ベーカリーカフェが提案するパン食。試食提供が発展してカフェになった - パン焼き小屋ツオップ - ブランスリー電子版

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レポート/2014年2月号

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ベーカリーカフェが提案するパン食。試食提供が発展してカフェになった - パン焼き小屋ツオップ

 千葉県松戸市のベーカリー「パン焼き小屋ツオップ」は、店舗の2階にベーカリーカフェ「ルーエプラッツ ツオップ」(Ruheplatz ZOPF)を持っている。食事と共に自信作であるパンを提供し、そのマッチングを顧客に味わってもらうのが趣旨だ。ドイツパンのように消費者に馴染みの薄いパンの食べ方や味わい方の提案は、1階のパン売り場での試食提供から始まり、それが十分な機能を果たし始め、さらに進化して2階のカフェになった。



ルーエプラッツ ツオップで、パン食の楽しさを伝えるためのあらゆる工夫を施す
1階のベーカリーには、様々なドイツパンが並ぶ
内装やインテリアは、イギリスのアンティークを主体に構成されている。使い込まれた家具の雰囲気が、手作り感や親しみやすさ、懐かしさを感じさせる
「パン焼き小屋ツオップ」の伊原靖友オーナーシェフ
1階ベーカリーに並ぶフランスパン。左は「ホシノ酵母バゲット」(280円)
「パン焼き小屋ツオップ」の店舗外観
内扉を出て1階へ降りる階段。店主の趣向が凝らされた個展の入り口のよう
全22席は、連日朝から満席の盛況
 「ルーエプラッツ ツオップ」は現在、人気のため予約制を取っており、全22席は連日朝から満席で、毎日100人程度の来店があり、予約は3カ月待ち、長いと半年待ちという状況だ。ベーカリー開業の約3年後に開店した同カフェについて、同ベーカリーの伊原靖友オーナーシェフの夫人で、同カフェを担当する伊原りえさんは次のように話す。
 「ハード系の一般的に食べ慣れないパンが主力のベーカリーですから、元々試食にすごく力を入れていました。パンをより幅広く味わってもらう場として、カフェをやりたいという考えはずっとありました。具体的なカフェ開業のきっかけは、ベーカリーの2階が空いて、使えるようになったことだったんです。元は住居の1階を使って家族でやっているベーカリーでしたから、建物をどう使うのかということで、家族各世代の都合もあったのですが、その時、丁度巡り合わせがよくてそのままカフェの開業が具体化しました」
 同ベーカリーの試食は、伊原シェフの考えで開業以来、余ったパンを試食に出さない、とういう方針で提供してきた。常に焼きたての良い状態のパンに、バターやハチミツを塗って、見た目もきれいに整えて提供し、パンが乾いたり、見た目が悪くなったりしたら、すぐ交換することを旨としてきた。通常の陳列や販売と並行して、試食にこれだけの手間を掛けるのは簡単なことではなかったが、効果は抜群だったという。試食は飛ぶように出て、同ベーカリーの定番商品であるドイツパンも幅広い年齢層に売れるようになった。

カフェはパンを楽しんでもらう場所
 「ベーカリーでドイツパンが売れるようになって、パンの味も変わっていったんです。最初は癖の少ないマイルドなドイツパンを作っていましたが、お客様が食べ慣れてくると、より本格的なものが求められるようになったんです。6年後位には、『食感は硬めでもっと酸味があってもいい』『もっとライ麦やサワーが多いものを』などと、お客様の嗜好もかなり変わっていました」(りえさん)
 消費者に本格的なハード系の味わいの良さを知ってもらえたことが、とても励みになったという。「それなら、もっと進めて、食事と共に味わってもらえたら」というのがカフェ開設の理由のひとつになった。
 同ベーカリーのカフェは、伊原シェフとりえさんが、ソースを付けて食べるフレンチが好きだったこともあり、「ファミリーレストランと高級レストランの中間にあるビストロカフェ」をイメージしたメニュー構成を取った。「若鶏のマスタードソース」(1300円)などのヨーロッパのクラシカルな雰囲気のプレート料理が中心だが、「ライ麦パンを楽しむ」(1200円)というユニークな名前のメニューもある。これは名前の通り、ソーセージ、豚のリエット、ザワークラウトなど、ライ麦パンと相性の良い具材で構成された盛り合わせ料理だ。ドイツパンのファン以外にも、好評を博しているという。
 「カフェはパンをより楽しんでもらう場と捉えています。カフェでパンを楽しんでもらえると、やっぱり帰りにベーカリーでも買物して頂けるんです。ベーカリーでの試食提供を通してどんどん膨らんでいった、『もっと自由により幅広くパンの楽しさを味わってもらいたい、伝えたい』という私たちの思いが、実現できたカフェだと思います」と、りえさんは語った。
 定休日は水曜で、その日は貸切のパーティーやイベントを行ったり、伊原シェフによるパンの「お話会」を開いている。客の中には伊原シェフのパンの話を聞ける場として、楽しみにしている人も少なくないという。客との良いコミュニケーション実現の場になっている。

