試行錯誤を重ねた結果たどりついた自信作


バゲット・ナチュール
 低温で長時間発酵させて作るバゲット。クラストがパリッとしていて、クラムがしっとりしているのが特徴。様々な製法を試し、試行錯誤を重ねた結果たどり着いた梶原さん自慢の製品だ。ライ麦粉を10%配合する。250円。
【配合%】
準強力粉(モンブラン) 90
ライ麦粉(ライK) 10
ドライイースト 0・1
モルト 0・4
塩(シママース) 2
水 68〜70

【工程】
ミキシング L2分(塩投入)L3分M1分、
捏ね上げ温度 24度C、
発酵 13時間(12時間の時点でパンチ)後冷蔵庫で一晩ねかせる。
分割 350グラム、
ベンチタイム 30分、
成形 両端を細めにしたバゲット形、
ホイロ 27度C75%1時間10〜1時間25分、
焼成 上火240度C下火200度C50分(スチーム注入)

※ドライイーストは予備発酵させる=(1)重量比で5倍の量のお湯(39〜40度C)の中に入れ、同じく重量比で5分の1のグラニュー糖を加えて8分置く(2)[1]を攪拌してさらに8分置く。

地道に提案してきたライ麦パン


フォルコンブロート
 梶原さんが地道に提案してきたライ麦パン。「薄くスライスして、いろいろな食材をのせて食べてください」と顧客に勧めている。
【サワー種配合%】
ライ麦粉(ライK) 30
初種 0・8
水(酸性水) 20

【サワー種工程】
ミキシング L5分、
発酵 27度C75%20時間

【前処理材料配合%】
グラハム粉 20
押麦 20
塩(シママース) 0・5
熱湯 35

【前処理工程】
全材料を合わせ、やわらかくしてから室温で冷ます。塩は押麦とグラハムの発酵を止めるためと、雑菌の繁殖を抑えるために配合する。

【本捏ね配合%】
フランスパン用粉(リスドオル) 25
ライ麦粉(ライK) 50
生イースト 2
塩 2
水(酸性水) 55
サワー種 全量
前処理した材料 全量

【本捏ね工程】
ミキシング L4分(前処理生地投入)L1分、
捏ね上げ温度 27度C、
分割 850グラム、
成形 なまこ形、
ホイロ 30度C75%1時間〜1時間10分、
焼成 上火190度C下火235度C1時間(スチーム注入)

※捏ね上げ後、すぐに分割し成形する。


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