アメリカ人のライフスタイルはどうなる?今年の食生活展望 - 高橋秀尚(株)パンワールド代表取締役、海外情報研究会主宰 / - ブランスリー電子版

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海外情報(25)/2003年2月号

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アメリカ人のライフスタイルはどうなる?今年の食生活展望 - 高橋秀尚(株)パンワールド代表取締役、海外情報研究会主宰


価格志向と品質志向を使い分ける

なんとなく不安要素を残して新年を迎えたが、いったい今年はどのような年になるのだろうか? 世界経済をリードするアメリカであるが、知るほどに彼らは極めて質素な生活をしていることがわかる。そこで今月号では趣向を変えてアメリカ人の生活感と食生活の一端をお伝えしよう。仮にここで登場する人物Aは、年齢は30代半ば、州立大学を卒業して現在の職業は広告代理会社に勤務、家族は妻と3歳になる子供が1人、住んでいるのはカリフォルニアのサンフランシスコ郊外としておく。この記事をまとめるにあたって筆者が現地在住者に電話インタビューを行い、また、手元にある各種資料を参考にしたことを付記しておく。アメリカのごく一般的な消費者生活の一端を窺い知ることができればと思う。

アメリカの一般的な消費生活を見る
人物A 
私の簡単な紹介は友人であるミスタータカハシがしてくれたが、サンフランシスコという温暖な気候が気に入って住みついてから15年ほどになる。この町は夏でも気温は20度前後、冬は15度前後で四季を通じて寒暖の差が少ないから極めて快適な生活ができるのは有り難い。さらにおいしい食べ物も多いが、とりわけ有名なベーカリーが多く、そこで買えるサワブレッドなどは好きになったら止められないという事も付け加えておこう。
私の年収は約5万ドル(日本円に換算して約600万円)。アメリカでは中産階級に属する。私の場合は所得税が28%引かれるが、納税後の自己申告で各種の控除システムがあり、その特典を利用している。例えば私は車で約40分かかる郊外に家をローンで購入し、7%の金利も払っているが、この場合も適応される。また18歳以下の子供がいる場合も同じだ。ちなみに私の家は土地が約300平米、3部屋の寝室にリビングルームとキッチンだ。土地と建物すべての購入価格が20万ドル(約2400万円)だが、日本での価格の半分以下だろう。住宅ローンを除くその他の毎月の支出だが、食費が家族全部で400〜500ドル、医療費が400ドル、ガス電気、水道費用の合計が100ドルかかる。食費の安いのに驚くだろうが、例えば1ポンド(約450グラム)のステーキ用肉が3ドル(約360円)、20ポンド(約9キロ)の米が安いもので4ドル(約500円)、日系農家の作った日本米が8ドル(約960円)だ。日本から来た友人が食品の安いことに驚いていた。
また先程の光熱費だが、これには冬の時期のガス暖房費用も入っている。さらに車利用が欠かせないアメリカだがガソリン代は1ガロン(約4リットル)で1・8ドル前後(1リットルが約55円)だ。
老後の年金制度だが、人によって異なる生涯収入に応じて計算される。普通の賃金生活者であった場合は月額にして1500ドル前後が65歳から支給される。ただしこれでは生活していけないことが多いので、パートタイマーとして働くことが普通だ。また低額年金層のための公共住宅もあるので、その利用も可能だ。
さて、どの国も同じであろうが、子供の教育には親も気を使っている。特にアメリカの場合は私立と公立の学校のどちらを選ぶかで、必要経費に極端な差がある。もしパブリックスクールと呼ばれる公立学校に子供を入れた場合は、費用はほとんど不要だ。これは小学校から大学まで同様だ。
ただし、昼食のための学校給食制度はないのが普通で、ボックスランチとしてサンドイッチなど簡単な物を親が作って子供に持たせる。場合によってはお金を子供に渡してファストフードを買わせる場合もあるが、これが子供の肥満問題を起こしている。アメリカ人の肥満率は大人で68%、子供で26%という数字が発表されている。また飲み物にしても同様で、最近では州の法律で学校に自動販売機を置くことを禁止した例もある。なお低所得層の子供で親が弁当を作ってやれない場合には1食1ドル前後の負担でケータリング(仕出し)サービスを受けることも可能だ。
◇
以上が一般的な生活費関連の話であるが、生活のしやすさから言えば、住宅や食費、教育費が安いのはアメリカ、医療費や所得税が安いのは日本であろう。もっとも日本の治安のよさは今なお世界でも有数とされるので、このことも考えなくてはいけないだろう。

