毎日通って主役になれる店 - パンとエスプレッソと - ブランスリー電子版

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お店拝見/2014年6月号

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毎日通って主役になれる店 - パンとエスプレッソと
東京・表参道エリアにある「パンとエスプレッソと」
店内バールの様子。バリスタのスタッフが提供するコーヒーは逸品だ
ベーカリーの売場。見た目はハード系だが、食べると日本人好みにもっちりとしているパンが多い
シェフの菅原秀さん
「毎日」のものを作り上げる
 ファッションなどの流行の発信地で、食に関しても洒落たカフェや専門店が集まる東京・表参道エリアに、「パンとエスプレッソと」という少し変わった名前の店がある。その名の通り「パン」のあるベーカリーと「エスプレッソ」のあるバール(イタリア発祥の軽食喫茶店)が一緒に居を構えた同店だが、訪れた人の口コミを中心に広まり、開店から5年間ずっと人気を高め続けてきた。その秘密は「パン」と「エスプレッソ」、そして店名の最後の「と」に続く3つ目の何かにあるようだ。
 同店のレイアウトは、テラスを含むカフェスペースの横に、落ち着いた雰囲気のベーカリーを併設させた作り。来店客の多くはドリンクのほか、フレンチトーストやパニーニが評判のカフェメニューを楽しむが、ベーカリーのほうも根強い人気で、看板商品の食パン「ムー」(税込み290円)などを購入してから帰る常連客も多い。
 「当店は訪れた方達に『毎日通ってもらう』ことを常に目標として動いています」と話すのは同店のベーカリー部門の製造責任者であるシェフの菅原秀さん(29)。毎朝の仕事始まりの前などに同店を訪れた人が飲む1杯のエスプレッソやマキアートはバール部門のスタッフであるバリスタ(コーヒー抽出の専門技術を持つ職人)が提供。
 菅原さんのほうは、その毎日の1杯と相性のいいパンと料理を提供するために、日々努力を重ねている。
 同店のパンの特徴を菅原さんは「見た目はハード系なんですが、食べると日本人好みにもっちりとしているので、このギャップを楽しんでもらいたいですね」と説明。
 毎日のコーヒーやエスプレッソをバールで楽しむイタリアの文化を輸入しながら、パンは日本人のために開発したものを提供。この方針は、オープン時に同店のプロデュースを行なったバリスタの國友栄一さんから引き継がれたものという。また、常連客の9割が女性ということもあって、全体的に小振りで丁寧に成形された食事パンが多いのも同店の特徴となっている。
 そしてそのパンについて菅原さんは「毎日のコーヒーやエスプレッソと同じ位、ずっと食べていても飽きがこないような味のものを出す必要があります」と力を込める。「だから定番商品を中心に守ってきているレシピがあって、毎日同じ時間に同じクオリティーのものを出して、そのレベルを下げないようにすることが大切なんです」。
 「毎日」のものを作り上げるための真剣さが伝わってくる。



看板商品の食パン「ムー」(税込み290円)。バターの配合率を高め、中がふわふわになるように焼き上げている
食パンの「ムー」を使用した「鉄板フレンチトースト」
ラテアートが美しいマキアート。食後の1杯をじっくり味わってもらうことで、バールの魅力を知ってもらう
厨房ではパン作りとカフェで出すメニューの調理の両方を行う。全面ガラス張りで、開放的だ
パンの魅力にとりつかれて
 「実は僕も4年前まではここのお客でした。でもここのパンの魅力にとりつかれ、ここで働いてみたいと思うようになったんです」と振り返る菅原さんは脱サラのパン職人だ。サラリーマンだった4年前、友達が同店の看板商品である「ムー」を買って持ってきてくれたのがきっかけでパン職人になった。
 「ムー」は通常の食パンよりバターの配合率を高め、中がふわふわになるように焼き上げた食パン。同店のカフェメニューであるフレンチトーストなどにも使用されている。
 「その時に食べた『ムー』のあまりのおいしさに衝撃を受けました。その後、自分で何回かこの店に通い、この店のパンの魅力にとりつかれてしまったんですね。もともとパンが大好きで、なんとなくパンに関わる仕事に憧れを持っていたんですが、これを機に決意しました。この店で働くパン職人になりたいと思ったんです」(菅原さん)。そして菅原さんは勤めていた会社を辞め、この店の採用の門を叩くこととなる。
 当時は、現在は系列店の店長となっている櫻井正二シェフがベーカリー部門の責任者で、菅原さんに実に様々なことを教えてくれた。「毎日同じ時間に同じクオリティーのものを出し、そのレベルを下げないようにすることが大切」だと教えてくれたのも櫻井氏だ。また味も勿論大切だが、この店の雰囲気や特色と合わせ、見た目も一つ一つを綺麗に丁寧に作る必要があり、そのための技術も教わった。
 そしてその櫻井氏が他店へ移った後も、菅原さんは教えてもらったレシピをベースに、バール部門との完璧な一体化を目指し、パンを焼き続けている。

バリスタが立ち上げたバール&ベーカリー
 同店は5年前の2009年にオープンした。当時、熟練のバリスタだった國友栄一氏が、イタリア人の日常に根付く文化であるバールを、ベーカリーと合わせた形で提供していきたいと考え、同店を立ち上げた。パンとコーヒーとの組み合わせにこだわったのは、どちらも毎日提供できるものなので、一緒にすることでより幅広い層に興味をもってもらえると考えたからだ。毎日通うバールで、毎日提供するパンの魅力を知ってもらい、逆にパンを買いにきた人にも、そこでエスプレッソの1杯をじっくり味わってもらうことで、バールの魅力を知ってもらう、というのが狙いなのだ。「毎日通ってもらいたい」という思いをベースに日常の中の幸せの提供を追求した。
 立ち上げから、5年が経ち、ベーカリーの責任者は櫻井さんから菅原さんへ変わり、バール部門のバリスタスタッフも入れ替わりがあったが、店のコンセプトは受け継がれている。定番メニューは根強く残り、パンも今ある定番商品の多くは櫻井氏から引き継いだものだ。
 一方で、菅原さんは、「今後は自分自身のオリジナルのパンも作っていきたいですね」とも話す。現在は定期的に新作も出している。季節商品がほとんどだが、中には通年の定番商品として定着したものもある。例えば「くりザマンド」(税込み210円)はマロングラッセをダマンド生地と合わせピーカンナッツの生地で包んだもの。菅原さんが他のスタッフと意見を出し合い、ふとしたインスピレーションからこの組み合わせを思いついたものだが、評判が良く通年での定番商品となった。
 「バゲット」(税込み340円)も菅原さんの考えで小麦の風味をより深く味わってもらうため、低温長時間発酵の時間をさらに20時間まで拡大。素材へのこだわりが強い菅原さん独自の姿勢が見られる。
 同店は基本コンセプトを守りながらも常に進化を続けているようだ。店名の「パンとエスプレッソと」の「と」の後に続くものは、「パンとエスプレッソ」の組み合わせを楽しむ「私」だと、来店客に感じさせてくれる。ここは皆が主役になれる毎日の居場所なのだ。

SHOP DATA
店名:パンとエスプレッソと
住所:〒150-0001
東京都渋谷区神宮前3-4-9
電話:03‐5410‐2040
営業時間:午前8時〜午後8時
定休日:第2月曜(第2月曜が祝日の場合は翌火曜)
品揃え:約30品目(ベーカリー)、約40品目(カフェ)
スタッフ:製造4人、販売4人
店舗面積:厨房12坪、カフェ10坪、ベーカリー3坪
日商:ベーカリーとカフェを合わせて30〜40万円







原価計算女王
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