特集 ベーグル ナウ - ブランスリー電子版

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特集/2014年7月号

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特集 ベーグル ナウ
 ベーグルは、一時のブームを越えて、日本人の食生活に根付いた感がある。ひとつの新しい商品が、一時のブームで終わるか、長期的に根付くかは、それを提供する人の思いの深さと、それを提供する人の数によるところが大きい。ベーグルの場合は、そのいずれの条件をも満たしていた。



食感を追求していたらベーグルに辿り着いた - Kepobagels
山内優希子オーナーシェフ
京王線・上北沢駅からすぐの線路沿いにある「Kepobagels」。白と黒のシンプルな店構え
「ニューヨークベーグル」各種。「プレーン」(税抜き160円)、「シナモンレーズン」(同)など9種類ある
「和ベーグル」の「プレーン酵母4%」(写真左)、「プレーン酵母6%」(同下)、「プレーン酵母10%」(同右)
左から「プレーン酵母4%」、「プレーン酵母6%」、「プレーン酵母10%」の各断面
ベーグルの生地を使用した食パン類もある



「きなこ」(税抜き180円)はきなこがトッピングされている
「きなこ」(税抜き180円)は、中にも少し甘く味付けされたきなこがたっぷり入っている(右)
店内の目に付く場所に「ニューヨークベーグル」と「和ベーグル」のそれぞれの材料や食べ方などについて書かれた黒板がある
レジ横には、「サーモンサンド」(税抜き400円)などベーグルを使ったサンドイッチが6種類揃う
食感の違う4タイプのベーグル
 東京・世田谷区の京王線上北沢駅からすぐの「Kepobagels(ケポベーグルズ)」は、オーナーシェフの山内優希子さんが2008年に開業したベーグル専門店だ。
 6周年を迎えた今年の4月、客への感謝の念を込めて「ありがとう企画」と題して3日間限定商品を販売した。同店は、子どもから年配者まで幅広い層に愛されており、販売担当のスタッフの頭の中に、お気に入りの商品がインプットされた常連客も多いという。
 品揃えは全部で100種類ほどとかなり多い。ベーグルは主に食感の違いで、4タイプに分かれている。
 ひとつは、「ニューヨークベーグル」のシリーズで、「プレーン」(税抜き160円)など9種類ある。山内さんが実際にニューヨークで食べ歩いて舌に記憶した味を、ニューヨークの伝統的な製法を基に、再現したもの。北米産の小麦とイーストを使用して、クラストはばりっと、クラムはしっとりとした食感に仕上げている。
 これに対して、ホシノ天然酵母と、国内産小麦粉を使い、もちもちとした食感に仕上げた「和ベーグル」のシリーズがある。「和ベーグル」は、主にやわらかさの違いで、さらに3タイプに分かれている。酵母の量が対粉4%の「プレーン酵母4%」(税抜き140円)、同対粉6%の「プレーン酵母6%」(税抜き140円)、同対粉10%の「プレーン酵母10%」税抜き150円)で、酵母の配合が多いほど、ソフトな食感になるという。
 「初めて来店された方は、どのタイプも万遍なく購入されますが、ニューヨークベーグルの『プレーン』は、お手並み拝見という感じで、かなりの方が購入されます。一方、常連のお客様は、それぞれお目当てのものが決まっているようです」(山内さん)
 食感などの違いにこだわった4つのタイプを揃えていることは、同店が幅広い層から支持を得ている大きな理由のひとつだろう。

