ギターの世界からパンの道へ - ベルグフェルド - ブランスリー電子版

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お店拝見/2013年1月号

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ギターの世界からパンの道へ - ベルグフェルド
自慢の「トースト」(2山、左)と。シチューやカレーにぴったりの「小トースト」(右)
左から入社したばかりの瀧本さん、製造経験3年の佐藤さん、社長の山田元さん、販売を担当して1年半になる中村さん、12年目のベテランの多武さん
 JR横須賀線・鎌倉駅から若宮大路を鶴岡八幡宮に向かい、国道204号線を道なりに歩くこと約20分の場所にあるのがベルグフェルドだ。この地で31年間、地元に親しまれながらドイツパンを作り続けている。今、ベルグフェルドの味を指揮するのは、2代目社長の山田元(げん)さん(41歳)。ベーカーとして今年で16年目を迎えた。
 山田さんは、異色の経歴の持ち主だ。高校を卒業すると、アルバイトで資金を貯めて、20歳で米国マサチューセッツ州にある音楽大学に留学。そこで本格的にギターを学んだ。24歳で帰国した年の8月に、子供のころから自分の食を支えてくれた父親が経営するベルグフェルドに就職。結婚したことがベーカーの道に入る切っ掛けとなった。「後を継ぐ気はなかったんですけどね」と山田さん。
 半ば気軽な気持ちで入ったパンの世界だったが、まもなく「甘くない」(山田さん)ことに気づかされる。当時、経験10年のベテランベーカーから厳しくパンの基礎を叩き込まれた。フロインドリーブで修業した父親が作るパンは自然と身体に馴染んでいたが、作り手として、パンが自らの身体と調和するまでには、4年という歳月が必要だった。



口溶けのよさは上質のラードが決め手
ベルグフェルドの外観。雨の日の午後、気軽に立ち寄る客の姿が目立った
ライ麦粉が70%入った「プンパニッケル」。焼かずに食べるのがいいという
小麦胚芽が40%入った「グラハム」。カフェで出すサンドイッチにも使用している
 ベルグフェルドでは、日本人に食べやすいドイツパンを作るための工夫をしている。同店が日々製造する13種類の商品のいずれにもファンがついており、客は自分の好みのパンを目指して店を訪れる。
 中でも、長い時間をかけて丁寧に作られる山型パンの「トースト」(4山756円、2山378円)は、一番人気だ。カナダ産の小麦粉と水をミキサーで程好く混ぜたところで取り出し、再度手捏ねで混ぜ合わせる。こうすることでサックリした食感を生み出す。油脂には溶けやすい上質のラードを使用。より口溶けがよく食べやすくなる。焼成は、特に下火を高温にすることで、クラストのパリパリ感を引き出す。
 「トースト」を食べるときは、きつめにオーブントースターで焼いて、たっぷりのバターをのせて食べると、その特徴が生かされるようだ。このトーストと同じ生地を使って作られるのが、香りのよい「小トースト」(378円)とクラストの食感が旨さを呼ぶ「ドイツコッペ」(378円)。
 20年前からの定番商品は「レーズンライ」(525円)。自家製酵母と生イーストの併用で作られる。このパンは、小麦粉を1キロ使用したとするとパン種(自家製酵母)が500グラム入る。レーズンとクルミが小麦粉に対して50%を占める。風味もよく日持ちもする。特に2〜3日経つと、最初とは異なる風味を醸し出すという。ベルグフェルドの自家製酵母はレーズンから起こしたもので、20年以上種を継いで使ってきた。歴史を刻みつつある種が風味の基になっているのだろうか。
 「レーズンライ」に使用するものと同様の酵母を使って作られるのが、ライ麦粉40%入りの「ライ麦パン」(プレーンとキャラウェイ、共に1本378円)とライ麦粉70%入りの「プンパニッケル」(1本1260円、4分の1カット315円)。サワー種を自家製酵母に代えて、酸っぱさを若干抑えた。
 この他の人気商品として、小麦胚芽40%入りの「グラハム」(378円)と土・日限定の「クロワッサン」(210円)がある。「クロワッサン」は1日80個製造し、毎回売り切れる。バターを生地にたっぷり含ませて、層は半生のような状態。少し詰まった幾つもの層の重なりが、人気の秘密のようだ。



カフェでパンの食べ方を提案
注文に応じながら常連客との会話が弾む
座って店員と話す顧客
カフェでは、ベーカリーで販売するパンを使った様々なサンドイッチを提供
 売り場の隣にあるカフェでは、ベルグフェルドのパンが週替わりで提供される。「ライ麦パン」なら肉やサーモン、クリームチーズを添えて、「プンパニッケル」は薄くスライスしてバターと蜂蜜、アボカドに細切りのニンジンをのせてオープンサンドで、「グラハム」はオイルサーディンといっしょに、といった具合い。ランチを食べに来店した客に家でも簡単に出来る方法を提案している。料理に合うように作られたそれぞれのパンの美味しい食べ方を客に伝えることが、パンそのものの売り上げにつながるからだ。



自家製ライ麦によるパン作りも
朝食向きだという「ブロッチェン」
外皮のパリパリ感と中身のふわふわ感がポイントの「ドイツコッペ」
25席のカフェでは、食事やコーヒーが楽しめる。土日は観光客で満席になるが、近所の人たちの憩いの場でもある
 高齢化社会といわれて久しい。鎌倉は高齢化率が高いそうだ。ベーカリーもその流れから無縁ではいられない。ベルグフェルドでも高齢化を見据えた商品作りを視野に入れつつあるようだ。山田さんは、今ある商品とは別に「柔らかくて、小ぶりな食パンが作れないか考えているところです」と話す。
 時代の変化に寄り添うのは難しいことだが、同店では、群馬県藤岡市内で数年前から野菜を栽培している。採れた野菜はすってパン生地に練りこんだり、じゃがいもは石臼挽きした小麦粉に入れたりと、季節の旬のパン作りに利用。2010年にはライ麦の作付けに初めて取り組んだ。その結果、翌2011年には50キロほど収穫できた。
 ライ麦100%のワンローフのパンを作ると100本分程度の量。まだ思うようにはいかないが、2012年は前回よりも多めに作付けしたので、収穫が楽しみだそうだ。今後は、国産ライ麦用の石臼を購入する予定もある。
 自家製ライ麦使用のライ麦パンが毎年登場することになれば、売り上げに貢献する可能性があるだけではなく、店のイメージアップにもつながりそうだが、山田さんは「これからも今まで通り美味しいパンを作り、お客様にお届けするだけです」と語る。地についた伝統こそが、時代を切り開いていくのかも知れない。



店名:ベルグフェルド
住所:神奈川県鎌倉市雪の下3‐9‐24
電話:0467‐24‐2706
営業時間:午前9時〜午後6時30分
定休日:火曜、第3月曜
品揃え:13品目
店舗面積:厨房約15坪、売り場約7坪
スタッフ:製造5人、販売2人
日商:平日約8万円、土日約15万円

原価計算女王
原価計算女王

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