経済基盤と食生活の今後は?
さて、生活基盤となる経済問題と食生活の今後は、どのようになるのだろうか?
失業率が6%を超え、今までのような勢いと自信を失ったアメリカであるが、先日行われた消費者の意識調査を見てみよう。
設問 2003年のアメリカ経済をどう予測するか?
◎よくなると思う……43%
◎変わらないと思う…37%
◎さらに悪くなると思う………………………………20%
つまりかなり楽観視していることがわかる。
また流通業界での最大の関心事は何かという設問の回答は次の通りだ。
設問 流通業界での最大の関心事は何か?
◎小売業の倒産が増える………………………………29%
◎大手企業Kマートの生死……………………………28%
◎経済全般の動向……27%
◎一般的な社会不安…8%
◎ウォルマートの労働争議……………………………7%
その他……………………1%
この調査では一般的な消費者の食品を含む日常生活必要品の購入先であるスーパーマーケット業界における統合、買収および倒産などが増えるであろう事を消費者自身が予測しているのが注目される。ところが、ごく最近になって行われた次のような注目されるべき調査がある。
設問 食品を中心とするあなたの購買行動は最近になってどのように変化したか?
◎低価格重視…………65%
◎品質重視……………32%
◎今まで同様に両方を考える…………………………3%
つまり約70%の消費者が、今後は商品価格を最重視すると考えているのだ。これは今までの調査結果といささか異なるので筆者はアメリカの流通アナリストに直接インタビューしてみた。その結果として次のようなことがわかった。
(1)アメリカの消費者はいつ自分が失業するかという不安を常に持っている。
(2)その結果として食品を含む商品購入の支出を可能な限り控えるようになった。
(3)またスーパーマーケットでの買い物も今までのように一軒の店に限定せず、数件の店の価格を調べて買い物をするようになった。
(4)買い物に出かける前にショッピングリスト(買い物予定表)を作り、衝動買いをしないようにする。
(5)とは言うものの例えば生鮮食品などは鮮度や品質が確かなものを信頼できる店で買う。
(6)つまり低価格志向のスーパーセンターなどでは日用雑貨などを、信頼できるスーパーマーケット、専門店などでは生鮮食品などを、というように商品によって利用する店舗(業態)を使い分ける事が多くなったというのだ。
そう聞いて、しっかりした商品を作っているリテールベーカリーなどは今後もお家安泰だろうと筆者も安堵した次第である。ちなみに「フレッシュなベーカリー商品をどの種の店で購入するか」に対する回答は次の通りである。
◎スーパーマーケット…69%
◎近所のリテールベーカリー……………………………19%
◎ドーナツなどの専門店………………………………3%
◎CVS…………………1%
◎その他…………………8%

消費志向の今後を大胆に予測する
また今後はどのような消費者志向が起こるかを調べてみた。
インターネット販売の増加
2002年度のインターネット販売額は約740億ドル(約8兆8800億円)で伸び率は40%という。また利用者の61%は、その商品、価格に満足しているという。さらに利用者の61%は女性であるが、今後は食品類やギフト商品などの購入率がさらに増加するものと思われる。
なおアメリカにおける個人商店または小規模販売企業におけるインターネット販売導入率は30%という低い数字である。今後の高い伸び率が期待される。
商品開発競争の激化
2002年度における新商品市場投入数は総数が約2万2000種であったが、このうちヒットしたのは1・8%、予測販売額を達成したのは10・8%とされる。
商品開発のキーワードは「ライフスタイル」とされるが、今後はさらに競争激化が予想される。
中食率の増加
すでに何回となく調査されているが、最新のニールセン資料では、アメリカ人の「夕食時における中食支持率」は次の通り。
◎18〜24歳……………62%
◎35〜44歳…………59%
◎45歳以上……………33%
この数字は「自分は夕食の支度もできないほど忙しい毎日を送っている、または疲れていると思うか?」という設問に対する回答と、ほぼ同じ結果であることが注目される。
また中食市場における商品の伸び率は次の通り。
◎調理済アントレ………66%
◎冷凍ロール、マフィン、ロール…………………………56%
◎食事用スナック………26%
◎冷蔵アントレ…………20%
ファストフードは停滞
一般的なファストフード業態の伸びは停滞すると予測される。
現在の利用率(週に1回以上利用するか?)は、次の通り。
◎利用している…………83%
◎利用していない………17%
「今後は週に1回以上利用するか?」に対する回答は次の通り。
◎利用する……………61%
◎利用しない…………28%
◎わからない…………11%
以上が彼らの平均的な生活プロフィールであるが、重要なのは「顧客のライフスタイル」を的確に知ることであろう。なお筆者が撮影した写真で、今回のテーマに関連するものを集めてみたのでご覧いただきたい。



