自家製酵母と有機が支えた17年 - SORA - ブランスリー電子版

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お店拝見/2014年1月号

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自家製酵母と有機が支えた17年 - SORA
都会の住宅街で、自然を意識した造りのソラの店舗
「ライ麦全粒粉食パン」にはカナダ産のオーガニック小麦粉とライ麦全粒粉が使用される。ライ麦全粒粉は30%入る。自家製ぶどう酵母が味をふくらませる
「インドカレーパン」の生地にはカナダ産小麦粉と全粒粉を使用。旬の野菜と豆を使った手づくりのフィリングが入る
定番の「山型食パン」(右)には国産小麦100%使用。「全粒粉食パン」(左)は、カナダ産のオーガニックの小麦粉と全粒粉が7対3の割合で使用されている
 ここには意志がある――そう実感させるベーカリーが東京・目黒区八雲にある。東急田園都市線・駒沢大学駅の駒沢公園口を出て、目の前の自由通りを右へ15分ほど直進、駒沢通りを渡った少し先の赤いテントの店。それがソラだ。同店がオープンしたのは1997年。店主の金丸信乃さんが、夫の龍二郎さん(56歳)とパン作りを独学で習得し開業した。
 パン作りを学び始めてから店を出すまでには8年の年月が必要だった。パン作りを重ねて3年後に自然食品店に卸し始めた。実践を踏まえた上で、さらに5年後、店のオープンにこぎ着けた。
 「パンは好きですよ。ごはんを一粒も食べたくないくらい」と語る金丸信乃さんのこだわりは、国産小麦とカナダ産オーガニック小麦、さらに天然酵母を使ってのパン作りだ。オープン以来その姿勢は変わらない。
 国産小麦粉は、北海道産の「はるゆたか」や、使い始めて今年で3年目になる姫路産の「ニシノカオリ」を使用。国産小麦粉を使用して作るのは、定番品の「山型食パン」(2斤840円)、ギフト用も考えて今はクグロフ型にした「ちぎりパン」(693円)、さらに、人気商品の一つである「クロワッサン」(199円)や有機さつまいもを使った「おいもデニッシュ」(262円、自家製ぶどう酵母使用)、サンドイッチ用によく使われる「フォカッチャ」などだ。これらの商品には市販の天然酵母が使われる。
 カナダ産オーガニック小麦粉を利用して作られる主な商品は、「全粒粉食パン」(1本903円、全粒粉30%入り)、「ライ麦全粒粉食パン」(1本966円、ライ麦全粒粉30%入り)、手作りの具が入った「インドカレーパン」(231円、全粒粉30%入り)、「全粒粉カンパーニュ」(798円)など。これらには自家製のぶどう酵母が活躍する。また、「全粒粉カンパーニュ」には、カナダ産オーガニック小麦粉に加え、「ニシノカオリ」の全粒粉が入る。



手間ひまおしまず商品と向き合う
オーナーの金丸信乃さん(右)と、美術大学出身で、製パン経験7年目になる工藤さん
入り口脇のオープンテラスにも、テーブルが2つ設置され、購入したパンを食べることができる
 全粒粉やライ麦粉を使用したハード系の商品は、オープン当初から設置されているカフェで、食事メニューとして提供するサンドイッチにも活用される。これはカフェで提供されたパンそのものを客に購入してもらうための「工夫」の一つ。
 「工夫」はこれだけではない。金丸さんにとって、手間ひまかけることも「工夫」だという。例えば「おいもデニッシュ」に使われる芋あんは、さつまいもを蒸かすことから作り始める。「田舎あんぱん」(221円)に使う小豆も同様だ。厨房で材料から加工し、総菜パンや菓子パンに作り上げる。
 2013年の夏には、卸し先から残ったパインの加工を依頼され、同店ではドライパインに加工し、それをカスタードクリームと共にクロワッサンにサンドし、「パインカスタード」として売り出したところ、作るそばから売れていくほどの人気商品となった。今は季節を考慮して、「リンゴカスタードロール」(263円)が店頭に並ぶ。一つの切っ掛けが思わぬヒット商品を生み出した。



売り上げ回復へ味追求と業態開拓
オープン以来、店の売上の一部を支えるオーガニック商品のコーヒー、紅茶、ハチミツなど。同店はオーガニックワインの正規取扱店でもある
 これまでの同店を支えてくれた客の要望に応えるためにも、自らが考える商品作りに、今後も正面から向き合っていくしかないが、店舗経営の点からは、コストが問題になることも。
 オープンして3年経ったころに経営が軌道に乗ったと実感でき、その後、売り上げは順調に伸びた。
 しかし、2011年の東日本大震災以後、売り上げは思い通りにいかなくなった。これまで、商品の売値に対して原材料費の占める割合は25%に収まっていたが、今はそれが、30%を超えているそうだ。
 現状で全てを手作りするならば、十分な売り上げが必要になる。栄養士の金丸信乃さんは料理の腕にも覚えがある。現在の客単価1100〜1200円を維持するには、どのような味を追求していけば、リピート率をアップさせることが出きるのか。リピーターの多くは、自分好みの商品を目指して店を訪れる。それらの人々に満足してもらうとともに、売り上げの向上を図るには、販売実績のある商品をより積み上げていくことも大切。まだ模索が続く。模索の中の回答の一つとして、2013年5月から始めた自然食品店4店舗への卸がある。毎回3店舗では完売しているという。食パンタイプの商品の売れ行きが良いそうだ。



経営感覚と意志力が未来を開く
ショーケースの中にも食事系のパンから総菜パンまでが揃う。このショーケース内のパンは、メロンパン以外は、すべて卵不使用の製品だ
 金丸さんの父親は印刷業を営み、栄養士の母親は料理教室を運営していた。「門前の小僧習わぬ経を読む」ではないが、自然に経営感覚が身についていたようだ。17年前にオープンしたときから、小さいとはいえ、パンを食べてもらうためのカフェを併設し、また、パン食に連なるであろうコーヒー、紅茶、蜂蜜それにワインなどの販売も同時に始めている。
 金丸さんは「心からお客様を受け入れて、商品を販売していきたい」と話す。客の健康を願い、自分の信ずる天然酵母とオーガニックを前面に出し続けていることに、強い意志を感じる。この意志こそが同店の未来を呼び込む礎なのだろう。





SHOP DATA
店名:SORA(ソラ)
住所:東京都目黒区八雲5-19-7たか乃羽マンション1階
電話:03−3718−9970
営業時間:午前9時(パンの焼き上がり具合で多少前後する)〜午後6時30分
定休日:月曜(今後変更の可能性あり)
品揃え:25品目
スタッフ:製造兼販売3人
店舗面積:厨房10坪、売り場10坪
月商:200万円(パンのみ)

原価計算女王
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