ベーグルの生地を使った食パンも
 山内さんは、パン職人を志してベーカリーで修業をしていくうちに、食感にこだわってパンを作ることに夢中になっていったという。そして、ベーグルというアイテムを通して、様々な食感を表現していきたいと考えるようになった。
 山内さん自身が最も気に入っているという食感と味わいのタイプは、「和ベーグル」の「プレーン酵母6%」で、この生地をベースにしたベーグルのバリエーションが最も多い。この生地を使い、茹でずに焼成した「プレーン食パン」(税抜き280円)や「レーズン食パン」(税抜き400円)などの食パンや、ミルククリームをサンドした「ミルクロング」(税抜き180円)などの菓子パン、明太子とクリームチーズをサンドした「めんたいロング」(税抜き240円)などの調理パンなども展開している。
 同店の売れ筋ベーグルの「焼きりんご」(税抜き230円)と「きなこ」(税抜き180円)も、「プレーン酵母6%」の生地を使っている。
 「焼きりんご」は形状もりんごを模しており、見た目も楽しめる。中に入っているソテーされたりんごのサクサクとした食感がよく、表面にまぶしてあるシナモンパウダーの香りが効いている。
 「きなこ」は、「一度食べたらきなこの多さに驚いていただけます」と、山内さんが言うように、少し甘く味付けされたたくさんのきなこが、どこから食べても必ず当たるように製品全体に入っている。成形の際、生地の中にきなこを入れ込むようにして、ねじるように形作る。手間のかかる製品だそうだ。
 酵母の配合が多めの「プレーン酵母10%」の生地を使った商品は、「かぼちゃ」(税抜き170円)と「豆乳」(税抜き180円)。両製品とも、焼成前に茹でているものの、食感はベーグルというよりも、パンに近い印象だという。かぼちゃや豆乳の持つ甘味や風味を活かすためには、酵母を多めに入れたソフトな食感の生地の方がいいのだそうだ。両製品は、副材料が生地に練り込まれていて、具材感がなく、子どもにも食べやすいように仕上がっている。

ライフスタイルに合わせた楽み方
 ランチ用としての需要が多いのは、「野沢菜」(税抜き210円)や「ごまさつ」(税抜き210円)などの野菜入りや、「黒こしょうチーズ」(税抜き210円)などチーズ入りのベーグル。
 「平日のランチ時は、オフィス街ではないからか、サンドイッチはそれほど多くは出ませんね」(山内さん)
 住宅街なので、持ち帰って、自宅で好きな具材をサンドする人も多いのだろう。また、常連客には近くの幼稚園に通う子どもを持つ主婦も多い。ランチや小腹がすいたときの食事として簡単に食べられ、栄養も具材感もある、野菜入りやチーズ入りなどのベーグルは、子育て中の主婦の強い味方になっているようだ。
 保存の仕方や温め方について客から訊かれることが多いことから、同店としてのお勧めの方法を書いた紙を、レジ横に用意している。
 「『ニューヨークベーグル』は、横にスライスして食べることをお勧めしています。スライスした後に、トーストしたり、何か具材をサンドしたりするかはお好みです。『和ベーグル』は、もっちりとした食感を楽しんでいただきたいので、レンジでほんのりと温め直していただくように勧めています」(山内さん)
 ベーグルは、食べ慣れている人とそうでない人との知識の差が大きいアイテムだと感じているという。そのため、客への説明のマニュアル化は難しいそうだ。
 「焼いた当日の食感をぜひ味わっていただきたいのですが、食べ切れない場合は、冷凍保存をお勧めしています。時間がない朝でも、冷凍庫から取り出して電子レンジで温めれば、簡単に朝食を済ますことができます。お客様それぞれのライフスタイルに合わせて便利に使っていただければ、嬉しいですね。また、当店としても、いろいろなライフスタイルに合わせた食べ方の提案をしていく必要があると思っています」(山内さん)
 同店のベーグルは、食感の違いや具材の違いが楽しめ、いろいろな食べ方ができることから、朝食や昼食、おやつなどと様々なシーンで重宝されているようだ。

Kepobagels
住所:〒156-0057 東京都世田谷区上北沢3‐17‐8
電話:03‐6424‐4859
営業時間:午前9時〜午後7時
定休日:月曜(祝日の場合は営業)、火曜
品揃え:100品目
スタッフ:製造2人、調理・販売4人
店舗面積:売り場2・9坪、厨房9坪
日商:平均9万5000円



