心が小躍りするような楽しさ - パン・ラボ ベイク - ブランスリー電子版

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お店拝見/2013年9月号

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心が小躍りするような楽しさ - パン・ラボ ベイク
オーナーシェフの中田けんしさん
中田さんが自分で作った陳列台に様々なパンが並ぶ。陳列用のトレーも商品によって変えて、変化を出している
 鹿児島市の郊外の道路沿いにある「パン・ラボ ベイク」は、その控えめな店構えとは裏腹に、ドアを開けて店内に入ると、心が小躍りするような楽しさが味わえるベーカリーだ。コンクリートの打ちっぱなしの壁面が醸し出す無機質な雰囲気の中で、木製の陳列棚に並んだパンの温かみが、ひときわ強調され、来店客の心に響いてくる。
 「無機質な中に有機的なパンを置いて引き立てようと思いました。古きよき時代と現代が入り混じったような雰囲気ですかね。有機質のものと無機質なものの融合とも言えますね」
 同ベーカリーのオーナーシェフ、中田けんしさんは、こう言って目を輝かせた。
 一角に飾られた大きな木のオブジェは、中田さんが畑にころがっていた木を持ってきて磨き、ニスを塗って仕上げたものだという。
 鉄道の最寄駅までは遠く、バスもそれほど本数がない、自家用車がほぼ唯一の交通手段のような立地で、周りは、住宅よりも畑の方がはるかに多い。こうした場所で、この店の楽しげな雰囲気に触れた人たちは、店側の顧客に対するスタンスが誠実でありさえすれば、決して店から離れていくことはないだろうと、誰しもが容易に想像できる。
 同ベーカリーは、今から約15年前に、中田さんの父、武綱さんが、鹿児島県日置市で創業した。中田さんが切り盛りする鹿児島市の店は、その2号店としてスタートした。
 中田さんは、父親の影響もあって、10年前に、パンの道に進むことを決意、東京や千葉の人気ベーカリーで修業を重ね、5年前に現在の店の店長に就任した。



品揃えのリニューアルにも細心の注意
畑にころがっていた木を拾ってきて磨き、ニスを塗って仕上げた木のオブジェ
 同店は、1年半前に、リニューアルオープンした。「パン・ラボ ベイク」はそのときに新しく付けた店名で、中田さんはオーナーシェフとなった。
 「修業時代から、父親の店を継ぐというより、自分で最初から店を作りたいという思いがずっとありました。それを夢見ながら修業してきました。店名もずっと温めてきていたんです」と中田さんはいう。
 リニューアルオープン後の品揃えを決めるに当たって、まず、食パンについては、配合も製法も一切変えないことにした。
 さらに、リニューアル以前の売上トップ10の商品については、配合や製法は多少いじっても、最終的な味と形は変えないようにした。その上で、商品名については、10商品ともすべて新しいものにした。
 そのほかの商品は、リニューアル前にはなかった商品で、すべて中田さんオリジナルの新商品だという。
 品目数は、リニューアルオープン前の約80品目から、15品目減らして、およそ65品目にした。中田さんは、日商10万円前後を無理なく安定して売っていくには、ちょうどいい品数だと考えている。
 「棚とかも、昔の3段あるようなものではなく、魅力的だと思うものを自分で作りました。リニューアル前は、年配のお客様が多く、昔ながらのあんパン、クリームパンといった柔らかい感じのパンがメインでしたが、リニューアル後は、年配のお客様に加えて、若いお客様にもいらしていただけるようになりました」(中田さん)



