客の声からベーカリーをみる / - ブランスリー電子版


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特集/2013年2月号

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客の声からベーカリーをみる






ピーターパン 石窯パン工房店
気温10度Cを下回る寒さにも関わらず、「ピーターパン石窯パン工房店」のイートイン専用オープンテラスは、子ども連れや主婦などで満席の賑わい
クリスマス前の店内では、サンタ帽をかぶったスタッフが生き生きと働いていた
寒い日でも足を運びたくなるホットコーヒーの無料サービス。パン購入客にはレジで、専用のコップが渡される
塗り絵と引き換えに、クッキーをもらえるイベントに参加した子ども。イベントを楽しみに来店しているという
冬でもオープンテラスは満員の盛況
 平日午後1時過ぎ、気温10度Cを下回る寒さにも関わらず、千葉県船橋市の「ピーターパン石窯パン工房店」のイートイン専用オープンテラスは、子ども連れや主婦などで満席となっていた。
 「お昼用にちょっとだけ買って帰るつもりだったんですけど、お店の中に入ったらあれもこれも欲しくなっちゃって。種類が豊富で値段も手頃だし。予定の10倍は買ってしまったと思います。いつも朝はご飯なんですが、明日はパンですね」
 こう話すのは、娘と来店した50代の主婦。JR船橋駅に買い物に来たついでに、同駅から徒歩15分の同店へ少し足を延ばした。
 「近所に住んでいる訳ではないので、実は1年ぶりです。駅周辺の飲食店が混んでいてどうしようかと思ったとき、そこからちょっと遠いけれど、おいしいパンが食べられるこちらのお店を思い出したんです。オープンテラスがあることは忘れていたので買って持ち帰るつもりでした。でも、パンは焼きたてで温かいし、
開放感のあるオープンテラスはあるし、この場ですぐに食べたくなっちゃいました」(同50代主婦)
 一方、「きまって月に3〜4回は来ています」と話すのは、30代の夫婦。
夫は、「普段パン屋さんには行かないんですが、こちらだけは別です。
休みの日のブランチやランチに来て、テラスで無料のコーヒーとパンを食べます。それがいつの間にか楽しみになっていて、もう3年は通い続けています」と話した。
 この夫婦は、暑さ寒さに関係なく、通年来店しているという。妻は「夏は暑いけど来る回数は減らなかったし、逆に今みたいに寒い方が堪えるかな。でも、気に入ったパンがあるから構わず来ちゃいますね」
 同店のテラス席には、冬の間ストーブが設置されている。今夏はミストシャワーが設置されていた。いつ来店しても快適に利用できるよう、きめ細やかな配慮が施されている。
 別の子ども連れの主婦は「イベントを楽しみに来店しています」と話す。塗り絵と引き換えにクッキーをもらい、子どもも満足気だった。

おいしく感じる5つの要素
 横手和彦社長は「当店のお客様の中には『ピーターパンには、パンを買いに来ているんじゃないんだよね。散歩がてらコーヒーを飲みに来てるんだよね。でもパン屋だからついついパンも買っちゃって、気付いたら1000円以上も買っちゃってるんだよね』と冗談交じりにおっしゃる方もいます」と話す。
 さらに、「やはり、楽しいと思ったりわくわくしたりする中で食べるのと、『なんか嫌だな』と思うような雰囲気の中で食べるのとでは、おいしく感じる度合いが全然違ってきます」と言う。
 おいしさは、個々人で感じ方が異なるので、定義付けが必要だと、横手社長は考えている。
 「当社では、『ルックス』『アロマ』『テイスト』『フレーバー』『プライス』の5つの要素がおいしさを決めるものと定義付けしています。やはり値段も味のうちなんですね。『この値段でこんなにおいしいなんて』と思ってもらえるよう、手頃な価格に設定しています。お客様はレジで支払うとき、安いか高いか、ふと感じます。そのふとした感覚が、おいしいと思うか満足するかどうかを左右させるんですね」(横手社長)



