記事の閲覧
| <<戻る | 写真をクリックすると拡大写真が見られます。 |
| 特集/2014年2月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 特集 コッペパン専門店 製品への深い思いが、客を惹き付けるオーラを自然に醸し出す | |
|
「コッペパン」というと、どこかレトロな感じが漂い、「昔学校給食で食べた」などと、懐かしがる人も多いだろう。そんなコッペパンを専門に扱う店が、このところ注目を集めている。
東京・葛飾区、吉田パンの吉田知史社長は「コッペパンの味には、職人のすべてが出る」と言い、東京・荒川区、三陽屋の須藤為五郎店長は「全国各地でおいしいものを食べた経験を生かして味付けしています」と話す。神奈川県大和市、グラムハウスの堤智博さんは、個人事業での表現手段として、コッペパンを選んだ。 共通しているのは、コッペパンへの深い思いが、客を惹き付けるオーラを自然に醸し出していることだ。 |


| 平成の下町で昭和の思い出を再現 - 三陽屋 | |||||||||||||||||||
昭和の懐かしい雰囲気を醸し出す店が、下町の色が濃い東京・日暮里の地にある。JR鶯谷駅から閑静な住宅街を通り抜けて8分ほど、昔ながらの町工場や古くからの個人商店などが所々に見られる中を歩くと、オレンジ色のひさしに白抜きで「三陽屋(みはるや)コッペパンの店」の文字。傍には「懐かしいけど新しいニューコッペパンの店」というのぼりがひらひらと舞う。創業62年、住居兼店鋪の古い建物は昭和の懐かしい雰囲気が漂っており、通りに面した店先のショーケースの中には、やきそばや、コロッケなどの総菜入りコッペパンが1つ1つビニールに包まれ積み重ねられている。 「コッペパンというと、ある程度の年代以上の人は昭和のレトロな給食の味を思い出すことが多いと思いますが、そこに新しいものの良さも取り入れました。これからの若い世代の人にも食べてもらいたいと思いますからね」と話すのは店長の須藤為五郎さん。この店は須藤さんの祖父が1951年(昭和26年)に創業。須藤さんで3代目となるが、コッペパン専門店になったのは須藤さんの代からだ。それまではコッペパンも含めた食料品、日用品、お菓子の量り売りなどをてがける「よろずや」に近い店だったという。 先代が病気を理由に引退し須藤さんが店を継いだのは1994年。須藤さんの母親と2人での経営になることや、須藤さんが午後から別の仕事を持っていたことなどもあり、種類を絞り込んでコッペパンサンドの専門店にすることとなった。コッペパンは、取引先である大手製パンメーカーと共同で専用商品を開発。3日前から個数を決めて発注する形で、ずっと固定で仕入れている。給食のコッペパンと同じようで違うのは、口の中にほのかな甘みが残る味にし、やや嗜好品的な楽しみを出したことで、この辺りが平成世代の心も掴んでいるゆえんのようだ。サイズは現在コンビニエンスストアなどに流通しているホールセラーのものより少し大きめで、専門店にしてからはこちらをずっと使い続けているという。そのコッペパンを水平に切って中に入れるたっぷりの具材は須藤さんが調理する自家製品だ。 飲み屋でひらめく商品のアイデア 「撮影で全国をほうぼう巡り、各地でおいしいものを食べさせてもらった経験を生かして味付けしています」と話す須藤さんは、実は、東映での俳優生活を経て、現在も映画などの映像制作を行なう業界人だった。劇団や芸能プロダクションの運営も行なう。同店を継いでからは、早朝から午後3時までの店の仕事と午後からの映像の仕事との二重生活をこなすタフな人だ。 須藤さん曰く、この店1番の人気商品は「ベーコンエッグコッペ」(220円)とのこと。炒めた大きなベーコンにふんわりとしたスクランブルエッグをのせて挟んだ本格的な調理パンだ。