岐路に立つ製パン素材メーカー - 技術力や用途提案などで差別化 - ブランスリー電子版

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レポート/2014年1月号

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岐路に立つ製パン素材メーカー - 技術力や用途提案などで差別化

 マーガリン、ショートニングなどの油脂加工品、各種フィリングなどを提供し、ベーカリー業を支える縁の下の力持ちである製パン素材メーカー。近年は原料高や菓子パントレンドの変化などの課題も抱え、ユーザーの要望にいかに応えていくか岐路に立たされている。長らくリテールベーカリーを含むベーカリーユーザーと取引を続けてきた3社に、現状や今後の方針などについて話を聞いた。



トレンドの変化見据えマーガリンの機能性を訴求 - ミヨシ油脂
千葉工場(千葉市美浜区)。食用油脂の現在の主要生産拠点
2013年の新商品「アトラクト」
バター不足時からの継続ユーザーも
 総合油脂加工メーカーのミヨシ油脂(本社=東京・葛飾区、堀尾容造社長)は、1921年の創業以来90年の歴史と技術で油脂加工品業界を牽引。主力製品であるマーガリンの製造を1941年に東京工場で開始し、以来ショートニングやラードなどの製パン用加工油脂や、乳加工食品などを、ベーカリーユーザーに提供し続けてきた。
「食品業界全体でのマーガリンやショートニングなどの食用加工油脂の生産量は2000年頃をピークに伸び悩んでいますが、当社の実績も同じように、2000年以降は前年並みで推移しています。ただリテール様は、2008年のバター不足でマーガリンの代替需要があった時に新規で取引を開始し、継続して下さったところも多い印象です」(食品事業本部企画担当者)。
 リテールユーザーとも引き続き良い関係を築いていきたいという同社。
そのため、トレンド面での変化を見据え、ユーザーが求めるものは何か
常に模索している。
「市場ではクロワッサンやデニッシュなど油脂配合率の高い製品がやや停滞気味ですが、マーガリン独自の機能性を訴求するなどして、活気を取り戻せればと思っています。例えばここ数年で夏場に冷やして食べるパンの提案が浸透してきていますが、マーガリンの冷蔵下でも品質が低下しない点などをもっと訴求したい。マーガリンをパンに練り込むことで出せるソフト感やしっとり感なども引き続き伝えていきます」(同企画担当者)
 2013年は7月に油脂原料高騰に伴う値上げという厳しい決断をすることとなったが、「ご理解頂いた結果、まだ売上面では大きな変動はありませんが、今後は消費税アップの影響なども不安材料ですし、業界への打撃は少しでも回避したいところです」と同企画担当者はいう。  コストを意識した提案としては同年9月に、コストパフォーマンスの良さを訴求するコンパウンドマーガリン「アトラクト」を発売。バター分を20%含有し、複数の呈味素材を組み合わせ、バターの風味にコクと乳脂感、ミルク感を付与させた。純植物性のものと乳原料を入れたハイコンパウンドとの中間を目指した新商品で、単独の使用もバターと混ぜての使用も可能な点を訴求している。
 また、コスト対策では「廃棄ロスの問題にも着目している」(同企画担当者)という。2013年には、製パン用粉末油脂「マジカルソフトDX」の1キロタイプを5月から発売した。10キロタイプのみだったが、評判がよくリテールでも使用したいという声があったため、小容量での発売となった。
「今後はリテール様にも使いやすいようなサイズを色々と検討していきます。既存設備で作業効率を見直す形で小容量サイズの増産を考えます」と同企画担当者はいう。同商品はカフェ業態のリテールの増加も意識し、「マジカル」シリーズとしてケーキ用「マジカルケーキ」、菓子用「マジカルエース」とともに併せて発売、3品セットでの紹介で弾みをつけたいという。



