塩パン 花盛り - ブランスリー電子版

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特集/2014年10月号

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塩パン 花盛り
 「塩パン」と呼ばれるシンプルでほんのり塩味の効いたパンが、多くのベーカリーで商品化され、人気を集めている。取材を進めていくと、パン種製造販売のホシノ天然酵母パン種が提案する、生地を長時間熟成させて作る製品と、愛媛県のベーカリー、パンメゾンの1日5000個売れるというほんのりと塩味の効いたロールパンの、少なくとも2つの源流があることがわかった。各ベーカリーとも、これらに独自のアレンジを加え、それぞれが特徴ある「塩パン」を商品化しているようだ。



素材自体の味を深く感じ取ってもらう - パン工房風見鶏
素材の味わいを引き出した「塩パン」(税抜160円)
塩パンと同じ生地を山型食パンの型に入れて焼く「石窯焼き塩トースト」(税抜340円)
「石窯焼き塩トースト」の断面図
「パン工房風見鶏」の福王寺明シェフ
シンプルな生地に3種類の酵母を使用
 「これからのパンづくりは、生地も具材も素材自体の味を深く感じ取ってもらう動きがさらに強まっていくのではないかと思います」と話すのは埼玉県さいたま市のベーカリー「パン工房風見鶏」の福王寺明シェフ。例えば菓子パンであっても、ケーキのようにクリームなどをたくさん盛り込むことで全体としての甘さを出すのではなく、パン自体のおいしさと、具材そのもののおいしさのそれぞれを生かすような作り方が求められているという。
 こうした素材そのもののおいしさを味わうという流れにまさに則したものが、同店が販売する「塩パン」(税抜160円)、「石窯焼き塩トースト」(税抜340円)、「石窯焼き塩バタートースト」(税抜380円)などの商品群だ。
 小麦、水、塩を基本材料に用いたシンプルなパンだが、ホシノ天然酵母(生種)、内麦フランス種(中種)と小麦自然発酵種(ルヴァンリキッド)の3種の酵母を使用し発酵。それにより複雑なパンの旨味を生地に出した。
 「塩だけのパンですと、どうしても単色の味になりがちですが、3種の酵母を用い配合も工夫する事で、味に立体感を出しました」(福王寺シェフ)。この味は「立体的な」という意味で「3D」と呼んでいるという。

好奇心や遊び心から生まれるもの
 「塩パン」を最初に開発したのは今から10年前の2004年。「シンプルなご飯のような、もちもちして飽きのこないものを作りたいと思いました」と福王寺シェフは当時を振り返る。そしてイタリアの伝統的なパン、スキャッチャータをもとに、そこに3種の酵母を用いて中身のもちもち感と独特の旨味のあるパンの開発に成功した。
 その4年後の2008年には、遊び心から「石窯焼き塩トースト」を作ったという。「塩パンと同じ生地を山型食パンの型に入れて、同じように300度の高温短時間で焼いたらどうなるだろうと考えました」と目に力を入れて熱く語る福王寺社長は好奇心と探究心の塊だ。元来、食パンはゆっくりと中身を膨らませながら外側も焼くが、外側から高温で焼くことで中の生地の旨味を溜め込めばもっとご飯に近いようなもちもちのものができるかもしれないと考えたという。
  「実験」は思わぬ結果を生む。高温で焼きかりかりとした外側の皮。そこを突き破ると中味はふっくらもちもちとしたご飯のようなパン。3種類の酵母が織りなす立体的な味が口に広がる。窯の扱いには、微妙な技術が必要だった。
 「塩パンのこの生地だから可能でした。水を一杯入れてもべちょべちょにならないよう微妙な配合量でちょっとずつ水を入れていきます。それを短時間で中が膨らむように焼くのですから、ちょっとしたコツが必要なのです」(福王寺シェフ)

