飽和状態に地域密着で挑む - プティリッシュ - ブランスリー電子版

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お店拝見/2013年7月号

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飽和状態に地域密着で挑む - プティリッシュ
赤を基調にした外観は人目をひく。全面ガラス張りで、中の様子がわかり、入りやすい
「少しでも長くパン作りに携わりたい」と語る店主の島田淳一さん
外光がよく入り、店内は明るく、開放感がある
明るく広々とした店内。同じ種類の商品をまとめて置いてあるので、どのような商品かが一目でわかる
 「ベーカリーを経営したいと思い、その道のプロに相談したんです。答は、その地域は飽和状態だから出店は思いとどまるべきですね、と言われました」。
 こう話すのは「プティリッシュ」の店主、島田淳一さん(38歳)だ。島田さんが3年前の2010年5月21日にオープンした同店の出店場所は、JR京浜東北線・南浦和駅西口から徒歩5分余りの住宅街にある。地元の百貨店、丸広の横を走る一ツ木通りを東京方面へ直進すると、赤い看板とベンチが見える。正面はほぼ全面ガラス張りで、従業員と客のやり取りがよく見える。ちょっと覗いてみたくなるたたずまいのベーカリーだ。
 店主の島田さんは、埼玉県桶川市の出身。高校を卒業すると、スキー好きが高じて北海道の大学に進学。4年間を旭川市で過ごす。在学中、偶然見つけたアルバイト先がベーカリーだった。子供のころからもの作りに興味があった島田さんは、大学卒業後はベーカーを目指して、東京・高田馬場の東京製菓学校のパン科に席を得た。1年間学んだ後、ビゴ東京に入社。銀座店で修業を始めた。在職12年の間にベーカーとしての十分な技術力を身につけた。
 ビゴ東京では、菓子パン作りを覚えることから始まり、最後に、フランスパンの製造を任されるまで10年はかかるという。パン作りが身体に馴染み、身体が自然に動くようになるまで指導を受けるそうだ。
 店名の「プティリッシュ」はフランス語で「ちょっと贅沢」の意味。生活を始めて10数年になる出店地の南浦和は、住宅地では県内で最も坪単価が高いらしい。加えて、商圏内に評判の高いリテールベーカリーなどもある激戦地。こうした地域にオープンしたのは、小さくても地元の人々と共に成長できるベーカリーでありたい、との思いがあったからだ。島田さんはオープン以来ビゴ東京で培った技術で、地域の人々の胃袋を巧みなアイデアで刺激しつづける。3年の間に、徐々に常連客が増えているという。



豊富なアイデアでパンの美味しさを
手前左が、「クロワッサン」、手前右が「クロワッサンショコラ」、奥左が、「ワサビ」、奥右が「サクリスタン」
店頭に並ぶ人気商品の「クロワッサン」
「カンパーニュ」には、全粒粉とライ麦粉がそれぞれ20%含まれている
 1日に「プティリッシュ」を訪れる客は250人前後。オープン以来、チラシ1枚まかず、宣伝をしたことがない。でも、口コミで少しずつひいきにしてくれる人が増えている。「手応えを実感しています」と島田さん。
 来店客に最も評判が高い商品は、クロワッサン」(150円)と「クロワッサンショコラ」(180円)。平日にはそれぞれ60個を売り上げる。土日は約4割り増しになる。クロワッサン生地を利用した商品に「ワサビ」(50円)と「サクリスタン」(140円)がある。「ワサビ」は噛み締めるとわさびの味が口中に広がる。1口サイズで食べやすい。和洋折衷の妙に遊び心を感じる。スライスアーモンドとグラニュー糖をまぶした「サクリスタン」は、クロワッサンと甘いものが同時に欲しいときには、嬉しい1品。
 「カンパーニュ」(600円、ハーフ300円)には小麦粉の他に全粒粉とライ麦粉が各20%配合される。腹持ちがよいだけではなく、お腹の中からきれいにしてくれそうだ。この生地を使って、クルミ、ナッツ、レーズン、マンゴーなどを入れた各種の商品は、時に食事用、時に菓子パンとして十二分に楽しめる。
 いわゆるオープンサンドの「タルティーヌ」にはバゲットを使用。余ったバゲットを再商品化した。きんぴらや揚げ豆腐、旬の野菜などをのせて、1つ300円。バゲットは国産小麦が50%入った軽い食感のもの(250円)とフランス産小麦100%でオーバーナイト製法による、もっちり感のある商品(280円)を適宜に使用する。「タルティーヌ」には、気持ちをこめて作った商品は無駄にせず使い切るという思いもこもっているようだ。他に総菜パンとして、フランスパン生地に各種具材を包んだ商品(180円)や日替わりピザもある。また、ブリオッシュ生地にアーモンドクリームを生かした「ガレット」(240円)は、洋菓子店のタルトを意識して作った。
 クロワッサン、カンパーニュ、バゲット、ブリオッシュなどをベースにして、アイデアたっぷりの商品を客に提供しているのは、ベースになる商品をもっと味わってほしいと願っているからだ。確実に増えつつある常連客に伝える努力を今後も続けていく。



ベテラン販売員こそ発展の礎
余ったバゲットを使って「タルティーヌ」を作る。きんぴらや揚げ豆腐、旬の野菜などをのせて、1つ300円。
ガレット各種。ブリオッシュ生地が活かされている
 島田さんは、オープン当初から地元密着が念頭にあった。例えば、「アンパン」「クリームパン」(各160円)は修業先のビゴ東京では商品化されていない。これらの商品も「プティリッシュ」では重要なアイテムだ。老若男女、多くの人々に店に足を向けてもらうには大切な要素なのだ。
 大切な要素といえば、コミュニケーションがある。パンを売るだけではなく、客との接点をより多く持つことは、今後の店の発展に欠かすことができない。今では、散歩の途中で店に立ち寄ってくれた高齢者が、昨日の出来事を気軽におしゃべりする姿が目に付くようになった。この原動力になっているのが、ベテランの販売員。「プティリッシュ」の販売員は全て女性。しかも、ほぼ全員40歳以上。来店客が気楽におしゃべりできる雰囲気を作り出すには、社会経験が豊富な女性販売員の飾らない一言こそが必要なのだ。
 競争が激しいと言われた立地に独立・開業して丸3年。「小さくてもいい、1日でも長くパン作りに携わりたい」という気持ちがある。客との普段の話から生まれた商品もあるという。島田さんは、これからも、客との結びつきを大切にしながら、ちょっと贅沢な気分を味わえるパンで、地元の人々のお腹を潤わせられたらと考えている。

プティリッシュ
住所:埼玉県さいたま市南区文蔵2−1−4ロイヤルコーポラスE号室
電話:048−866−3500
営業時間:午前10時〜午後7時
定休日:月曜、第1日曜
品揃え:60〜70品目
スタッフ:製造1・5人、販売1・5人
店舗面積:厨房10坪、売り場4坪
日商:15万円



原価計算女王
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