日本の社会に定着したベーグル専門店 - ヴィヴァン
ベーグル専門店「ヴィヴァン」の外観
双子の姉妹2人で同店の店長を務める。左から妹の市川寿美子さん(47)と姉の伊藤万美子さん(同)
ベーグルの種類は80種類以上にもおよぶ。ユニークなものも多い
製造数が最も多いという「プレーン」(税込み180円)



和菓子をモチーフにした「黒ごま塩あんもち」(税込み270円)とその断面(下の写真)
和菓子をモチーフにした「黒ごま塩あんもち」の断面
コーヒー生地にチョコレートを練り込んだ「コーヒーチョコ」(税込み250円)
くるみの食感と全粒粉入りのベーグルのもちもち感が心地よい「くるみ」(税込み250円)
チョコ生地に栗をふんだんに使った「チョコモンブラン」(税込み270円)
もっちりとした中味を追求
 埼玉県さいたま市のJR武蔵浦和駅から徒歩7分ほどの所にあるベーグル専門店「ヴィヴァン(vivant)」。扉を開けると、「いらっしゃいませ!」という小鳥のさえずりのような明るい女性の声が2人分重なって鳴り響いた。
 明らかに双子とわかるほぼ同じ顔の女性2人が揃って迎え入れてくれた。姉妹2人で同店の店長を務める姉の伊藤万美子さん(47)と妹の市川寿美子さん(同)だ。
 同店は10年前にオープンして以来、地域の人に愛され、併せて運営する天然酵母のパン教室やネットショップなども評判の人気店。真ん中に穴があいていないタイプのベーグルが印象的な店だ。しかし、そのことを話すと、「特に意識したわけではありません。そもそも『ベーグルには穴がある』という発想自体が特にありませんでした。純粋においしさを追求したらこうなったんです」と万美子さんと寿美子さんは声を揃えた。穴がない方がもっちりとした製品になりやすいからという。硬めのクラスト感を出す場合は穴がある方がよいが、同店ではあえてもちもち感を追求。そのためか、噛みにくさからベーグルを敬遠しがちな年配者の客も多い。また具が多く入るため、腹持ちが良いものになるという。
 作り方も少し変わっている。通常は成形後に発酵だが、同店では発酵してから成形。その後の茹で時間も標準的なレシピに比べると短めだ。中味のもちもち感を追求したら自然とこういう作り方になった。
 そんな2人がパン作りを始めたのは、今から17年前に遡る。当時事務のOLをしていた姉の万美子さんが軽い気持ちでパン教室に通い始めた。講座は1年ほどで終了したが、そこでパン作りの魅力にとりつかれた万美子さん。材料を買い揃え「いかにおいしいパンを作るか」を追求する日々が始まった。その様子を見て、主婦だった妹の寿美子さんも参戦。2人で力を合わせて、食パンからフランスパン、そしてベーグルと、あらゆるパンの作り方を研究した。5年後には、今の店の場所から徒歩1〜2分ほどの、妹の寿美子さん一家が当時住んでいたマンションの部屋の一角で、天然酵母のパン教室を開いた。その空きスペースでベーグルの専門店をオープンしたのはその2年後の2004年だ。「パン教室で作ったパンを通販で月に1回販売することがあって、その中でベーグルの評判がすごく良かったんです。それならお店をということになりました」(万美子さんと寿美子さん)。

