高齢者は昔の味、子供は甘いパン - ヌエットアンアン - ブランスリー電子版

2026年10月21日に公表されたPHPの脆弱性(CVE-2026-109618、CVE-2026-109619)については、いずれも対策を完了しています。

ブランスリーアーカイブ(創刊号からの全記事)
記事の閲覧
<<戻る写真をクリックすると拡大写真が見られます。
お店拝見/2014年3月号

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。


高齢者は昔の味、子供は甘いパン - ヌエットアンアン
子供には、「メロンパン」や「ピーナツパン」などの菓子パンが人気だという
住宅街で存在感を示す、「ヌエットアンアン」の外観
来店した年配の男性に、ほしいあんパンを聞きながらトレイにとる武藤さん
あっという間に人気商品になった「シベリア」
店名に込められた家族愛
 京成線曳舟駅から歩いて5分ほどの住宅街に「811」と名乗るベーカリーがある。この店名の由来には家族愛が秘められている。店主の武藤博俊さん(48歳)は名前のイニシャルがH、夫人の佳子さんはKで、HとKはそれぞれアルファベットの8番目と11番目の文字であることから「811」となった。同店の製造は武藤さん、販売は佳子さんが担当し、2人で店舗の運営を担う。店名からも2人の共同作業による家族愛に満ちたパン作りの現場が見えてくる。
 「811」をフランス語読みすると、「ユイットアンアン」となるが、武藤さんはこれを「ヌエットアンアン」と造語した。理由は「電話帳でユの項をみると店が多すぎて紛れ込んでしまうので、目立つヌの項に載せたかったから」(武藤さん)だ。
 1999年1月、武藤さんの実家のある現在地にオープン。駄菓子屋だった店舗を、間口はそのままに、改装した。オープン当初はドイツパンも作っていたが、夫人が味に馴染めず敬遠したことと、サワー種を1キロ仕込んでも300グラムしか使わず、もったいない気持ちがあった。客の中には「外国で食べたのと同じ」と言ってくれた人もいたが、僅かな人数。作る励みにはならない。結果、徐々にハード系は少なくなった。今でもハード系を購入してくれる客はいるが、少数派。
 以前から、客に占める高齢者の割合が高く、客の嗜好を考えると、菓子パン系が中心になっていった。

駄菓子屋感覚で毎日通う子供たち
 菓子パン系の充実は、今では店の特徴になった。それを支えるのが、高齢者と子供たち。近所に歯科医院などの3軒の病院と、幼稚園や保育園などがあり、高齢者と子供たちが、帰りがけに店に寄ってくれる。
 かつては多くの店がある商店街だったが、武藤さんが独立したころは、既に商店街と名乗れる状態ではなかったという。それでも、街の雰囲気を明るくしたいと考え、また、家族が食べていければ良いのではと思って、出店した。それが今、昔の味を懐かしむ高齢者や、菓子パンを求める子供たちの姿につながっている。
 同店の人気商品の1つに「シベリア」(120円)がある。昔は町のパン屋にいくらでもあった。昨年上映されたアニメ映画「風たちぬ」に登場し、再注目されたのを切っ掛けに販売したところ、思わぬ人気商品になった。「黒パン」(105円)、「チーズパイ」(160円)、「アーモンドクロワッサン」(140円)も人気。黒パンは特に高齢者に好評だ。いつもと同じ棚の場所にないと、何も買わずに帰る客もいるという。もちろん、他のパンにもいえることで「同じ場所に置いてほしい」というのが、客の希望なのだ。
 食パン系で評判なのが、「デニッシュ食パン」(1・5斤600円)。ミルクバターがたっぷりの甘い仕上がりだ。まとめて購入する客も多い。火曜と木曜のみに焼かれる「玄米パン」(1・5斤440円)は、酵素が効いていて、いつまでも柔らかいという。幼稚園帰りの子供たちはというと、メロンパンやピーナツパンが大好きだという。甘いパンは子供たちの笑顔の基だ。



ベーカー歴30年になる武藤博俊さん
店内には、パティシェの経験もある古宮さん手作りの洋菓子も置かれている
りんごがまるごと1個入った「まるごとアップル」(250円)
墨田区商店街連合会から、墨田区民の生活を豊かにするこだわりの店舗として「すみだ個だわりショップ」に認定され、店頭にそのプレートを掲げている
全てはひと続きにつながって
 墨田区商店街連合会の企画で、墨田区内の主婦らが結成した発掘隊により2006年「すみだ個だわりショップ」に選ばれた。また、これまで、各種メディアによって、「大納言」(1本460円)、「いちごミルク」(120円)、「やきそばパン」(150円)などが紹介されてきた。「皆さんのおかげで16年間がんばれました」と語る武藤さんだが、不安な要素もあるという。それはスカイツリーの存在。誕生は嬉しいものの、新しい電波塔の登場は、大手スーパー、ファストフード店、コンビニエンスストアの進出を促した。自転車で10分も走ればスカイツリー。客足に響いているとの実感は大いにあるそうだ。
 同店の原価率の基本は35%だが、武藤さんは「お客様が喜んでくれるのなら原価率が上がっても構わないと思っています」心意気を見せる。
 「35%の原価率を維持できたとしても売れ残る商品では意味がありません。仮に原価率が50%であっても売れるのであれば、躊躇なく作ります。原価を考えるのも必要ですが、誰のために商品を作るのか、まず、考えたいです」
 同店の商品袋のデザインの「811」の「8」はメービウスの帯を意識したもの。帯を1回ひねって、両端を張り合わせると得られる立体で、表裏がない曲面(輪)となる。輪はひと続きなのだ。来店する高齢者や子供たちをはじめ、近所の人々との飾り気のない会話は、武藤さんの人柄によるのだろう。大学生の長男は将来有名ベーカリーへの就職を考えているという。武藤さんが独立したのは32歳。後継者となる日を迎えるのはそう遠くない。





店名:ヌエットアンアン
住所:〒131−0032東京都墨田区東向島6−18−1
電話:03−3612−1590
営業時間:午前8時11分〜午後6時30分
定休日:日曜、祝日
品揃え:約45品目
スタッフ:製造1人、販売1人
店舗面積:厨房・売り場合計9坪
日商:8万円



原価計算女王
原価計算女王

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。

今月の公開記事

  1. POLINの高性能オーブンを日本市場へ 。450℃の焼成力と緻密なヒーター制御 - スズキ産業の下河拓磨社長
  2. 見やすい売り場と旬の味で、地域が誇れるベーカリーへ - アリマベーカリー
  3. 「ちいかわ」の世界観を表現したパンと店づくり - ちいかわベーカリー
  4. 掲載から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文を公開しています。
    ブランスリーアーカイブ
ブラ立ち読み
(記事の無料メール配信)
詳細はこちら