「3D」の味を広める楽しさ
 同店で塩パンが生み出されて10年。その間に、粉の使い方も酵母の混入比率も少しずつ変えていった。また今や同店の塩パンは、「塩パン屋」ができるほどのバラエティーがあるという。どういうことかというと、パンケーキなどの菓子パン、バゲット各種、各種総菜パンなど、同店で販売するパンの多くは、塩パンの「3D」の味の生地をベースに作られているからだ。塩パンから始まった生地や酵母への思いは同店のあらゆるパンに大きく影響を与えているのだ。
 また塩パンは海外にも飛び出した。福王寺シェフは3年前から台湾でも講習会の講師として「塩パン」を教えている。「技術を広めるのは楽しいですね。人と話す事で考えも豊かになります」と笑顔をみせる福王寺シェフ。高温窯で焼くのはそれなりに技術が必要で、教えるのも難しいというが、塩パンを学びたいという人は、後を絶たないようだ。

パン工房風見鶏
〒336‐0042 埼玉県さいたま市南区大谷口5338−6
電話048‐874‐5831



発売1カ月弱で1日780個も売れるヒット商品に - ポンパドウル元町本店
人気の「塩パンロール」。口に入れやすい太さに焼き上げている
「塩パンロール」の断面。マーガリンを塗って巻いた生地を焼成する
米粉を配合したもちもちとした食感の「塩パン」
「塩パンロール」の開発を担当した製品開発課主任の佐々木卓也さん
店内入ってすぐ目に入る場所に「塩パンロール」を陳列
発売1カ月足らずで売り上げ1位商品に
 全国に83店舗を展開するベーカリー「ポンパドウル」で、全店舗で8月1日から販売している、三日月形のロールパン「塩パンロール」(税込129円)。発売から1カ月もたたないうちに、同ベーカリーのロングセラー商品「チーズバタール」(税込583円)を抜き、人気ナンバー1の座に躍り出た。多い店舗では1日に780個も売れているという。
 販売スタッフらの士気も、今回の「塩パンロール」の売り出しに関しては、一層高まり、焼きたてを試食に出すことを重点的に行っていったという。トッピングは塩のみという、見た目では分かりにくい同製品の味の特長を伝えるためだ。
 サクッと歯切れの良いソフトフランス生地に、塩を加えたマーガリンを塗って巻き込み、ゲランドの塩をトッピングして焼き上げた同製品は、3つの食感が一度に味わえる。
 「まわりはカリッと、中はふわっとやわらかく、底面はマーガリンの油分が溜まってサクッとジューシーな食感になっています。その3つの食感を一度に味わっていただけるよう、口に入りやすい太さを意識した形に成形しています」(製品開発課主任の佐々木卓也さん)
 また、使っている材料がシンプルな点も、好評を得ている理由の一つだという。
 「3つの食感は、焼きたてのときが最も楽しめます。一方、焼いた翌日は全体的にしっとりとするので、それはそれで食べやすいと思います。また、材料がシンプルですし、食事パン感覚で飽きずに食べられると思います」(佐々木さん)

年間を通して売れる商品に育てていく
 同ベーカリーでは4年前から、米粉を配合したもちもちとした食感のロールパン「塩パン」(税込108円)も販売している。同製品は、発売開始以後一定の売り上げをキープしていることから、今では定番商品となっている。
 「塩パン」も、ゲランドの塩をトッピングした、塩気の効いた味わいが特徴の製品だ。同製品が、「塩パンロール」の開発に当たり、一役買った。
 夏向けの商品開発において、塩を効かせたパンを開発することになり、「塩パン」に再び着目することとなったのだ。そして、マスコミで話題となった、四国にあるベーカリーで販売されている塩パンが、ブームになっていることもあって、「塩パンロール」の誕生となった。
 好調な「塩パンロール」だが、塩気のある製品が好まれる夏期だけでなく、通年親しまれる製品となることが期待されている。製品開発課主任の佐々木さんは、早くも「塩パンロール」のバラエティー化を考える。
 「野菜だけをサンドしたシンプルなサンドイッチにしてもいいと思います。パン自体に塩気があるので、具材は塩分のないものの方がいいですね。また、焼成前、生地を巻くときに塩気を加えたマーガリンを塗っていますが、その代わりにベーコンを巻いてもいいかと思います。ベーコンの塩気と風味が引き立つと思います」(佐々木さん)
 ベーカリーの売上が落ちるとされる夏期、好評を博した「塩パンロール」。夏が終わっても、年間を通して売上げの底上に貢献していくアイテムとなっていきそうだ。

