近所の人にしかわからない場所に佇む店 - マダム シュープリーズ - ブランスリー電子版

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お店拝見/2013年1月号

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近所の人にしかわからない場所に佇む店 - マダム シュープリーズ
マダムシュープリーズの平澤誠一オーナーシェフと妻の八重さん
サンルーフ風のカフェスペースからガラス越しに庭木が楽しめる。ランチ時は主婦や子ども連れで満席に
入り口前の看板が唯一の目印。通りの中ほどに佇んでいる
 東京・杉並区の住宅街にあるベーカリー「マダム シュープリーズ」は、東京メトロ・新高円寺駅から徒歩6分ほどとアクセスは悪くないが、初めて行く人にはわかりずらい立地だ。民家が立ち並ぶ、近隣住民しか通らないであろう通りの中ほどに静かに佇んでいる。
 11時のオープン後間もなく同店のパンを求めに来た年配の女性は「このようなおいしいパンがいただけるのに、こんな目立たない場所にあるなんてもったいないと思っているんですよ。普通の家が並んでいるだけのところですから、私のようにこの辺を知った人でないと通りませんからね」と話した。
 入り口横には、「本日焼き上がりのパン」と書かれた看板が立っている。同店のある通りに入って初めて目に付く、同店の唯一の目印だ。店舗はオーナーシェフの平澤誠一さんが子どもの頃から住み続けているという家の一部を改装。リビングだったところは、床をコンクリートにするなどして厨房にし、テラスとして使っていたところはガラスを多用したサンルーム風につくり変え、売り場とカフェスペースにした。手入れの行き届いた庭木の様子が、店内からガラス越しによく見える。
 先ほどの女性客は、庭に咲くほととぎすを指さし、「この辺は住宅が密集してきて庭のある家も減ってきました。昔は各家の庭木を見るのを楽しみに、よく散歩していたんですけどね。こちらに来ると、庭木を見るのも楽しみの一つなんですよ」と語った。



看板商品のカンパーニュと日替わりの5種類のみ
ランチのタルティーヌ。カンパーニュの上にのっている具材は、手前が自家製の紅玉ジャム、真ん中がブリーチーズとイチジクとトレビス、奥がカスレ
ランチのオーダー後、試食用として日替わりのパン5種類が提供される
八重さんの作る焼き菓子がパンの下に並ぶ。「オールドファッションバナナケーキ」(250円)はふわふわの食感でバナナの風味が良い
 この女性客が一番の目当てに購入したのは「カンパーニュ」(ホール1840円、ハーフ920円)で、同店の看板商品だ。
 「カンパーニュ」は、圧倒的な存在感を誇って、スチール製のシンプルなつくりの棚に2つ置かれている。直径30センチ以上、重さ約2・1キロという大きさは、「2つ」というより、「2台」という表現が似合う。
 平澤さんは、夜中の2時から仕込みを始め、オープン時刻の11時を目指して焼き上げる。取材日も10時半頃焼き上がった。
 「まだ温かいんですよ。家に持ち帰った後も温かいんです。いつもお昼前に買いに来て、その温かさのある状態のまま昼食にいただくのが楽しみなんです」(同女性客)
 焼きたての状態ではカットがしにくいことなどを考え、平澤さんは、夕方5時半頃から仕込みを始め、午前2時頃焼成することを過去に1カ月ほど試したという。
 「パンを渡したとき、なんだか残念そうな顔をされておられるなと感じました。カンパーニュも、完全に熱の取れた状態より、まだ温かいと感じられる状態の方が、喜んでもらえるんですね」(平澤さん)
 正午前になると、カフェで楽しめるランチを求めて来店する客で賑わい始める。あっという間に主婦や子供連れの夫婦などで4卓は満席となった。「カンパーニュ」は、そのランチにも使う。



カンパーニュはタルティーヌにして提供
「カンパーニュ」が圧倒的な存在感を持って来店客を出迎える
フランスの名店、ポワラーヌのパンのおいしさに魅了されて作ることになった「カンパーニュ」
「カンパーニュ」は、南部小麦をベースに粗挽きの全粒粉25%、ライ麦粉10%を配合して作る。クラムはしっとりとして少し酸味が感じられる
 同店のランチメニューは1種類で、「カンパーニュ」を使用したタルティーヌとドリンク、デザートのセットで900円。タルティーヌは、生ハム(ハモンセラーノ)、スモークサーモン&クリームチーズ、ポークリエット、カスレ、チーズや自家製ジャムなど合計10種類の具材から3種類を選択する。スライスしたカンパーニュ3切れに、それぞれ1種類ずつ具材をのせ、食べやすくするためにさらに半分ずつにカットして提供する。2人で来て6種類の具材をオーダーし、1切れずつ違う味を楽しむ人が多いという。
「特に女性のお客様は色々な種類を楽しみたいようなので、2〜3人でいらっしゃる方が多いですね」(平澤さん)
 初めて来店したという女性の2人組にも、平澤さんは、6種類オーダーすれば1切れずついろいろな味を楽しめることを提案していた。
 ランチでは、カンパーニュをどう使って提供するかによって、客の反応はかなり異なると平澤さんは言う。
 現在、タルティーヌの具材として提供している煮込み料理の「カスレ」だが、同店を開業した当初はキャセロールディッシュのような深みのある器に入れており、「カンパーニュ」は、その横に添えて提供していた。また、「カンパーニュ」はサンドイッチにして提供していたこともあった。
 「タルティーヌにすることで、いろいろな味を楽しんでもらえる形式のランチになりました。ボリュームの面でも、2枚のパンを使うサンドイッチより軽くてすみ、その分多くの種類が食べられるということで、女性客には喜ばれます」(平澤さん)
 また、ランチをオーダーすると、グラスに入った水と一緒に皿に盛られた5切れのパンが提供される。ランチの内容の一つではなく、あくまでも試食用として、「カンパーニュ」以外のパン5種類が1切れずつ食べられる。5種類は、9種類の中から日替わりとなっており、取材日は「アンチョビ&トマト」(700円、ハーフ350円)、「黒ゴマ」(460円、ハーフ230円)などだった。同店に並ぶパンは、これら日替わりの5種類と、「カンパーニュ」のみ。妻の八重さんが作る焼き菓子が2種類ほどパンと共に並ぶ。
 具材の中で最も人気なのはカスレ。鴨肉、子羊の肉、ベーコン、ソーセージ、インゲン豆、トマトなどを煮込んだ平澤さんの自慢の味だ。
 平澤さんは2年半前に同店を開業する前、東京のオフィス街でフランス料理を中心とした洋食店を26年間切り盛りしていた。カスレは当時出していたメニューの一つ。現在は、タルティーヌの具材として食べやすくするため、鴨肉や子羊の肉などは、インゲン豆の大きさに揃えるように小さめにカットしているが、出汁をとるために一緒に煮込む鴨肉の骨を2時間後に取りだし、さらに1時間煮込むなどという料理法は洋食店のときと同じだ。
 洋食店のシェフをしていた経験を活かし、こだわって作る本格的なカスレが評判を呼び、カスレを目当てに来店する客が増えてきているという。





店名:マダム シュープリーズ
住所:東京都杉並区梅里2‐11‐2
電話:03‐3312‐5463
営業時間:午前11時〜午後6時
定休日:日曜、祝日
品揃え:パン6品目、菓子2品目
店舗面積:売り場とカフェ4坪、厨房4坪
スタッフ:製造と販売1〜2人
日商:平日2〜3万円、土曜日4万円

原価計算女王
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