スタッフ全員が、胸を張って看板商品だと勧められる「自家製カレーパン」(136円)
横手和彦社長
小さめのトングやカゴが用意されているので、子どもが自らパンを選ぶことができる
店内が混雑していても、客の問い合わせにすぐにスタッフが応じていた
入店を待つ人の行列がさらに多くの人を呼ぶ
 会社の昼休みを利用し、初めて来店したという男女は、「勤め先は東京の本社なのですが、支社がこの近くにあって月1のペースで来ています。そのとき車でお店の前を通るのですが、常に人がたくさんいて賑わっているので、ずっと気になっていたんです。実はすでに、お弁当を食べてきているんですが」と言いながら、これで2つ目だというパンにかじりついていた。「おいしいし、値段も手頃ですね。今度来るときはお弁当なしできます」
 このとき、男性会社員が食べたパンは「自家製カレーパン」(136円)と「コロッケコッペ」(126円)。
 「何がお勧めかお店の人に聞いたんです。すると笑顔で『自家製カレーパンです』と即答され、迷わず買いました。期待以上においしかったです」(同男性会社員)
 同じく今日が初来店の60代の主婦4人組みの1人は「自宅から遠くて電車に乗らないと来れないんです。お店の評判は、友達から聞いて知っていました。『いつも混んでいるけど、特に土日は並ばないといけないから』と言われていたので、平日を狙って今日来たんです」と話した。
 同店は、特に週末や祝日は、店内への入場制限をしなければならないほどの繁盛ぶりで、店の外には入店を待つ人の行列ができる。その様子は同店の前を通る車の窓からもよく見えるようで、先ほどの会社員の男女のように、初来店の動機には、「行列が気になって」という声が多い。
 一方で、行列を見た人々によってさらに行列が作られるという繁盛の仕組みは、デメリットも併せ持つ。混雑を嫌う人の来店促進が難しいということだ。しかし、その対処も同店ではなされている。
 「土日はやっぱり混むんでしょうね。今日も中はすごい人でしたし。お店の人もとっても忙しいだろうと思うんですけど、笑顔で対応がよくて、袋詰めも丁寧にやってくれましたよ。忙しない感じもなくて、雰囲気がよかったです」(同60代主婦)
 こうしたスタッフの丁寧な対応が混雑によるデメリットの部分をカバーしているのだろう。

混雑時にこそ光るスタッフの対応
 横手社長は、スタッフの教育についてこう話す。
 「私はよくお客様の表情を見ます。お客様が本当に満足しているかどうかがその表情から伝わってくるからです。それは逆に、スタッフがお客様に伝えるときも同じことで、言葉だけでは伝わらず、自然とわき出てくる表情が必要なんです。心から本当に思っていなければ、表情はついてきません。そのためには、会社の理念だけでなく、商品への思い入れや、お客様とのやりとりなど店での出来事をスタッフ皆で共有しておくことが大切です」
 ピーターパンの看板商品といえば、「自家製カレーパン」。1日に同店で800個出る人気の「自家製カレーパン」のカレーフィリングは、ピーターパンの他の店舗も含めた全5店舗分を専用工場で製造している。
 同工場へ、全5店舗のスタッフらを入れ替わりで送り込む。
 「夏の暑いときでも毎日、大変な苦労をして作っているということを、スタッフ全員が、身を持って知っておくことが大事だと思っています」(横手社長)
 また、肉の量を増やすなど、カレーフィリングは日々改良を重ねているが、その様子もできるだけ多くのスタッフに見る機会を与えている。
 「これだけこだわって作り上げているということを知っていれば、自信を持ってカレーパンをお勧めできると思うんです」(横手社長)
 先述の男性会社員にも、「自家製カレーパンです」と即答したスタッフの気持ちがしっかりと伝わっていたのだろう。

ピーターパン 石窯パン工房店
住所:千葉県船橋市海神3‐24‐14
電話:047‐410‐1021
営業時間:午前7時〜午後8時
定休日:木曜日
品揃え:約100品目
スタッフ:常時約30人
店舗面積:厨房34坪、売り場23坪、倉庫10坪
日商:平日95万円、土曜160万円、日曜195万円



ブーランジュリー・ベベ
店の外からガラス越しに見えるクリスマスのオーナメント
オーナーシェフの安藤さんの妻、信代さんの手による鉢植えが入り口横に置かれている。鉢植えの内容は、ほぼ毎月変わる
オーナーシェフの安藤潤さん、販売担当の野口さん(写真左)、製造担当の日向さん(写真右)
クリスマスの飾りが夫婦共通の話題に
 「ブーランジュリー・ベベ」は、神奈川県の鎌倉駅から江ノ島電鉄に揺られて4つ目の、極楽寺駅からすぐの所にある。閑静な住宅街へと続く極楽寺駅だが、約2年前の同店オープン以来、地域住民以外の乗降客も増えてきた。
 パンのおいしさだけでなく、店舗ディスプレイのセンスの良さにも定評がある同店を訪れようと、観光客が鎌倉駅から同駅にも流れるようになってきたのだ。
 「これこれ、これが素敵なんだよね」
 12月下旬、妻と同店を訪れた男性客は、店内に飾られたクリスマスのオーナメントを店の外からガラス越しに見て指さし、妻に話しかけていた。
 同男性客は、「去年のクリスマスのときにも見て、いい飾りだなと思ったんです。それで、どこで手に入れたのかお店の人に聞いたらアンティークの品だということでした。この話は去年妻にしていたのですが、実際に飾りを見ながら話をしたかったので、一緒に来れる機会を待っていたんです」と話した。
 この日、同男性客が購入したのは、「極楽寺あんぱん」(150円)や「チリビーンズ」(220円)、「バゲット」(280円)など。「何を食べてもおいしいんですよ。家が近所なんですが、買うつもりがなくても、お店の前を通るといい匂いがしてきて、ついついおやつに買ってしまいますね」と笑顔で店をあとにした。
 ある年配女性客は自転車を止めて店前にある鉢植えに目をやり、そのまま少し佇んだ。
 「いつもこの鉢植えがきれいだなと思っているんですよ。1カ月おきくらいで変わるので、どこの植木屋さんにお願いされているのか聞いたんですけど、お店の奥様がされているとのことだったので驚きました」(同女性客)