ポンパドウル元町本店
〒231‐0861 神奈川県横浜市中区元町4‐171
電話045‐681‐3956



焼きたて提供を追求するオペレーションに最適 - サフランおおたかの森店
一番人気の「塩パンベーコンエッグ」(税抜180円)
じゃがいも、ベーコン、チーズで焼き上げた「塩パンじゃがべぇ」(税抜180円)
トッピングを施した状態の焼成直前の塩パン
塩パン生地の総菜パンが並ぶ売場
「石窯パン工房サフラン」の小川佳興社長
総菜パン売上の半分以上を占める塩パン
 千葉県流山市の新興住宅地の中にある「サフランおおたかの森店」では、毎日「塩パン」の生地を用いた総菜パンが12種類ほど焼かれている。最も売れているという「塩パンベーコンエッグ」(税抜180円)のほか、「塩パンシーフード」(同)、「塩パンチキン」(同)、「塩パン肉みそレンコン」(同)などパンも具材もボリューム感があり、朝食や昼食用途にしっかり食べられるものがそろう。それらの売上は同店の総菜パン全体の半分以上を占めるという。
 「塩パンは、シンプルな味わいが具材の味を引き立てます。ボリューム感もありますし総菜パンの生地には最適です」と、同店を含むベーカリー7店舗と洋菓子店1店舗を千葉県内で経営する「石窯パン工房サフラン」の小川佳興社長は話す。
 ホシノ天然酵母種を使った多加水の生地を、一晩置いて発酵させ、焼成は7分で高温の直火焼きにする。小麦、水、塩のベーシックな材料で作るため、甘みはないが、塩の味が引き立つ。ホシノ酵母によって作られるもちもち感のある生地は、総菜との相性がいい。

朝から夕方まで何度も出せる
 総菜との相性のみならず、「塩パン」は夕方まで何度も焼き、チャンスロスなく常に焼きたてのパンの提供を目指すという同店の徹底した方針にも則している。「当店はお客様に夕方の閉店前まで焼きたてのパンを買っていってもらいたいと考えていますが、塩パンは生地を冷蔵しておけば、7分で焼いてすぐ出せます」(小川社長)。
 短時間焼成で作業効率が良く、追加の焼成が簡単だ。原価も抑えられる。こうした理由から「サフランおおたかの森店」のみならず、サフラン各店では総菜系のパンの生地で最も需要の高いものとして「塩パン」は定着している。種類もどんどん増えている。ネギやレンコンといった意外性のある素材を使用した商品も人気が高いという。
 「上にのせる具材はお客様が喜ばれるものを思い切りのせれば良いことで、原価は気にしません」と小川社長は話す。「おおたかの森店」での「塩パン」の総菜パンの価格は全て税抜180円で統一。朝食や昼食用としては値頃感を感じられる。

計り知れない塩パンの可能性
 また総菜パンのほか、まだ数としては少ないが、もちもちの食感と酵母が生み出す深みのある味わいを生かし、甘みのある菓子パン用で塩パンが使われることもあるという。
 「塩パンをリュスティックのようにして羊羹を入れたものを出したこともあります。菓子パンだと焼きたての利点はあまり出せないのですが好評でした」(小川社長)。
 具材のない塩パン生地だけのものも、カフェメニューなどで出されている。
 シンプルだが深い味わいの生地をベースに、幅広い商品展開が可能な塩パン。今後の広がりが期待できそうだ。

