料理を味わうためのパンづくり - ブーランジェリー・ビストロ・エペ - ブランスリー電子版

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お店拝見/2013年12月号

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料理を味わうためのパンづくり - ブーランジェリー・ビストロ・エペ
ランチとディナーで提供されるパン
レストランの中休み時間もパンの売り場は営業している
シェフブーランジェの神林慎吾さん
料理と合わせるハード系が中心の品揃えなので、菓子パンの種類は絞っている。「ビエノワ クレーム オー ショコラ」(180円、後列左)、「ビエノワ クレーム パティシエール」(同、後列中)、「ビエノワ クレーム オ レ」(同、後列右)はそれぞれ、注文を受けてから、「ビエノワ ナチュール」(60円、前列左)に要冷蔵のクリームを注入して提供する
 東京都武蔵野市のJR吉祥寺駅から徒歩3分、大通りから一本裏手に入った場所に、今年8月オープンした「ブーランジェリー・ビストロ・エペ」は、パンと料理とワインなどが楽しめるカフェレストランだ。
 シェフブーランジェを務める神林慎吾さんは、「当店の主役は料理です。パンは、パン単体で味わっていただくものとしてではなく、料理と合わせて初めて成立するものとして作っています」と、同店のパンの位置付けについて話す。
 店内に入ってすぐの所にパンの売り場があり、奥へ行くと36席あるレストランフロアが広がる。レストランで提供するランチはコース仕立てになっており、平日のみのコースは、前菜、サラダ、スープ、メインの魚料理、デザート、それにパンの盛り合わせが付いて1500円だ。これより前菜やメインなどの品数が多い2500円のコースランチもある。こちらは土日祝日も提供している。ディナータイムは、フランス料理やイタリア料理、刺身などのアラカルトが豊富に揃い、パンと一緒に楽しめる。
 ランチとディナーで提供されるパンは食べ放題で、ハード系が5〜10種類ほど揃う。そのうち、バゲットが4種類を占める。「バゲットトラディショナル」(280円)、「バゲットブラン」(250円)、「バゲットアルティザン」(280円)の定番3種類と、日替わりの1種類だ。取材日の日替わりは「バゲットシリアル」(300円)だった。
 「料理と合わせて食べるパンとして、ハード系のなかでもバゲットをメインにやっていきたいと思っていたんです」(神林さん)
 試作を重ね、それぞれに異なる味わいを持たせた3種類のバゲットを定番商品として開発した。
 フランス産小麦を使用した「バゲットトラディショナル」のミキシングは、手捏ねで粉を水和させる程度にしかせず、発酵は低温で一晩とる。こうすることで、うま味と甘味が濃くなり、粉の風味もしっかり残る。また、手捏ねによってクラストが厚めに仕上がるので、スープやソースを付けて食べるのに適したバゲットになるという。「バゲットブラン」は国産小麦を使用した、もっちり感と甘味があるバゲットで、魚料理など和食と相性が良い。ストレート製法で作る「バゲットアルティザン」は、軽くサクッとした食感だ。「バゲットトラディショナル」と「バゲットアルティザン」とは対極的な味わいと言える。
 「パンは、料理と一緒に召し上がる際、サクッと軽い方がいいのか、重みがあって存在感がある方がいいのかは、お客様それぞれのお好みで決まりますからね」(神林さん)



食事としてのパンの味わい方を探る
「バゲットトラディショナル」(280円、写真左)と「バゲットブラン」(250円、写真右)
「パンドカンパーニュ」(800円、写真奥)と「プチカンパーニュ」(120円、写真手前)
「コースランチ」(1500円)のメイン料理の北海道産サーモンのムニエル
「コースランチ」(1500円、2500円)に付くスープ。肉や野菜など10種類以上の食材を1日かけて煮込んでいる
試食会の様子や毎日の営業で気付いたことなどは、各スタッフが1冊のノートに記録し、回覧するようにしている
 同店では週に一度、スタッフ全員で試食会を行っている。レストランで提供している料理とパンの相性を探るためだ。例えば、「トリッパのトマト煮込み」(680円)にはどのパンが合うのかを考え、ハード系のパン数種類の中から、スタッフ一人ひとりが自分の好みのものを選ぶ。
 この試食会はオープン当初から行っている。
 「初回から毎回、驚きや発見があります。料理とパンのベストな組合せには、簡単に出る答えがあるものと思っていました。ですので、スタッフの意見はある程度まとまると思っていましたが、結果はバラバラに分かれたんです。それで、ベストな組合せを追求するのではなく、逆にこれだけは合わないという組合せを探すことと、各自おいしいと思う理由を、自分の言葉で自信を持って表現できるようになることの方を重要視するようになりました。お客様にも自信を持って提案できれば、そのおいしさを伝えることができると思うんです」(神林さん)
 スタッフは、パン製造、パン販売、レストランの調理、レストランのサービスと4部門に分かれている。各部門とも、開業にあたって経験者が集まった。
 「店名の『エペ』は侍の持つ刀を意味します。侍はスタッフのことを指します。当店には、刀を持った各部門の侍たちが集まりました。全く新しい分野としての『ブーランジェリー・ビストロ』を、侍たちで切り開いていきたいと思っています」(神林さん)
 「ブーランジェリー・ビストロ」を新しい分野と捉える神林さんは、「日本のパン文化、特に食事としてのパンの在り方はまだまだ完成されていないことを思い知りました」と言う。
 そのことは、同店の客の反応や、試食会でスタッフらの意見が分かれたことなどから実感したそうだ。パン職人としてキャリアを積んできた神林さんは、料理に合わせるものとしてのパンを扱う中で、パンの新たな一面と向き合っているのだろう。
 「フランスの食文化を参考にするというよりは、日本独自のパン文化を探っていきたいと思っています。材料の粉も水も、これまで食べてきたものもフランスとは違うのですから、当然味覚も違います。日本人は繊細な舌を持っているのですから、合わせるパンによって、料理の味わいが変化することを楽しんでもらえればと思っています」(神林さん)
 同店のランチメニューのメイン料理は、肉ではなく魚料理に比重を置いている。日本のパン文化を育てるには、魚料理との相性がいいパンの提案が大事だとの考えからだ。家庭の食卓に、パンをもっと持ち込んでもらえるようにという思いがある。
 オープン当初、ランチで提供するパンは温めていなかったが、「パンがおいしいお店なのに、パンが冷たくて残念」という客の声があったことから、温かい状態で提供するようにした。
 「冷たい状態で食べるおいしさもあるのですが、炊きたての温かいご飯が主食の日本人にとって、パンも温かい状態の方が感動するんですよね。でもこのことが正しいとは限らないですし、食べ方には正解はないと思っています。お客様の意見と、私たちスタッフの発見の一つひとつを融合させていき、その集大成として、『ブーランジェリー・ビストロ』という分野が確立できるのだと思っています」(神林さん)

店名:ブーランジェリー・ビストロ・エペ
住所:東京都武蔵野市吉祥寺南町1‐10‐4
電話:0422‐72‐1030
営業時間:パン販売は午前11時〜午後7時、レストランは午前11時〜午後11時
定休日:なし
品揃え:約50品目(パン)
スタッフ:パン製造2人、パン販売2人、レストラン調理3人、ホール3〜4人
店舗面積:厨房6坪、パン売り場6坪、レストラン15坪
日商:8〜10万円(パン)








原価計算女王
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