パン好きがベーカーの道を開く - ドゥエトゥレ - ブランスリー電子版

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お店拝見/2013年5月号

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パン好きがベーカーの道を開く - ドゥエトゥレ
毎日70斤売れるという「でか食」。食パンで人気ナンバー1の商品
八王子産のさつまいもを使用したデニッシュで、高尾山をイメージした「Mt・TAKAO」
 中央線の西八王子駅北口を出て、国道20号線を渡り、保育園の園児たちの楽しげな声を左手に聞きながら歩くこと5分。最初の十字路の右手斜め向かいの建物の1階にベーカリー「ドゥエトゥレ」がある。イタリア語で「2と3」の意味を持つ店のオーナーは川崎泰之さん(38歳)。今年でベーカーとして13年目を迎えた。
 川崎さんは大学を卒業後、一般企業の営業マンとして社会人のスタートを切った。しかし、営業の仕事に馴染めず、25歳のときにレストラン部門を持つ大手ベーカリーに転職した。元々パン好きだったことがベーカーへの扉を開けたようだ。この会社では4年間食事パン系のパン作りを学んだ。パンの基礎は学べたとの思いから、ペンション経営も悪くないと、独立も視野に入れて考えたとき、川崎さんは気がついた。「自分の好きな菓子パンを作ったことがない」
 修業時代に、仕事帰りによく通ったリテールベーカリーがあった。あるとき、その店が社員を募集していた。「チャンスだ」と思った川崎さんは転職を果たす。このベーカリーで大好きな菓子パンを含め、2年間パンを総合的に修めることが出来た。修業中、店主がよく言ったことは「食パンの大切さ」であった。



人気の「でか食」は1日に70斤も
地元のじゃがいも、ネギ、にんじんを使った「西八カレーパン」
ライ麦から起こした自家培養酵母を使った「ライ麦くるみパン」
 2006年10月にオープンした「ドゥエトゥレ」の大きな特徴は、8種類の食パンにある。中でも、一番の人気商品は「でか食」(1斤220円)。もちもちした食感が客を引き付けるようで、毎日70斤を販売する。サンドイッチ用に開発されたもので、通常のサイズより一回り大きい。この食パンで作られたサンドイッチ類(380円〜)の売れ行きもよいそうだ。「焼きそばパン」(137円)や「コロッケパン」「エビカツ」(210円)などの総菜パンと同様に、昼前には売り切れてしまうそうだ。
 他の気になる食パンは、八王子産の小麦(農林61号)を90%使用し、小麦酵母を用いた「八王子食パン」(350円)。トーストすると、きめ細かな食感に甘みと香りが際立つ。全粒粉が50%入った「グラハムブレッド」(1斤270円)には食物繊維がたっぷり。変わったところでは、「ずんだ食パン」(290円)も。枝豆を生地に練りこんだ商品で、ファンもついている。
 店を活性化させる商品は他にもある。かつて、全国展開するベーカリーがフランスパンを発売したところ、八王子が最も販売実績がよかったという。その反映だろうか、「ドゥエトゥレ」の石臼挽き小麦粉を使った「バタール」(240円)や長時間発酵の「バゲット」(250円)もよく売れる。ライ麦粉を35%混ぜた「ライ麦くるみパン」(1・3キロ1100円、ハーフなどでも販売)にはライ麦酵母を使用。クラストとクラムのバランスが程よい。
 「西八カレーパン」(180円)に使われるじゃがいも、ネギ、にんじんは地元八王子産のものだ。同様にさつまいもを使った人気商品に「Mt・TAKAO」(210円)がある。八王子市の行楽地で有名な高尾山をイメージしたもの。さつまいもを山に見立てたスイートポテトデニッシュ。ポテトの甘さがいきている。



味を支える3種の酵母と地元農産物
オーナーの川崎泰之さんを中央に、製パン経験1年の前原さん(左)と製パン経験3年の相川さん(右)
落ち着いた雰囲気を醸し出す6坪の売り場
西八王子駅から徒歩5分の住宅街にある「ドゥエトゥレ」の外観
 「ドゥエトゥレ」のもう一つの特徴は、3種類の自家培養酵母を商品によって使い分けていること。オープン当初はライ麦酵母といちじく酵母を使用。最初は食パンが思うような商品に仕上がらなかった。このため、後に小麦酵母も採用した。今では、ライ麦パンにはライ麦酵母を、ドライフルーツが入った「フリュイ」(500円)などには香りのよいいちじく酵母を、そして食パン系には小麦酵母を使う。川崎さんがベーカリーを開業したのは、自分のアイデアを商品化したいとの思いがあったからだ。店独自の味を出すためにも、自家培養酵母は必要不可欠な道具そのものなのだ。
 独自の味に手を貸すのは、自家培養酵母ばかりではない。先に記した「八王子食パン」「西八カレーパン」「Mt・TAKAO」に使用されている八王子産の小麦や野菜も重要な要素。1年ほど前から、川崎さんは出来る限り地元の農産物を使うように心がけている。地域の元気を少しでも手助けできればと考えてのことだ。



パンで客と地域を結ぶ中継基地
母親と一緒に父親のためのパンを買いに来た男の子は、オーナーと楽しくおしゃべり
ドライフルーツがたっぷり入った「フリュイ」。イチジクから起こした酵母を使用
「第1回八王子お店大賞」を受賞した際にもらった賞状が店内に掲示されている
 昨年2月、同店は「第1回八王子お店大賞」を受賞。八王子商工会議所の主催で、消費者から十分な支持があったというのが受賞理由の一つだ。同店は、オープン時から添加物不使用を掲げて商品作りに取り組んできた。添加物に反応して、胃もたれなどを起こす人たちに配慮してのことだ。住宅街だけに、主婦層が中心の客層だが、子供や高齢者、それに結構男性客も、同店の味にひかれて足を運ぶ。
 店を、母親と共に訪れた男の子は、父親のために「ずんだ食パン」を買いに来たという。あいにく「今日は売り切れちゃった」と聞かされた男の子は、残念がりながら、一所懸命にお父さんのことなどを話す。その子にとって、自分の話を真剣に聞いてくれる「パン屋のおじさん」は、身近な存在なのだ。
 商品の品質に気を配りながら、客との結びつきに心を開く「ドゥエトゥレ」は、パンを通じて、客と地域を結ぶ中継基地の役割を果たしているようだ。



原価計算女王
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