サフランおおたかの森店
〒270‐0133千葉県流山市十太夫104‐5
電話04‐7197‐6301



フランスパンに匹敵する定番の商品になる - サガミパン工房ブンブン厚木店
「塩パン」(左)と「チーズフォンデュ塩パン」(右)
「塩パン」を使った「塩チキンサンド」(左、税込270円)と、「厚切りベーコンの塩パンサンド」(右、税込184円)
米粉を20%配合し、有塩バターを巻き込んだ「塩バターパン」
「塩バターパン」を使った「バジルチキンの塩バターサンド」(税込184円)
サガミパン工房の地主将人社長(右)と、厚木店責任者の新田見貴仁さん
風味の良さとしっかりとした弾力
 神奈川県厚木市の「サガミパン工房ブンブン厚木店」では、6年ほど前から「塩パン」(税込130円)を販売している。
 販売を始めたきっかけについて、地主将人社長は、「展示会で試食したとき、これはフランスパンに代わるくらいの商品になるかもしれないと思いましたね」と振り返る。
 「塩パン」のほか、「塩パン」と同じ生地にチーズフォンデュソースを注入し、ゴーダチーズをトッピングして焼き上げた「チーズフォンデュ塩パン」(税込162円)も販売している。同製品も、販売してから6年近く経つが、現在、「塩パン」を凌ぐ売れ行きだという。
 「塩パン」のPOPには、「そのままでもおいしい」「サンドイッチにしてもおいしい」とある。
 「ホシノ天然酵母を使用しているのですが、その特有の風味が、引き立つ製品です。風味は豊かですが、食パンやロールパンなどと比べて、味は、主張しすぎないので、サンドイッチに使っていくのがいいのかなと思っています。具材の味をじゃましないですから」(地主社長)
 塩パンを使ったサンドイッチは、カリッと香ばしく焼き上げた鶏肉をサンドした「塩チキンサンド」(税込270円)と「厚切りベーコンの塩パンサンド」(税込184円)の2種類。
 「『塩パン』は、具材の味だけでなく、食感も引き立ててくれます。例えば、フランス生地などをソフトな食感に仕上げようとすると、白焼きにしますが、多少ぐちょっとした食感になってしまいます。でも、『塩パン』は、しっかり焼き込んでも、柔らかいままで、弾力もしっかりあります。歯切れがいいですね。食いちぎりにくい生ハムとか、肉系をサンドするのにも、向いていると思います」(地主社長)
 具材を活かすという特徴を活かし、これまで、生地に直接具を練り込んだ製品も販売してきた。
 「ドライトマトとオリーブの組合せや、かぼちゃのペーストと乱切りなどを練り込んだりしました。アレンジがきくと思います。具材の味がしっかり味わえながらも、ホシノ酵母が作る風味も楽しめるというのがいいですね。毎年初夏の恒例アイテムとなっているのは、ソラマメを練り込んだ『塩パン』です。ソラマメの甘味と、塩気がよく合います」(地主社長)

米粉を配合した長めのロールパンも
 店舗入り口近くの最も目立つ陳列台を、「塩パン」とともに賑わせている製品のひとつに、「塩バターパン」(税込86円)がある。
 同製品は、米粉を2割配合した専用生地で、有塩バターを巻き込んだ、長めのロールパン。特に焼きたては、ちぎると、中からじゅわっとバターが溶け出し、まわりのカリッとしたクラストとの心地よいハーモニーを醸し出す。3月に発売し、1週間ほどして同店の人気商品となった。現在は、カレーパンに次ぐナンバー2の人気だ。
 「『塩パン』と同じで、見た目にさほどインパクトがある製品ではないので、発売当初は試食を強化し、POPを付けて、目立つ場所に陳列しました。人気商品になることは確信していましたから」(地主社長)
 「塩バターパン」は、米粉が配合されていることもあって歯切れが良いので、「バジルチキンの塩バターサンド」(税込184円)など、サンドイッチとしても販売している。サンドイッチ用に確保するのが追いつかないほど、「塩バターパン」の売れ行きは良いという。
 「塩パン」も「塩バターパン」も、歯切れの良さが特長となっているようだ。この2つの製品の登場で、サンドイッチのバラエティーも、大きく広がっていきそうだ。

サガミパン工房ブンブン厚木店
〒243-0014 神奈川県厚木市旭町1‐36‐1
電話046‐205‐0518

原価計算女王
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