総菜は品目自体はあまり変えていないものの、同じ品目についての定期的な改良は繰り返してきたという。2番人気は王道の「やきそばコッペ」(200円)、3番目は「コロッケコッペ」(220円)。「やきそばコッペ」は中を開くと驚くほどぎっしりのやきそばが入っており、キャベツのシャリシャリとした食感とソースの味わいの組み合わせがぐっとくる。「コロッケコッペ」は、甘めのポテト味がおいしい大きめのコロッケ2つをサンド。また、かりかりとしたロースハムを折り畳んで入れた「ロースハムカツ」(230円)も濃厚ソースとの相性がばっちりと好評だ。総菜系のほか、給食の人気メニューを彷彿とさせる「あげパン あんこ/きなこ」(各160円)、期間限定の「ぽてときんぴら」(230円)、「照焼鳥ごぼう」(250円)も人気が高い。こうしたメニューの開発は、須藤さんによると「ひらめきが必要」とのことだが、最近は大体飲み屋の席で思いつくことが多くなってきたという。「ぽてときんぴら」も、飲み屋できんぴらとポテトサラダを一緒に食べたらおいしかったのでメニューにしたそうだ。 1人でも多くの人に食べてもらう 開店直後の朝6時にやってくる常連客は、朝早くから現場で働く職人や荒川警察署の警察官などが多い。またすぐ近くにある藤島部屋の相撲取りも来るそうだ。そのほかにも多くの地域の人に愛され、通ってもらっているが、須藤さんの人脈から、舞台俳優や芸能人などの常連もいる。須藤さん自身が目指しているのは、年代を問わず、子供から年配者にまで食べてもらうこと。昭和テイストの総菜レシピで大きさやパンの味など随所を工夫し、今の若い世代にも食べやすい形で提供することで、懐かしいものと新しいものの相乗効果を目指している。 最近は、噂を聞きつけ遠方からわざわざ買いにくる人も増えてきた。取材時ちょうど来ていた客3人組は、埼玉から来たそうで、仕事中の昼ご飯にするという。ボリューム的に1つで昼食1食分にしてもよいが、3人のうち1人はかなりコアなファンだそうで、自分の分だけで5、6個買っていった。 そんな客へ下町の人らしく、きさくに対応する須藤さん。須藤さんは住居兼店鋪のこの建物に母親と住んでおり、病気をした時には少し離れた場所に住む弟が店を手伝ってくれたこともあるそうだが、今後特に跡を継いでくれそうな親族などはいない。引退後のことは特に考えていないというが、「残念ながら商売って3代目で終わることが多いんですよね。でもいかに終わらせていくか、そういう責任もあると思います」と語る須藤さん。「ちょっと寂しいですが、ただその分、健在なうちは、できる限りのことをしていきたいですね」とも。 「店鋪そのものの拡大は考えていません。ただイベントなど、こちらから出向いてその場で売ることを増やしていきたいですね」 実は定期的に地元の日暮里や浅草での朝市、町内のお祭りなどで出張販売を行なうほか、山の手のほうのデパ地下にも出没している。その際は不定期のパートも雇い、多いときで普段の3倍近い約600個を1日で販売することもある。また、映像の仕事で接点のある人達にもすすめ、早朝ロケでの差し入れも行い、ここ4、5年はテレビ番組出演も増えてきた。 そうした努力や口コミの広まりもあって店鋪は小さくても「三陽屋」の名は人知れず広まってきている。1人でも多くの人に同店のコッペパンを食べてもらいたいと思う、その気持ちが須藤さんの原動力だ。 一口メモ 「コッペパン」という呼び名は和製外来語といわれる。もともとは戦時中、日本国民の食糧が配給制だった頃に開発され、その後も、比較的経費がかからず、味や栄養面でも偏りがなく、主食として扱いやすいことから、学校給食などで広く流通。現在は学校給食への米食の導入が進んだため、昔に比べると登場頻度は少なくなってきたが、現在30歳代以上の人は、コッペパンというと、懐かしい学校給食の思い出とともに、ノスタルジックな気持ちをよみがえらせる人が多いようだ。 SHOP DATA 店名:三陽屋(みはるや) 住所:〒116‐0014東京都荒川区東日暮里4‐20‐3 電話:03‐3801‐3542 営業時間:午前6時〜午後3時 定休日:日曜、祝日 品揃え:定番13品目(この他に期間限定品、プレミアム品など) スタッフ:製造・販売1〜2人 店舗面先:厨房と売場で3坪、倉庫6坪 月商:130〜140万円 | |||||||||||||||||||

