命を救うパンを缶に詰めて世界へ届ける - ブランスリー電子版

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連載/2013年1月号

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命を救うパンを缶に詰めて世界へ届ける

一粒の麦から(11) - 本行恵子

 地球上のどこかで6歳未満の子供が6秒に1人の割合で飢えて命を失い、世界の人口の6人に1人が飢えに苦しんでいます。この現実を、皆さんはご存知でしょうか。今回は災害備蓄食品のひとつであり、世界の飢餓に苦しむ人たちを救うパンの缶詰のお話です。



パン・アキモトとの出合い
賞味期限が3年間あるパンの缶詰
 栃木県那須塩原市にある製パン会社「パン・アキモト」(秋元義彦社長)は、昨年12月1日に、創業65周年を祝う「パン・アキモト65祭」を、りんどう湖ロイヤルホテルで盛大に行いました。
 秋元義彦社長に初めてお会いしたのは、2002年5月に上海で行われた製パン製菓展示会「ベーカリーチャイナ」の視察ツアーに参加した時のことです。
 ツアーでは展示会場だけでなく上海、無錫、蘇州をまわり、現地の食文化を視察しました。秋元氏は人一倍研究熱心で、食べるだけでなく食品工場の製造過程や販売方法など細かいノウハウをしっかり頭に入れて帰国しました。その頃はすでにパンの缶詰を発売していた時期ですから、
中国市場も頭に入れて視察されていたのでしょう。
 「パン・アキモト」は、現社長の父、秋元健二氏が戦後の混乱期であった昭和22年に創業。地元の人たちの空腹を満たしたいという想いから始めた町の小さなパン屋さんでした。2代目の義彦氏は大学卒業後、長岡市のベーカリー「マルシャン」や他店で製パン技術やマネージメントを学び、経営者として目覚めます。地元の人々から愛されるよう消費者のニーズに合わせたパン作りを心がけ、アイテムや製法も時代に合うものに変えていきました。そして店売りだけにとどまらず、パンを買いに行けないという高齢者や、幼い子供を抱えた母親たちの要望に応え、移動販売もスタート。創業者から学んだ隣人愛の精神を受け継ぎ、事業を展開していきました。



災害対策と飢餓対策に大きな貢献
「パン・アキモト65祭」で挨拶する秋元義彦社長
 そして1995年1月に起きた阪神淡路大震災では、神戸の教会に避難していた父親の友人や被災者たちのために2000個のパンをトラックに積んで那須塩原市から被災地まで運びました。
 しかし輸送道路の大渋滞から、配布するまでに時間がかかり、半分以上のパンを破棄しなければなりませんでした。その体験からおいしくて日持ちの良いパンを作れば喜んで食べてもらえると考え、日夜研究を重ねました。真空パック、冷凍保存などいろいろ試しましたが、うまくいきませんでした。
 ほとんど諦めかけていた時、近所にある農産物加工所で目にした缶詰作りがヒントになり、パンの缶詰のアイデアが生まれたのです。しかし実際にやってみると、焼きたてのパンを缶詰に入れる難しさがありました。次に缶詰に生地を入れて焼くことを思いついたのですが、うまくいきませんでした。そして様々な試行錯誤の後、湿気を調整し熱にも強い紙を使うことで、ついに問題は解決。世界初の特殊製法(世界4カ国で特許取得済)で、3年間ふわふわのパンを味わえるパンの缶詰が完成したのです。
 この缶詰は備蓄用食品として利用するだけでなく、世界中の飢餓に苦しむ人たちへの支援活動にも使われています。3年間の賞味期限のうち、2年間は非常食として備蓄し、残りの1年は義援物資として日本国際飢餓対策機構を通じて海外へ送るという画期的な「救缶鳥プロジェクト」をスタートさせました。
 また、2011年に起きた東日本大地震は、日本の防災備蓄システムに大きな反省をもたらしました。そこで考え出したのが、NPO法人「We Can」です。企業や個人から一口5000円の寄付金を募り、寄付者の近くの指定倉庫やスポンサー企業倉庫で,水とパンの缶詰と寝具の3点セットを備蓄し、有事の際は即時に必要地域に配送。備蓄2年後には「救缶鳥プロジェクト」と同じシステムで飢餓に苦しむ人々のために使われます。
 寄付金がどのように使われているかがわかり、自分たちの地域だけでなく他の地域も支え合う共助の精神が根幹にあります。パンの缶詰の開発から地球規模の社会貢献に発展したこの活動を、私も支援していきたいと思います。
   ◇
 ▽救缶鳥プロジェクト(パン・アキモト国際義援事業本部、電話0287‐65‐3558)
 ▽NPO法人災害支援機構「We  Can 」(電話0120‐683‐558)





本行 恵子(ほんぎょう けいこ) パンと食のライター。家庭製パン教室を10年間主宰した後、パン業界専門誌『B&C』の編集記者、編集長として勤務。16年間の在職中、日本各地のリテールベーカリーや欧米、アジア諸国を訪問し、パンと食文化を取材。現在はフリーの立場で、業界専門誌や企業ホームページでの執筆活動、業界関連団体への企画提案などを行っている。ライフワークは、パンのある食卓の提案。



原価計算女王
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