総合フィリングメーカーとして顧客の生の声を取り入れる - ソントン食品工業
ソントン食品工業本社(東京都文京区)
業務用の主力品「生乳カスタード」シリーズや「ポシェット プチピーナッツST」など
リテール向けは業務用の心臓部
 1942年の戦時中にピーナッツバターの製造から創業し、現在では家庭用のジャムやピーナッツクリームなどが一般に広く知られるソントン食品工業(本社=東京・文京区、石川紳一郎社長)。売上の面で同社全体の8割近くを占める業務用事業では、ベーカリーを対象とした各種フィリングの製造・販売をこれまで多数てがけてきた。中でも主力品は生乳カスタード入りやチョコクリーム入りの製品などを揃えたフラワーペーストで、業務用の約6割を占める。また、あんフィリング、フルーツフィリング、デリカフィリング、トッピング、各種油脂加工品なども展開し、手堅い需要を獲得してきた。
 売上の半分以上が大手製パンメーカー向けだが「それでもリテール向け商品は業務用の心臓部です」と同社販売統括部のマーケティング担当者ははっきり話す。「リテール向けの商品は開発期間も長くなりがちで、応用ソフトも、オリジナリティーの高い商品を提案するために念入りに試作、評価した上でパンフレットに掲載しています」(同担当者)。
 リテール向けはトレンドの拠点にもなりやすいため、あくまで品質優先の提案が必要になってくるととらえている。そのため同社では年5回、リテールユーザーに向けたダイレクトメールを発行。「お店で見やすいからという声があったため、あえて紙媒体にこだわっています。今後は市場にマッチした商品づくりに活かせるように、より一層お客様の生の声を集めていきます」(同担当者)。
 また、4月にホールディング制を導入し、組織体制を大幅に変更したことを機に、販売戦略面でのテコ入れも開始した。豊富な品揃えで手堅い取引を続けてきた同社だが、ここ数年の業務用の売上は横ばい。
 「これまでどちらかというと大手製パンメーカー向けに売上を伸ばしてきましたが、少子高齢化などで更なる伸長が難しくなってきています。一方リテール向けは、トレンド面の需要が様々な形であり、伸びしろはまだあると考えていますので、当社独自の切り口で再強化していくつもりです」(同担当者)
 自家製のフィリングを使う店の増加やハード系など菓子パン以外のパンの拡大で、需要自体が厳しい面もあるが、フラワーペースト商品では、茨城県の酪農業協同組合から購入した搾りたての生乳を使用した「生乳カスタード」シリーズを展開。高温殺菌されていない生乳ならではのすっきりした味わいで付加価値を提案。
 また近年では「マロン」や「いちご」など季節に応じたアイテムで、品種や産地にこだわったものの引き合いが多いという。「主力品では自家製を使っても、バラエティー品のフィリングは購入するというリテール様も多いようです」(同担当者) 期間限定のため、生産コストも高くなりがちだが、売上の裾野拡大のため力を入れていくという。
 また、昨年一番の課題だった原料高問題では、組織変更により、「製造」「販売」「品質」「商品」「調達」の5部門になった同社統括部が、各分野でコスト圧縮の対策を練った。それでも11月には値上げに踏み切らざるをえなかったが、「今後は5部門が連携しコスト対策も含め販売戦略を強化していく」(同担当者)との強い姿勢だ。



業界に先駆けた発酵技術などで顧客のニーズに応える - 月島食品工業
空から見た妙見島の本社・東京工場なと
「ラブール」の1ポンド入りのタイプ
タイムリーな製品を提案する
 千葉県と東京都の境を流れる旧江戸川の川中に位置する小さな島「妙見島」に本社をかまえ、都内では珍しく専用岸壁をもつ東京工場や研究所、物流センターなどを併設する月島食品工業(本社=東京・江戸川区、戸田信之社長)は、業務用マーガリンなど食用油脂の専業メーカーとして業界屈指のシェアを誇る。
 創業は1948年で、その名の由来の通り、東京・月島の地に始まった同社だが、1962年には現在の妙見島の方へ本社・東京工場を移転。 それに先立って、1955年には、業界初とされるソフトタイプのスプレッドマーガリンを発売した。また約40年前から業界に先駆け、発酵技術と加工油脂技術を融合させた製品開発に取り組み、2000年には、新発酵乳「LR2000」使用の「ラクトリッチ」シリーズの製造を開始した。
 主力品のマーガリン、ショートニングのほか、練り込み用乳製品やフィリングなども扱い、様々なベーカリーユーザーとの根強い取引がある。
 歴史的な乳製品高騰でバター不足が騒がれた2008年に発売した「ラブール」は、バター代替に特化したマーガリンとして注目を集めた。独自の発酵乳技術によりバター無配合のまま、香りや口溶けの良さなどの点でバターにより近い風味を実現。「コストパフォーマンスがよい商品として、リテールユーザー様からも高い評価を獲得することができました」(営業本部企画課担当者)
 以降約5年間で、ユーザーからの要望もあり、ハイコンパウンドやシートタイプ、流動状タイプなども揃え、ラインアップを強化してきた。2012年には「ラブール」の風味をより自然なバター風味に近づけ、更に油脂の物性までもバターそのものに近づけた「ラブールガトー」シリーズを発売。練り込みや折り込みに使用すると従来のマーガリンでは出せなかったバターと同様の食感や風味が得られるとの評価を得ている。
 2013年に入ってからは、原料高騰による価格改定もあったが、「ユーザー様と私どもメーカーの双方が共に苦しく、厳しいところです。ただ当社としては製品の良さをしっかりと伝えていきたい。用途提案にも力を入れることで、お役に立ちたい」と同企画課担当者はいう。
 同社は定期的にリテールベーカリーに向けたレシピ講習会も行なっている。「人口減少、少子高齢化などもあり厳しい世相ですが、お客様のニーズを確実に捉え、タイムリーな製品を提案していきたい」(同企画課担当者)
 また、供給体制面での対策も強化している。震災など非常時を想定してのリスク低減のため、神戸工場にホイップクリームの第2工場を建設、2013年9月に竣工式を行った。東日本大震災で従来の乳製品工場が被害を受け、供給に支障が出た反省もあり、西日本にも生産拠点を設置したそうだ。

原価計算女王
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