| ニューヨークに店を移転するのが夢 - グラムハウス | ||||||||||||||||
2010年の後半、神奈川県大和市の資源回収会社の事務員だった堤智博さんはインターネット上で、東北地方のとある場所にあるコッペパン専門店に関する情報を得た。その店のコッペパンは、その地域のソウルフードとまで言われていた。好奇心旺盛な堤さんは現地まで行きお店を拝見、そしてそのシステムに衝撃を受ける。寿司屋のようにカウンターから好きなコッペパンメニューを客が注文し、店員がその場でコッペパンの間に具材を入れたサンドイッチを素早く作る。そのコッペパンは、ボリュームがあり、40種類以上もメニューがあった。店の後ろには工場があり、近隣のスーパーや学校にもコッペパンを卸していた。 「その売り方のシステムに『一目惚れ』してしまったんですね」と堤さんは話す。 学校を卒業し、就職してから10年間ずっと大和市内の資源回収会社に勤めてきた。コッペパンは子供の頃に給食でよく食べたという思い出はあっても、作ったことはない。店鋪運営の経験や知識も全くない。ただ、勤めていた資源回収の会社で、経営者がほぼ一人で業務を行なっている取引先に出向くことがあり魅かれていた。 「自分は資源回収の会社という組織の中で社会人として多くのことを学ばせて頂きましたが、自分が全業務に責任を持てる個人事業や、小規模企業の仕事にも、自分の適性を感じていたんです」(堤さん) 2009年頃から自分で何か起業したいと考え、その資金のための貯蓄を始め、当時は何で起業するべきか考えている最中だった。 「コッペパンの店と出会い、これだと思いましたね。ただ貯蓄を目標額まで貯めたかったし、会社の仕事も責任ある立場で引き継ぎの問題もありました」(堤さん) 結局、資金用の貯蓄が目標の500万円を上回り、業務の引き継ぎの面でも問題がなくなった2013年3月に退職。同年9月に無借金で、コッペパンを使ったサンドイッチ専門店「グラムハウス(Glam House)」を地元である大和市の地にオープンした。 国産小麦粉使用、拳2つ分のコッペパン 堤さんの店は小田急江ノ島線・大和駅の駅前から広がる商店街の通り沿いにあり、その通りは、近隣の高校生などの通学路でもある。お店の外観は一見したところクリーニング店のようにシンプルなカウンター形式のもので、緑と白のストライプが印象的な屋根の下に、ドアがなく開放的なつくりの入口がある。店鋪の前には立て看板があり、商品の写真付きで「国産粉100%で作ったコッペパン専門店です」「大きいコッペパンあります!(大人のこぶし2つ分あります=当店店主比)」などの文字が目に入る。 コッペパンの生地は工場ではなく、堤さんがカウンターの後ろの厨房で作って焼く。横幅18センチ、縦7・5センチ、高さ7センチもの、とにかく大きいパンで、店主の堤さんの拳2つ分はあるという。総菜パンであれば1つで十分昼食用にもなるが、1番人気の商品は「あんマーガリン」(170円)で、2番目は「カスタード」(140円)。総菜系は「コロッケ」(250円)、「野菜サラダ」(270円)のほか、他店にはないメニューとして好評の「ポテチサンド」(ポテトチップスとコールスローのサンドイッチ、270円)などを揃えた。