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| 1973年の開業以来、フランスの食文化をパンと一緒に提供し続けてきたレストラン「シェ・ピエール」 |
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| 創業40周年を記念して、友人たちから花が贈られた |
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| フランスの伝統的な家具を使った店内 |
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| 前菜もフランス式にボリュームたっぷり |
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青山通りから乃木坂へ 去る3月15日、南青山にあるレストラン「シェ・ピエール」(電話03‐3475‐1400)が、創業40周年を迎えました。この店は日本にフランスパンの技術を伝えたレイモン・カルヴェル氏の愛弟子で、「ドンク」のパン職人として活躍したピエール・プリジャンさんが1973年に開業しました。それから40年、フランスの食文化をパンと一緒に提供しています。
創業当時の店は、青山通りに面したビルの地下にありました。ファッション業界の有名デザイナーたちがフランスでの修業を終え、次々青山にブティックをオープンした時期と重なります。週末には三宅一生、森英恵、高田賢三、コシノ・ジュンコたちがこの店に集まり、本場のフランス料理を懐かしみ楽しんでいたそうです。店名の「シェ・ピエール」は、「ピエールさんの家」という意味ですが、プリジャンさんは、自分の家に親しい友人を招いたつもりで伝統的な家庭料理を提供してきました。
今の店は地下鉄千代田線・乃木坂駅5番出口から、徒歩1分の場所にあります。店内はフランスの伝統的な家具や、ピエールさんのおばあちゃんが使っていた銅鍋や食器がピカピカに磨かれ飾ってあります。店の看板メニューの「ピエールさんの特製ブイヤベース」「ブルターニュ産ムール貝」「ボルドー産のホワイト・アスパラガス」などは特に人気が高く、旬の食材を楽しむことができます。
「ここに来ると我が家に帰ったようでホッとする」と、日本で生活するフランス人たちもたくさん集まってきます。
プリジャンさんより一足早く来日し、カルヴェル氏の愛弟子としてフランスパンの技術を伝えたフィリップ・ビゴ氏もその一人で、東京に来る時は必ずと言ってよいほど来店します。若い頃は、一緒に飲み明かすこともあったそうです。日本で仕事をしていく苦労をお互いに知り尽くしているからこそ、喜びも悲しみも分かち合えたのでしょう。
パン職人の魂は生き続ける プリジャンさんはレストランを経営する傍ら、パン職人としての魂も忘れてはいません。カルヴェル氏と出会い日本のフランスパンの黎明期を築いた「ドンク」創業者の藤井幸男氏を記念する一般財団法人「藤井幸男記念・教育振興会」の第1回講習会では、カルヴェル氏が日本に伝えた製パン技術や思い出を仁瓶利夫氏、菊谷尚宏氏と一緒に披露しました。またフランスに本部があるカルヴェル氏を師と仰ぐ仲間たちの「アミカルの会」日本支部会長を務め、「良いパン」の継承に力を入れています。定期的に行われる同会の総会や新年会には店を開放し、会員たちが持ち寄るパンと「シェ・ピエール」特製の料理でパン食文化を楽しみます。新年会は毎回特別ゲストを招き、卓話会を開催しています。秋には伝統的なフランスの製パン技術講習会を開催し、次世代のパン職人たちの育成にも努めています。
今年はカルヴェル氏の生誕100年を迎え、フランスのアミカル会を中心に記念イベントも考えられているようです。そしてプリジャンさんは後世に残したい「良いパン」の精神と技術を、アミカルに連なる多くの仲間たちと一緒に伝えていきたいと願っています。
100年前の日本ではまだ一般的ではなかった本物のフランスパンが、今では世界トップの技を持つ日本のパン職人たちの手で作られ普及しています。それまでの道のりは決してたやすいものではなく、多くの先達たちの努力があったことを忘れてはならないと思います。
本行 恵子(ほんぎょう けいこ) パンと食のライター。家庭製パン教室を10年間主宰した後、パン業界専門誌『B&C』の編集記者、編集長として勤務。16年間の在職中、日本各地のリテールベーカリーや欧米、アジア諸国を訪問し、パンと食文化を取材。現在はフリーの立場で、業界専門誌や企業ホームページでの執筆活動、業界関連団体への企画提案などを行っている。ライフワークは、パンのある食卓の提案。