戦うリングから創造する厨房へ - TOLO PAN TOKYO - ブランスリー電子版

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お店拝見/2013年3月号

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戦うリングから創造する厨房へ - TOLO PAN TOKYO
池尻大橋商店街にある「トロ パン トウキョウ」の外観
店長の田中真司さんを中心に、左が製造担当の伊藤さん、右は販売担当の保積さん
約5坪の売り場に、60品目が並ぶ。客単価は900〜1000円という
 「TOLO PAN TOKYO」(トロ パン トウキョウ)という少し変わった名前のベーカリーが、東急田園都市線の池尻大橋駅近くにある。名付け親は、今年でベーカーとして16年目を迎えた店長の田中真司さん(34歳)。神戸市出身の田中さんは、高校時代ボクシング部に所属。小学生時代に観たアメリカのヘビー級チャンピオンの試合に感激。高校は市内のボクシング強豪校へ入学し、日々努力や研究を重ねたという。目標実現に努めることが、直接試合の結果に現れた。
 学校を卒業すると同時に、パンの世界に飛び込んだ。母親と一緒に初めてシュトーレンを作った嬉しい記憶が後押しをした。初めての職場となったホテルでは、パン生地に触るだけでも本当に楽しかったそうだ。
 しかし、作り方に関する疑問について先輩に尋ねても「そういうもの」といった答えしか返ってこなかった。2年間の在職中、田中さんの心を徐々に占めていったのは、「他の職業につきたい」という思いだった。ボクシングでは、疑問には具体的な解決方法が示された。努力のしがいがあった。しかし、最初のパンの職場では頑張る切っ掛けさえつかめなかった。
 22歳で上京し、幾つかのベーカリーで働いたが、満足は得られなかった。1年後のある日、偶然、青山の骨董通りにあるベーカリーデュヌラルテに出合った。ベーカーとして飛躍する端緒となった。田中さんが望む本当の意味でのパンの修業が始まったのだ。師匠は、ベテランの女性ベーカー。基本から厳しく指導されたという。
「例えば、何故、生地に塩を入れるのか、パンによって塩の量を使い分けるのはなぜか、などについて、ハッキリとその理由を説明してもらいました。パン作りの面白さを知ると同時に、自信を持つことができました。それまでは、モノマネのパンしか作れなかったんですから」と田中さん。
 デュヌラルテには6年間在籍。前半の3年間はベーカーとしてパン作りに没頭した。残りの3年間は商品開発を任されたという。



クロワッサンに感謝状が贈られる
繊細な食感が楽しめる「クロワッサン」
今年1月にある団体から感謝状が贈られた
 2009年7月にオープンした「トロ パン トウキョウ」は、6年間の修業で得た技術と発想の表出場所のようにも思われる。そのコンセプトは「美味しさ」。その内容は「軽い食感で味を濃く」が基本だ。具体的な味を代表するのが、まず、「クロワッサン」(260円)。長時間の低温発酵でバターの風味を引き出すとともに、パイのような食感を生み出した。形は通常のものよりも大きめで、しかも少し不恰好。でも、温度の低いフィリングをサンドしても美味しく食べられる。このクロワッサンには、今年1月に、クロワッサン朝食会という団体から、感謝状が贈られた。理由は、「2010年から2012年までに、同団体のメンバーが食べたクロワッサンの中で最もおいしかったから」というものだった。日々の努力の証の一つが示された。



顧客を意識した商品群
豆乳と豆腐を使用したヘルシーな食パンの「ヒガシヤマ」。のど越しがいいのが特徴のひとつだ
1日に6回揚げることもある「カレーパン」。ザクザクの自家製パン粉を付けて揚げる
生地をねじった上で、ガチョウの油を塗って焼き上げた「世田谷バゲット」
洋風の今川焼きといった風情の「モダアン」
店の所在地の名前がついた食パンの「ヒガシヤマ」(500円、ハーフ260円)は、地元の豆腐店から仕入れた絹豆腐と豆乳を使った商品。油脂にオリーブ油を使用した。真ん中に穴が開いているのは水抜きをするため。しっとりとしてフワフワ感もあり、子供から高齢者まで楽しめる。
 「世田谷バゲット」(210円)は、生地をねじったうえで、ガチョウの油を塗って焼き上げた同ベーカリーのオリジナル商品。軽くトーストして食べるとよい。噛み切って食べる感覚だが、塩加減の良さを味わうには丁度いい。
 1日に100個以上売れる「カレーパン」(200円)は、マリネした牛肉をチーズ入りの生地で包み込んだ食べ応えのある製品。
 クロワッサン生地を使った「ショコペパン」(220円)には、ベルギー産のチョコチップを挟んだ。打ち合わせや仕事中も机を汚さずに手軽に食べられると、サラリーマンに人気だ。
 洋風の今川焼きといった風情の「モダアン」(180円)は、口当たりのよいあんと油脂たっぷりのクラストとのバランスがいい。
 生地と同量のレーズンなどを練りこんだ「ぶどう食パン」(550円、ハーフ280円)は、もちもちの食感で、冷たいバターとも好相性。同ベーカリーの商品は、客にどうしたら最後まで自然に食べてもらえるかを考えて作られている。



気配りが生み出す美味しさも
生地と同量のレーズンなどを練りこんだ「ぶどう食パン」
一口サイズの「ショコペパン」。「仕事をしながらでも食べられる」と好評
1時間ほどの取材中、客足は絶えることがなかった
 田中さんは、毎朝4時から仕込みを始める。以前は、料理と合わせて100点になるようなパン作りを考えてきたが、今は、パンそのものが100点になるパン作りを目指すことで、美味しさを追求しようとしている。
 同ベーカリーにはレーズンで起こした自家製酵母がある。オープン以来、ライ麦で種を継いできた。この自家製酵母を使用するパンは複数ある。それらのパンに利用する場合は、イーストを加えるという。食感が軽くなり、食べやすくなるそうだ。
 同ベーカリーの美味しさを支えるもう一つの要素がある。それは「気配り」。車椅子に乗った客や乳母車を引いた母親が来店すると、店員は入り口のドアを大きく開けて招き入れる。およそ5坪の小さな売り場は、客の嗜好に応えたパンの香ばしい匂いだけに満たされている訳ではないようだ。
 なお、世田谷区代田には2号店の「トロコーヒー&ベーカリー」(電話03‐5787‐6732)がある。





SHOP DATA
店名:TOLO PAN TOKYO(トロ パン トウキョウ)
住所:東京都目黒区東山3−14−3
電話:03−3794−7106
営業時間:午前7時〜午後8時
定休日:火曜
品揃え:60品目
店舗面積:厨房約7坪、売り場約5坪
スタッフ:製造3人、販売1人(常時)
日商:12万円

原価計算女王
原価計算女王

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