コッペパンのほか、月、木、金、土曜に限って小さめの葡萄パンも出しているが、その葡萄パンの生地を利用して、火曜と水曜は小さめのコッペパン3つのセット「トリオ」(150円)を出しており、こちらは同店で3番目の人気とのこと。 生地が膨らむ水分量をやっと見つけた 明るい性格でよく話す堤さん。接客には自信があったというが、驚いたことに、初めてパンを焼いたのは2013年3月に資源回収の会社を退職した翌月の4月。ただし「とても客観的に物事をみることができる」という妻の厳しいチェックが入る中、何度も試作を繰り返し、同店特有の配合工夫を施したコッペパンのレシピを作り上げた。今は開店前の朝9時30分頃と昼の午後1時頃の2回に分け、1日大体120個くらいのコッペパンを焼いている。小麦粉は群馬県産の「藤(ダブル8号)」と「黄金鶴」を使用。試作時は割安な外国産の小麦粉を使ってみたというが、小麦アレルギーの問題があって国産にした。 「でも国産の小麦粉はとても神経質なんですよね。サラサラでなく水を含んで重い感じがあります」と堤さんは話す。 外国産は多少水の割合が多くてもなんとか膨らんでくれるが、国産は水の量を少しでも間違うと全く膨れなかったり、ベシャベシャになってしまったりする。発酵も温度に気をつけないとすぐ生地ダレしてしまう。 悪戦苦闘しながらも、何度も水分調整を繰り返し、やっと適度に生地が膨らむ水分量を見つけた。国産小麦粉のメリットは、深い粉の味と甘みがあって味がいいこと、作る人が小麦アレルギーになる確率を減らせ低農薬であること、客のリピート率が高いこと、の3つだという。価格は外国産より少々高いが、正しく作り上げれば素晴らしいパンになるから、今後も使い続けていくそうだ。 「学校」のイメージが強いコッペパン 堤さんの店は通学路に位置し、当初は学生が多く来ることを予想していたが、実際店を始めてみると、来店客は近隣の主婦層が8割ほど。あとは会社帰りの単身男性などが来ることもあるが、夕方前に売り切れてしまうと、目当ての商品を提供できないこともあるという。ひょっとすると、昔の学校給食でコッペパンをよく食べていた世代の人達が買っていくのだろうか。 「コッペパンって自分の中では『学校』のイメージが強いのですが、いまの学生さんにもコッペパンの魅力を知ってほしいですね。体育系の部活動の途中の高校生なんかにも買ってもらいたいと思います」 店の名前「グラムハウス」は、もともと昔懐かしい「1グラム1円」などで販売するような量り売り専門店を目指していたことに由来するという。ただ計器や陳列スペースなどの費用がかさむので断念。しかし本来の「GRAM」から「GLAM=魅力的な」に1文字変えたものを名前として取り入れ「GLAM HOUSE=魅力的なお店」と名付けた。 遅い時間の来店客も増えてきたので、夕方にも焼きたてを提供できるようにしたいと思っているが、「自分は1人で事業をするのが向いていると思うので、ずっと人は雇わないつもりです。その方が人件費もかからないですし」と語る堤さん。 1人のみの個人事業主のまま、将来的には、お店を海外に移転するのが夢だという。 「『海外進出』ですね。人種のるつぼ、ニューヨークに対する憧れが凄くあるんです。向こうの人達にこのお店の『あんアーガリン』などを食べてもらって、日本発祥のパンであるコッペパンの魅力を知ってもらいたいですね」と堤さんは目を輝かせている。 SHOP DATA 店名:グラムハウス(GlamHouse) 住所:〒242‐0017神奈川県大和市大和東2‐8‐16 電話番号:080‐5434‐0223 営業時間:午前10時〜売り切れまで 定休日:日曜 品揃え:約15品目 スタッフ:製造・販売1人 店舗面積:厨房と売り場をあわせて5坪 | ||||||||||||||||
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。