消費者の気持ちを考え抜いたカフェ
 カフェのあり方についてインスパイアされたのは、伝え聞いたニューヨークのあるカフェの業態だった。老夫婦が経営し、曜日ごとに決まった基本メニューをずっと続けているという。
 「その店から、『そこに行けば食べられるその店の味』『ずっとなくならないおふくろの味』といった感覚を感じ取ったんです。自分のカフェもそういう『またあれば食べたい』と思ってもらえる場所にしたかったんですね」と、りえさん。
 ツオップのカフェのメニューは、約20種類の料理とパンなどを組み合わせた6つのメニューが基本になっている。このうちいくつかは、日替り、週替りメニューだ。「最初の2年くらいは様子を見ながら、料理にアレンジを加えていましたが、お店の味が決まってからは、ずっとそれで通しています。決まったメニューを、これまで飽きられず、長くご愛顧頂くことが出来て、とても嬉しいですね」(りえさん)
 人気メニューに、朝7時から10時までの朝食タイムに提供される「ゆっくり朝食」(1600円)がある。14種類の料理やパン、ドリンクで構成されるフルコースだ。同コースは、100%果汁ジュースで始まり、ヨーグルトや卵料理の合間に、最後のコーヒーや紅茶とは別に、スープやドリンクが出る。飲み物の多さがポイントだ。
 「一番味わってもらいたいのは盛り合わせのパンですから、パンが進むように飲み物を多く付けました。飲み物を別に注文すると、1杯数百円してしまうので、お客様が頼みづらいだろうと考えました。それでコースの中に飲めるものをたくさん加えたんです」(りえさん)
 開業時、りえさんを含むカフェ担当の3人は、カフェ業務は初めてだったという。店の施工から料理開発まで、試行錯誤の連続だった。人気の背景には、経営者の尽きない工夫と消費者の気持ちを考え抜く姿勢が見られた。



食器にもこだわりがある。イギリスやポーランドなどヨーロッパの国々の食器類がさまざまな形で使用されている
欧風の小物がカフェの店内を飾る
入り口のドアは、手触りまで考慮して選んだ素材でつくられている。ガラスにもひとつひとつ思い入れがある。
人材育成の場として様々な機能を果たす
 「パン焼き小屋ツオップ」のカフェは、同店でパン職人として独立を目指す社員達にも大きな影響を与えている。「ベーカリーカフェの開業を夢見ている子は少なくありません。でも実際に、カフェで大きな利益を上げるのはすごく大変なことなんです。基本は儲けが少ない。そういう実状を知って、経営感覚も腕も磨いて、いいカフェが経営できるように育ってほしいんです」とりえさんは語る。
 同ベーカリーは基本的に、ベーカリーとカフェ両方の全ての業務を社員に習得してもらうシステムだ。カフェに配属になると、接客、配膳、仕込、調理などの全ての業務を一定レベルに達するまで続ける。ひとつの業務について、一定期間勤めると次の部門へ移るというシステムではなく、あるレベルに到達するまで同じ業務を続けてもらうシステムだ。ただ、全体の基礎知識習得に1年、1業務に3カ月程度という目安は設けている。
 「例えばカフェでは、お客様に呼ばれた回数をカウントしています。それが多いとダメなんです。お客様は店員を呼ぶ前に、店員を探したり、そわそわしたりと、必ず何らかの動作を見せます。それに気付いて呼ばれる前にこちらから伺うんです。そういったことがお客様の満足に繋がります」(りえさん)
 同カフェ内では、厨房からもホールが見渡せるようになっている。仕込をしながらでも、店内の客の状況を把握しているのが理想だという。水が空になっていないか、あと何分
後に今出ている料理を食べ終わるか、そういったお客の状態をつかみ、タイミングよく水やコーヒーを提供するのだという。
 「そういうことが、業務の理解だと思います。いつ、どれだけの量を作って、どうやって提供すればいいかをわかっていなくてはなりません。お客様の波や流れをつかめるようになってほしいですね」(りえさん)
 「ある勘のすごくいいスタッフは、そういう状況把握ができるから、ふと少し持ち場を離れて発注を済ませて戻って来たことがありました。彼のいう通り、彼の離れている間お客様は誰も店員を呼ばなかったんです。『いまお客様は満足度が高いから、離れても大丈夫な時でした』と彼は言っていて、その通りでしたね」
 客の心理の把握は、効率的な時間の使い方や、絶妙のタイミングでの料理提供にも生かされ、無駄を省き、「店のコンテンツ」を最大限に生かす武器になっているようだ。
 実は、20種類の基本アイテムによるメニュー構成も、人材育成に良い効果を生んでいる。同店には専属のイタリアンのシェフがおり、社員は同シェフの指導を受けて調理を習得する。
「シェフには、難しい料理ではなく定番をしっかり作り込むのがこのカフェなんです、と伝えて、指導してもらっています。代わりに、クリスマスなどの特別豪華メニューで腕を奮ってもらっています」(りえさん)
 人材育成に情熱を注ぐ理由には「皆に独立して成功してほしい」という伊原夫妻の願いがある。同店は退職を「卒業」と捉えている。必要な技術を身に付けて立派に巣立ってもらうのが理想なのだろう。「退職をネガティブには捉えません。毎年6月にアンケートを取って、今後2〜3年の進退の希望を提出してもらいます。本人がどうしたいか希望を聞いて、もっと焼成の腕を磨きたいと言えば、焼成の部門を任せます。そうやって明るく将来を考えてもらいたいですね」とりえさんは力強く語った。





SHOP DATA
店名:ルーエプラッツ ツオップ(Ruheplatz ZOPF)
住所:〒270-0021千葉県松戸市小金原2-14-3
電話:047-727-3047
営業時間:午前7時〜午後5時30分
定休日:水曜日
席数:22席



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