目指すパンは、「お洒落なパン」
コンクリートが打ちぱなしの壁面に囲まれて、パンの温もりが引き立って見える店内
パンの陳列の仕方にも工夫がされている
郊外の道路沿いに控えめに佇む「パン・ラボ ベイク」。壁面に並んだパンのイラストが、店内の楽しい雰囲気を想像させる
 中田さんは、目指すパンを「お洒落なパン」と言った。「お洒落なパン」は、食感については、強弱がついているパンだという。例えば柔らかいパンなら、外側にちょっと硬めの食感のアーモンド生地をつけることによって強弱が生まれ、食感の立体感が出てくるのだという。また、「都会的なパン」は、味の工夫を潜ませたパンだという。同店では、あんパンなどの菓子パン生地には、焦がしバターを入れている。砂糖も入っていて、キャラメルに近い焦がしバターだ。それを練り込んだパン生地は、少し茶色がかっていて、焼き上げたパンをかみ締めると、焦がしバターがほのかに香るという。
 「焦がしバターを入れると、食感も相当柔らかくなります。お客様から『柔らかくなったね』という声をいただきました。『あー、やっぱりわかるんだな』と思いました」(中田さん)
 味の工夫はこのほかに、ルバン種の使用がある。ルバン種は、中田さんの父親の時代から使用していて、今ではほぼすべてのパンに入れている。「年数がたつにつれて、ルバン種の旨みが増していくんです。焼き鳥屋の秘伝のたれじゃないですが、毎日種継ぎしているので、熟成されてきていて、これからさらに旨みが増していくのかなという期待感を持っています」(中田さん)
 ハード系のパンの販売にも力を入れてきた。「僕がこの店に来た頃は、ハード系はほとんど売れませんでした。1日10個がいいところでした。好きな人は好きなんですが、どうしても皆さん、柔らかいパンにいってしまいますね」と振り返る。
 何とかハード系も食べてもらおうと、リニューアルのときに、製造量を30個に増やした。「こういうパンもありますよ」と言いながら、顧客にアピールした結果、徐々に販売数量が増えているという。
 「ハード系のパンだと、シンプルなのでルバン種を入れることによる味の深みがよくわかるんですね。ハード系のパンは、意外におじさんやおばさんが買っていきます。年配の人でも、食べてみたらおいしかったという人が多いんです」と中田さん。 



自社農園でとれる野菜をフル活用
父親が耕している自社農園でとれたかぼちゃを練り込んだ「かぼちゃレーズン×ゴーダチーズ」
自社農園でとれたバジルを食パン生地に練り込んだ「プチバジル」
フランスパンに近い生地に3種類の豆を入れた「豆のパン」
 中田さんは、人気商品として、「かぼちゃレーズン×ゴーダチーズ」(140円)、「プチバジル」(70円)、「豆のパン」(170円)の3つを紹介してくれた。
 「かぼちゃレーズン×ゴーダチーズ」は、父親が耕している自社農園でとれたかぼちゃを練り込んだ商品。グリーンレーズンも練り込み、ゴーダチーズクリームを包んで焼き上げる。自社農園では、無農薬で様々な野菜を作っているという。「安心だし、スーパーで売っている野菜と比べたら味の濃さがまったく違いますね。かぼちゃも、生地に練り込むと本当に鮮やかな黄色になります」(中田さん)
 「プチバジル」は、自社農園でとれたバジルを食パン生地に練り込んだ商品だ。
 「豆のパン」は、フランスパンに近い生地に3種類の豆を入れた商品で、豆をイメージしたユニークな形が印象的。生地には、砂糖が3%入っている。「鹿児島は、東京と比べると甘いものが好みなので、東京でやっていたときに比べると、どのパンも砂糖が2〜3%多いと思います」と中田さん。
 成形は、棒状にのばして、4箇所ほどくぼみを作って、豆が並んでいるような形にする。「豆パンは、豆の形にすれば、売れ行きも違ってくるんですよ」(中田さん)



SHOP DATA
店名:パン・ラボ ベイク
住所:鹿児島県鹿児島市宇宿7‐14‐24
電話:099‐275‐5683
営業時間:午前7時〜午後7時
定休日:月曜
品揃え:約65品目
スタッフ:製造2人、販売1人
店舗面積:厨房20坪、売り場10坪
日商:約10万円

原価計算女王
原価計算女王

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