楽しみから生まれる様々なアイデア
 ベーグルの品質のほかに、同店の人気の理由としてあげられるのは、80種以上もあるという豊富な品揃えだ。商品のアイデアも2人で考えるが「パンやベーグルとは関係ない話題のお店などに行って思いつく事が多いですね」と話す万美子さん。
 製造個数が最も多いのは「プレーン」(税込み180円)や「雑穀」(同)などだが、ブルーベリーチーズケーキの塊を練り込んだ「ブルーベリーチーズケーキ」(税込み270円)はスイーツ系で人気の商品。和菓子をモチーフにした「黒ごま塩あんもち」(同)や「よもぎもち大納言」(同)などのユニークなものもある。また、こだわりのオーガニック素材を用いた「ドライトマトとオリーブ」(同)や「塩豚とグリル野菜」(同)など総菜系の商品も充実している。そのほか、季節に応じて変化する商品も。今はアボカドチーズクリームを使った春商品の「アボカドソーセージ」(同)がかなり売れている。
 季節商品のほか「本日限定」の商品が出る事もあり、評判が良くて素材が充分にあれば定番になることもある。「いちごフロマージュ」(税込み270円)はクリスマスに出して好評だったので販売を継続している。
 「その都度手に入った素材を利用してアイデアにつなげています。どんなベーグルを作るか、考えるのはとても楽しいですよ」と話す2人。アイデアを出すための食べ歩きも、自分達が楽しめる所。とにかく決めているのは楽しく仕事をするということだ。
 一方で、粉には徹底的にこだわっている。卵や牛乳を使わないベーグルにとって小麦粉は命と認識しており、ここ8年間はずっと北海道産の小麦粉を使用している。
 「甘みや食感、香り、瑞々しさなどをみて、自分たちのベーグルに合うものを厳選しました」(万美子さんと寿美子さん)
 オーガニックのドライフルーツを使う時も、しっかり選んで決めているそうだ。原価率は高くなっても、材料選びには妥協しない。

町に定着したベーグル専門店
 一挙一動が足並み揃った感じの仲の良い2人だが、今は、同じ一戸建ての2階に寿美子さんの家族である市川家が住み、3階に独身の万美子さんがいる伊藤家が住んでいる。1階がパン教室兼ベーグル専門店となっているが、8年前に家を新築した際に、店もこちらへ移転した。
 「昨日も街中で偶然、万美子と会っちゃった」と寿美子さんが話すと、「そうそう。本当にばったり」と続く万美子さん。2人とも「以心伝心」で、息がぴったりな黄金コンビだ。
 そんな2人が揃って製造も販売も商品開発も以心伝心で行なっているこの店では、毎日1回、朝6時の開店前にベーグルを焼く。その1回で焼く数は、平日は約500個、土曜日は1000個ほどだ。店の評判は口コミやネット上で広まり、近隣のファンのほか、遠方からネットショップで購入する人も増えている。以前、朝11時開店だった頃は、開店前に長蛇の列ができていた事もある。今は6時開店にしたため行列はなくなったが、焼く個数は以前より増えた。
 「お店を始めた10年前は、ベーグルというと食べ方から説明しなくてはならず専門店は、異質な存在でした。でも最近は日本社会の中に定着してきて、『町のベーグル屋さん』が自然な存在になってきているように思います。健康志向もあるかもしれません。卵アレルギーの人からの需要や、離乳食としての需要もあるようです」(万美子さんと寿美子さん)
 先日は自転車で各地のベーグル店を70店ほど回ったという男性が来た。男性客の比率も増えてきた。 「忙しい中でも食べやすいし、満腹感がありますから」(万美子さんと寿美子さん)
 実は駅の近くに近々2号店を出す予定だ。「7月末か8月初め頃ですね。立地的に異なるので、また違った層の集客を期待しています」(万美子さんと寿美子さん)
 2人は生まれてからずっと武蔵浦和のこの町に住んでいる。慣れ親しんだ大好きな場所で、皆にベーグルを通じて笑顔になってもらいたいという気持ちで今日も店を開いている。

ヴィヴァン
住所:〒336-0027 埼玉県さいたま市南区沼影1-25-12
電話:048‐839‐4311
営業時間:午前6時〜午後6時(売り切れまで)
定休日:日曜、祝日
品揃え:80品目
スタッフ:製造2〜3人・販売2〜3人
店舗面積:売場2坪、厨房5坪、パン教室4坪
日商:平日10万円 土曜20万円

原価計算女王
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