PHOTO REPORT

筆者が撮影した写真で、今回のテーマに関連するものを集めてみた。(高橋秀尚)

アメリカ人の食生活に不可欠なスーパーマーケット。選んだ商品をレジに持って行き支払いを済ませるが、ここでの店員のサービスの良し悪しが重要。適切な会話と迅速で正確な仕事ぶりが要求される。写真では袋に商品を詰めるサッカーと呼ばれる若者が作業をしている。

正式には「クイックサービス レストラン」と呼ばれるが、ファストフードの存在も彼らには欠かせない。それも最近では早いサービスに加えて心地よい店の雰囲気と健康志向のメニューが要求される。写真に示す「アインシュタイン ベーグル」は、特にサンドイッチのメニューに気配りした店として注目されている。店を覗いてみると中年の男性なども食べていて、普段はこのような場所で夕食を済ませるのかな、と思う。

「クイックサービス レストラン」と呼ばれる店で買い求めたものを朝食時に食べてみた。我々の胃袋サイズでは2個も食べればもう満腹である。ドリンクを入れてもせいぜい4ドル(約480円)前後だ。

CVSは今となっては日本が一番進んでいるのではなかろうか。とは言うものの写真でみるように店内には立派なベーカリー商品の陳列棚を備えた店も出現した。数席の店内飲食スペースがあり、ここで買った物を朝食にしているお客も多い。

スーパーマーケット店舗を見て一番日本より充実していると思われるのが、冷凍食品部門であろう。この写真でわかるように大型の冷ケースが店の中央部に置かれている。そして膨大な種類と数の冷凍食品が売られている。そのほとんどは容器ごとレンジに入れ、暖めて食べる「レディ トゥ ヒート」商品だ。

スーパーマーケットのインストアベーカリーは今もって生鮮食品売り場の中核を占めるが、全店舗売上げ高に対するこの部門の売上げは、全米平均で約2・5%である。ただしアップスケール(高質化)された店の場合は5%にもなる場合があるのには驚かされる。

スーパーマーケットでは、ベーカリーと同様にデリ部門も重要だ。特にホットデリは家庭内で調理することが減ったアメリカ人に人気である。家に持ち帰ってそのまま食べることができるので「レディ トゥ イート」と呼ばれる。

新しいトレンドとして健康志向食品も人気だが、このような日本の寿司も持ち帰り食品としてスーパーマーケットで売られるようになった。この程度の内容で8ドル前後だから決して安くはないと思う。

例えばショッピングセンターのフードコートで簡単な食事をしようと思えば、この内容とボリュームで約500円で済ませることができる。ただし味は今とつの感じがして、ジャンクフードと呼ばれても仕方がないとも思われる。

ファストフードの新しいトレンドとして人気があるのが中華料理メニューだ。このような炒め物をWok(ウォク)と呼ぶが、値段も手頃で流行っている。

一方でメキシコ風のトルティアの人気も定着したようだ。ただし最近では、このように生地を丸めて具を巻き込んだWrap(ラップ)が人気。

Bread Bowl(ブレッド ボール)は、このような形をしたブレッドに具がたっぷりと入ったスープを入れたもので、ベーカリー・レストランなどでもメニュー化されている。これなどは日本での商品開発参考例になるだろう。





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