センスの良いディスプレイが会話を生む
 「鉢植えや店内に置いてある雑貨については、常連の方だけでなく初めての方からもよく聞かれます」と販売担当の野口さん。野口さんは以前、駅ビルにある大手チェーンベーカリーで販売をしていたこともある。
 「同じ販売業務でも、商品をお渡しすることだけに必死になってしまうより、お客様と言葉を交わしながらできると楽しいです。また、会話のきっかけとして、こちらから話しかけるよりも、お客様から質問されてからの方がお互い楽な気がします」(野口さん)
 パン以外の店の要素が、会話のきっかけを生んだり、会話の幅を広げる役割を果たしているようだ。
 「店舗に飾っている雑貨はすべて自宅にあったものなんです」とオーナーシェフの安藤潤さん。安藤さんは、「パン屋をやっていなかったら雑貨屋をやっていたと思います」と話すほど、夫婦でインテリアに興味を持っている。
 販売スタッフと客が店内の雑貨について会話をしていると、「アンティークショップで買ったんですよ」と、安藤さんも厨房から顔を出す。
 「会話の内容は、常連の方ほどパン以外の話をするようになりますね。最初の頃は『おいしいです』とおっしゃっていただいたり、どんな材料を使っているのか質問されたりということが多かったですが、次第に、
店のディスプレイなどパン以外のことについての話が大半を占めるようになっていきますね」(安藤さん)
 また、店のディスプレイは、会話のネタになるだけにとどまらないという。
 「パンだけではなく店のインテリアも含め、店全体として、お金をいただいていると思っています。お客様にとって、『自分が買っている店のセンスの良し悪し』は大事なことだと思うからです」(安藤さん)
 店内のディスプレイはシンプルにまとまっており、配置された雑貨の数やボリュームは、店の空間に対してかなり抑えられた印象を受ける。
 「自分の趣味を押し付けようとせず、お客様が店内に入ったとき『落ち着くな』と思ってもらえるインテリアを目指しています」(安藤さん)

ガラス張りで外からも店内の装飾がよく見える
で配置され、白い壁を背景にして引き立っている
レジの後ろの棚に、ほぼ予約で売り切れてしまう「角食パン」(1本520円)などが並ぶ
厨房と売り場は大きな窓ガラスの付いた引き戸で仕切られており、レジ待ちの客が厨房の中の様子をよく見ていた
家族全員が好きな「角食パン」
 「うちは『角食パン』(1本520円)が好きなんですけど、大体いつも売り切れちゃって予約なしでは滅多に買えないんですよ。買いに来て偶然あったときは運がいいと思ったりして」
 こう話すのは、家族で同店の「角食パン」が好きだという30代主婦。同主婦の小学生の子供も「角食パン」を気に入っており、自転車で店前を通るときはガラス越しに「角食パン」があるかどうかチェックするのが習慣になっているという。
 「うちの子は、あるのを見つけると『買わなくちゃ』って、お店の前で急ブレーキを踏んで止まるみたいですよ。これまでに何度か買ってきてくれています」(同30代主婦)
「角食パン」については、別の30代主婦も「家族皆が好きで、食パンはこちらのお店と決めています」と話す。
 「近所に住んでいてたまたま通りがかって入って買ったら、とてもおいしくて。それからずっと買い続けています。子どもはバターやジャム、夫はハムやチーズ、それかバターだけとか。何もつけずそのままでもとてもおいしいですよ。味が濃いのかな、よそのお店のとは全然違います」

好みが分かれる食パン
 「角食パン」について安藤さんは「食パンは『山食パン』と『角食パン』の2種類を用意していて、この2つの違いははっきり出すようにしています。『山食パン』は塩気、『角食パン』は甘味をしっかりつけています。塩気を好む人、甘いのを好む人、それぞれ好みが分かれると思いますし、ある程度はっきりと味が出ていないと、食べたあとに印象に残らないと思うんです」と話す。

ブーランジュリー・ベベ
住所:神奈川県鎌倉市極楽寺1‐4‐3‐1F
電話:0467‐24‐8595
営業時間:午前10時〜午後6時
定休日:日曜、月曜
品揃え:約50品目
スタッフ:販売1〜2人、製造1〜2人
店舗面積:厨房11坪、売り場4坪
日商:平均10万円

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