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| 「数字に捉われるな。身体で覚えろ」 - ドゥルセオガール |
| | ドゥルセオガールは、東京・太田区、東急池上線・洗足池駅前にある | | | | 左から、以前は舞台照明の仕事をしていたという大河原寛子さん、今年で9年目の岸田優樹さん、店主の三嶽智子さん、今年で4年目の小林明日香さん | | | | 生地の中にチーズがたっぷり入った1番人気の「チーズ丸」 | | | | 評判の高いバタールは、ドゥルセオガール自慢の商品 | | 「超適当」でも忘れられない旨いパン 「通算すると2年間クルーズ船に乗っていました。船でのパン作りの環境には大いに不満でした。それにいい加減なところもあって」と語り始めたのは、東京・太田区、東急池上線・洗足池駅前で、スペイン語で「楽しい我が家」の意味の店名のベーカリー「ドゥルセオガール」を経営する三嶽智子さんだ。 三嶽さんは高校を卒業すると1年間カナダに語学留学して英語を学んだ。帰国後20歳を迎えた頃に、見習いとして都内のベーカリーに職を得た。子供の時から母親の作るパンに接しており、パンは身近な存在だった。それと、帰国後始めた音楽活動を続けるためにも早朝の仕事を見つける必要があった。時機を得た職場だった。 初めて本格的な修業を開始したベーカリーは、実にキッチリと各種の材料を計量した。その細かさに驚いたという。1年半勤めた後、東京・品川区内のベーカリーに転職。ここでも驚きが待っていた。三嶽さんは「そこのオーナーは『超適当』でした」と振り返る。全てが目分量だったが、焼き上がるパンは、美味しかったという。オーナーの言った忘れられない言葉がある。「数字に捉われるな。身体で覚えろ」。それと何よりもオーナーの楽しそうにパン作りをする姿が眼に焼きついている。 クルーズ船への乗船が今を引き寄せた 修業を始めて3年が経った頃、自分のパン作りに疑問を持った三嶽さんは、アルバイト情報誌で見つけたクルーズ船の仕事に就いた。パン作りから離れるための選択だったが、面接官にパンを作るように言われ、キッチン担当として採用された。船の上でもパンを焼くことになった。しかし、ここで「身体で覚えろ」という教えが役に立つことになる。三嶽さんは、東南アジアを周遊する船の唯一の日本人スタッフだったが、ここでの経験が現在へとつながる切っ掛けとなった。 船上での作業は、寄港地で仕入れる材料によって変わる。その場所で手に入る物を使って作るのが基本だ。例えば今日はタイの小麦粉でパンを作り、明日は韓国産を利用するといった具合。緊張の連続だ。それに加えて日本では考えられないことも起こる。ある日、フィリピン人の上司から突然作業を早く終わらせるように言われた。理由は自分が寄港地で遊びたかったから。仕事を早く終わらせるための上司の指示は「イーストを2倍入れろ」というもの。自らの感覚を研ぎ澄まさなければ、良い仕事の出来ない職場だった。 2年の乗船期間を経たのち、有名ホテルの厨房でパンとケーキを焼き始める。ホテルは就業時間がきちんとしているので、仕事が終わるとクルーズ船で知ったサルサダンスを学び、グループを組んで、イベントなどで踊っていたという。そんな時、友人から24時間営業のカフェを開く予定なので朝番担当の店長をやらないかと誘われた。採用する条件として、何が出来るか企画を出して欲しいとの依頼。かなりの資料を集めたが、友人のカフェを開く計画は頓挫。三嶽さんの頭の中の企画案は宙ぶらりん。ならば「自分で店を出そう」と決心した。
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| | ドアを開けると売り場から厨房まで、すべてが見渡せる広々とした造りの店内 | | | | 離乳食としても注目される天然酵母使用の「かぼちゃパン」 | | | | 焼くとより香ばしさが増すという「全粒粉食パン」 | | | | ライ麦粉と全粒粉がそれぞれ20%入った「リコ」 | | | | 曜日限定のパンの製造スケジュールをわかりやすく店内に表示 | | 離乳食として人気のかぼちゃパン 今年1月、「ドゥルセオガール」は10周年を祝った。身近にあったパンの世界に気軽に足を踏み入れ、次にそこから抜けようと船に乗ると「パンを焼け」と言われ、サルサを踊りながら仕事を楽しんでいると、カフェの店長に誘われる。そして、27歳のときにベーカリーをオープン。まるで偶然が必然であるかのようだった。 同店の焼き上げる商品はおよそ200種。常に100種類が日々店頭を賑わせる。一番人気の商品は、食パン生地を丸形にして、焼き上がりにチーズを塗って仕上げた「チーズ丸」(税抜き250円)。中にはとろけるチーズがたっぷり。フランス産小麦粉と沖縄の塩で作った「バタール」(税抜き280円)は自慢の1品。熊本産の粗挽きした小麦全粒粉を使用した「全粒粉食パン」(1斤税抜き340円)は、粒々感と香ばしさが客に受けて、予約で売り切れることも。火曜と木曜に焼く「天然酵母使用のかぼちゃパン」(税抜き140円)は、離乳食としても注目されているという。1歳前後の子を持つ母親たちに口コミで広まった。ミルクなどにひたして食べる。水曜と土曜限定の「リコ」(税抜き540円)は、ライ麦粉と全粒粉が各20%入る。客にドイツパンの酸味を嫌う人がいるため酸味を抑え た。健康に良いと選ぶ客もいるそうだ。「リコ」とは、サルサのダンス中に気分が高揚すると叫ぶ言葉。スペイン語で「最高」の意味。 パンは大好きな人への最高の贈り物 三嶽さんは「店は地元の皆さんのためにあります」と語る。1店舗で多くの商品を味わって欲しいので少量多品種生産を実行する。「バレンタインデーに、女の子が大好きな男の子に一番上手に出来たチョコレートを贈りたい気持ちに似ています」と三嶽さんは話す。同店の商品作りはパン好きの4人の女性が支える。「数字に捉われるな。身体で覚えろ」といった姿勢は、クルーズ船での経験も生かして、3人の20代の従業員にも伝えられる。ここでは生地の温度を計る温度計も不要だ。水温も「今日はぬるま湯っぽい水」という指示で全員が商品作りに取り組む。製造過程での微調製も各自の感覚一つで行う。そういう場所に毎日200人以上の客が来店する。中には、朝昼晩と日に3度も訪れる客もいるという。「楽しい我が家」に集った4人の女性たちは、大好きな人に最高の贈り物をするために、日々感性を研ぎ澄ます。 SHOP DATA店名:ドゥルセオガール 住所:〒145-0064 東京都大田区上池台2−30−1 電話:03-3720-0765 営業時間:午前7時〜午後7時 定休日:月曜日 品揃え:200品目 スタッフ:製造兼販売4人 店舗面積:厨房9坪、売り場9坪 日商:平日15万円、土日18万円
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